日本教科教育学会誌
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33 巻, 3 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 古別府 ひづる
    原稿種別: 本文
    2010 年 33 巻 3 号 p. 1-9
    発行日: 2010/12/20
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    大学日本語教員養成における教育実習は,実践力をつける環境として最も重視すべきものである。本研究では,実習生とその次の段階としての日本語アシスタントまでの成長過程を,日本語教師観の変化より,被調査者1名のケーススタディとして示すことを試みた。PAC分析(個人別態度構造分析)の方法を用いて調査した結果,国内実習前,海外中等教育機関での実習後,海外中等教育機関での日本語アシスタント後のそれぞれの段階において,日本語教師観に変化が見られた。また,海外実習後に,日本語アシスタントへの動機付けとなる要因として,現場体験,特に,授業の組み立ての幅の広さ,生の教師の存在,教室の楽しい雰囲気が挙げられた。さらに,日本語アシスタントの段階では,日本語教師観と指導教師の人間性との強い関係が確認できた。本調査結果より,実習生と日本語アシスタントでは,異なる成長のプロセスがあることが示された。
  • 宇都宮 明子
    原稿種別: 本文
    2010 年 33 巻 3 号 p. 11-20
    発行日: 2010/12/20
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本稿は,1993年版ニーダーザクセン州GL大綱要領と,それに準拠するGL用教科書の分析を通して,1990年代におけるドイツ歴史学習の変革の特質を明らかにすることを目的とする。分析を通して以下の3点が明らかとなった。1つ目は,大綱要領とGL用教科書の比較から,理念としての歴史学習と現実の歴史学習にはギャップが存在するという点である。2つ目は,理念と現実の歴史学習の妥協の中で構想された歴史学習が社会理論研究としての歴史学習であるという点である。3つ目は,1990年代の歴史学習の変革は従来の歴史学習の脱却に向けた現実的な変革であったという点である。1990年代の歴史学習の変革は,理念よりも学校教育現場での実現を優先したために,現実の歴史学習を基盤に,それを補足し改変するという不十分な変革にとどまったが,2000年代に推進される構築主義的な変革への準備としての重要な意義があったと結論づけられる。
  • 大場 渉
    原稿種別: 本文
    2010 年 33 巻 3 号 p. 21-30
    発行日: 2010/12/20
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究は,体育における学習意欲の構成因子を明らかにすること,及びその構造を学習意欲プロセスモデルから検討することを目的とした。質問紙は学習意欲に関連する21尺度153項目から構成され,調査対象は752名の中学生と高校生であった。その主な結果は次の通りである。1)因子分析の結果,学習意欲の構成因子として,「運動有能感」などの10因子が抽出された。2)この10因子を用いてパス解析の結果,「環境(教師・友人)→認知(能力向上期待)→感情(授業の楽しさ)→行為(目標設定・規範的態度・困難の克服)→結果・評価(運動有能感→自尊感情)」という心理的現象プロセスにそった学習意欲プロセスモデルが構築された。
  • 草場 実, 湯澤 正通, 角屋 重樹, 森 敏昭
    原稿種別: 本文
    2010 年 33 巻 3 号 p. 31-40
    発行日: 2010/12/20
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,高等学校化学において,メタ認知を活性化する観察・実験活動が,高校生の科学知的知識の定着に及ぼす効果について実践的に検討することであった。まず,化学I「中和滴定」を事例として,高校生のメタ認知を活性化する観察・実験活動をデザインした。そして,公立高等学校の高校2年生を対象とし,処遇群(26名)には本観察・実験活動を行い,一方,対照群(32名)は,中和滴定の原理を検証するための観察・実験活動を行った。両群のメタ認知活動及び「中和滴定」に関する科学的知識の定着を比較検討した結果,以下のことが明らかとなった。1.科学的知識を活用するための手段として位置づけた観察・実験活動は,高校生のメタ認知,特に,"実験前の自分自身によるメタ認知"と"実験後の他者との関わりによるメタ認知"を活性化した。2.処遇群は,対照群より,転移テストにおいて科学的知識の定着が達成された。
  • 桑畑 美沙子, 古田 弘子, セートゥンガ プラサード
    原稿種別: 本文
    2010 年 33 巻 3 号 p. 41-50
    発行日: 2010/12/20
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究では,スリランカの中等教育における家庭科教育,特に食教育を明らかにするために,現地調査を行うとともに,家庭科関連の教科書,一般教育上級レベル修了試験,国立教育研究所発行の家庭科に関する資料を日本語に訳し,内容を分析し,検討した。その結果,家庭科は6〜9年生に男女とも必修でPTSの1科目として食物が,10〜13年生に男女とも選択でHome Economicsが課せられていること,領域としては食物が重視され,環境や消費は全く扱われていないことが明らかとなった。内容的には,自然科学に立脚した高度な知識の習得が第一義とされ,知識を駆使して自身の暮らしをよりよくつくりかえていく主体の形成はめざされていないと推測された。しかしながら,Home Economicsの本来的なあり方として,文化の継承,福祉,消費者,環境保全等の導入が提唱されていることが見出された。
  • 田中 宏幸
    原稿種別: 本文
    2010 年 33 巻 3 号 p. 51-54
    発行日: 2010/12/20
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本学教育学研究科では,2009年度に「教職高度化プログラム」を開設した。独立した教職大学院ではなく,既存の大学院の中にプログラムを置くことによって,研究者養成プログラムとの密接な連携を図り,高度な教育実践力を養うとともに高度な教育実践研究力も形成しようとしたのである。初年度は,研究方法に関する共通理解を深めることや,大学院におけるプログラム科目と附属学校におけるアクションリサーチ型実習との連携を強めることに腐心した。2010年度は,前年度の反省を踏まえ,教科間連携を深めて,院生に対する事前指導を充実させるとともに,実習校との事前調整を強化している。その実際を踏まえて,アクションリサーチによる教科教育研究の意義を確かめ,研究的資質を有した実践者養成の方法について提案する。
  • 加藤 久恵
    原稿種別: 本文
    2010 年 33 巻 3 号 p. 55-58
    発行日: 2010/12/20
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    兵庫教育大学教職大学院・小学校教員養成特別コースの専門科目には,「教育実践研究(アクションリサーチ)」がある。提案者がその授業の担当者の一人となったことで,数学教育学研究とアクションリサーチについて考える機会を得た。その授業は実習の計画・検証を行うことを通して,アクションリサーチの力量形成を目指しており,教員養成におけるアクションリサーチの取り組みといえる。さらにその延長線上で,提案者が近隣の小学校の教員とかかわる際に,教員研修におけるアクションリサーチの可能性を検討する必要性を感じている。他方,2010年6月に開催された全国数学教育学会研究発表会における特別企画「数学教育学研究と授業実践」では,アクションリサーチと数学教育学研究について議論された。よってここでの提案においては,上記の特別企画での議論を紹介するとともに,教員養成・教員研修という視点から,数学教育学研究におけるアクションリサーチについて考えたい。
  • 橋本 都
    原稿種別: 本文
    2010 年 33 巻 3 号 p. 59-62
    発行日: 2010/12/20
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    青森県総合学校教育センター(以下,教育センターと記す。)における研究員による研修は,当該教員の資質向上には一定の成果があるものの,授業指導力の向上,学校や地域への研究成果の広がりなど課題がある。そこで,(独)国立特別支援教育総合研究所(以下,特総研と記す。)と本県との連携・協力の取組を参考にしながら解決方策を検討した。その結果,個人とチームを組ませた研究,実践と研究を繰り返した後の評価などにおいて,アクションリサーチ的な手法の導入による解決の方向を見出すことができた。そこでは,教員研修において,研究方法としてのアクションリサーチだけではなく,研究過程にアクションリサーチ的な環境を整えることの重要性がうかがわれた。
  • 深澤 清治
    原稿種別: 本文
    2010 年 33 巻 3 号 p. 63-65
    発行日: 2010/12/20
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    平成22(2010)年10月2日に開催された日本教科教育学会第36回全国大会(青森大会)のシンポジウムにおいては,「アクションリサーチによる教科教育の学的研究II」としてアクションリサーチの研究方法論を中心的話題として取り上げた。昨年の金沢大会で,近年の教員養成大学における教職大学院や教職高度化プログラムの設置の背景や現状について3大学からの報告を聞いてアクションリサーチの理念の共有を図ったのを受けて,今年は,大学および教育委員会で実施されているアクションリサーチの取り組みから,いかに方法論を確立して実践知を共有するかをねらった。特に従来から実施されている授業研究とアクションリサーチの違いをめぐって,アクションリサーチの存在意義に対する意見が出され,「白熱教室」を思わせる,近年にない活発な討議が繰り返された。
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