作物体の異なる部位における同化と転流の様相を知ることは, 作物の子実生産過程を理解するうえで重要な手掛りを与える. 本報では, ポット栽培した大豆の子実肥大初期に, 異なる葉位の葉に
14CO
2 を供与し, その同化, 転流の様相を調べ, その結果から登熟期における作物体各部位間 - 特に主茎と分枝間 - のソースーシンク関係を検討した. さらに, 莢伸長期における各部位のシンク制限(摘莢処理)の影響から, 圃場条件における各部位間のソースーシンク関係を推定した. 主茎上位葉に供与した
14C は供与節の上方にも下方にも転流したが, 分枝にはほとんど転流しなかった. 主茎下位葉に供与した
14C は供与節の上方に転流する割合は小さく, 供与節の下方の主茎, 分枝および根に転流した(第1, 2表). この事実は, 個体全体を大きくみた場合, 主茎上位節と主茎中位節とで1つの, 主茎下位節と分枝とでもう1つの, 計2つの大きなソースーシンク単位が形成されていることを示すものと考えた. 一方分枝葉に供与した
14C は主茎にはほとんど転流せず, また供与分枝以外の分枝にもほとんど転流しなかった. このことから分枝は, 同化産物の転流に関して, 主茎に対しては寄生的であるとともに, 分枝間においては相互に独立的であるとみなされた. 主茎上位節の摘莢は, 主として主茎中下位節の子実重を大幅に増加させたのに対し, 主茎下位節の摘莢は主茎上位節よりも分枝の子実重を増加させ, さらに分枝節の摘莢は主茎下位節の子実重を著しく増加させた(第3表). この結果は, 上述のソースーシンク単位の存在を裏付けるものと考えた. 同化効率は, 主茎上位葉で高く, 次いで分枝葉, 主茎下位葉の順であった.
14C 供与葉からの転流率は主茎上位葉と分枝葉で大きく, 主茎下位葉で小さかった(第4表). 葉(ソース)に対する莢(シンク)の比率は主茎下位節で小さいのに対し分枝では大きく, このことが両者の転流率の差の一因であると推察された(第5表). さらに, 主茎下位節では非同化部(主として茎)の割合が大きく, 同化された
14C は一時的にこの部位に貯蔵されて後に分枝や根に転流したことから, 主茎下位節は同化産物の一時貯蔵という機能を果しているものとみなされた.
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