日本教科教育学会誌
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35 巻, 3 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 藤居 真路
    原稿種別: 本文
    2012 年 35 巻 3 号 p. 1-12
    発行日: 2012/12/25
    公開日: 2018/05/09
    ジャーナル フリー
    英語学習は,他教科と導入時期が異なるために動機づけ発達の特異性が指摘されてきた。本研究は,英語学習における自己決定動機づけの発達的変化について構造と特徴を明らかにすることにより教育的示唆を得ることを目的とした。小学5年から高校2年までの725名に動機づけと家庭学習時間に関する質問紙調査を実施し,Lens & Vansteenkiste(2008)の2因子仮説に基づいて動機づけの構造の発達的変化を調べるとともに,動機づけの種類と英語学習時間との関係を発達的に調べた。その結果,動機づけの種類によって発達パターンが異なることがわかった。また,動機づけの構造は発達的に変化しないが,家庭学習に関与する動機づけの種類は学年進行にともない内面化とは逆方向で変化していくことがわかった。このことから,Deci & Ryan(1985)らが主張する内面化(外発的動機づけから内発的動機づけに動機づけが変化する過程)が行動や態度を変化させると考えるよりも,動機づけの種類が変化しないままで行動や態度への影響力を変化させる場合があることが明らかになった。また,動機づけの研究及び教育実践において発達的視点の必要性が示唆された。
  • 間處 耕吉, 磯崎 哲夫, 林 武広
    原稿種別: 本文
    2012 年 35 巻 3 号 p. 13-21
    発行日: 2012/12/25
    公開日: 2018/05/09
    ジャーナル フリー
    中学校理科の学習指導を進めるにあたり,生徒が主体的に学習内容をまとめるノートを作成する指導を継続的に行った。生徒が作成したノートを詳細に分析したところ,継続的な指導によりノートのまとめ方に質的な変化が現れること,併せて生徒の学習到達度に特徴的な変化が現れたことが分かった。そこで,ノートの質的な変化を評価し学習到達度との相関を調べたところ,ノートの質的評価と学習到達度には相関関係があることが見いだされた。また,ノートの質的評価と学習到達度の関係について詳しく検討するため理科学習に関わる様々な要素の評価との相関を調べたところ,特に定期テストやレポートの考察の評価との間に相関が認められた。
  • 和田 一郎, 小野瀬 倫也, 森本 信也
    原稿種別: 本文
    2012 年 35 巻 3 号 p. 23-34
    発行日: 2012/12/25
    公開日: 2018/05/09
    ジャーナル フリー
    本研究では,今後の理科授業において重視される自己調整学習の成立に関して,その過程を認知的な側面から精査し,具体的な教授論的視点を導出することを目的とした。具体的には,Zimmerman,B.J.らが提起する社会的認知論をグランド・セオリーとする自己調整の発達モデルに着目し,これと子どもの科学概念構築に関わる表象機能との相互連関について分析した。さらに,Cole,M.が指摘する社会的相互作用に関する現代的アプローチから,理科における自己調整学習の促進に向けた具体的な教授論的視点を導出した。その上で,中学校理科の授業を事例に自己調整学習の成立過程を分析し,導出した教授論的視点の有用性について検証した。結果として,自己調整の発達と科学概念構築に関わる表象機能の高次化の相互連関過程が明確化された。また,それは教師が時宜を得た足場づくりと,協同行為過程を通じて,一層活性化されることが明らかとなった。
  • 猫田 和明
    原稿種別: 本文
    2012 年 35 巻 3 号 p. 35-44
    発行日: 2012/12/25
    公開日: 2018/05/09
    ジャーナル フリー
    「4段階モデル」とは,オランダの小学校教員養成課程における英語科教育法のモジュールで広く普及している言語教授モデルである。4段階は,(1)「イントロダクション」,(2)「インプット」,(3)「練習」,(4)「応用」から成っており,学習者の実態に応じて各要素を組み合わせ,単元を通して徐々に後の段階に進んでいく。教育環境が異なるため,オランダの事例を日本の外国語活動にそのまま転用することはできないが,このような段階的な指導のイメージを持っておくことは単元づくりの指針となる。本稿では,各段階における活動を日本の外国語活動の文脈で捉え直すことを通して,外国語活動でよく用いられるクイズ,ゲーム,コミュニケーション活動等が場当たり的に行われるのではなく,明確な目的をもって適切に選択・配列されるための基盤を提供したい。
  • 藤井 浩樹, 河島 享子
    原稿種別: 本文
    2012 年 35 巻 3 号 p. 45-53
    発行日: 2012/12/25
    公開日: 2018/05/09
    ジャーナル フリー
    小学校3年生を対象に,共生についての理解を図るための授業を開発・試行し,その理解の実態を捉えた。授業の主題は「カブトムシのすめる森づくり」であり,総合的な学習の時間と理科において,カブトムシの飼育と学校周辺の森の整備を行った。試行の後,調査をした結果,以下のことがわかった。(1)森の生物種間の共生,並びに人と森の生物種の間の共生の双方の観点において,共生についての理解を示した児童はおよそ4割以下であった。(2)児童の示した共生についての理解は,生物が相互に関係している,結びついているという「関係」を中心としたものであった。(3)児童の示した生物の「関係」についての理解は,森の生物種間ではカブトムシとドングリの木といった2種の関係,また,人と森の生物種の間では人,動物,植物の三者の関係であった。生物の「関係」を中心に,小学生に共生についての理解を図りうる可能性があることが示唆された。そして,このことに目的的体験と直接体験が関与していることが考えられた。
  • 向 平和, 隅田 学, 福山 隆雄, 大橋 淳史, 日詰 雅博, 佐野 栄
    原稿種別: 本文
    2012 年 35 巻 3 号 p. 55-64
    発行日: 2012/12/25
    公開日: 2018/05/09
    ジャーナル フリー
    本稿は,愛媛大学教育学部において実施した「理科観察実験体験プログラム」の報告である。本プログラムは平成20年に公示された小学校学習指導要領に対応できる教員を養成するために,小学校理科で取り扱う観察・実験を網羅的に体験するプログラムである。さらに本プログラムは,小学校教員を目指す学生であれば,学部学科を問わず,参加を認めるものとした。参加学生は延べ人数で約800名であり,教育学部のみならず,理学部,農学部などの他学部の学生も参加した。本プログラムの実施により,参加学生は観察・実験に対する基礎的な知識や技能を高めることができた。また,本プログラムは単位認定を行わない自由参加の形式で実施し,70%以上の参加学生には修了証を発行した。このような運営方式は,単位の実質化や教職科目の充実を伴う小学校教員養成のカリキュラムにおいては,理科教育の充実の一つの解決策として提言できると考える。
  • 藤田 太郎
    原稿種別: 本文
    2012 年 35 巻 3 号 p. 71-79
    発行日: 2012/12/25
    公開日: 2018/05/09
    ジャーナル フリー
    本稿では,英国の数学教育研究の現状,教員養成教育,そして,数学教育研究と教員養成教育の関係及び課題について報告する。現在の英国の数学教育研究は「数学教育に関する事象を理論的及び実証的に検証し,新たな知識及び知見を導き出す」性格が強い。「実践」への提言は意識されているものの,必ずしも「研究」が実践に反映されているわけではない。一方で教員養成教育において教官及び学生は様々な形で数学教育学に関わるが,ここでも「研究」と「実践」の乖離が存在し,両者の溝を埋めることが課題である。
  • 齊藤 英介
    原稿種別: 本文
    2012 年 35 巻 3 号 p. 81-86
    発行日: 2012/12/25
    公開日: 2018/05/09
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,シンガポール唯一の教員養成機関である国立教育学院(NIE)の教科教育担当者の研究関心に着目し,キーワードの分類を行い,彼らの研究関心の傾向を把握することである。分析の結果,彼らの研究関心は高い実践志向を有していることが示された。教育方法やカリキュラムに関する関心が高く,「何をどう教えるのか」という点について検討する傾向にある。子どもの学習に関する関心も高く,「子どもはどう理解しているか」という分析に興味を示している。しかし,これらの研究が,同国国内の教育実践の変容にどれほどの影響を与えてきたかは疑問が残る。また研究の背後には統制的な教育観があるとも思われ,教科教育研究者がこの教育観を再検討できるか,注視が必要である。
  • 井上 典之
    原稿種別: 本文
    2012 年 35 巻 3 号 p. 87-94
    発行日: 2012/12/25
    公開日: 2018/05/09
    ジャーナル フリー
    本稿ではアメリカにおける教師教育を捉える上で重要であると考えられるいくつかの動向を紹介し,そこからアメリカの教師教育の指向性を捉えることで今後の教育研究や教師教育のあり方を考察する。アメリカの教師教育では時代のどの時点を取ってみてもダイナミックに変化し社会の様々なニーズに適応するための模索が常に行われている。本稿ではそれを現在という時間軸の一点でその指向性を探り,アメリカの教育における構造的な問題点や文化的な課題をとらえることで,そこから得られる今後の教育研究,教師教育,教科教育のあり方について考察したものである。
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