日本作物学会紀事
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43 巻, 4 号
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  • 富田 豊雄, 浪岡 実, 長尾 学禧
    1974 年 43 巻 4 号 p. 469-474
    発行日: 1974/12/30
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    栽培上安全でしかも多収をもたらす品種は一般に食味が勝れないとされている. 一方, 食味が特に良いとされている品種は限られており, 倒伏し易く, 必ずしも良質米とはならない. そこで著者らは"安全・多収・良質・美味・滋養"を目標として, 味が劣るとされている多収米を化学的に診断し, 食味を向上させるための実験を実施し, 次の結果を得た. (1) 生産年次および生産地を同じうする数品種を用い, 白米の遊離アミノ酸を比較した結果, コシヒカリは抜群にグルタミン酸, アスパラギン酸を多く含んでおり, 次いでササニシキ, トヨニシキ, レイメイ, ボウネンワセの順に含量が低くなつていることが認められた. (2) 白米中にはグルコース, シュークロースおよびマルトースの3種の主な糖が含まれているが, トリプシン処理により, マルトトリオースと思われる新たな糖が遊離してくることが知られた. またマルターゼ処理により, 多量のグルコースが出現することがわかつた. そしてトリプシンとマルターゼを混合して白米に作用させても互に酵素反応を阻止しないことが認められた. (3) 白米にトリブシンを作用させると, グルタミン酸, アスバラギン酸をはじめ, アラニン, バリン, ロイシン等のアミノ酸が多量に放出され, 炊飯して官能テストを行なつた結果, 対照区に比べて食味が向上し, やわらかくなつたことが認められた. (4) プラストメーターで炊飯米の物理性を調べた結果, トリプシン処理区は対照区に比べ, 明らかに軟かさを増していることが観測され, トリプシンが米の触感にも影響をおよぼしていることが裏付けられた. 以上の結果から, 酵素を適用することにより, 米の化学性を調整し, その結果物理性にも影響をおよぼさせ, 味が劣るとされている多収性品種をさらにおいしく味わい得ることの可能性が見出された.
  • 中嶋 博, 細川 定治
    1974 年 43 巻 4 号 p. 475-481
    発行日: 1974/12/30
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    遺伝的に雄性不稔性を示す, ヒマワリ(P 21 ms)の花粉退化現象について, 稔性, 不稔性個体の種々の発育段階の葯を供試し, 組織学的な調査を行なつた. 花粉の発育段階の4分子期までは, 両稔性間にとくに明らかな差異は認められなかつた. 4分子期以後, 小胞子期にかけて, 稔性葯では, タペート剤朋包壁が消失し, 原形質が葯腔内に充満し, プラズモジューム型のタペートの行動をとり, 発育にしたがつて, 花粉粒は充実し, 完全な形となり, 葯腔内に充満していた原形質は消失する. 一方, 不稔性個体の葯では, 小胞子期になつても, タペート細胞壁が存在し, このため, タペート細胞の原形質は葯腔内に流出することなく, タペート細胞は異常に肥大して小胞子は正常な発育を示さず. 不整形のままで退化する. また, 小胞子期のタペート細胞核は, 稔性のものでは, 細胞の葯壁側に一様に片寄つて配列し, 形はいびつとなつて存在するが, 不稔性のものでは, 細胞の中心部に位置し, 大きく, 形も整つている. タペート細胞質はタンパク質の反応を示す黄色に染色され, また, 多糖類の反応を示す赤色顆粒は, 葯の発育初期の葯壁に多量に見いだされた, 組織化学的な反応は組織によつて明らかに異なつているが稔性による差異は明らかでなかつた. これらの観察結果より, このヒマワリの雄性不稔性は, タペート細胞壁の崩壊の遅延と密接に関係しており, また, タペート細胞の核の位置, および形とも, 密接に関係していると推定された.
  • 平 春枝, 平 宏和, 斉藤 正隆
    1974 年 43 巻 4 号 p. 482-492
    発行日: 1974/12/30
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    1. 大豆13品種を同一圃場で2年間にわたり栽培し, 得られた種子について粒度・品種・栽培年度の脂質含量および脂肪酸組成におよぼす影響を検討した. 2. 粒度と品種において品種が上記成分におよぼす影響は大きいが, 粒度の小粒化に伴い, 脂質・オレイン酸の低下とリノレン酸の増加が認められ, これらの傾向は, 有限伸育型品種よりも無限伸育型品種において著しく, ー方, パルミチン酸・ステアリン酸・リノール酸においては, 一部の粒度を除いて, ほとんど影響が認められなかつた. 3. 年度と品種において, 脂質・パルミチン酸・オレイン酸・リノレン酸は年度および品種の影響を受け, 特に脂質・オレイン酸・リノレン酸において年度の影響が著しく, 一方, リノール酸は品種の影響のみで年度の影響がなく, ステアリン酸は年度・品種の影響を共に受けなかつた. 4. 脂質含量と脂肪酸含有比率との相関は, パルミチン酸・オレイン酸が正の相関を1971年産において, リノレン酸が負の相関を両年度において示した. 一方, リノール酸は両年度において相関が認められなかつた. 5. 脂肪酸含有比率間の相関は, リノール酸とパルミチン酸・オレイン酸・リノレン酸, リノレン酸とオレイン酸においてそれぞれ負の, ステアリン酸とパルミチン酸・リノレン酸において正の各相関が認められた.
  • 原田 二郎, 中山 治彦
    1974 年 43 巻 4 号 p. 493-497
    発行日: 1974/12/30
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    タンニン酸はGA欠失突然変異である'短銀坊主'の第2葉鞘の内生伸長には影響しないが, GA3処理によつて誘起される伸長を阻害し, その度合はGA3濃度の100~1000倍で約50%程度であることが認められた. また, 正常種'銀坊主'の第2葉鞘の内生伸長に対しても1~1000 PPmの濃度範囲で全く影響しなかつた. 同様にタンニン酸は, 節間伸長期における'短銀坊主'のGA3処理による草丈ならびに節間長の増加を阻害するが, それらの内生伸長には全く影響がなく, '銀坊主'の場合にも 1~1000 ppmの濃度範囲で全く影響を示さなかつた. 以上の結果から, タンニン酸はGA3の吸収移行または外部より与えられたGA3が生体内で植物の作用部位に結合する過程においてGA3と拮抗するのではないかと思われる.
  • 岸 洋
    1974 年 43 巻 4 号 p. 498-504
    発行日: 1974/12/30
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    オーチャードグラスとラジノクローバーの混播草地における両草種の生育に及ぼす刈取回数の影響を検討した. そのために, 両草種の混播草地と単播草地を造成し, それぞれの草地に次の3処理区を設けた. A. 年間6回刈区(4月下旬, 5月下旬, 6月下旬, 7月下旬~8月上旬, 8月下旬~9月上旬, 10月), B. 年間4回刈区(6回刈区のうち夏期の6月下旬と7月下旬~8月上旬の2回の刈取りを省いた), C. 年間3回刈区(5月上旬, 7月下旬, 9月下旬). 混播草地では, 刈取回数が少ない場合にはクローバーが消滅し, 逆に刈取回数が多い場合にはオーチャードグラスが消滅していく傾向があつた. すなわち, 両草種の収量の年次変動は個体密度の年次変動と一致した. クローバーのほふく茎数密度は, 3回刈区では1年目の5月上旬までに, 4回刈区では2年目の6月中旬までにすべて枯死した. 一方6回刈区のほふく茎数密度は1年目の6月以後増加を始め2年目の6月には最高に達し, それ以後目立つた変化はなかつた. オーチャードグラスの株数密度は3・4回刈区では1年目に一時的に低下するものの, その後はほとんど変化しなかつた. 一方6回刈区では毎年夏期(6~7月)に急減し, 年ごとに株数密度は低下した. 単播草地では, 混播草地でみられた刈取回数の多い場合のオーチャードグラスの消滅の傾向および刈取回数の少ない場合のクローバーの消滅はみられなかつた. すなわち, クローバーのほふく茎数密度はいずれの処理区でも増加したが, その増加速度は6回刈区よりも3・4回刈区において速かつた. また, オーチャードグラスの株数密度は, 3・4回刈区では混播草地でみられたと同様に1年目には一時的に低下するものの, その後はほとんど変化しなかつた. 6回刈区では毎年夏期にわずかづつ株数密度は低下したが, 3・4回刈区に比べ株数密度は高く維持された. 混播草地と単播草地のデータは, 混播草地におけるクローバーまたはオーチャードグラスの消滅が刈取りによる直接の影響というよりは刈取りによつて導かれる両草種の競合によることを示している. 本試験にあたり, 終始親切な指導をいただいた九州大学教授・武田友四郎博士に深く謝意を表する. また, 研究遂行にあたり, かずかずの便宜と助言をいただいた大分県畜産試験場の梅津頼三郎博士に謝意を表する.
  • 岸 洋
    1974 年 43 巻 4 号 p. 505-509
    発行日: 1974/12/30
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    オーチャードグラスとラジノクローバーの混播草地における両草種の生育に及ぼす光の影響を検討した. そのため, 両草種の単播草地と混播草地を作り, それぞれ3つの刈取回数の異なる処理区を設けた. 混播草地では, 3処理区がクローバー優占からオーチャードグラス優占までの幅をもつものである. 単播草地と混播草地における収量と個体密度をそれぞれの刈取時に測定し, さらに, 混播草地では草種割合, LAI, 照度を各刈取時に10 cm間隔の高さで測定した. 得られた結果は次のとうりである. 1) 刈取間隔が長くなると, いつの季節でも, オーチャードグラスの草高は高くなつた. このオーチャードグラスの草高の伸長とそれにつづくクローバーへの光の遮へいによつて, クローバーの生育は遅延ずるばかりでなく衰退し, ほふく茎数と収量は著るしく減少した. 2) 刈取間隔が短かいと, 夏・秋期にクローバーの草高が相対的に高くなつた. このクローバーの草高が高くなることによつておこるオーチャードグラスへの光の遮へいによつて, オーチャードグラスの生育は遅延するばかりではなく衰退し, 株数と収量は著るしく減少した. 本試験にあたり, 終始親切な指導をいただいた九州大学教授・武田友四郎博士に深く謝意を表する. また, 研究遂行にあたり, かずかずの便宜と助言をいただいた大分県畜産試験場の梅津頼三郎博士に謝意を表する.
  • 正田 充慶
    1974 年 43 巻 4 号 p. 510-516
    発行日: 1974/12/30
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    Transpiration and photosynthesis in the upper and lower surfaces of fully expanded intact tobacco leaves (var. Bright Yellow) were examined in reference to the beavior and density of stomata under controlled, turning light environment. In addition, the stomatal responses in both surfaces to varying intensity were investigated. A method of measuring continuously the transpiration rates from the upper and lower surfaces of intact leaf was described. The results were as follows ; 1. The stomatal opening in the upper and lower surfaces by the alternation of light and dark were markedly different. On the upper surface, the stomata opened a little. Both the opening and closing responses of stomata to light were more sensitive on the lower side than on the upper one. 2. The time course changes of transpiration from both surfaces following the onset or close of illumination were nearly similar to those shown by the stomtatal responses. CO2 exchange, however, increased or decreased more rapidly as compared with the transpirational process. 3. It was observed that larger parts of transpiration and CO2 exchange were conducted on the lower surface, and that the rate of transpiration as well as that of CO2 exchange in both surfaces didn't corresponed to the difference of stomatal densities. Therefore, it may be quite all right to consider that their rates in both surfaces were remarkably affected by the stomatal aperture. From the observation on the relation of transpiration to stomatal aperture, it was elucidated in the lower side that transpiration rapidly rised in the range of 2.5-3.5 μ of stomatal aperture. 4. A large difference between the upper and lower leaf surfaces was recognized in the stomatal response to varying light intensity. The active stomatal opening followed by the increased light intensity was observed in the lower side. In the upper side, on the other hand, the stomatal aperture didn't increase under the condition of light intensity more than 10, 000 lx.
  • 中村 拓, 松中 昭一
    1974 年 43 巻 4 号 p. 517-522
    発行日: 1974/12/30
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    アサガオを光化学オキシダントにたいする指標植物として利用するため, 自然発生した光化学オキシダントおよび人工的に製造したオゾンガス曝露により, アサガオの品種等感受性に影響する要因を検討した. (1) アサガオ品種間の感受性は, ソライロアサガオに属するヘブンリーブルーとパーリーゲイトが最も高く, ニホンアサガオのスカーレットオハラおよびローズクィーンも高い感受性を示した. 同じくニホンアサガオであるが, わい性のキャロルレッドおよびキャロルブルー, うず性の紫獅子は感受性が低かつた. (2) 各生育段階における感受性は, 全葉数10~35葉期が高く, ごく若いか老化した時期では低下した. (3) 光化学オキジダントの被害は, 特定の葉位に発生する. すなわち, 上から数えて10~14番目の成熟した葉は感受性が高く, 展開中の若い葉および老化した葉は感受性が低かつた. (4) 施肥量が少ないと感受性が低下した. (5) 土壌水分が不足した場合も感受性が低下した. アサガオの分類について静岡大学助教授 米田芳秋氏の指導を受けた. また本研究の遂行にあたり当研究所生理第5研究室長 太田保夫氏より終始有益な指導と助言を与えられた. ここに両博士に深謝の意を表する. 本研究は昭和47年度より開始された環境庁計上の「農林水産生態系における汚染物質の循環と指標生物に関する研究」の一環として行なわれたものの一部である. 研究設定に尽力された各位に深く感謝するものである.
  • 武岡 洋治, 清水 正治, 畔柳 千枝子
    1974 年 43 巻 4 号 p. 523-530
    発行日: 1974/12/30
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    1. 水稲品種レイメイのX線突然変異系統ならびに同品種の正常系統を温室で周年栽培し, 出穂した小穂に見られる形態変化を調べて貫生形態の季節的変化を明らかにしようとした. 2. 突然変異系統で観察された主な結果は次のとおりであつた. (1) 護穎・外頴における維管束数, および穎の付加的発生は, いずれも全期を通じて著しく増加していた. (2) 雄ずいの減少傾向は全期を通じてほぼ全ての小穂で見られ, 穎の増加と際立つた対称を示していた. (3) S型貫生体は主として7月から10月に発生し, 逆にL型貫生体は1月から3月に発生して, 季節による明瞭な貫生形態の変化を示していた. (4) S型卓越期からL型卓越期へ移行する12月には, 雌性器官が増加する傾向(P型)が特に強く認められた. 3. 正常系統の小穂においても, 1月から3月には, 護穎および外穎の維管束増加, 付加的穎の増加, 雄ずいの減少と雌ずいの増加など, 低温による形態の異常が認められた. 4. 名古屋における仮の日長の年間推移と対比すると, S型貫生体は日長減少期に, L型貫生体は日長増加期にそれぞれ発生し, S型からL型への転換期即ちP型の卓越期は日長の減少期から増加期への転換期と一致しており, 貫生形態の変化が日長の推移と深い関連をもつていることを示していた. 5. P型とL型両貫生体の発生に低温による影響も加わつていることからみて, 貫生形態の変化には日長と温度の両方が関与しているものとおもわれ, 次のような図式が考えられた. (1) 適温(または高温)+短日進行条件→小穂反覆型貫生 (2) 低温+短日→雌性増強型貫生 (3) 低温+長日進行条件→栄養体型貫生 6. 時期的にみて栄養体型貫生が雌性増強的傾向の高揚期を経て卓越してくることから, 雌性増強型貫生と栄養体型貫生とは体内生理的には一連のものであり, オーキシンレベルの高まりがこのような貫生形態の変化を誘発する1要因であると考えられた. 7. 貫生発達の意義について, イネの繁殖様式の面から若干の考察が行なわれた.
  • 小川 正巳, 太田 保夫
    1974 年 43 巻 4 号 p. 531-537
    発行日: 1974/12/30
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    3-ヒドロキシ-5-メチルイソキサゾール(以下ヒドロキシイソキサゾールと略す)の作物に対する生育調節作用に関する研究の一つとして, イネ苗の冠水被害および除草剤の薬害に及ぼす影響を調ベ次の結果を得た. (1) イネの播種時にヒドロキシイソキサゾール処理を行うと, 移植後の深水および冠水被害が著しく軽減された. この被害軽減の程度は苗の地上部よりも根部において顕著であつた. また一般に, 冠水処理中にイネ苗の草丈の異常伸長が起るが, ヒドロキシイソキサゾール処理苗ではとくに冠水明区において, この異常伸長が促進された. (2) イネの播種時にヒドロキシイソキサゾール処理を行い, 移植直後に7種の除草剤をそれぞれ施用量を変えて処理した. その結果ビドロキシイソキサゾール処理苗は, DCPA, MCC・MCP, NIP, CNP およびシメトリンについて顕著な薬害軽減効果を示した. しかし, ベンチオカーブ・シメトリンおよびベンチオカーブ・CNPについては薬害軽減効果を示さなかつた. 以上のような, ヒドロキシイソキサゾールによるイネ苗の冠・深水被害および除草剤の薬害の軽減効果は主としてヒドロキシイソキサゾールによる苗の素質の向上に起因するものと推察された. 本研究を行うにあたりご指導をいただき, また本稿をとりまとめるにあたつて懇切な校閲をいただいた農業技術研究所生理遺伝部生理第1科生理第6研究室長松中昭一博士に対して深く謝意を表します.
  • 高柳 繁, 宇田川 武俊, 武田 元吉, 岩城 英夫
    1974 年 43 巻 4 号 p. 538-549
    発行日: 1974/12/30
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    複雑なシンテムの動態を明らかにする方法として注目されているシスデムダイナミックスを用いて, 作物・雑草の競争を想定した二種混合群落の生長のモデル化とシミュレーションを行つた. モデルは次の基本構造から成り立つている. 1. モデル群落は, (1)光合成による物質生産, (2)呼吸によるその消費, (3)物質の転流・分配という過程を経て, 生長を続けるものとした(図1). この過程では種間競争は光要因に関してのみ生ずると考えた. 2. 二種の植物の光競争に関しては, 群落全体を5層に分け, 層別葉面積の決定, 群落の層別平均光強度の決定, 層別の光合成速度の決定という3つのサブシステムを通じて実現することとした. 3. 層別葉面積は両種の植物の地上部乾物重・草高・群落の高さと葉面積指数および層別の葉面積密度パターン(図3)から決定した. 4. 群落内の平均光強度, 光合成速度は群落上の日射強度を一定とし, 各層における光吸収を指数関数で近似して求めた. 5. 呼吸は暗呼吸と光呼吸に分け, 暗呼吸量は植物の各器官の乾物量, 光呼吸は総光合成量に比例すると仮定した. 6. 光合成産物はいつたん乾物一時貯蔵機構に貯えられ, ここから一定の割合で葉・茎・根に分配されるものとした. シミュレーションの結果は次のようであつた. 1. 混合群落の生長モデルを用い, 100日間のシミュレーションを行なつた. モデル中の植物は陸稲とメヒシバを想定した. 2. パラメーター値と初期値を表1, 2のように設定して計算した結果と, 圃場条件で陸稲とメヒシバを交互植した時の乾物重の測定値とを比較した. メヒシバの乾物重の計算値は測定値をやや下まわつたが, 全体の生長パターンはシミュレーションと実測値で良い一致がみられた(図6). 3. モデルのバラメーターの中, 比葉面積, 呼吸係数および各器官への乾物分配率の値を変更してシミュレーションを行なつた. その結果, 両種の乾物重に対し, 計算に用いた値の範囲では, 比葉面積と乾物分配率の影響が大きく, 呼吸係数の影響は比較的小さかつた(図7~9). 4. 両種の全乾物重の初期値を変えて, (1)完全除草, (2)生育中期の除草, (3)生育初期の除草(4)無除草を想定したシミュレーションを行なつたところ(表3), モデル群落の乾物重の曲線は, 圃場試験の測定値と無除草の場合を除きよく似た曲線を示した(図10). このような結果について, モデルの改良すべき点などを考察した.
  • 長戸 一雄, 鈴木 清太, 佐渡 敏弘
    1974 年 43 巻 4 号 p. 550-556
    発行日: 1974/12/30
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    The whiteness values for hulled rice and milled rice were measured by the whiteness meter in relation to the rice quality. The values measured by the whiteness meter are propotionated to the values of light reflected by rice grains. The values for hulled rice were influenced by color of bran layer and opacity of starch-cell layer. As compared with normal grain, rusty grain and green grain showed low values according to the degree of deepness of color. White-belly grain, milky-white grain and the other grains which have chalky parts in their endosperm showed high values in proportion to the grade of opacity. Among normal grains, the values were rather low for the grains of good quality as they were more translucent than the grains of bad quality. The values for milled rice were affected by the degree of milling and the grade lof opacity of endosperm. They became higher with progress of milling. Among fully milled grains, the grains of bad quality showed higher value than the grains of good quality for the formers had somewhat opaque endosperm.
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