本稿は,敬語指導の現状と課題について,小学校国語科を中心に検討する。これまでにも,敬語に関する先行研究は見られるが,日本語教育学や社会言語学の分野での研究が盛んであり,国語科教育においては,その必要性が叫ばれながらも定着までには至っていない。そこで,本稿では,敬語指導の現状と課題に関して,(1)答申,(2)学習指導要領,(3)教科書教材の三つから検討する。現状としては,平成20年版学習指導要領では,よりコミュニケーション能力としての敬語指導の在り方が示されていると言える。また,教科書教材においては,5社を検討した結果,敬語へ変換するという方法がとられている2社を取り上げた。この変換するという方法は,実生活に生きる敬語指導の在り方を考えれば,効果的な学習方法である。そして,これからの敬語指導では,より対人関係を意識させるような実生活に生きる指導,とりわけ敬語表現に関する指導も必要であろうと考えられる。
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