pHと二酸化炭素分圧 (
pCO
2) の連続測定をサンゴ礁の群集代謝の見積もりに適用することを検討した。pHと
pCO
2は、炭酸系の4つの測定可能パラメータ (pH,
pCO
2, 全アルカリ度 (TA)、全炭酸 (TIC)) のうち、連続測定が可能である。
pHと
pCO
2の測定から算出されるTAとTICは直接測定と比べて誤差が大きいが、連続測定から得られる高時間分解データを最小二乗法で処理することにより、炭酸系成分の変化率を精度よく算出することが可能である。無機炭素生産速度 (石灰化・溶解) の見積もりはTAの初期値を用いた新しい計算式を用いることにより、また、有機炭素生産速度 (光合成・呼吸) の見積もりは計算式の単純化により、誤差が減少することが示された。シミュレーションによる検討では、pH (測定精度±0.005unit) と
pCO
2 (±2μatm) を1分間隔で1時間計測すれば、石灰化速度と光合成速度の見積もり誤差は海水1kg、1時間あたり5μmol以下となり、計測初期・終了時にTA (±4μmol kg
-1)とTIC (±2μmol kg
-1) を直接測定して得られる見積もりの誤差とほぼ同等になる。
実際に石垣島白保サンゴの群集生産をpHと
pCO
2の連続測定から見積もったところ、TAとTICの直接測定からの見積もりと良く一致することが確認された。
これらの理論と実践から、pHと
pCO
2の連続測定法が、サンゴ礁の群集代謝の見積もりに適用可能であることが示された。
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