形質の異なる水稲2品種を混植し, 地下部に起因する株内相互作用を追究するために, 根圏域の大きさを人為的に制限して,
15Nの追跡調査を行い, 施肥窒素が, 両品種の成熟期の器宮形成に及ぼす影響を追究した. 品種間の株内における地上部全重の割合は, TKMが82~84%, 水原が16~18%であった. なお, 両品種の器官別乾物分配率は, 水原の茎重は根圏域の大小による変動がみられなかったが, 葉身重では根圏域の大きさが小さいとTKMに比べ割合が小さく, 逆に枯死重の割合は大きかった. 各器官の窒素含有率は, 両品種とも根圏域が大きいほど高かっだが, TKMでは処理区間差が小さかったのに対して, 水原ではその差が大きかった. 品種間では, 各器官の窒素含有率は, 根圏域が小さいほどTKMは水原より高く, 根圏域が大きくなると水原の含有率が高くなった. 施肥由来の窒素(
15N)の利用率は, 基肥区では68~79%, 分げつ肥区では51~79%, 幼穂形成期施肥区では57~59%, 減数分裂期施肥区では63~78%であった. なお, 追肥由来の窒素の含有量は, 根圏域が大きく, しかも施肥時期が晩いほど多かった.
15N標識窒素含有量の品種間における割合は, TKMの基肥区では74~84%, 分げつ肥区では76~83%, 減数分裂期施肥区では80~85%となり, TKMの施肥窒素利用率は水原に比べて極めて大きかった. 施肥期を異にする
15Nの穂への分配率は, 基肥区では37~62%, 分げつ肥区では53~71%, 幼穂形成期施肥区では63~67%, 減数分裂期施肥区では54~64%となり, 根圏域が小さいと明らかにその比率が高かった.
抄録全体を表示