乗法九九の相対的困難度にはある種の傾向が認められる。我国の調査では,例えば,数2や5を含む九九は誤答率が低く,7や8を含む九九は誤答率が高い。筆者等は乗法九九の相対的困難度を説明するための心理学的構成概念として,内包的意味における数の困難度なるものをとりあげ,これをSD,および一対比較法から得た資料による距離尺度の構成の二方法によって量化し,尺度φおよびψを得た。これらの尺度は乗法九九の相対的困難度と密接な関係をもつことが明らかにされた。この研究は,大学生に関して得られた7つの尺度φ_1, ……,φ_5およびψ_1,ψ_2の相関関係を調べ,両尺度の信頼性を検討したものである。その結果,群平均値に関しては再テスト信頼性係数は0.993,内部信頼性係数は0.968以上,被験者群を異にした場合でも相関係数は0.815から0.989であった。各数の再テスト信頼性係数は最低0.504(数6)から最高0.812(数0)であり,他の1位数の信頼性係数はこれらの間にあることが示された。
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