日本教科教育学会誌
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29 巻, 3 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 上原 義徳
    原稿種別: 本文
    2006 年 29 巻 3 号 p. 1-9
    発行日: 2006/12/01
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    最近,高等学校の専門教育の英語科が全国的に(沖縄県は2校)誕生して本格的に英語教育を行っている。このような発展を見ると明治初期に沖縄の首里中学校で始まった英語教育の原点に立ち返って,その歴史から学ぶことは有意義であると思われる。本稿の目的は,沖縄県における明治期の中学校と高等女学校の外国語(英語)教育課程の進展を調査して,その理由を考察し,示唆を得ることである。次の調査結果は本稿で見つけ得た事実の中の主な数点である。即ち県立第一中学校の前身である首里中学校創立時の教育課程には英語科不設置,新設(明治18年),随意科(明治27年から同29年まで)を経て再び正科に戻り,明治36年の県立(第一)中学校の英語教育課程は形式的に他府県並みになった。その5年後には県立高等女学校の英語科が新設されたのである。また当時の中学校学科課程に基づく英語教科書8種が公表されているので言及する。続いてその当時の中学校の英語科設置等の背景について考察する。
  • 三崎 隆
    原稿種別: 本文
    2006 年 29 巻 3 号 p. 11-18
    発行日: 2006/12/01
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究では,動物の大きさに用いる尺度に対する児童の認識を調査した。その結果,小学校第2学年では高さの尺度を,第4学年及び第6学年では重さの尺度を用いる児童の割合が多かった。さらに,各動物を架空の大きさとして提示したときの児童の認識を調査した。その結果,小学校第2学年では高さの尺度を,第4学年及び第6学年では重さと長さの尺度を用いる児童の割合が多かった。
  • 緒方 満, 吉富 功修, 河邊 昭子, 三村 真弓
    原稿種別: 本文
    2006 年 29 巻 3 号 p. 19-28
    発行日: 2006/12/01
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    一般的な児童が保有している歌唱スキルは,斉唱時に正確な音高で歌唱することは可能であるが,合唱時には不正確な音高での歌唱となる。すなわち彼らの多くは,合唱時に正確な音高で歌唱することが不可能となる。この問題の解決には,児童の「音高認識体制」の成長を体系的に促進することによって,彼らの正確な音高で歌唱できるスキルをよりレベルの高いものにすることが不可欠である。本研究はげ音高認識体制」を成長させるためのエクササイズアプローチによる音楽教育プログラムを全学年の児童に約2か月間実践し,そのことによって,合唱に必要な「2声部の歌い分け」ができる歌唱スキルが,つまり合唱活動に耐えうる歌唱スキルが獲得できたかどうかを明らかにするために行われた。本研究の結果,実践した音楽教育プログラムには,合唱時に正確な音高で歌唱できるスキルを保有していなかった,あるいはこのスキルが未熟だった児童について,彼らがそのスキルを習得できるように導く効果があるという知見を得た。
  • 若木 常佳
    原稿種別: 本文
    2006 年 29 巻 3 号 p. 29-38
    発行日: 2006/12/01
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    話す・聞く能力を育成するためには,認知的側面に着目し,適切に情報処理を行う能力の伸長を図らなくてはならない。適切な情報処理に求められる「知識」として挙げられるのは,情報処理という問題を解決するためのアルゴリズムとアルゴリズム遂行のための知識である。したがって,これらに習熟することが話す・聞く能力の育成につながるということになる。中学生の独話理解場面を取り上げて,情報処理のありようを捉えた。すると,情報を分節化することや相互の関係を捉えることができにくく,構成についての知識を活用してマクロ構造を把握することができにくいという実態が見られた。これは,分類整理や意識的に関係を捉える訓練が不足しているために生じていると考えられる。今後は,他場面における調査も行い,中学生の認知的側面における実態を立体的に捉えていきたい。
  • 伊東 治己
    原稿種別: 本文
    2006 年 29 巻 3 号 p. 39-48
    発行日: 2006/12/01
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    平成16年12月に経済協力開発機構(OECD)による2003年度国際学習到達度調査(PISA)の結果が公表されて以来,世界的な規模でフィンランドの学校教育が教育関係者の注目を集めている。日本においては,フィンランドの成績との比較から,特に国語教育や算数・数学教育のさらなる推進・改革が叫ばれているが,フィンランドとの比較という文脈では, PISAでは対象となっていない英語は実に悲惨な状況にあることが殆ど理解されていない。本発表は,小学校への教科としての英語の導入を視野に入れ,平成17年3月から7月にかけて実施したフィンランドでの英語教育に関する現地調査の結果を報告するものである。学校訪問と関係者への聞き取り調査の結果を基に,フィンランドの小学校英語教育の実態を報告するとともに,担当教師の英語授業観についても論究し,グローバル化への迅速な対応が求められている日本の学校英語教育への示唆を提示する。
  • 岳野 公人
    原稿種別: 本文
    2006 年 29 巻 3 号 p. 49-56
    発行日: 2006/12/01
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    ものづくり学習の設計段階において生徒が製作過程を見通す能力,製作物や製作方法について発想する力を育成することは重要である。本研究は,ものづくり学習の設計段階における生徒のアイデアスケッチの分類と特徴を明らかにすることを目的とした。中学生148名を対象に調査を実施した結果,以下のことが明らかとなった。1)生徒のアイデアスケッチは,「派生型」,「自由型」,「製作型」,「寸法重視型」及び「アイデア不足型」の5つに分類することができた。2)「製作型」,「寸法重視型」のアイデアスケッチは,設計における問題解決の初期過程の検討の場面として機能していることが示唆された。3)「派生型」,「自由型」は,設計における創造的な発想の場面として機能していることが示唆された。4)「アイデア不足型」のアイデアスケッチでは,生徒自身がアイデア不足を認識していた。以上の結果から,今後の学習指導に向けた改善の視点として,設計の諸段階とアイデアスケッチの特徴の関係について考察した。
  • 伊藤 真
    原稿種別: 本文
    2006 年 29 巻 3 号 p. 57-66
    発行日: 2006/12/01
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,ドイツの音楽科教育における,教科固有の教育的機能ではない,児童・生徒の日常生活において幅広く作用する教育的機能の位置づけについて,「社会的学習(Soziales Lemen)」に焦点を当てて明らかにすることである。ドイツ全16州の初等教育段階および前期中等教育段階の音楽科カリキュラムを分析した結果,ほぼすべての音楽科カリキュラムにおいて社会的学習の重要性が認められた。特に,従来の音楽科の学習領域を柔軟かつ包括的に扱うようなテーマ学習や教科の枠組みを越えた総合的な学習において,社会的学習が関与する度合いが極めて高いことが明らかとなった。この背景として,クラフキ(W. Klafki)の「鍵的問題」構想がドイツ全体の音楽科教育に広がっていることが示唆された。また,音楽科の評価規準にも社会的学習によって獲得された社会的態度や社会的能力が盛り込まれており,その重要性の高さがうかがえる。
  • 顔 幸月
    原稿種別: 本文
    2006 年 29 巻 3 号 p. 67-76
    発行日: 2006/12/01
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究は,日本語の会話授業において,教師の母語使用に対する学習者の意識と成績との関係を明らかにしたものである。調査は,台湾5大学の3学年の会話授業において実施し,台湾人教師クラスの学習者133名,日本人教師クラスの学習者157名を対象とした。調査項目は,「母語使用の必要性」「母語使用のプラス面」「母語使用のマイナス面」の3つから構成されており,成績はSPOTを用いて測定した。分析では,教師の母語使用に対する学習者の意識が成績に影響する要因であると仮定し,「母語使用の必要性」→「母語使用のプラス面」「母語使用のマイナス面」→「成績」というモデルをパス解析によって学年別,教師の母語別に検討した。その結果,「母語使用の必要性」に対する学習者の意識は「成績」に直接負の影響を及ぼすこと,部分的には「母語使用のプラス面」「母語使用のマイナス面」に対する意識を通して「成績」に負の影響を及ぼすことなどが明らかになった。
  • 小長野 隆太
    原稿種別: 本文
    2006 年 29 巻 3 号 p. 77-86
    発行日: 2006/12/01
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究では,第1〜6学年までの児童437名を対象として,音高再生能力,音高弁別能力,及び「話し声」と「歌声」の使い分けの技能を横断的に調査した。その結果,(1)音高再生能力は第2学年で著しく発達し,音高弁別能力は第2,3学年で著しく発達する,(2)第4〜6学年では,音高再生能力水準別の児童の比率はほとんど変化がみられない,(3)音高再生能力の高い児童は低い児童よりも,音高弁別能力,使い分けの技能が共に有意に高い,(4)音高再生能力水準の低い児童には,音高弁別能力,使い分けの技能が共に低い児童が多いが,どちらか一方だけが低い児童も少なからずいる,(5)音高再生能力水準の低い児童には,第1,2学年では,音高弁別能力,使い分けの技能が共に低い児童が多いが,第3,4学年ではどちらか一方だけが低い児童が多くなり,第5,6学年ではどちらも高い児童が多くなる,ことが明らかになった。
  • 三根 和浪, 宮本 恭二郎, 橋本 泰幸
    原稿種別: 本文
    2006 年 29 巻 3 号 p. 87-96
    発行日: 2006/12/01
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本稿は,美術科教育学会誌と大学美術教育学会誌に掲載された論文をレビューし,美術教育学研究の動向と課題を探ることを目的とした。ここでは(1)1983-2000年度の間,両誌に掲載された929編の論文を対象にしてその傾向を数量的に読みとった。また,(2)2001-2003年度に発表された論文を対象にしたレビュー論文を検討して美術教育学研究の動向と課題を明らかにした。その結果,最近20年弱の期間では,コンピュータや鑑賞,生涯学習に関する研究が増加しており,これらは今日的な課題であった。また,レビュー論文を検討すると,実践的研究では美術教育の対象の枠組みの拡大に対応した研究,とりわけ鑑賞関連教育や情報関連教育の研究が多かった。また,理論的研究では歴史的研究アプローチや歴史研究が多く,特定の美術教育家や美術教育思想の研究が顕著であった。さらに,実践と理論の統合,批評を進めること,情報発信を一層進めるなどの課題があった。
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