水稲品種ササニシキを用い, 節間伸長に対する葉鞘の慟きを検討した. 第2節間(穂首節間の1つ下の節間)の伸長開始期に, 葉鞘切除, 代替物による被覆, あるいは植物生長調節物質(PGR
s)処理を行い, 第2節間や第1節間の伸長に及ぼす影響を調べた. 第2葉鞘切除の影響は, 切除程度が大きいほど大きかった. 全体切除では, 節間の伸長はほぼ完全に抑制された. この抑制は, AF(アルミホイル)やWF(ラップフィルム)等の被覆処理では, 影響をうけなかった. しかし, ジベレリン(GA
3)処理により, 無処理区の伸長の30%程度の伸長が見られた. 一方, 部分切除の影響は, 葉鞘長と同程度の長さのAF被覆あるいはWFとの2重被覆によってほぼ完全に解消された. 第1葉鞘の部分切除の影響は, 葉鞘切除部と同程度の長さのWF被覆で, ほぼ解消された. また, 葉鞘の切除程度が小さい場合は, 穂のAFやWFの被覆によっても葉鞘切除の影響が解消された. さらに, 葉鞘と穂の同時部分切除による第2節間の伸長抑制は, GA
3処理で解消された. その他のPGRsの作用は明瞭ではなかった. 以上の結果から, 葉鞘は節間基部の伸長部位を包むことによって, 節間の伸長反応性を保持する慟きがあること, また, 第1葉鞘では穂を包むことによって, 穂のジベレリンなどの生成を高め, 節間の伸長を維持する慟きがあること, などが示唆された.
抄録全体を表示