入門講座「結晶学の原点を読む」の第4回目は, 超空間群の始まりとなったP.M.de Wolfの論文を取りあげました.結晶の中には格子の基本周期とは異なる非整数倍の周期を持つ構造が存在するものがあり, そのような構造は変調構造と呼ばれています.この論文の以前から変調構造の解析法はありましたが, 1981年のde Wolf, Janssen and Jannerの論文により超空間群が確立されるに及んでその構造解析法は飛躍的に発展しました.超空間群の概念の基本的な考えは, 変調構造を高次元の空間に移せば周期性のある高次元結晶と見なすことができるということです.したがって, 3次元結晶と同じように空間群を定義することができ, それに基づいて構造解析を行うことが可能であるということです.最近では変調構造の他にも, 複合結晶や準結晶と呼ばれる通常の3次元空間群では表せない対称性を持った構造が続々と発見されており, 超空間群はそれらの構造解析に必要不可欠なものとして広く使われています.本稿で取りあげた原論文では, まだ超空間群という名前は出てきませんが, その基本概念のほとんどが与えられています.今回, 初学者の方が超空間群を学ぶにあたってその入門として読めるように, 超空間群の原点とも言えるこの論文を易しく解説していただきました.
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