本研究は,ある中学校英語授業における日本人熟練教師とAssistant language teacher(以下ALT)のティーム・ティーチング(以下TT)において,2人が事前の打ち合わせを行わなくても授業が円滑に進んでいく理由を2人の関係性から考察したものである。分析にあたっては,授業観察記録,授業内の発話テクストとリズム譜,ALTと日本人教師へのインタビュー・テクストなど複数のデータを用いた。分析の結果,観察対象となったTT授業の特徴として,ALTの発話後,間髪入れずに滑り込むような日本人教師の発話(以下「滑り込み発話」)が観察された。他の学校におけるTT実践場面では,教師二人の発話内容が重なったり,長いポーズができてしまったりする様子が観察されたのに対し,観察対象のTTでは,「滑り込み発話」は,ALTの発話内容の強調,新たな情報の付加,学習場面の創出など授業の中で様々な機能を果たしている様子が分析された。またこのようなTTが行われている背景として,日本人教師とALTが英語の授業観,生徒理解に関して共通する考えを持っていることが浮き彫りになった。
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