日本サンゴ礁学会誌
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2004 巻, 6 号
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  • 鳥取 海峰, 長尾 正之, 森本 直子, 井上 麻夕里, 岩瀬 晃啓, 渋野 拓郎, 藤岡 義三, 大葉 英雄, 菅 浩伸, 鈴木 淳
    2004 年 2004 巻 6 号 p. 1-19
    発行日: 2004/12/30
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    石垣島東海岸3地域と石西礁湖内のシモビシにおいて、堆積物とその礁内海水の濁度への影響を調査した。堆積物中の細粒物質の定量には、大見謝 (1987) の底質中懸濁物質含量簡易測定法 (SPSS測定法) を用いた。宮良川などが流入する宮良湾のサンゴ礁の礁池の一部と水路部分、轟川河口から北側の海岸部にSPSS値の高い海域が見出された。一方、河川の影響が少ない安良崎、白保、シモビシでは全体的にSPSS値が低かった。サンゴ礁海水の濁度には、大局的にSPSS値との有意な相関関係が認められ、礁内での海水の濁度の成因が堆積物中の細粒物質の再懸濁であることが示唆された。SPSS測定法の定量精度は、簡易携帯型の濁度計を用いることで精度が向上した。この方法は、簡易環境調査のみならず、環境の悪化したサンゴ礁で重要なサンゴと藻類の競争現象に影響していると考えられる水中光環境の研究にも応用しうる可能性を有している。
  • 秦 浩司, 工藤 節子, 村本 明子, 野崎 健, 加藤 健, 根岸 明, 斎藤 紘史, 山野 博哉, 渡邉 敦, 茅根 創
    2004 年 2004 巻 6 号 p. 21-42
    発行日: 2004/12/30
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    pHと二酸化炭素分圧 (pCO2) の連続測定をサンゴ礁の群集代謝の見積もりに適用することを検討した。pHとpCO2は、炭酸系の4つの測定可能パラメータ (pH, pCO2, 全アルカリ度 (TA)、全炭酸 (TIC)) のうち、連続測定が可能である。
    pHとpCO2の測定から算出されるTAとTICは直接測定と比べて誤差が大きいが、連続測定から得られる高時間分解データを最小二乗法で処理することにより、炭酸系成分の変化率を精度よく算出することが可能である。無機炭素生産速度 (石灰化・溶解) の見積もりはTAの初期値を用いた新しい計算式を用いることにより、また、有機炭素生産速度 (光合成・呼吸) の見積もりは計算式の単純化により、誤差が減少することが示された。シミュレーションによる検討では、pH (測定精度±0.005unit) とpCO2 (±2μatm) を1分間隔で1時間計測すれば、石灰化速度と光合成速度の見積もり誤差は海水1kg、1時間あたり5μmol以下となり、計測初期・終了時にTA (±4μmol kg-1)とTIC (±2μmol kg-1) を直接測定して得られる見積もりの誤差とほぼ同等になる。
    実際に石垣島白保サンゴの群集生産をpHとpCO2の連続測定から見積もったところ、TAとTICの直接測定からの見積もりと良く一致することが確認された。
    これらの理論と実践から、pHとpCO2の連続測定法が、サンゴ礁の群集代謝の見積もりに適用可能であることが示された。
  • 中居 正臣, 中村 洋平, 佐野 光彦, 黒倉 寿
    2004 年 2004 巻 6 号 p. 43-46
    発行日: 2004/12/30
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    琉球諸島西表島において, 1998年から2001年の5-9月に採集した104個体を用いて, ニジハタ稚魚の食性を明らかにした。31個体が空胃であり, 採集した全個体の胃内容物重量指数は, 0.94と低い値を示した。稚魚の最も主要な餌生物は魚類とエビ類であり, 全胃内容物体積に占める割合は46.4%であった。さらに, 本種の主要な餌生物は, 成長に伴う明確な変化を示さなかった。
  • 1998年の白化現象翌年の有性生殖による加入
    林原 毅, 清水 弘文, 玉城 泉也, 西濱 士郎, 皆川 恵
    2004 年 2004 巻 6 号 p. 47-51
    発行日: 2004/12/30
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    石垣島浦底湾に1998年10月に設置した人工礁には、2002年夏の時点で多数のミドリイシ属サンゴの幼群体が成長していた。幼群体の固着部の長径には、55mmと15mmにモードがあり、大きい方のモードに対応する幼群体は、99年の繁殖期に生じた幼生の加入によってもたらされたと考えられた。
    1998年の異常な高水温は南西諸島の広範囲に及んでいたことから、幼生の供給源となった群集も強いストレス下にあったことが推測される。こうしたストレスは、生き残ったサンゴの繁殖能力に深刻な影響を及ぼしていることが報告され、加入レベルの低下が懸念されたが、そのような悪影響は予想されていたよりも限定的であったと推察された。
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