日本作物学会紀事
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61 巻, 1 号
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  • 江原 宏, 土屋 幹夫, 内藤 整, 小合 龍夫
    1992 年 61 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 1992/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    比葉面積(SLA)を増大させないで葉面積当り窒素含有量(NCLA)を高め得る施肥法を指向し, 一時的に高濃度の窒素肥料を施用した場合の効果を検討した. そのため, 12~48時間の230, 1150, 2300, 4600, 11500および23000ppmの高窒素濃度処理による苗の体内窒素濃度の変化を調査するとともに, 移植直前の高窒素濃度処理が移植後の生育および収量に及ぼす影響を調査した. その結果, 2300ppm, 12時間の処理によって, 葉身の薄化拡大を伴わないでNCLAを約40%高め得ることが明確になった. また, この処理を移植直前に行った苗を基肥量の異なる土壌に移植した場合には, 少肥条件下ほど顕著に, 移植後の純同化率, 相対生長率(RGR), 相対葉面生長率が高まることが明確になった. 少肥条件とした圃場試験の結果からは, この処理の影響が品種によって異なり, 初期生育における乾物増加では5~90%の, また分げつの数の増加では10~90%の促進が認められた. しかしながら, 草丈には何れの品種にも影響がほとんど認められなかった. また, RGRの変化から, この処理は移植直後から約3週間の生育に直接影響を与えるものと推定された. さらに, 増加した分げつは有効化する低次分げつであり, 一株粒数の増加を通じて増収につながることが明確になった.
  • 江原 宏, 土屋 幹夫, 平井 儀彦, 小合 龍夫
    1992 年 61 巻 1 号 p. 10-15
    発行日: 1992/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    幼苗期における比葉面積(SLA)の培養液濃度に対する変化の品種間差異に係わる葉身内部形態上の差異を明確にするために, 葉位の進行に伴う葉身形態の変化の品種間差異, および培養液濃度の上昇に対する葉身形態変化の品種間差異を調査した. その結果, 葉身形態形成の品種間差異は少なくとも第5葉以上の葉位で顕著であることが明確になった. そして, 培養液濃度の上昇に対して葉面積当たり窒素含有量(NCLA)のみが顕著に増大し, SLAが増大し難いNNN型品種群では, NSN, NSnNおよびSSN型の品種群に比較して葉位の進行にともなう葉身長の増大程度が大であり, 維管束数および葉幅の増大は顕著に小であった. また, 養液濃度の上昇につれてSLAが増大する品種群にあっても, その中のSSN型品種群に属するDularでは, この品種群の他の品種とは異なり, 培養液濃度の上昇に対する維管束数の増加は認められなかったが, 維管束数がどの濃度においても著しく多く, 葉幅の増大に係わっているものと考えられた. そして, 培養液濃度に対する各品種群の葉幅と葉身長の変化から, NNN型品種群は葉面積の拡大を葉身長の増大に, 他の品種群は葉幅の増大に, 各々より強く依存していることが明らかになった. これらの結果から, 増肥にともなうSLAの増大は, 本来維管束数が多い品種群, および増肥による維管束数の増加が著しい品種群において顕著なことが明確になった. そして, 施肥の効果が生産機能の向上として効率よく発揮されるためには, 増肥によって維管束数が増加せず, 葉幅が拡大し難く, 葉面積の拡大を葉身長に依存し, かつ葉身が直立している特性を有することが重要であろうと推察された.
  • 土屋 幹夫, 内藤 整, 江原 宏, 小合 龍夫
    1992 年 61 巻 1 号 p. 16-21
    発行日: 1992/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    耐塩性程度の異なる水稲2品種, 耐塩性品種Kala-Rata 1-24 (KR1), 感受性品種IR28を供試し, 異なる大気湿度条件下でNaCl濃度処理を行い, 蒸散とNa+の吸収移行の関係について検討した. その結果, 地上部Na+含有率の増大は低湿度条件下ほど著しく, また, 品種間ではIR28でより著しいことが認められた. 両品種のNa+含有量が蒸散量の大小によって変化し, また蒸散流濃度係数(TSCF)が蒸散量の増大につれて低下したことから, 蒸散量の多少によってNa+の吸収移行における分離排除の効率が変化することが明確になった. また, 同じ蒸散量の場合にはIR28のTSCF値がより低く, 本来的な分離排除の効率はIR28で高いことが明らかになった. しかしながら, KR1では葉面積比率が大きく, また葉内含水率が高いこと, さらにNaCl濃度処理による気孔抵抗の増大が小さく, 蒸散速度が高く維持されることが明らかになり, 同じNaCl濃度および湿度条件下では, IR28よりも個体当りの蒸散量が多く, 相対的にTSCF値が低く維持されているものと考えられた. 以上の結果から, KR1とIR28の耐塩性程度の差異には, NaCl濃度下における蒸散速度の大小に基づく根部でのNa+の分離排除の効率の違いが関与しているものと推察された. そして, 受動的なNa+の吸収移行に対しては, 個体の水収支の環境安定性に係わる形質および蒸散に伴う分離排除機能に係わる形質が強く関与しているものと考えられた.
  • 高橋 肇, 中世古 公男
    1992 年 61 巻 1 号 p. 22-27
    発行日: 1992/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    北海道育成の新旧品種(ハルユタカ, ハルヒカリ)およびドイツ育成の品種(Selek)を供試し, 標準播種期(4月25日, 中播区)を中心に前後2週間間隔で播種し(早播区-4月11日, 晩播区-5月10日), 播種期による生育相の変動, 穂の形態形成ならびに登熟期間の乾物生産の差異から, 品種による収量性の違いについて検討した. 各品種とも播種期の遅れに伴い出芽から幼穂分化期に至る生育相Iに日数が短縮し, 全生育日数も短縮した. これに伴い, 小穂分化期間が短縮し, 小穂数が減少したことからシンク容量の減少がみられた. さらに, 登熟期後半のCGRおよびNARが著しく低下したことで, 全乾物重ならびに子実収量が減少した. ドイツ品種Selpekは, 北海道の2品種に比べ穂重型で播種期の遅れに伴う穂数の減少がみられなかった. また, 小穂分化期間が長く, 晩播に伴う小穂数の減少が小さく, さらに, 登熟期後半の老化の進行が遅く, 他の2品種よりもNAR, CGRを高く維持したことにより, 早播区に対する晩播区の子実収量の減少程度も小さく(ハルヒカリ-34%, ハルユタカ-36%, Selpek-14%), 晩播区ではSelpekが最も多収を示した(ハルヒカリ-418g・m-2, ハルユタカ-523g・m-2, Selpek-551g・m-2). 以上のことから, 北海道の晩播用品種としては穂重型品種が適することが示唆された.
  • 堀野 俊郎, 福岡 忠彦, 萩尾 高志
    1992 年 61 巻 1 号 p. 28-33
    発行日: 1992/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    イネ科, タデ科, マメ科作杓(イネ, ヒエ, アワ, キビ, 食用モロコシ, 飼料用モロコシ, ハトムギ, コムギ, オオムギ, ソバ, アズキ, インゲンマメ, ダイズ)の穀粒を供試し, 合計719点の試料について, そのN, P, K, Mg, Ca, Mnの含量を分析調査した. その結果, 東アジアで伝統的に食用として重んじられてきたイネ科およびタデ科作物の穀粒は, Mg/K化学当量比が1.5付近にあって, いずれもMgに富む品質特性を示すことを見出だした. また西アジア起源のムギ類などの穀粒はMg/K比が1.0付近にあって, KとMgがほぼ等量含まれていた. マメ科作物の穀粒はNとKにすこぶる富む点が特徴的であった. すなわち, 穀粒のK, Mg含量やMg/K比は作物種ないし品種群ごとに一定の範囲に収束する傾向を示すところから, これは遺伝的特性の影響が最も大と考察された. このほか施肥あるいは栽培条件などの差によると見られる品種内変動も観察されたが, これらの点については, さらに詳細な実験結果を待って結論を得る必要があるものと考えられた.
  • 高橋 清, Peter B. KAUFMAN
    1992 年 61 巻 1 号 p. 34-40
    発行日: 1992/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    イネの節間伸長制御機構に関する研究の一環として, 光条件下の水稲幼植物の第2節間を対象に以下の実験を行った. 供試材料は, 日本型水稲品種ササニシキおよびインド型浮稲品種 Leb Mue Nahng 111(LMN) およびHabiganj Aman VIII (HA)である. 種子を消毒後, 各種生長調節物質を含む試験液に置床し, 30℃, 連続照明条件下で14日間培養した. 結果の概要は次の通りである. (1) 日本型イネでは, ジベレリンA3(GA3)単独処理の場合, 10-3 M 程度の高濃度の処理でのみ, 第2節間の伸長が誘起された. 一方, 低濃度 GA3 (10-5 M~10-6 M) 処理はトリアジノン(TA), あるいは, アブシジン酸(ABA)+エチレン(ET), あるいはポリエチレングリコール(PEG)との共存下で, 節間伸長をもたらした. 他方, 浮稲では, 低濃度GA3 (10<-5> M~10-6 M)の単独処埋により節間が伸長した. また, 浮稲品種HAでは, GA3を含まないABA+ETの併用処理でも伸長した. (2) 第2節間の伸長に対して, GA3およびETは促進的に作用したが, ブラシノライド(BR)やベンジルアデニン(BA)は抑制的に作用した. インドール酢酸(IAA)は, 効果を示さなかった. ABAは, 品種やGA3の処理濃度によって, 促進あるいは抑制のいずれかの作用を示した. (3) 鞘葉や中茎では, BR処理による顕著な伸長促進効果が見られたが, 第2葉鞘, 第2葉身, 第2節間では, GA3による促進効果が見られた. 一方, ABAは葉鞘や葉身の顕著な伸長抑制をもたらした.
  • 平井 源一, 中山 登, 中條 博良, 稲野 藤一郎, 平野 高司, 下田 裕之, 田中 修
    1992 年 61 巻 1 号 p. 41-48
    発行日: 1992/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    長辺100m, 短辺40mの水田の約西半分(40m×40m)について, 熱赤外画像計測装置(日本電子JTG-3210型)で水稲個体群の表面温度(葉温)を夏期の高温高日射の時期に測定し, 水稲個体群の葉温分布を調べた. 測定は, 1989年7月末~8月下旬に大阪府立大学農学部附属農場で行った. 1. 供試水田上を吹く風のうち, 頻度が最も高かったのは, アスファルト舗装の道路を経て水田に直接吹き込む風(西風) と, 水田上を吹走した後に吹き込む風(東風)であった. これらの風により水稲個体群上には筋状の低温域が形成された. この筋状の低温域(以下稲の波と称す)における葉温は, 横断面の中心部が最も低く, 中心部から外側になるに従って高くなった. 稲の波の横断面中心部における葉温は, 西風では風上側から風下側になるほど低くなり, 東風では風上側と風下側との差を認めなかった. 2. 水稲個体群内に設けた5m間隔のメッシュの交点における一定時間内の平均葉温は, 西風では, 風速がほぼ1m/sec以下の場合は風下側となる水田内部が周縁部よりも高く, 風速がほぼ1m/sec以上の場合は内部が低くなった. 東風では, 風上側と風下側の葉温差は少なく, 風速の影響も小さかった. 以上のように, 水稲個体群の葉温分布は, 水田の立地条件との関連から風向および風速によって異なることが明らかになった.
  • 高橋 清
    1992 年 61 巻 1 号 p. 49-55
    発行日: 1992/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    1ポットあたり1本植えで孤立個体に近い条件で栽培した水稲品種(ササニシキ)を材料に, 穂揃後, すべての穂を切除し, 30/25℃ (昼/夜温)の自然光ファイトトロン内に搬入した. その後出現した高節位分げつが出穂を完了したあと, 以下の形質を調査した. 主茎葉数は14.8枚, 1株あたり出穂茎数23.4本, 高節位分げつ数51.0本, 総茎数74.4本であった. 主茎, 1次, 2次, 3次分げっの伸長節間数は, いずれも5±1個の範囲にあった. 分げつの総葉数は3枚から9枚まで大きな変異があった. 一方, 穂揃後の穂切除により出現した高節位分げつの調査では, 1次分げつおよび各分げつの穂首節(第1節)からの分げつ(bT 1)は認められなかった. 1茎あたり総葉数は, 次数間では差はなく, 節位が高くなるにつれて減少した. 伸長節間数は, 第2節からの分げつ(bT 2)で最も小さく, 第5節からの分げつ(bT 5)で最も大きかった. bT2とbT3では, ほぼすべての節間が伸長節間となり, 伸長節間数は葉数+1となった. 非伸長節間数(NNEI)は, 葉数や伸長節間数に比べて変異がきわめて小さかった. また, 次数間で差はなかった. bT2とbT3のNNEIは, ほぼ0であったが, bT4も半数以上が0となった. bT5では, 2次で0, 3次で1, 4次分げつで2が最も多かった. bT5でのNNEIの増大は休眠期間の増大によると推定される. 本報ではプロフィル節間を節間数から除外したが, 5mm以上伸長したものは1例もなかった.
  • 田中 典幸, 原田 二郎, 有馬 進, 栄 誠三郎
    1992 年 61 巻 1 号 p. 56-61
    発行日: 1992/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ジベレリン生合成抑制剤のイナベンフィド(商品名:セリタード)処理が水稲根群の発育に及ぼす影響を, 1989年および1990年の両年にわたって検討した. 1989年は水田で生育させた品種コシヒカリの主茎について, 1990年にはポットで生育させた品種レイホウを用い, 株当りあるいは1茎当りについて調査を行った. イナベンフィド処理によって, 草丈および稈長は著しく短くなり, 収量は増加した. 収量構成要素についてみると, 1穂籾数は減少したが, m2当り穂数, 登熟歩合および千粒重は増加した. 主茎では, イナベンフィド処理によって総冠根数が増加したが, いじけ根数も増加し, その結果, 伸長根数は減少傾向を示した. ただし, 1株当りの分枝根を含む総根長はイナベンフィド処理によって著しく増加した. また, 分枝根形成に及ぼすイナベンフィドの影響を検討した結果, 冠根長に対する分枝根長の比は高くなったが, 総根長に対する乾根重の比は低くなり, 分枝根の発達は促進される傾向が認められた. さらに, イナベンフィド処理した水稲体では総根長に対する地上部乾物重の比が高くなることが明らかとなった. 以上の結果, イナベンフィドは茎数および根群の形成, とくに分枝根の発達に影響を及ぼし, 両者の相乗効果によって1株当り総根長が増加したと考えられた. また, このことによって, イナベンフィド処理を受けた水稲体は根の比率が相対的に高い, 高収量の実現に好適な構造となっているとみられた.
  • 斎藤 邦行, 下田 博之, 石原 邦
    1992 年 61 巻 1 号 p. 62-73
    発行日: 1992/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    既報においで, 収量, 乾物生産特性の比較を行った早生, 中生水稲それぞれ2品種について, 測定した個体群構造, 吸光係数, 個葉光合成特性をもとに, 個体群光合成速度(Pg)のシミュレーションモデルを作成した. この個体群光合成モデルを用いて, 各品種の幼穂発育期, 登熟初期の光-Pg関係, および全天日射の日量(JTD)と個体群光合成の日量(Pgday)との関係を検討した. その結果, いずれの品種, 生育時期においても, 散乱光比率が小さくなるのに伴って光-Pg関係の傾きは小さくなった. また, JTDが大きくなるのに従って散乱光比率は小さくなるので, JTDが15MJ・m-2以上になるとPgdayの増加割合は小さくなった. このことから, 光条件では, 散乱光比率がPgdayすなわち乾物生産力の上限を規定していることがわかった. また, 1989年のJTDの推移を基に, 本モデルを用いて推定した個体群生長速度(CGR)の品種間の相対的関係は実測値とよく一致した. 個体群構造, 受光態勢, 個葉光合成特性を早生, 中生それぞれ2品種間で交換して個体群光合成速度を計算することにより, 乾物生産に品種間差の生じた要因を解析した. 南京11号はアキヒカリに比べ幼穂発育期には葉面積指数が大きいことによりCGRが高く, 登熟初期には個葉光合成速度が小さいことにより両品種間のCGRの相違が小さくなること;密陽23号は日本晴に比べ, 幼穂発育期には個葉の光-光合成関係の初期勾配が大きいことによりCGRが高く, 登熟初期には良好な受光態勢と, これを高いPgに結びつけられる個体群構造をもつことによりCGRが著しく高いことが明らかとなった.
  • 黒田 俊郎, 植高 智樹, 郡 健次, 熊野 誠一
    1992 年 61 巻 1 号 p. 74-79
    発行日: 1992/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ダイズにおける花器の脱落について, 花房の次位を同定しながら追跡調査を行った. 品種タチスズナリを1/2000 aワグナーポットに孤立状態で栽培したものを標準区とし, 別に開花期間中の遮光処理区も設けた. 開花から脱落まで日数の頻度分布は10日を境界として前後に大別できたので, 前者を落花, 後者を落莢とした. 標準区の落蕾・落花・落莢の割合はそれぞれ5%, 28%, 66%であった. 遮光によって花器脱落の総数は増加したが, 特に落花が顕著となった. 開花は20日あまりの期間に集中したが, 脱落は開花始期直後から成熟期まで長期に及んだ. 花房次位別の開花は低次位(0次・1次)から開始し, 順次高次位に及んだ. 脱落も次位別にこの順で始まったが, いずれの次位も成熟期まで継続的に脱落した. 開花期から成熟期までの花器脱落を花房次位別に検討した結果, I期;低次位の落花期, II期;高次位の落花期, IlI期;高次位の落花を伴った低次位落莢期, IV期;高次位の落花および低次位の落莢を伴った高次位落莢期, V期;低次位および高次位の落莢期, と推移することが明らかになった.
  • 秋田 謙司, 田中 尚道
    1992 年 61 巻 1 号 p. 80-86
    発行日: 1992/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    稚苗植水稲個体群の密度効果を明らかにするために, 栽植様式および栽植密度を変えて日本晴を標肥条件下で栽培し, 幼穂形成期, 出穂期並びに成熟期の諸形質に及ぼす影響について検討した. 栽植密度は正方形植が9~100株/m2区, 並木植が10~100株/m2の範囲であった. 草丈は幼穂形成期には正方形植では49株/m2区で最も長く, これより疎植でも密植でも短かった. しかし, 出穂期や成熟期は疎植区で長く密植区で短かった. 一方, 並木植ではいずれの生育段階においても疎植区で長く, 密植区で短かった. 単位面積当り茎数は, 幼穂形成期には正方形植は100株/m2区が最高で, 出穂期には64株/m2区が最高であった. これに対して並木植ではいずれの時期でも100株/m2が最高を示した. 単位面積当り地上部全重は, 正方形植では幼穂形成期並びに出穂期には64株/m2区が最高で, 成熟期には49株/m2区が最高であり, これより疎植でも密植でも減少した. 並木植の全重は, いずれの時期にも密植区ほど大きかった. 収量構成要素についてみると, 穂数は正方形植では64~81株/m2区, 並木植では100株/m2区が最高であった. 1穂籾数は, 密植になるほど少なかった. 登熟歩合は, 正方形植では64株/m2区, 並木植では70株/m2区が最高でこれより疎植でも密植でも低下することが認められた. 精籾千粒重と栽植密度との間に有意な相関関係が認められなかった. その結果, 面積当りの精籾重は正方形植では25株/m2区, 並木植では70~100株/m2区が高い値を示し, 最高収量を得る最適密度は栽植様式によって異なっており, 新しい栽培技術の確立はつねに品種特性や環境条件を十分理解して行われるべきものと考えられた.
  • 稲田 勝美, 松浦 朝奈, 山根 昌勝
    1992 年 61 巻 1 号 p. 87-95
    発行日: 1992/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    イネ科作物における耐乾性の種間差異を明らかにするため, ヒエ, モロコシ, パールミレットおよびトウモロコシを用いて水耕および圃場実験を行った. 水ストレス処埋は栄養成長期に12-14日間行い, 水耕実験ではポリエチレングリコール6000を水耕液に加えて最終濃度を200g/1000g (浸透ポテンシャル, -0.93MPa)とする方法, および圃場実験では灌水を停止する方法によった. 生育および葉身の水分状態の測定は, 処理開始時, 処理中および処理解除後にそれぞれ行った. 処理による乾物重の低下はパールミレットとモロコシが比較的小さく, ス卜レス解除後の回復ではモロコシとヒエが他よりも速かった. 処理区では, 水ポテンシャル(Ψ)の低下に対する浸透ポテンシャル(π)の低下が大きかったが, トウモロコシでは対照区との間に差がみられなかった. Ψおよびπの低下に伴う相対含水率の低下する順序はトウモロコシ>ヒエ>モロコシ>パールミレットであった. また, 浸透調整(OA)の大きさは, モロコシ>ヒエ>パールミレット>トウモロコシの順であった. 以上の結果から, モロコシとヒエ, 特にモロコシは高いOA能力によって, パールミレットは大きい水分保持能力によってそれぞれ乾燥に耐えるが, トウモロコシはOA能力および水分保持力が小さいためしおれ易いと結論された.
  • 沢田 壮兵
    1992 年 61 巻 1 号 p. 96-100
    発行日: 1992/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ダイズの葉形には円葉, 中間葉および長葉があり, これら3種類の葉形の分類基準を明らかにする観点から, 葉の生長で葉形が決まる時期と, 葉形の個体内および個体間変異について検討した. 「キタコマチ」(円葉), 「十育187号」(中間葉)および「イスズ」(長葉)の3品種・系統を供試した. 葉形は葉形指数(葉長/最大葉幅)で表した. 温室でポッ卜栽培した植物体と, 圃場に栽培した植物体を用いて葉形を調査した. 葉形は葉の生長の早い段階に決まった. その時期は品種・系統により異なっていたが, 葉長と葉幅がその最大値の40~60%に達した時であった. 各葉位の3小葉のうち左と右の小葉は同じ葉形を示し, 中央小葉はこれらより大きな葉形指数を示した. 個体内の各葉位における葉形指数の下位から上位への変化は品種・系統により異なった. 葉形の品種内個体間変異は円葉品種のキタコマチが最も小さく, 長葉品種のイスズが最も大きかった. 葉形指数2.6以下は円葉に, 2.6より大きい葉は長葉に分類することができると考えられた. しかし, 中間葉の多くは2.6以下であったが, 一部に2.6より大きな値をとるものもあり, さらに検討する必要がある.
  • 森田 茂紀, Suthep THONGPAE, 阿部 淳, 中元 朋実, 山崎 耕宇
    1992 年 61 巻 1 号 p. 101-106
    発行日: 1992/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    トウモロコシにおける根の分枝について, Morita & Collins (1990)が考案した「分枝指数」という指標を用いて検討を行なった. 圃場で慣行栽培したトウモロコシの根系を登熟期に採取し, 1次根の基部10cmにおける分枝程度を「分枝指数」を用いて解析した結果, 異なる節から出根した1次根の分枝程度の差を定量的に把握することができた. また, 「分枝指数」=「長さの要因」×「密度の要因」と定義されるが, 「分枝指数」の大小は「密度の要因」に比較して「長さの要因」に大きく規定されていることが推察された. さらに1次根の直径に着目して解析した結果, 「密度の要因」は2次根が出根する「場」に相当する1次根の表面積に, また「長さの要因」は1次根の表面積とは異なる要因に規定されている可能性が示唆された. なお, 分枝程度を解析する過程で, 根長測定方法の比較も行なった. 格子法による測定結果をスタンダードとすると, ルートスキャナーによる測定値は高い信頼度を示した. その他, 画像解析法は直径別の根長を測定することができるため, 非常に有用であった.
  • 菅 洋
    1992 年 61 巻 1 号 p. 107-111
    発行日: 1992/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    シソにおいて, ジベレリン生合成阻害剤を与えて誘導処理すると花蕾出現日には影響しないが, 開花日が遅延した. ジベレリン生合成阻害剤の存在下で誘導し花芽分化した茎頂部を, 栄養生長している正常な植物に接木すると, 再びジベレリン生合成阻害剤で処理したものに接木したものに比べて開花がすみやかに起こった. これらのことから, シソにおいて内生ジベレリンは花芽分化に直接関与していないが, 一旦分化した花芽の発育には重要な役割を演じているものと結論された. 一方3~4cmの長さの発育途中の花穂を, 栄養生長している受容植物に接木すると21.4%の植物に開花を誘導した. このことは, 誘導葉で生成した花成刺激の表現として分化した花器官に, 花成刺激が一部はまだ保持されていることを示すものと思われる.
  • 桃木 芳枝, 桃木 徳博
    1992 年 61 巻 1 号 p. 112-118
    発行日: 1992/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    本報では, マメ科牧草のサイラトロ(Macroptilium atropurpureum cv. Siratro)を材料として熱ストレス後の葉の萎凋現象に伴うアセチルコリン分解酵素の活性およびACh含量の変化, ならびに熱ストレス後植物体から分離した第1葉枕を伴った複葉にACh, K+またはCa2+を外生的に与え, その影響を検討した. 第1葉枕では1mg当り乾燥重で75 nMのAChを分解する活性が, また, 第2葉枕では1 mg当り乾燥重で46 nMのAChを分解する活性が認められた. さらに, アセチルコリン分解酵素活性はネオスチグミンによって約96%抑制された. 葉枕の酵素活性は葉, 葉身, 茎, 根なビの他の器官に比べ, 4~12倍高く, 熱ス卜レスにより酵素活性は第1葉枕で約4倍, 第2葉枕では約2倍にそれぞれ増加した. 第1および第2葉枕のACh含量もストレス後3分以内に著しく変化した. しかも, 熱ストレスに伴うACh分解酵素とACh含量変化は葉の萎凋現象と関係あることが認められた. さらに, AChとK+またはCa2+の混合溶液は, 熱処理した後, 植物体より分離した第1葉枕を伴った複葉の萎凋の回復を著しく速めた. これらの結果より, AChが葉枕部位においてイオンチャンネルの開閉によって規制されるイオンまたはホルモンなどの物質の流入・流出を調節している可能性のあることが示唆された.
  • 小柳 敦史, 佐藤 暁子, 和田 道宏
    1992 年 61 巻 1 号 p. 119-123
    発行日: 1992/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    コムギは湿潤土壌では浅い根系, 乾燥土壌では深い根系を形成するといわれるが, このような生長制御の機構は不明である. そこで, 根の屈地性に及ほす培地の水ポテンシャルの影響を調べた. ポリエチレングリコール(PEG-6000)を添加して水ポテンシャルを低下させた寒天培地にミナミノコムギ(通常の根伸長角度:小)と農林58号(同:大)の発芽種子を初生種子根が水平になるような角度で置床した. 20℃, 暗黒下で2日間培養した後に水平面からの伸長角度を測定したところ, -0.05MPa以下ではミナミノコムギの根の伸長角度が大きくなった. また, 含水量を調節してpF2.7 (-0.05MPa)としたバーミキュライト培地でもミナミノコムギの伸長角度は大きかった. そこで, 農林登録133品種を用い, 寒天培地で0及び-0.05MPaにおける伸長角度を比較したところ, ミナミノコムギ他50品種で水ポテンシャルの低下に伴う伸長角度の増加が観察された.
  • 礒田 昭弘, 吉村 登雄, 石川 敏雄, 野島 博, 高崎 康夫
    1992 年 61 巻 1 号 p. 124-130
    発行日: 1992/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    簡易積算日射計は, フィルムに色素を展着させたもので露光にtリ退色することから日射量を測定するもので, 軽量(70mg, 12mm×35mm), 安価, 同時に多くの点で測定できる. 圃場条件下で生育させた2品種のダイズ2個体の全ての小葉に簡易積算日射計を貼り付け, 小葉面の受けた2日間の積算日射量を測定した. 各層の平均受光量は, 地面に近くなるにしたがい次第に小さくなった. 全小葉のうち数枚は全天日射量と同程度の日射を受けていた. 受光量のうち分枝の小葉で受光される割合は, 開花期には約60%, 幼莢期には約70%であった. また, 頂小葉の受光量は左右小葉に比べ4-10%大きかった.
  • 大田 忠親, 若林 克拓, 今井 勝
    1992 年 61 巻 1 号 p. 131-135
    発行日: 1992/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    トウモロコシ幼植物における暗呼吸の経時変化及び維持呼吸の割合を飢餓法(Starvation method)により検討した. 14, 21, 28日齢の植物の各々第4, 5, 6葉の暗黒下での伸長生長は, 96-120時間で停止した. 地上部の呼吸の経時変化は, 10時間までの急激な低下, 10-84時間の漸減, 84時間以降の定常状態(1.06-0.84mg g-1 h-1, 25℃)の三相に区分された. そこで, 葉の伸長停止を考慮し, 96-120時間の値をもって維持呼吸と見做した. 暗期初期の呼吸に占める維持呼吸の割合は, 14日齢の植物で10%, 28日齢の植物で18%と, 齢の進行に伴い上昇した. しかし, これらの値は他で報じられた成熟植物に比べると低い割合であった. また, 光合成により取り込んだ14CO2の暗黒下での放出の経時変化は, 上記の三相の存在を支持するものであった.
  • 和田 富吉, 伊藤 辰也, 伊藤 雅章, 武岡 洋治
    1992 年 61 巻 1 号 p. 136-144
    発行日: 1992/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    イネの花粉細胞の発達とタペート細胞の推移をグリコールメタクリル樹脂準超薄切片法により観察した. 調整により変形を生じた花粉像を含む切片を除き, このアーティファクト像が生成する背景を考察した. 発達しつつある花粉細胞とタペート細胞の間に密接な位置的関係があり, この関係が成熟花粉に至るまで維持されることを認めた. 発芽孔はタぺート組織に常に押し付けられているのではなく, その多くが, この組織の方向を向いているように観察された. タペート組織の退化には小胞子の発達が関係していると考えた. 成熟花粉内への物質の蓄積ならびに花粉が最終的にタペート組織の内壁から離れやすくなることは, 葯内の水分の減少に伴って生ずるものと推察した.
  • 平沢 正, 土田 政憲, 石原 邦
    1992 年 61 巻 1 号 p. 145-152
    発行日: 1992/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水稲の気孔開度, 光台成速度の日中低下の程度は生育条件によって異なり, これには吸水能力が関係すると考えられている. 本報告では, 受動的吸水能力を表わす蒸散の盛んな時の水の通導抵抗と能動的吸水能力を表わす出液速度を生育条件の異なる水稲の間で比較し, さらに両吸水能力の関係, 受動的吸水能力と気孔開度の日中低下の程度の関係を検討した. 土壌に可溶性でんぷんを加え根ぐされをおこした水稲, 低照度, 高湿度条件に生育し, 根の発達程度の劣る水稲では対照の水稲に比較して出液速度が小さく, 水の通導抵抗が大きい, いいかえると能動的吸水能力と受動的吸水能力が低かった. また, 通常の水耕液に生育した水稲に比べて, 窒素濃度の低い水耕液に生育し根群のよく発達した水稲では出液速度が大きく, 水の通導抵抗が小さい, いいかえると能動的吸水能力と受動的吸水能力が高かった. 水の通導抵抗が大きい水稲ほど日中の気孔の閉鎖程度が大きく, 受動的吸水能力と日中の気孔閉鎖程度とは密接な関係があった. 一方, 測定の約1週間前に硫安を追肥し, 葉身の窒素濃度を高めた水稲では出液速度は大きく, 能動的吸水能力は高かったが, 水の通導抵抗, いいかえると受動的吸水能力は対照区と変わらず, 対照区との気孔開度の差は早朝に比べて日中は小さかった. 気孔開度の日中低下には受動的吸水能力が関係するので, 日中の気孔開度が大きく, 高い光合成速度を維持するためには, 葉身の窒素濃度が高いことに加えて受動的吸水能力の高いことが必要であることがわかった.
  • 平沢 正, 後藤 敏之, 石原 邦
    1992 年 61 巻 1 号 p. 153-158
    発行日: 1992/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水稲における気孔開度, 光合成速度の日中低下の程度は, 同一茎に着生する葉身でも下位の葉が上位の葉に比較して大きい. 本報告では, 日中の気孔の閉鎖程度と密接に関係する水の通導抵抗を葉位別に測定し, さらに葉位によって水の通導抵抗の異なる要因を検討した. 根から葉身までの水の通導抵抗(全抵抗)は上位の若い葉で小さく, 下位の古い葉で大きかった. 展開完了後の日数の等しい葉身では葉位が異なっても全抵抗には相違がなく, 展開完了後の日数の経過に伴ってすべての葉位で全抵抗が大きくなった. このことから, 下位の葉で全抵抗が大きいのは, 下位の葉ほど展開完了後の日数が経過しているためであることがわかった. 下位の葉は古い根と, 上位の葉は新しい根と密接な関係があること, 切断茎を用いて求めた茎基部から葉身までの水の通導抵抗は展開完了後の日数が経過しても大きく変化しないことから, 葉身展開完了後の日数の経過に伴って全抵抗が増加するのは, それぞれの葉身と関係している根が老化し, 根の水の通導抵抗が増加する, いいかえると吸水能力が低下するためであると推察された. このことから, 気孔の日中の閉鎖程度が下位の葉ほど大きいのは, 下位の葉と関係している根ほど水の通導抵抗が大きいことによると考えられた. さらに, 葉が若い時には全抵抗に対する茎葉部の抵抗の割合が大きいが, 葉のageが進むとともに全抵抗に占める根の抵抗の割合が大きくなることがわかった.
  • 広瀬 竜郎, 伊豆田 猛, 三宅 博, 戸塚 績
    1992 年 61 巻 1 号 p. 159-160
    発行日: 1992/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
  • 野瀬 昭博
    1992 年 61 巻 1 号 p. 161-171
    発行日: 1992/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
  • 鳥生 誠二
    1992 年 61 巻 1 号 p. 174-178
    発行日: 1992/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
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