日本教科教育学会誌
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33 巻, 2 号
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  • 高垣 マユミ, 田爪 宏二, 森本 信也, 加藤 圭二
    原稿種別: 本文
    2010 年 33 巻 2 号 p. 1-10
    発行日: 2010/10/20
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究は,小学校5年理科「ものの溶け方」の単元を取り上げ,溶解現象に対して子どもたちのもつ素朴概念を科学的概念に変容させる授業を考案した。まず,認知的側面からは,認知的道具として粒子概念の微視的視点を導入した。次に,社会的側面からは,電子黒板を用いて,小集団の構築した理論をクラス全体の議論の場で再現する学習環境を設定した。授業過程の発話分析と事前・事後テストの記述分析から,教授効果として以下の点が明らかになった。1)「粒子概念」の視点の導入により,目に見えるままの記述から,微視的視点からの記述へと,子どもたちの推論活動の変容が見出された。2)電子黒板を媒介物として,クラス全体の議論において小集団での理論を再構築することにより,学習者間に真正な質問が盛んに生成され,個人内ゾーンと社会的協同構成ゾーンを往き来する反省的思考活動が促された。1),2)の認知的/社会的側面からの教授的アプローチにより,溶解現象の概念変化が促されることが示唆された。
  • 藤谷 かおる
    原稿種別: 本文
    2010 年 33 巻 2 号 p. 11-20
    発行日: 2010/10/20
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,Davisの対人的反応性指標を用い,体育授業における共感性の(1)構成因子を明らかにし,(2)その構成因子の性差および校種〔小学生(4年生から6年生),中学生,および高校生〕間差を明らかにすることであった。体育授業における共感性に関する30項目からなる調査が被調査者に実施された。小学4年生から高校3年生までの男女3703名の資料を分析した結果,Davisが提案する「共感的配慮」「視点取得」「想像性」および「個人的苦痛」の4因子が解釈された。前述の全ての因子において有意な性差が認められ,女子が男子よりも高かった。男女とも「共感的配慮」因子と「視点取得」因子の平均因子得点は,小学生,中学生および高校生の順に有意に高く,一方「個人的苦痛」因子は男子中学生と高校生を除いて有意に低かった。また,「想像性」因子では,女子小学生と中学生間を除いて校種間に有意差が認められなかった。以上、体育授業における共感性は「共感的配慮」「視点取得」「想像性」および「個人的苦痛」の4因子からなり,これらのほとんどの因子には性差と校種間差が存在すると判断された。
  • 松井 かおり, 今井 裕之
    原稿種別: 本文
    2010 年 33 巻 2 号 p. 21-30
    発行日: 2010/10/20
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究は,ある中学校英語授業における日本人熟練教師とAssistant language teacher(以下ALT)のティーム・ティーチング(以下TT)において,2人が事前の打ち合わせを行わなくても授業が円滑に進んでいく理由を2人の関係性から考察したものである。分析にあたっては,授業観察記録,授業内の発話テクストとリズム譜,ALTと日本人教師へのインタビュー・テクストなど複数のデータを用いた。分析の結果,観察対象となったTT授業の特徴として,ALTの発話後,間髪入れずに滑り込むような日本人教師の発話(以下「滑り込み発話」)が観察された。他の学校におけるTT実践場面では,教師二人の発話内容が重なったり,長いポーズができてしまったりする様子が観察されたのに対し,観察対象のTTでは,「滑り込み発話」は,ALTの発話内容の強調,新たな情報の付加,学習場面の創出など授業の中で様々な機能を果たしている様子が分析された。またこのようなTTが行われている背景として,日本人教師とALTが英語の授業観,生徒理解に関して共通する考えを持っていることが浮き彫りになった。
  • 後藤 幸弘, 田中 讓, 福田 修一, 山本 忠志
    原稿種別: 本文
    2010 年 33 巻 2 号 p. 31-40
    発行日: 2010/10/20
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究は,体力の向上も企図した「課題ゲーム」を用いたサッカー授業を構築するための基礎資料を得ようとしたものである。すなわち,「課題ゲーム」として完成度の高い「ツーゴールドリブルサッカー」,「サイドマン付きキックラインポートボール」,「キックラインポートボール」,「Runランサッカー」の4つのゲームを種々の時間条件で大学生を対象に行わせ,心拍数変動を記録し,運動強度を推定した。その結果,「ツーゴールドリブルサッカー」では,ゲーム時間60秒,休息90秒を5セット以上,「サイドマン付きキックラインポートボール」と「キックラインポートボール」では,ゲーム時間7分を2セット以上,「Runランサッカー」では,ゲーム時間5分を2セット以上,休息時間2分をはさんで実施させればよいと推定された。
  • 池田 仁人, 高垣 マユミ, 田爪 宏二, 坂田 尚子
    原稿種別: 本文
    2010 年 33 巻 2 号 p. 41-50
    発行日: 2010/10/20
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究は,小学校の理科授業において,子どもたちの活動や発言などを的確に評価し,速やかな授業展開修正など次の学習に繋げる視点として,Rezba, Sprague & Fielらの提唱する「基本的な科学のプロセススキル」に着目し,その有効性を検討する。小学校6年生の理科単元に於いて,先行授業での子どもの表れを「基本的な科学のプロセススキル」を元に分類したところ,活用能力の偏りや授業・指導の不備を発見した。そこで,次の授業でそれを是正する指導方法を取り入れたところ,バランスの良い能力の活用や科学的な考え方が見られるようになった。それにより,「基本的な科学のプロセススキル」の小学校理科の授業評価に関する有用性を示唆するに至った。
  • 階戸 陽太
    原稿種別: 本文
    2010 年 33 巻 2 号 p. 51-60
    発行日: 2010/10/20
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究では,2県の小学校教員へのアンケート調査を通して,(1)英語活動の実施状況の違いを比較,(2)小中連携の違いを比較し,さらに,(3)外国語活動の必修化に向けた小中連携の課題について,明らかにすることを目的とする。対象は,地域差を考慮して,英語教育が先行する県の代表として石川県の公立小学校教員104名と後発の代表としての山口県の小学校教員73名とした。アンケートは,設問に対して答えを選択するものと自由記述から構成され,分析は2県の結果の比較とクロス集計を通して行った。また,自由記述の分析も行った。その結果,以下の3つのことが明らかになった。(1)英語活動と小中連携に違いがあった。(2)先行地域では小学校間の連携ができていることが示された。(3)外国語活動必修化に向けて,地域差を考慮した小中連携が必要であることが示唆された。
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