近年のタンパク質結晶学, 構造生物学の分野には目を見張るものがある.それは放射光の利用であったり, コンピュータの革新的な進歩であったり, 遺伝子工学・分子生物学の発展によって後押しされている.結晶構造解析を武器に構造生物学を発展させてきたが, その「結晶学」をどのようにとらえているのか, あるいはとらえていくべきなのか.今回結晶学会誌特集号を企画するにあたり, 第一線で活躍する若い研究者たちにその方向性を自由に討論していただく場を設けた.この座談会は平成14年度結晶学会年会最終日に東京で行われた.構造生物学という分野で, 今われわれはどのような問題に直面し, またそれをどのように克服し, かつ発展させていかなければならないのか, 結晶学が貢献できるところはどのようなことなのか, 年末のお忙しい時期にもかかわらず長時間の議論をしていただいた.なるべく当日の座談会の雰囲気を再現したつもりであるが, 迷惑のかかるところは割愛させていただいた.所属する研究室もそれぞれの立場もまちまちな者同士であったが, 共通していたことは, 当然のことながらまじめに将来の構造生物学の姿を想定していることであった.みんなこんなことを考えているのか, と読んでいただき, また10年後に読み返していただいて多少なりとも的中していれば, 構造生物学の特集号として成功であろう.参加者は本文中にコメントとともに顔写真を掲載させていただいた.裏方は編集幹事の野中, 神谷, 森本がつとめた.
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