日本教科教育学会誌
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27 巻, 4 号
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  • 加藤 寿朗
    原稿種別: 本文
    2005 年27 巻4 号 p. 1-10
    発行日: 2005/03/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究は,子どもの社会認識形成に関する実験授業を通して,社会認識形成過程の仕組みやその条件,認識発達を促進する教育的働きかけについて検討することを目的とする。子どもの社会認識発達の特徴として,1)小学校4,5年生頃を移行期として,それまで個別的・断片的に捉えられていた見方が,より本質的な視点を核としてまとめられながら発達すること,2)視点取得経験によって子どもの社会認識は促進されること,が予想される。そこで,経済的事象に関する子どもの社会認識が,視点取得経験による立地概念の獲得によって促進されるかどうかを明らかにするための実験授業を実施した。小学校3年,4年,5年生を対象として授業を行ったところ,4年と5年で学習効果が見出された。小学校4,5年生頃は,特徴的な視点を中核としながら,あるまとまりとして情報を統合する授業展開が適した時期であるとともに,視点取得経験が効果的な学習活動であることが明らかになった。
  • 大西 潤一, 吉富 功修, 緒方 満, 三村 真弓
    原稿種別: 本文
    2005 年27 巻4 号 p. 11-20
    発行日: 2005/03/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    小学生を対象として絶対音高の同定能力を横断的に調査した。462人の小学生を対象に,実音調査と質問紙調査を行った。結果は以下の通りであった。(1)調査対象者の3%は絶対音感を,8%は相当高度な絶対音高の同定能力を保有していた。(2)絶対音感能力の高い者は,鍵盤の色や音域に関わらず正確に音高同定かできたが,能力の低い者は黒鍵音や中央オクターブ音域を外れた音の音高同定か困難であった。(3)レッスン経験年数と絶対音感の水準の間には正の相関があったが,レッスンの開始年齢と絶対音感水準の関連についてははっきりしなかった。(4)絶対音感の発達は,慣れ親しんだ音高(白鍵音や中央音域の音高)からわかりはじめ,次いで黒鍵音や広い音域の音高へと,わかる音高の範囲が拡大するように思われた。(5)レッスン経験のない児童であっても中央Cの音高についてはかなりの者がわかる傾向にあった。
  • 原田 大介
    原稿種別: 本文
    2005 年27 巻4 号 p. 21-30
    発行日: 2005/03/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本稿では,国語科におけるメディア・リテラシー教育の新たな位置づけを提案する。本稿ではまず,国語科におけるメディア・リテラシー教育の現状と問題点を考察する。その考察をもとに,メディア・リテラシー教育の全体を見通すモデルを提案する。続けて,そのモデルをもとに,具体的な授業実践を考案・検証する。困惑した状況にある国語科とメディア・リテラシー教育との位置づけにおいて,このモデルは学習活動全体の見通しを導き出すものと考える。
  • 南 佳子, 榊原 典子, 加地 芳子
    原稿種別: 本文
    2005 年27 巻4 号 p. 31-39
    発行日: 2005/03/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,学習過程における個と集団の関わりから学習の個性化について検討することであり,学習の共有が個の学習へもたらす有効性を,小学校家庭科の実践的な授業を通して明らかにしようとするものである。そこで,まず学習者である個や集団の特性を明らかにし,その上で個や集団が生きる学習過程の構造化を図り,その授業実践を通して学習者が個や集団および学習そのものをどのように評価し変容を見せるかを考察することで,学習のm欧化を支える学習集団の役割を明らかにした。第1報では,学習対象とした小学校5年生の3学級の学習者と学習集団である学級の特性を,学習意欲・学び方の習得,生活技能・経験や家事参加度および集団への関わり度の観点から明らかにし,家庭科学習の学習過程構想への指針を得た。
  • 宮本 浩治
    原稿種別: 本文
    2005 年27 巻4 号 p. 41-50
    発行日: 2005/03/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,学習者が「教師の発話」をどのように受け止めるのかという点を分析するとともに「教師の発話」が学習過程にどのような影響を及ぼすことになるのかを明らかにすることである。そこで,実際の授業を取り上げ,「教師の発話」を起点として営まれるコミュニケーション過程を分析・考察した結果,次のような結論が得られた。(1)学習者の受け取めの実態からすれば,「教師の発話」の機能は,「発問」の機能を中心にして,「説明」や「指示」などの複数の機能を併せ持つ。(2)「教師の発話」は,学習者の反応に対して評価言を含みつつ,かつ学習者に対して自己の読みを確実に相対化させる機能を有するものである。また,学習者間の対話を活性化させ,学習者に学習内容の内省を行わせることになり,学習を促進させる機能を有している。(3)教師の発話様式の異質性によって,学習者の学習場面の異質性が意識されることになる。そして,その結果,より質の高いかかわり合いをとおした学習が遂行されることになる。以上,より質の高い国語学習を組織するためには,教師は,「発問」や「説明」により,学習者を導く実践を行うのではなく,効果的な発話を行っていくことで,学習の異質性を組織し,学習者の学習活動を活性化することができるのである。
  • 藤谷 かおる, 出村 慎一, 畑田 雄也, 北林 保, 岩田 英樹, 岡出 美則, 宗倉 啓
    原稿種別: 本文
    2005 年27 巻4 号 p. 51-60
    発行日: 2005/03/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,高等学校における「よい体育授業」の概念および仮説構造を検討し,その構成要因および要因を代表する項目を,理論妥当性および具体的データに基づき選択することである。内容妥当性の検討の結果,調査の要因として,楽しさ,成果,学び方,協力の4要因を,また,これらを測定する項目として,42項目を選択した。予備調査の結果を考慮し,ランダムに抽出したF県における高等学校の保健体育教師および生徒を対象とし,調査を実施した。データの検証を行い,教師99名,生徒938名の有効なデータを分析に利用した。本研究で選択した定義,被験者,調査項目,等々の限界の下で,以下の知見が得られた。1)楽しさ,成果,学び方,協力の4要因は,「よい体育授業」の構成要因であることが確認され,項目No.8,26の2項目を除く40項目(表1参照)は,各構成要因を代表する項目として適切である。(ただし,項目No.26は今後更なる検討が必要である。)2)40項目中6項目において,教師と生徒の適切か否かの判断に差異が認められた。つまり,必ずしも選択された全ての項目内容が,教師,生徒ともによい体育授業を捉える項目として適切ではないと考えていることが確認された。
  • ニット ブンライ
    原稿種別: 本文
    2005 年27 巻4 号 p. 61-70
    発行日: 2005/03/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    この研究はカンボジアの小学校における英語教育の実施について,阻害している要因を見出し,それらを分析することを目的とする。89名の小学校教師への自己評価アンケートの結果は,教師は英語に関する十分な知識や,児童に英語を教える適切な技能を未だ充分に持っていないことを示している。さらに,関係する政策担当者や小学校校長へのインタビューによると,英語のシラバス,教科書や教材も未だ準備できない状態にあることが判明した。その上,現状の小学校の実際の授業時間数は,国際標準を下回っていた。したがって,教師やカリキュラムの準備ができても,英語を一つの科目として時間割に組み込むことは困難であろう。しかしながら,もし児童が十分な英語力を習得すれば,社会で生き残り,向上する機会があり,また,英語学習開始が早期であれば英語習得の可能性が高いと考えられる。したがって,カンボジアに対する援助機関同様,カンボジア政府自身も英語教育にむけて一層努力すべきであろう。
  • 鳥井 葉子
    原稿種別: 本文
    2005 年27 巻4 号 p. 71-80
    発行日: 2005/03/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    授業の実践的能力の獲得過程を明らかにするために教育実習における家庭科授業反省会をエスノグラフィーの手法により分析した。授業反省会では,授業構成,授業の状況判断力,情報伝達力,生徒のコントロールカが取り上げられていた。授業の実践的能力は,授業者からの授業実践を経た反省的認識,観察者からの勇気づけや代替案の提示,指導者からの助言および次の実践課題の提示という過程を経て,レベルや文脈が考慮されながら進められる授業反省会の積み重ねを通して獲得されていた。
  • 角田 将士
    原稿種別: 本文
    2005 年27 巻4 号 p. 81-90
    発行日: 2005/03/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本稿は,明治中期の歴史教科書の内容構造と,そこに課せられていた教育的役割を,特に自国史と外国史を同時に学習する中学校の歴史教科書を分析対象として,実証的に解明することを目的としている。本稿では,明治14(1881)年から明治27(1893)年までの期間を明治中期として捉えた。この時期の教科書において初めて,自国史と外国史に課せられた,それぞれ独自の教育的役割を見出すことができるからである。自国史教科書では,歴史を「伝統」として捉え,選別された人物や事象を通して国民としての資質を育成しようとしている。また,外国史教科書では,歴史を,それ自体として「認識」する対象として捉え,詳細な外国史像,あるいは自国だけを絶対視しない歴史の見方を育成しようとしている。このような自国史と外国史の教育的役割の分担構造が,その後の我が国歴史教育の常態となっていく。その原点を本稿では解明した。
  • 小山 正孝
    原稿種別: 本文
    2005 年27 巻4 号 p. 91-100
    発行日: 2005/03/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本稿は,日本の数学教育学における近年の研究動向をレビューし,今後の研究に対する展望を述べようとするものである。日本数学教育学会の数学教育論文発表会において発表された近年(1991〜2000)の論文と課題別分科会の取り組みをレビュー及び考察の対象とし,日本の数学教育学における研究動向をまとめた。そして,数学教育学の多くの研究領域に共通する展望を「統合」「共同」「批判」という3つのキーワードを用いて述べ,それらが今後の日本の数学教育学研究と教育実践の発展に大きく寄与し得ることを主張した。
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