日本作物学会紀事
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58 巻, 2 号
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  • 池田 武
    1989 年 58 巻 2 号 p. 159-163
    発行日: 1989/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    本実験は, 稲株の切断面が楕円形をしていることに着目して行われた. まず, 2株の稲を1/2000aワグネルポットに移植する時, 株に長軸と短軸とがあることを考慮して4通りの配置をつくり, 風向および風速に対する稈の傾斜角度を, 各株の主稈に注目して検討した. 次に, 1.6m2のコンクリートポットに稲の小群落をつくり, 自然の風による稲株の倒伏程度を調べた. 結果は以下の通りであった. 1. 草丈は出穂時に約80cmで, 茎数は成熟前に約30本であった. 2. 風上側の株の主稈の傾斜角度は, 風速7m/s以上で, 第1図の配置でcとb (以下, 記号のみ)で大きく, aとdで小さく, ほぼ2群に分けられる傾向にあった. 風下側の株の主稈の傾斜角度は, aで大きく, cで小さい傾向にあった. bについては, 風上側でも風下側でも主稈の傾斜角度が大きくなる傾向にあった. 3. 株の高さと拡がりについて, 自然状態での値を100とした時, 株の高さは風速の増加につれて低くなり, 風速12.5m/sでは初期の値の約75%を示した. この時, 処理間差はほとんどみられなかった. また, 株の拡がりは, 風速の増加につれて狭まるaとd, 一度拡がって狭まるb, 拡がったままのcに分類された。 4. 小群落下の稲の倒伏程度は, 風の主方向に対して株の長軸が平行の時にもっとも大きかった.
  • 小松 典行, 津川 兵衛, 西川 欽一, 丹下 宗俊
    1989 年 58 巻 2 号 p. 164-170
    発行日: 1989/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ダイズ(Glycine max (L.) Merr.)の窒素固定能(アセチレン還元能)と収量に及ぼす栽植密度の影響を明らかにするために, 12.5, 25, 50,および100個体/m2の栽植密度条件で圃場試験を行った. 1m2当りの窒素固定能(アセチレン還元能, ARA)は, 25個体/m2以下と50個体/m2以上の密度区では際だって異なる季節的変化を示した. すなわち, 前者ではARAは結莢期付近で最高に達するという推移を示したのに対して, 後者では開花期まで急激に増大し, 以後急激に低下するという推移を示した. 密植区でのARAの低下は根粒活性(根粒1g当りのアセチレン還元能)の低下によりもたらされた. 密植するほど生育後期におけるARAの低下が著しく, 生育後期での窒素不足を招いた1要因と考えられた. このため, 節数, 莢数, および粒数は密植するほど増加したが, 100粒重および子実窒素分配比率(子実窒素含有量/同化窒素量)は密植するほど減少した. これらは過繁茂の弊害が原因と考えられ, 子実収量は励個体/m2以上の区では密植効果は認められなかった.
  • 西部 幸男, 佐藤 正人, 森 元幸, 礒田 昭弘, 中世古 公男
    1989 年 58 巻 2 号 p. 171-179
    発行日: 1989/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    1982年から1986年まで北海道農業試験場で行った生育追跡試験の4品種のデータを用い, 植物体が受光した光合成有効放射量(ΔPAR), 受光量当たりの乾物生産効率(EPAR), 受光量に関連する生長パラメータおよび塊茎生長速度を算出し, それらのパラメータと気象要因との関係について検討した. 調査期間中の受光量は1984年が最大で, 1983, 85, 86年が小さい傾向を示した. 受光量当たりの乾物生産効率(EPAR)は, 1983, 84年が大きく, 82年で小さかった. また, 積算受光量と積算全乾物重の間には1次直線的関係があったが, 年次によって直線からの偏差がみられた. 個体群生長速度(CCR)は萌芽から6月30日までの期間, ΔPAR, EPARと有意な正の相関を示した. 7月以降ではCGRはEPARと高い正の相関を示した. また, 塊茎乾物増加速度(TGR)は, 生育期間を通じてCCR, EPARと有意な正の相関を示した. 生育前半, 葉乾物増加速度(LGR)およびTGRは気温, 特に最低気温と有意な関係を示し, 比葉面積(SLA)は日射量に関係しているものと考えられた. 塊茎形成期は水分ストレスに対して敏感で, 水分ストレスが働くと塊茎乾物重割合が大きくなる傾向があった. 生育後半, 気象要因が生長パラメータに及ぼす直接的な影響は認められなかったが, 生育終盤, 積算気温が大きいほど塊茎に対する地上部乾物重割合が大きく, 積算日射量が大きいほど地上部に対する塊茎の割合が大きい傾向があった.
  • 秋田 謙司, 田中 尚道, 丹下 宗俊
    1989 年 58 巻 2 号 p. 180-185
    発行日: 1989/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水稲(品種: 日本晴)の器宮形成に及ぼす地下部の影響を追究するため, 養分供給の場である根圏域の大きさを人為的に制限し, 出穂期並びに成熟期の諸形質に及ぼす影響について調査した. さらに15Nの追跡調査により, 施肥由来の窒素の出穂期並びに成熟期における吸収と利用についても検討した. 各器官の乾物重は根圏域が大きいほど重く, 窒素含有率も高かった. 施肥由来の窒素利用効率は基肥区より追肥区で高く, 追肥区でも施肥期が遅いほど高い傾向が認められ, なお, 基肥並びに幼穂形成期の窒素利用率は, 根圏域が大きいほど高かったが, 減数分裂期の窒素利用率では, 根圏域の大小による影響はみられなかった. 出穂期における各器宮への施肥窒素の分配率は, 基肥区の葉身では根圏域が大きいほど高く, 減数分裂期施肥区では低く, 茎はこれと逆の関係がみられた. なお, 根への分配率は基肥区の方が高く, 追肥区では低かったが, 根圏域が小さいほど高い比率を示した. 成熟期には, 体内窒素は穂に集中したが, 窒素分配率は, 追肥窒素より基肥窒素の方が高かった.
  • 秋田 謙司, 田中 尚道, 丹下 宗俊
    1989 年 58 巻 2 号 p. 186-191
    発行日: 1989/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    形質の異なる水稲2品種を混植し, 地下部に起因する株内相互作用を追究するために, 根圏域の大きさを人為的に制限して, 15Nの追跡調査を行い, 施肥窒素が, 両品種の成熟期の器宮形成に及ぼす影響を追究した. 品種間の株内における地上部全重の割合は, TKMが82~84%, 水原が16~18%であった. なお, 両品種の器官別乾物分配率は, 水原の茎重は根圏域の大小による変動がみられなかったが, 葉身重では根圏域の大きさが小さいとTKMに比べ割合が小さく, 逆に枯死重の割合は大きかった. 各器官の窒素含有率は, 両品種とも根圏域が大きいほど高かっだが, TKMでは処理区間差が小さかったのに対して, 水原ではその差が大きかった. 品種間では, 各器官の窒素含有率は, 根圏域が小さいほどTKMは水原より高く, 根圏域が大きくなると水原の含有率が高くなった. 施肥由来の窒素(15N)の利用率は, 基肥区では68~79%, 分げつ肥区では51~79%, 幼穂形成期施肥区では57~59%, 減数分裂期施肥区では63~78%であった. なお, 追肥由来の窒素の含有量は, 根圏域が大きく, しかも施肥時期が晩いほど多かった. 15N標識窒素含有量の品種間における割合は, TKMの基肥区では74~84%, 分げつ肥区では76~83%, 減数分裂期施肥区では80~85%となり, TKMの施肥窒素利用率は水原に比べて極めて大きかった. 施肥期を異にする15Nの穂への分配率は, 基肥区では37~62%, 分げつ肥区では53~71%, 幼穂形成期施肥区では63~67%, 減数分裂期施肥区では54~64%となり, 根圏域が小さいと明らかにその比率が高かった.
  • 中野 寛, 渡辺 巌, 田渕 公清
    1989 年 58 巻 2 号 p. 192-197
    発行日: 1989/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    開花期窒素追肥がダイズの窒素固定能や窒素同化に及ぼす効果を調査した. さらに, 窒素追肥を行なったダイズを用い, アセチレン還元能の経時的測定を通じてダイズの窒素固定量を推定する可能性についても検討した. 重窒素(~<15>N)でラベルした窒素肥料を用い, 砂耕栽培でダイズを肥料窒素と固定窒素のみで生育させた. アセチレン還元能の経時的積分値と作物体の15N希釈率から算定した窒素固定量との比を求めた. その値, すなわち前者から後者への換算係数は1.05であった. ポットで土耕栽培したダイズでは, 開花期窒素追肥をする事によって, 根粒重と単位根粒重当りの窒素固定比活性とも低下した. しかし, 比活性は比較的早く回復し, 窒素追肥による窒素固定阻害には, 根粒重の減少の影響の方が大きかった. 前述の換算係数を用い, 開花期窒素追肥を行なったダイズの窒素固定量を推定した. 窒素追肥による窒素固定減少量はかなり大きかった. しかし, 追肥窒素吸収量は, 追肥による窒素固定減少量よりも多く, また, 両者の差は追肥量に応じて増加した. 3.82gN/個体を追肥した場合, その吸収量が1.60gN/個体であるのに対し窒素固定減少量は1.01gN/個体にとどまった. 窒素追肥量の増加に伴う窒素固定量と追肥窒素吸収量の和の増加は, 全窒素同化量の増加にほぼ見合うものであり, アセチレン還元法に基づく本定量法の有効性が窺えた.
  • 大塚 隆, 勝田 真澄, 太田 保夫, 坂 斉
    1989 年 58 巻 2 号 p. 198-203
    発行日: 1989/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    1984年から1987年の4年間にわたるイネの栽培シーズンにおいて, 低温下におけるイネの登熟におよぼすイソプロチオラン(ジイソプロピル-1, 3-ジチオラン-2-イリデンマロネート, 以下IPTと略す)の影響を調べた. 1/2,000aまたは1/5,000aワグネルポットにそれぞれ株移植や円形20粒播き1本仕立にしたイネ(品種: 日本晴またはコシヒカリ)を材料に供した. これらのポット植えにしたイネに, 出穂日または出穂前9日あるいは12日にIPT粒剤(フジワン(R), 有効成分12%)を製剤量にして200~800 g/aの割合で湛水土壌に処理した. 出穂日以降は, 自然光人工気象室または室内型人工気象室(光量710~750μmol/s/m2, 明期8h)へ入れて, 低温条件の20/13℃(昼/夜)で栽培し, 経時的に穂を採取し, 籾重を測定した. また, 止葉葉身の蒸散量と葉色についても測定した. 以上の穂相調査の結果は, 4箇年間4回の試験を通してみると, 主稈の穂の上位5本の枝梗に着生する籾および一本仕立のイネの穂の籾のいずれも, 一般的傾向として, IPT製剤処理により低温下での登熟が向上し, 出穂3週間後位までは粒重が増加し, 特に下位枝梗に位置する籾でその程度は高いことを示した. 出穂6週間後ではその差は低下した. また, 出穂4週間目の止葉蒸散量もIPT処理により高くなった. 以上のことから, IPTは, ポット栽培試験における出穂期前後処理では, イネの登熟期に作用して穂重を増大させる効果を有することが明らかとなった.
  • 中野 寛, 前田 英三
    1989 年 58 巻 2 号 p. 204-211
    発行日: 1989/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    1核期中期から後期の小胞子を含むイネ名古屋大学農学部を置床し培養した時, 花粉が脱分化し, 花粉起源カルスの誘導が可能であった。そこで, この脱分化可能な発育段階にある葯壁と花粉細胞の特徴を微細構造の面から明らかにしようとした. より未熟な1核期前期の小胞子に比べ, この時期の花粉細胞ではミトコンドリアが増加し, 粗面小胞体が発達し, 核や核小体も大きくなっていた. これは, この発育段階において, 花粉細胞の代謝活性が高まる事を示していた. また, プラスチドは, 1核期前期に見られたような釣鐘状プラスチドやデンプン粒を有する小プラスチドは消失し, 通常のプロプラスチドに変化した. また, マイクロボディが現われたのもこの時期であった. 一方, 葯壁では, この時期からタペート細胞の崩壊が始まった. 次に, 移植適期の1核期中後期を過ぎると, 花粉細胞は花粉分裂を行い, さらに栄養核細胞はデンプン粒を蓄積し貯蔵細胞にと変化し始めた. しかし, この期間, タペート細胞の方は, 移植適期に比べて微細構造面で特に変化を示さなかった. 以上の結果から, 上述のような花粉およびタペート細胞の微細構造変動のなんらかが, 葯の発育に伴う花粉細胞の葯培養条件下での脱分化能の消長と結びついている可能性があると推察された.
  • 小葉田 亨, 高見 晋一
    1989 年 58 巻 2 号 p. 212-216
    発行日: 1989/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    旱ばつに対して, 登熟期のイネがどのような葉身水ポテンシャル(LWP)および穀実生産反応を示すかは明らかにされていない. そこで, 日本型の陸稲5品種と水稲1品種(Oryza sativa L.)を用いて, 畑栽培し, 8月15日からひき続き灌漑する区と停止した区について, 出穂後における止葉葉身の日中LWPの推移と乾物生産, 穀実生産量を調べた. 断水後(8月15日), 12日以内に全ての品種が出穂した. LWPは, 在来陸稲2品種では-1.4MPaまで低下した後旱1.1MPaまで回復した. また, 改良陸稲2, 在来陸稲1品種では-1.4MPaまで低下したまま低いレベルで推移した. 水稲品種ではLWPは-1.7MPaまで低下して, その後大部分の葉身は枯死した. いずれの品種でも, 登熟期間中の日中平均LWPが低下すると, 主稈全体及び玄米の乾物増加が抑制され, 品種を込みにすると日中の平均LWPと両乾物増加量との間にはそれぞれ高い相関があった. また主稈の玄米増加量と個体当たりの粗玄米収量との間には高い相関関係があった. 従って, LWPを高く保つ能力は, 圃場における登熟期の乾物生産及び穀実生産にとって重要であり, 日本型イネの中では在来陸稲品種がそのような能力が高いとみなされる.
  • 片山 勝之, 秋田 重誠
    1989 年 58 巻 2 号 p. 217-224
    発行日: 1989/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ジベレリン処理による水稲幼苗の葉面積展開と初期生育に及ぼす影響について検討した. 日本稲3品種, 印度稲3品種を水耕し, 播種3日後, ジベレリン濃度を4処理(0.01, 0.1, 1及び10ppm)し, その10日後調査した. 結果は次のようであった. i) ジベレリン濃度を高めると, ほとんどの品種で葉と根の成長は減少したが, 葉鞘への乾物分配が高まり葉鞘の成長は増大した. ii) ジベレリン処理は, 葉鞘のシンクアクティビティを高め, さらには純同化率を高めた. このことが水稲の初期生育増加に及ぼす主要な原因の一つであった. iii) 対照区の初期生育の品種間差は, 葉面積展開能力に関係した. 一方ジベレリン処理による初期生育は葉面積ではなく純同化率の増加によった. これらのことより, ジベレリンは初期生育の品種間差を支配する主要因とは必ずしも言えなかった.
  • 和田 源七, Aragones D. V., Aragones R. C.
    1989 年 58 巻 2 号 p. 225-231
    発行日: 1989/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    品種および栽培條件の差異が水稲の窒素吸収パターンおよび吸収窒素のSink生成に対する貢献度におよぼす影響を1986年雨季作と1987年乾季作で調査した. 水稲体の窒素量の増加は生育初期には指数式(y=abx)で, 中後期には直線式(y=a+bx)で, いずれの栽培條件でも表現しうる. 両式の交点はほぼ最高分げつ期にあたる. 高栽植密度は指数式の期間を短かくし, 低栽植密度および緩効性肥料は長くした. 直線式の匂配'b'は基肥量の多小および栽植密度の高低による変化は非常に少なく, 土壌の化学的性質および窒素肥料の種類に大きく影響された. 窒素吸収の制限因子は生育初期では植物の窒素吸収能力であり, 中後期では土壌中の有機態窒素の無機化速度とみられた. SinkおよびPotential sinkは頴花分化終期および開花期の体内窒素量と正の相関関係が認められた. しかし, 体内窒素量のSinkおよびPotential sink生成に対する貢献度は品種および栽植密度によって異なる. このことは窒素吸収経過とVegetative lag phaseの長さとの関係により説明できる.
  • 岡 正明, 日向 康吉
    1989 年 58 巻 2 号 p. 232-239
    発行日: 1989/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    コンピュータ画像解析を用いて, 新・旧水稲品種の草型, すなわち葉配置及び葉角度の推定と比較ができるかどうかを検討した。現在の水稲8品種と旧い7品種を水田に生育させ, 出穂期と出穂3週間後に, 周辺個体を刈り取った孤立植物体の側画写真を撮影し, それを画像解析して, 二次元の植物体密度(葉+茎+穂の単位面積当りの密度)分布, 葉角度(葉の先端の角度)分布を求めた. 各品種はそれぞれ特徴的な植物形を示し, 横への突出の仕方によりいくつかのグループに分けられた. 更にこれらの特徴を表す数値要因を算出し, 新・旧品種で比較した. 第一に, 植物体の全体的な横への張り出し程度と高さによる凹凸程度を表す指標として, 植物体中心軸と5%密度等高線の間の距離の平均と分散を求めた. 両時期ともに, 新品種と比べ旧品種は横への張り出し程度が大きく, また凹凸程度も大きかった. 第二に, 植物体の集中程度を表す指標として, 植物体密度分布における高密度部分と低密度部分の面積割合を求めた. 新品種が集中的, 旧品種が分散的であり, 出穂後にこの差異がより明確になった. 第三に, 植物体中部・上部の平均葉角度を比較したところ, 旧品種の上部の葉は出穂後に著しく傾くことが認められた. 新品種であるコシヒカリは大部分の要因で旧品種に近い値をとった. 本実験により, 従来認められていた新品種と旧品種の草型の差異が数値的に確認されただけでなく, 更に植物体の形などの特徴が明瞭に表示できることがわかり, 本PPP法(Plant-Profile-Processing法)は水稲の葉群配置の評価に使える可能性があると考えた.
  • 佐竹 徹夫
    1989 年 58 巻 2 号 p. 240-245
    発行日: 1989/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ポットで土耕栽培のイネをファイトトロン自然光室(昼24/夜19℃)内で前歴水温(頴花分化期から小胞子初期までの水温)を変えて栽培し, 小胞子初期に冷温処理(12℃3日間)を行って耐冷性を検定した. 前歴水温の上昇(18℃から25℃の範囲で)に伴う耐冷性の向上は開花期の葯当り充実花粉数の増加と高い相関関係を示し, 充実花粉数の増加は柱頭上受粉数の増加を介して受精率の向上をひき起こした. 前歴水温の上昇による充実花粉数の増加は小胞子分化数の増加によるものであり, 分化後花粉成熟までの過程で退化および発育不全となる小胞子数は前歴水温にほとんど影響されなかった. 他方, 小胞子初期の水温上昇は発育不全小胞子数を減少させることによって充実花粉数を増加させた. 以上の結果に基づいて, 先に提唱した前歴深水灌漑および古くから唱導されてきた危険期深水灌漑から受精率向上に至るまでの因果関係を明らかにした
  • 何 光存, 木暮 秩, 鈴木 裕
    1989 年 58 巻 2 号 p. 246-252
    発行日: 1989/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水稲の登熟期に14CO2を使って米粒の生長, 同化産物の各成分への分配について実験を行った. コシヒカリを供試し, 出穂前から完熟期まで6回にわたって14CO2を作物体に取り込ませた. 標識した玄米は液体窒素で凍結割断した後, X線フィルムに密着させて露光したオートラジオグラフィによると, 標識された産物は出穂前5日には全粒に分布したが, 出穂後5日には全粒または中心部に, 出穂後11日には中心部, 18, 25日には外部に多く分布した. 玄米における各期の総放射活性は出穂後18日までは増加し, その後では低下した. 玄米を低分子物質, 水溶性多糖, デンブン, 脂質, タンパク質と細胞壁に分画して放射活性を測定したところ, 標識された同化産物はデンプンヘ最も多く分配された(78.7%)が, そのほか登熟前期には細胞壁に多く, 後期には低分子物質に多く分配されることが分かった. 各成分における放射活性のピーク時期は, 脂肪, タンパク質と細胞壁が出穂後11日, 水溶性多糖とデンプンが出穂後18日, 水溶性低分子物質が出穂後25日であった.
  • 何 光存, 木暮 秩, 鈴木 裕
    1989 年 58 巻 2 号 p. 253-259
    発行日: 1989/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    米デンプンの性質は米粒の部位によって違うことが知られている. 14Cを取り込ませた米粒の外部と内部からデンプンを分離し, それらのデンプン粒の構造及び分子成分の形成と米粒登熟との関係を検討した. 前報で得られた14C標識した玄米を湿式搗精法で外部と内部画分に分け, ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムで洗浄によりデンプンを精製した. デンプンの比放射活性は全粒としては出穂後18日目に最も高かった. これを外部と内部で比べると, 登熟前期(11日まで)には内部の方が高いが, 18日目以降では外部の方が高くなった. ゲルろ過により分離したアミロースとアミロペクチンの比放射活性は登熟前期には大差がないが, 後期にはアミロースの方が高かった. β-アミラーゼで分解の結果, 放射活性はデンプン分子内に均一に分布していることが分かった. 生デンプン粒のグルコアミラーゼで分解しにくい部分は登熟前期に, 分解しやすい部分は後期に比放射活性が高かった. また塩酸分解した部分と残った部分も比放射活性が異っていた.
  • 坂 斉
    1989 年 58 巻 2 号 p. 260-261
    発行日: 1989/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
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