日本サンゴ礁学会誌
Online ISSN : 1882-5710
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24 巻, 1 号
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資料
解説
  • 深見 裕伸, 野村 恵一, 目﨑 拓真, 横地 洋之
    2022 年 24 巻 1 号 p. 9-12
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/12
    ジャーナル フリー

    今回,サンゴの和名問題として,日本温帯域に特異的に生息している樹枝状の種であるエダミドリイシとヒメエダミドリイシを取り上げる。従来,エダミドリイシの学名はAcropora tumida,ヒメエダミドリイシの学名はAcropora pruinosaとされており,この2種は枝の太さの違いにより識別されていた。しかしながら,タイプ標本の観察の結果,杉原ら(2015)は,日本でこれら2種として認識されてきたものは同一種の形態変異形であり,どちらもA. pruinosaであると判断した。さらに,野村ら(2016)により, A. pruinosaの和名は,従来のヒメエダミドリイシからより古い和名であるエダミドリイシに変更された。一方,A. tumidaはタイプ標本の観察から群体形がコリンボース状であることが分かり,従来認識されていた太い枝の樹枝状ではないことが判明した。これにより,日本国内でのA. tumidaの実態は不明となったため,和名については未定となっている。現在,これらの変更の周知が不十分であるため,和名および学名の使用で混乱が見られる。そのため,本稿では改めて次の提言を行う:「日本温帯域に特異的に生息している樹枝状のミドリイシ属の種は(枝の太さに関係なく)A. pruinosaであり,和名にはエダミドリイシを用いる。A. tumidaについては国内の実態が不明であり,現在,和名はない。」

学会賞記念論文
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総説(川口奨励賞記念論文)
  • 山崎 敦子
    2022 年 24 巻 1 号 p. 29-45
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/01/31
    ジャーナル フリー

    サンゴ礁が分布する熱帯・亜熱帯域は栄養塩濃度が著しく低く,継続的な観測地点も少ないため,その挙動を理解するには未だ研究の余地がある。塊状の造礁サンゴの骨格は樹木のように年輪を形成し,その地球化学分析によって低緯度域での栄養塩挙動を高時間解像度で復元することができる。本稿では,造礁サンゴ骨格の栄養塩指標であるバリウム/カルシウム比,カドミウム/カルシウム比,リン/カルシウム比,窒素同位体比の開発の履歴とその特徴を紹介し,これまで明らかになってきたサンゴ礁への栄養塩の起源とその時空間変化をまとめた。また,先行研究による造礁サンゴの窒素同位体比分布と硝酸濃度の分布を比較した結果,亜熱帯循環の縁辺部と内側では窒素同化と窒素固定がそれぞれ盛んに起こっており,栄養塩の供給源に違いがあることがわかった。さらに造礁サンゴ骨格の窒素同位体比から明らかになった北太平洋亜熱帯循環の西側縁辺部である黒潮流域の栄養塩供給の履歴とそれに伴う沿岸環境の変動を示した。

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