日本サンゴ礁学会誌
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2005 巻, 7 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 田中 淳一, 吉田 匠, Yehuda Benayahu
    2005 年 2005 巻 7 号 p. 1-9
    発行日: 2005/12/15
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    琉球列島で収集した Sarcophyton 属のソフトコーラル9種279個体に含まれるセンブレン型ジテルペンの多様性を調査した。形態的な種の同定の後に、各個体の主成分をHPLC, NMR等を使用して検討した。形態的に区別困難な S. glaucum および S. cinereum は最も出現頻度が高く、含有成分においても最も多様であった。S. trocheliophorumS. ehrenbergi は出現個体数および成分の多様性の点から中程度で、残りの種は出現頻度が低く含有成分も限られているようであった。今回の調査の過程で見出した新規化合物 (7,12) についてその構造を報告する。
  • Mohamed Ismail, 土屋 誠
    2005 年 2005 巻 7 号 p. 11-22
    発行日: 2005/12/15
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    パリカメノコキクメイシ、フカアナハマサンゴ、トゲシコロサンゴについて赤土の懸濁条件下での酸素消費量を室内実験によって測定した。単位表面積あたりの酸素消費量は種毎に異なり、また赤土の懸濁量によっても影響を受ける。明暗いずれの条件下でもパリカメノコキクメイシの酸素消費量が他の2種よりも多く、褐虫藻の密度が他の2種よりも高いことと何らかの関係があることが示唆された。特に暗条件下では褐虫藻の密度が高い種ほど酸素消費量が多かった。赤土の懸濁量とサンゴ類の酸素消費量の関係から考えると, 塊状のサンゴ (パリカメノコキクメイシとフカアナハマサンゴ) がコノハシコロサンゴよりも赤土の懸濁に対しては抵抗力があり、実験開始後、酸素消費量に影響が出るのが遅かった。これらの種はそのような条件に適応しやすいのではないかとも推測される。これらの結果は、今後赤土が流入し続けるような状況において、サンゴ群集が受ける攪乱やその後の変化が予測しうるものであることを示唆する。
  • 村岡 暖子, 井龍 康文, 小田原 啓, 山田 努, 佐藤 時幸
    2005 年 2005 巻 7 号 p. 23-36
    発行日: 2005/12/15
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    沖縄本島中部の真栄田岬一帯に分布する第四系は、更新統のサンゴ礁複合体堆積物である琉球層群と完新統の海岸および低地堆積物よりなり、これらは先第三系の名護層を不整合に覆う。調査地域の琉球層群はその主体を占める楚辺層と新期石灰岩に区分される。調査地域の楚辺層は4つのユニットの累重体である。最下位のユニットは主に礫岩および砂質~礫質石灰岩よりなり、その上位の2つのユニットは低海水準期の浅海相であるサンゴ石灰岩から高海水準期の沖合相である石灰藻球・Cycloclypeus-Operculina・砕屑性石灰岩へと上方深海化する整合一連のシーケンスから構成される。最上位のユニットはサンゴ石灰岩のみからなる。本層の分布高度は90mに及び、層厚は35mに達する。新期石灰岩は、調査地域の海岸部の3地点で認められ、楚辺層を不整合で覆うサンゴ石灰岩および楚辺層に由来する石灰岩の礫を含有する砕屑性石灰岩よりなる。これらの石灰岩は、いずれも層厚4m以下の小規模な岩体である。それぞれの岩体は孤立して分布しており、相互の関係は不明である。なお、ユニット2の砂質石灰岩より石灰質ナンノ化石が産出し、その年代は0.41~1.65Maである。
  • 高田 宜武, 阿部 寧, 長尾 正之, 鈴木 淳, 小林 都, 大井 理恵, 橋本 和正, 渋野 拓郎
    2005 年 2005 巻 7 号 p. 37-48
    発行日: 2005/12/15
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    サンゴ礁生態系は世界的に劣化しつつあるといわれており、陸域から流入する「赤土」等の懸濁物粒子による海水濁度の上昇が、その要因の一つとして挙げられている。そこで、サンゴ礁池における海水濁度の変動レベルとその要因を知るために、石垣島浦底湾において2年間の採水観測を行った。岸近くの突堤表層では、濁度は2.26NTUを中央値とするが、変動幅が大きく、最高値92.9NTUを記録した。サンゴの生育している湾奥 (150m沖) と湾中央部 (370m沖) では、0.58NTUと0.36NTU (それぞれ表層の中央値) となった。海水濁度の変動要因として、降雨と風向の影響を解析したところ、降雨量と濁度の相関は弱いが、北西風により濁度が上昇する傾向があった。冬期に濁度が高くなるのは、冬期に多い北よりの風の影響だといえる。浦底湾のように、河川流入の影響が小さい礁池では、風波によって底質に沈殿していた粒子が再懸濁することと、表層に発達する高濁度かつ低塩分水の吹送が、礁池内の海水濁度に大きく影響すると考えられた。
  • 三瀬 武史, 日高 道雄
    2005 年 2005 巻 7 号 p. 49-55
    発行日: 2005/12/15
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    サンゴ宿主により褐虫藻が消化されている可能性を調べるため、アザミサンゴのポリプ外壁および内壁 (ポリプ内部の胃腔に面した組織) における、正常および変性褐虫藻の頻度を調べた。ポリプの外壁の組織ではほとんどが正常な褐虫藻であるのに対し、内壁では様々な変性段階の褐虫藻が多く見られた。また、酸性環境下で蛍光を発する蛍光指示薬 LysoSensor で染色すると、ポリプ内壁の褐虫藻に強く黄色―青色の蛍光を発するものが見られた。これらの結果は、アザミサンゴポリプの内壁 (胃腔に面した組織) で宿主による褐虫藻の消化が起こっていることを強く示唆する。
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