日本教科教育学会誌
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35 巻, 2 号
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  • 牧野 眞貴
    原稿種別: 本文
    2012 年 35 巻 2 号 p. 1-10
    発行日: 2012/09/30
    公開日: 2018/05/09
    ジャーナル フリー
    本研究では,教員養成における教育実践の省察力を高めるため,小学校教員養成課程に在籍する大学生を対象として,外国語活動模擬授業の自己評価と自己省察の関係を検証した。その結果,模擬授業の自己評価の高い学生は,低い学生と比較して,自己の指導の問題点を解決しようという意識が高く,模擬授業体験において指導技術向上につながる気づきや学びが深い傾向にあり,指導の自己省察が,次の指導への準備につながっていることが窺えた。自己評価の低い学生においては,自己の指導を十分に分析することができておらず,何がどのようにうまくいかなかったかということだけでなく,模擬授業を体験しても,それを次にどのように生かすか検討ができない傾向が見られた。その原因として,メタ認知が乏しいことや,評価規準を十分に理解していないことが示唆された。本稿ではメタ認知活性化や自己評価力を向上させる取り組みについて提案を行う。
  • 角屋 重樹, 猿田 祐嗣, 松原 憲治, 後藤 顕一, 五島 政一, 鳩貝 太郎
    原稿種別: 本文
    2012 年 35 巻 2 号 p. 11-18
    発行日: 2012/09/30
    公開日: 2018/05/09
    ジャーナル フリー
    教員養成において,教職専門科目と教科専門科目とが適切に統合される架橋領域の在り方の提言が急務となっている。そこで,本研究は,理科教育を例に,教職専門と教科専門とを架橋する学習内容の構成原理を考案することから,教職専門と教科専門の両科目の架橋領域の在り方に対する解決の一試案を提案した。また,児童・生徒の思考力・判断力・表現力の育成が教員養成で緊急の課題となっている。この課題解決のため,児童・生徒に思考力・判断力・表現力を育成する具体的な方略を論じた。
  • 佐藤 園, 篠原 陽子
    原稿種別: 本文
    2012 年 35 巻 2 号 p. 19-30
    発行日: 2012/09/30
    公開日: 2018/05/09
    ジャーナル フリー
    今日の学校教育では,教師の「実践的指導力」が求められている。その中心を占めるのは,教科の「授業」である。しかし,現在の教員養成ではそれが等閑視されており,大学のプログラムとして保証できるシステムが必要である。その構築のためには,教育実践を核とする「教科教育と教科専門を架橋する教育研究領域」の確立が根本課題となる。この解決のため,平成18年に,岡山大学教育学部は改革を行い,「実地研究」を核とするコア・カリキュラムを構築した。本報では,このカリキュラムの実践で生じた「学生の学力低下」「家庭科教員採用試験」の問題解決のための家政教育講座の取り組みと,その結果として構築した家庭科カリキュラムとその実践・結果を取り上げる。それらを前述した根本課題の視点から分析し,「学校教育の目的を達成する教科の実践的指導力を育成する中等学校教員養成家庭科カリキュラム」と「架橋領域としての教科内容学」の構築を検討した。
  • 入川 義克, 杉野本 勇気, 岩崎 秀樹
    原稿種別: 本文
    2012 年 35 巻 2 号 p. 31-40
    発行日: 2012/09/30
    公開日: 2018/05/09
    ジャーナル フリー
    教師の質保証は,これからの日本の教育を考える上で,学校種を問わない喫緊の解決課題といってよい。学校教育の焦点が,学校教育法に示されているように教科主義から能力主義へシフトするとき,教員養成に関する学部教育そのものの体質の改善と大学院における教職を高度にするプログラムの構想そして両者の連携は不可欠となる。本稿では,この課題に対して広島大学教育学部と教育学研究科の教員養成をモデルにし,平成22年に入学した学生から年次進行で4年次に開設される「教職実践演習」の内容と方法に触れながら,学部レベルでの資質能力を規定し,教員養成の修士レベル化に向けた具体的提案を行うことで,これに応えようとするものである。
  • 有本 昌弘, 山本 佐江, 新川 壮光
    原稿種別: 本文
    2012 年 35 巻 2 号 p. 41-51
    発行日: 2012/09/30
    公開日: 2018/05/09
    ジャーナル フリー
    アセスメントは,トロイの木馬(脅威・火種)といわれ,教育方法,心理学,教科教育にまたがるより広い問題に焦点化してきている。近年のグローバル化の中で「学びの学習力(L2L:Learning to learn)」は避けて通れないものとなってきており,教員養成に際し教科教育とアセスメントとのつながりを学びを創り出すという観点から吟味し掘り下げた。1)ボトムアップでのかつての取り組みは,暗黙知と関わるクライテリアの概念をもとに担い手として学びを創り出すということが主張され,各教科での形成的アセスメントが学校全体で取り組まれるという新しい方向に姿を変えていること,2)新たな提案は今日英国での強力なプロジェクトとして進展をとげており,対して,国内では特にボトムアップの環境ではアセスメントに意を払うことなく暗黙知として実践され,教育方法,アセスメントなど教科教育の要素とアラインメントしていくことにより教師をエンパワーすること,がわかった。教員養成におけるコア・カリキュラムへの教員のアセスメント・リテラシー導入の必要性が論じられる。
  • 岡崎 正和, 岩崎 秀樹, 影山 和也, 和田 信哉
    原稿種別: 本文
    2012 年 35 巻 2 号 p. 53-62
    発行日: 2012/09/30
    公開日: 2018/05/09
    ジャーナル フリー
    本研究の一連の目的は,算数から数学への移行という視座から,子どもの図形認識が発展し,証明に繋がる端緒を明らかにすることであり,本稿では図形の論理的・関係的性質の理解の前提になると考えられる図形の動的な見方の構造を明らかにすることを目的とした。その為に,我々がこれまでに同定してきた図形の動的な見方を単純な文の組み合わせとして表し,隠喩,換喩,提喩を用いて特徴付け,それらの複合性について分析した。その結果,動的な見方は次の5つに集約されることが分かった:視覚的類似性に基づく図形の変形,図形全体の動きを点の動きで捉える,不変性を意識化する,可逆的な見方,不変性と変数性の同時的意識化。また,これらを比喩的認識の複合性の視点から分析した結果,図形の動的な見方は階層的に整理され得ることが示唆された。
  • 初 相娟, 玉岡 賀津雄, 大和 祐子
    原稿種別: 本文
    2012 年 35 巻 2 号 p. 63-72
    発行日: 2012/09/30
    公開日: 2018/05/09
    ジャーナル フリー
    本研究は中国語を母語とする日本語学習歴4ヵ月の初級日本語学習者を対象にして,テ形習得が項目学習か規則学習かについて検討した。中国で使用される教科書内の動詞から15,教科書外から15,無意味語(適当に動詞らしい無意味語を作成)を15,新語を9つ選んで(合計54の動詞)テ形書き込みテストを作成した。これらの動詞について,新語の9つを除いて,「いて・いで系」,「して系」,「って系」,「て系」,「んで系」が教科書内,教科書外,無意味語で各3問(テ形変化形ごとに各9つで,9×5=45の動詞)となるようにした。教科書外(87.20%),無意味語(88.00%),新語(86.44%)でも85%以上の正答率で,4ヵ月の学習でもテ形の活用形がよく習得されていたことから,基本的に規則学習が進んでいることが分かった。それに加えて,教科書内の動詞(90.33%)が他の動詞群よりも有意に高いことから,語彙項目の学習の影響も見られた。しかし,無意味語と比べて2.33%の違いでしかないので,規則学習に比べて語彙項目の学習の効果は比較的弱いと言えよう。さらに,これらの分類ごとの動詞のテ形習得が総合的な文法能力の促進にどう貢献するかも検討した。
  • 上之園 哲也, 森山 潤
    原稿種別: 本文
    2012 年 35 巻 2 号 p. 73-80
    発行日: 2012/09/30
    公開日: 2018/05/09
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,中学校技術・家庭科技術分野(以下,技術科)において生徒の生活応用力の育成に効果的な実践形態を明らかにすることである。兵庫県及び滋賀県の公立中学校7校の3年生計761名(男子391名,女子370名)を対象に「技術科教育における問題解決経験尺度」(Moriyama.et.al 2002)及び「技術科教育における学習経験の生活応用力尺度」(上之園・森山2010)を用いて質問紙による調査を実施した。また,各調査対象校の技術科担当教員7名に対して題材設定,指導意図などについて対面でのインタビューを行った。調査後,各校の生徒の反応に基づいてクラスタ分析を行った結果,7校の調査対象校が4群に分類された。これら4群の実践形態を題材設定,指導意図などの特徴と生徒の問題解決的な学習経験の状況から解釈した。その結果,これらの4群は題材設定において個別課題重視-共通課題重視,指導意図においてプロセス重視-プロダクト重視の2軸で類型化された。このうち,個別課題-プロセス重視型において生活応用力尺度の平均値が最も高く,この実践形態が生活応用力の育成に効果的であることが示唆された。
  • 中須賀 巧
    原稿種別: 本文
    2012 年 35 巻 2 号 p. 81-90
    発行日: 2012/09/30
    公開日: 2018/05/09
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,体育授業における成績雰囲気を強調した授業は自我志向性を介して生徒の競争心に与える影響について検討することであった。参加者は,1263名の中学生(男子612名,女子651名)。調査内容は,体育における動機づけ雰囲気測定尺度,目標志向性尺度,多面的競争心尺度を用いた。構成した仮説モデルに対して多母集団同時分析を行なった結果,男子及び女子において両集団のモデルの適合度は,すべての指標において適合が良いと判断された。本研究の結果において特に注目されたい点は,男女ともに成績雰囲気が自我志向性に正の影響を持ち,その自我志向性が手段型競争心及び負けず嫌いに正の影響を持っていた点と成績雰囲気が競争回避に正の影響を持っていた点である。このことから,成績雰囲気が強調された授業の競争は,単に勝敗を決定するものではなく,競争を自己成長の手段として捉えていることが示唆された。同時に,成績雰囲気を強調した授業では,生徒が競争に対して脅威を感じる可能性があることも示唆された。
  • 岡田 みゆき, 土岐 圭佑
    原稿種別: 本文
    2012 年 35 巻 2 号 p. 91-98
    発行日: 2012/09/30
    公開日: 2018/05/09
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,大学生の食生活の実態並びに,その実態と家庭環境あるいは家庭科教育との関連性を明らかにすることである。565名の大学生を対象にアンケート調査を行った。調査の結果,学生がよく行っている食行動は,調理器具を清潔にし,食品を適切に保存するであった。直接,自分で三食食事を作るや栄養のバランスを考えて食事を作るは,頻繁には行われていなかった。そして,「家庭科への関心」,「基本的知識」,「実践的知識」,「家庭環境」がこれら食行動の関連要因として挙げられた。特に,家庭からの影響の方が,家庭科教育よりも大きいことがわかった。また,家庭科への関心は,大学生の食生活実態に直接影響を及ぼすこともわかった。ただし,家庭科で学んだ知識や技能については,大学生の食生活に間接的に影響を及ぼすだけであった。
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