本稿では,批評理論を活用して文学テクストを読み批評文を作成する概念型カリキュラムの提案と検証を目的とした。高校1年生を対象に,読者反応批評,原型批評,ポストコロニアル批評を各学期段階的に導入した結果,学習者の読みや読みへの意識は,テクストの主体化から構造分析,世界観分析へと発展的に拡張することが確認された。同時に,批評文作成に対してもより論証的かつ豊かな読みを描いた文章を目指す意識がうかがわれた。
本研究は,校種間連携における総合的な学習(探究)の時間を指導する教員の意識を分析し,異校種の教員が連携する際の特徴を明らかにすることを目的とした。C町の小学校・中学校・高等学校に勤務する教員6名を対象にインタビュー調査を実施し,M-GTAを用いて分析を行った。その結果,ファシリテーターの役割と日常的な交流が連携の成功に極めて重要であることが示された。ファシリテーターは,連携の方向性を定め,役割分担を明確化し,校種間の調整役として効率的な進行を支えつつ,連携を促進させる役割を担っていることが明らかになった。また,ICT機器の活用,柔軟なカリキュラム,打ち合わせの充実が連携を効果的に進めるための重要な要件であることが確認された。しかし,ファシリテーターの選定基準やその負担に関する問題も浮き彫りとなり,これらの解決が今後の重要な課題である。
近年,国語教育学における文学的文章教材の学習指導論においては,「語り」に目を向けた読みを行う学習が広がりつつある。しかしながら,それは「視点論」としての議論にとどまっているという指摘があり,物語行為としての作為性を俎上に載せた実践の必要性やその指導方法の積み上げが課題として指摘されている。これを踏まえ本稿では,「語り」における物語行為としての作為性に目を向けた読みを行うための導入としての学習開発を行い,そこで構想した学習を実践し,その価値を検討することを目的とした。このとき,小学校五年生を対象として,「注文の多い料理店」と『聴耳草紙』所収の人喰い猫民話との比較を行うことで物語行為としての作為性を考える単元を開発し,実践した成果を検討した。結果,学習者は「注文の多い料理店」の物語行為としての作為性について,特に登場人物の配置という側面に目を向けた読みを一定程度展開した。
本研究の目的は大学生が統計学のシラバスを参照したときに,学習内容の有用性について考える利用価値介入を行ったり,過去の受講者の情報を与えコストを削減する介入を行ったりすることによって統計学への動機づけが変化するのかを検証することであった。大学生138名を対照群と利用価値介入群,利用価値・コスト併用群に分けweb実験により統計学への動機づけについて比較した。その結果,利用価値・コスト併用群は利用価値介入群よりも期待や学習意図が高い傾向にあった。よって,有用性について考えるだけではなく,コストを下げる情報を与えることが学習初期の動機づけの向上において有効である可能性が示唆された。一方で,コストや知能観をはじめ,他の変数においては変化がみられなかった。今後は他の介入方法を模索したり,実践の場面で介入の効果を検証したりすることが望まれる。
本研究の目的は,小学校理科授業における教室で生起する相互作用の中で児童がどのように疑問を生成し,変容させていくのかその過程を明らかにするとともに,変容させていく過程において教師がどのような支援を行っているのかを明らかにすることである。小学4年生1クラスを対象に,学級全体で取り組む問題設定場面に該当する1時間の中で生成した教室談話と児童のノート記述を分析した。ヴィゴツキーの生活的概念と科学的概念を取り上げて,生成された談話とノート記述を分類したところ,児童は生活経験を基にした既有知識を交流することで,生活的概念に基づく考えを経て,科学的概念に基づく問いを生成するという変容過程をたどっていた。そして,問いに変容することができた児童は,教師の指導計画の充実や談話への介入等の支援を受けながら友達の談話を自身の思考へ反映させていることがうかがえた。
本研究の目的は,大学の英語の授業において,つぶやき読みを用いた読解訓練を行う際に,思考内容の言語化を伴う場合と伴わない場合のどちらの方が,学習者の読解力の向上により効果があるかを検証することである。研究対象は,私立大学に在籍する1年生62名である。調査の結果,思考内容の言語化を伴うつぶやき読みは,言語化を伴わない場合と同程度に読解力の向上に効果があることが示された。しかし,両者の効果については,統計的に有意な差は確認されなかった。この結果から,思考内容の言語化を伴うつぶやき読みは,学習直後の英文をつぶやくことで,思考内容が限定されていたにもかかわらず,それを声に出して表現する必要があったために,注意の焦点が思考内容の産出に集中した可能性が考えられる。その結果として,思考内容の言語化を伴わないつぶやき読み以上に文章理解を促進する効果が得られなかったと推察される。
本研究では,生徒が検討した健康課題に対する解決策を実践し,その成果を身をもって証明する「私のカラダ記録」を活用した保健の家庭学習が生徒の生活習慣に及ぼす影響について検証することを目的とした。2023年2月から10月に,X中学校の1年生74名,2年生50名,3年生71名,Y高等学校の1年生118名,Z高等学校の2年生90名を対象として,生活習慣に関するアンケート調査を実施した。その結果,「私のカラダ記録」は,中学1年生から高校1年生の生活習慣を改善し得ることが明らかとなった。この要因として,生徒が保健の授業で学習した内容を実生活に落とし込めたこと,自身の実践を「私のカラダ記録」として記録を取ったことが挙げられた。一方,高校2年生には好ましい影響を及ぼすことができなかった。この要因として,高校2年生は受験や対人関係等のストレスが原因で,生活習慣の確立・改善が困難な時期であることが挙げられた。
「今後のグローバル経済・社会におけるアメリカの発展に寄与しうる人材の育成」のため,「21世紀の学びのフレームワーク」が今世紀初頭に提示された。アメリカの家庭科ナショナルスタンダード及び同教科書は「21世紀の学びのフレームワーク」や「21世紀型スキル」に挙げられた能力・スキルの育成と共に,学校家庭クラブ(FCCLA)との連携を示唆している。分析対象の家庭科教科書は,家庭科学習を通して育成する能力・スキルをFCCLAの実践活動例と共に記述している。そこで本研究は分析対象の家庭科教科書に記載された実践例「FCCLA活動とのつながり」で育成が期待される能力・スキルを「21世紀の学びのフレームワーク」に基いて整理・分析した。その結果,FCCLA活動によって,生徒のテクノロジースキル,金融リテラシースキル等の能力が培われることがねらいとされていた。FCCLA機関誌の事例では,生徒のキャリア形成に必要なスキル育成がFCCLA活動の実践目標に掲げられていた。