日本教科教育学会誌
Online ISSN : 2424-1784
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23 巻, 1 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 佐々 祐之
    原稿種別: 本文
    2000 年23 巻1 号 p. 1-9
    発行日: 2000/06/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    最近,生徒の数学の学力低下が懸念されているが,本来,数学の学力とは,数学の問題を解けるという知識・理解に関わる学力だけではなく,数学に対する関心・意欲・態度をも含むものであると考えられる。本研究では,そのような学力観にたって,生徒の数学に対する意識を正確に把握し,それを数学指導に生かしていくことを目的として,筆者が1996年から3年間にわたって関わった「生徒の数学に対する信念・目的・態度に関する調査」をもとに,中学生と高校生の数学に対する意識の差を考察した。その結果,中学生と高校生という発達段階の違いにおいては,おもに創造的活動や他者との関わりに関する部分で,意識の差が明らかになったと言える。
  • 付 宜紅
    原稿種別: 本文
    2000 年23 巻1 号 p. 11-19
    発行日: 2000/06/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究では,日本と中国の小学校国語教科書における物語文教材を対象として,教材中に登場する主人公像について比較考察をする。両国の国語科教育において,物語文教材の中の登場人物を通じて,どのような人物像が求められているか,また,それをどのように扱おうとしているかを明らかにするとともに,両国それぞれが理想とする子ども像,及びその背景,さらには,両国の教育,特に,物語文教材の扱い方に関する相違について比較考察することを目的とする。具体的に,両国の教科書における主要な主人公像とそれらの各学年における特徴を明らかにし,それぞれの国の社会事情,教育観などと関連して分析・考察する。両国の物語文教材では,ファンタジーとリアリズム作品の採録,主人公の年齢,及び人物像の傾向に大きな相違が見られる。同化体験を求め,子どもの自発性を重視する日本と,モデル人物に学び,客観的,正確な読み取り能力を重んじる中国では主人公の設定及びその扱い方に大きな相違が認められるのである。
  • 永田 忠道
    原稿種別: 本文
    2000 年23 巻1 号 p. 21-29
    発行日: 2000/06/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は,明治末から昭和初期にわたる大正自由教育期に,鳥取県の成徳小学校で開発,実践された総合的特設教科「文化科」の特質を解明することにある。検討の結果。「文化科」の特質として次の3点を指摘した。(1)小学校令施行規則改正に示された教科課程の枠組みに沿うために,小学校1年から6年までの6年間,国語科の1時間が文化科に充当されていた。(2)国語科の時間を用いるため,成徳小で独自に作成した3つの教科書,低学年用『新読本』,中学年用『三郎の旅行』,高学年用『倉吉郷土読本』を主教材としていた。(3)文化科実践の実態は,6年間を通して3つの段階を経ながら具体化を図っていく郷土文化環境学習であったが,理念的にはドイツ文化科における教科教育の総合化の考え方をもとにした総合的文化環境学習が指向されていた。
  • 伊藤 彰浩
    原稿種別: 本文
    2000 年23 巻1 号 p. 31-38
    発行日: 2000/06/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究は,愛知学院大学の入学試験に利用されている英語テストの構成概念的妥当性を検証するものである。平成11年に使用された英語テストを4つのサブ・テストに分類し,Alderson, Clapham, & Wall(1995)が提示した内的相関法を利用し,構成概念的妥当性を検証した。157名の大学生から提供されたデータを分析した結果,英語テストのサブ・テスト全てがテストの総合得点に対して有意に影響を与えていることが判明したため,各サブ・テストはある程度の妥当性を保持していることがうかがえた。しかし,サブ・テスト間の相関係数が若干高すぎる傾向にあり,同一能力特性の測定が複数のサブ・テストによって行われている可能性も示唆された。本論文では各サブ・テストの問題点を指摘しながら,本学の入試問題改善への示唆を提供する。
  • 高橋 敏之, 鎌野 智里
    原稿種別: 本文
    2000 年23 巻1 号 p. 39-48
    発行日: 2000/06/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,小学校教育への教育的連続性を高めるための幼稚園教育における保育環境を具体的に提示することである。第1段階として,幼稚園教育要領と小学校学習指導要領・生活科の整合性を示すことによって,幼稚園教育が小学校生活科教育と密接に関係していることを意識する必要性を明確にした。本論においては,幼稚園において,子どもに小学校生活科学習の先行体験としての概念形成を可能にする絵本環境を具体的に示す。本論では,小学校学習指導要領・生活科の第1・2学年の目標の(6)に関して,自分の成長を主題にし,小学校生活科の教科書にある記述もしくは図版と共通性のある絵本について考察する。
  • 安東 茂樹
    原稿種別: 本文
    2000 年23 巻1 号 p. 49-56
    発行日: 2000/06/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    中学校技術科機械領域のロボット製作授業で,「ミ二四駆」の改造を導入学習として取り上げ,ビデオ視聴による導入学習とともに考察を加えた。具体的には,中学校3年生2クラスで,導入の方法による創意工夫の発揮状況や,情意及び願望について生徒の変容を調査し分析した。結果,「ミ二四駆」を用いた導入学習は,生徒の創意工夫する場面が設定でき,実体験を通して一時的に学習の楽しさが高まった。しかし,2単位時間の導入学習では観点別学習状況評価に影響を及ぼさないことや,遊びが優先すると以後の学習内容に興味を失わせることが明らかになった。
  • 相原 豊, 西川 純
    原稿種別: 本文
    2000 年23 巻1 号 p. 57-65
    発行日: 2000/06/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究は,理科の実験時のグループ活動において,グループ内で自発的に発生した役割を分析した。その中で「傍観者がいるグループ」に注目することにより,グループ内の生徒たちによる協同的学習の実態を明らかにした。調査Iでは,理科の実験時において自主的なグループ編成を行った。その結果,4人グループが多くなり,「傍観者がいるグループ」が少ないことを明らかにした。調査IIでは,通常の授業における,2〜4人グループの協同的学習の実態を明らかにした。すなわち,4人グループでは授業の時間進行に伴い「傍観者がいるグループ」が増加することを明らかにした。調査IIIでは,通常の授業に全員参加の話し合い活動を取り入れた授業を行った。その結果,4人グループでは授業の時間進行に伴い「傍観者がいるグループ」が減少することを明らかにした。
  • 河﨑 智恵
    原稿種別: 本文
    2000 年23 巻1 号 p. 67-75
    発行日: 2000/06/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    家庭科において,男女がともに家庭生活・職業生活・地域生活を視野に入れたライフスタイルの構築が重要な課題となっている。近年,我が国でも一貫したキャリア教育の導入が提唱されるようになり,構造化モデルも開発されている。しかし,教科におけるキャリア教育のあり方については未だ言及されていない。米国家庭科教科書においては「キャリア」は職業に限定されずライフキャリアとして広義の概念で捉えられ,家庭生活・職業生活・地域生活を視野に入れたキャリア教育を行うことが,目標とされていた。そして,自己理解,人間関係,意思決定能力,情報収集・活用能力,キャリアプランニングの能力領域の育成が,具体的職業と結びつけられながらめざされていた。著者は,これらを参考に,我が国における家庭科の視点からのキャリア教育の構造化モデルを構築し,家庭科におけるキャリア教育の可能性を検討した。今後,教育条件の整備とともに進路指導や総合学習等を視野に入れた授業プログラムの開発および実践研究が課題である。
  • 松下 健二
    原稿種別: 本文
    2000 年23 巻1 号 p. 77-84
    発行日: 2000/06/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    正課体育における運動が,精神機能ならびに体育のあとの授業における学習活動に及ぼす影響をあきらかにするため,加算作業テストの成績より求めた大脳賦活水準を指標として,実験的に運動強度を設定した授業における運動と大脳賦活水準との関係ならびに運動によってもたらされた大脳賦活水準が学習活動に及ぼす影響について検討を行った。その結果,運動強度と大脳賦活水準の間に逆U字の関係がみとめられ,児童の運動強度に対する感覚3(きつくも楽でもない)で行なわれた授業のとき,大脳賦活水準は最も高いものであること,そのあとの授業における"やる気"は最も高く,集中度にもほぼ同様の傾向がみられ学習活動に好影響を及ぼすこと,学業成績が低いほど,大脳賦活水準や,学習意欲などに運動の影響を強く受ける傾向がみられること,運動強度と大脳賦活水準との関係に影響を及ぼす要因として,運動量,体力水準,学業成績等が考えられることを明らかにした。
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