本研究は中国語を母語とする日本語学習歴4ヵ月の初級日本語学習者を対象にして,テ形習得が項目学習か規則学習かについて検討した。中国で使用される教科書内の動詞から15,教科書外から15,無意味語(適当に動詞らしい無意味語を作成)を15,新語を9つ選んで(合計54の動詞)テ形書き込みテストを作成した。これらの動詞について,新語の9つを除いて,「いて・いで系」,「して系」,「って系」,「て系」,「んで系」が教科書内,教科書外,無意味語で各3問(テ形変化形ごとに各9つで,9×5=45の動詞)となるようにした。教科書外(87.20%),無意味語(88.00%),新語(86.44%)でも85%以上の正答率で,4ヵ月の学習でもテ形の活用形がよく習得されていたことから,基本的に規則学習が進んでいることが分かった。それに加えて,教科書内の動詞(90.33%)が他の動詞群よりも有意に高いことから,語彙項目の学習の影響も見られた。しかし,無意味語と比べて2.33%の違いでしかないので,規則学習に比べて語彙項目の学習の効果は比較的弱いと言えよう。さらに,これらの分類ごとの動詞のテ形習得が総合的な文法能力の促進にどう貢献するかも検討した。
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