日本作物学会紀事
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61 巻, 2 号
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  • 藤井 清一, 坂 齊
    1992 年 61 巻 2 号 p. 193-199
    発行日: 1992/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ブラシノライド(BR)のイネの登熟促進作用について, 14C-トレーサー試験を行い同化産物の転流に及ぼす影響を検討した. ポット栽培したイネ(品種:日本晴)の出穂10日前と出穂期の2回BRの10-3, 10-2ppmをポット当リ30 ml茎葉散布処理を行った. 開花期に14CO2を同化させ, 以後経時的に14Cのオートラジオグラフィーを行いその後14C量を測定した. 対照区では, 開花期に取り込まれた14Cは, 取り込み終了直後(同化後1時間)ではイネ体に取り込まれた全14C量の大部分が葉身に存在したが, 同化後1日以降は急速に葉から減少して稈の14C量が増え, その後穂に移行した. 同化後3日以降は穂への移行が増加した. BR処理区では対照区に比べて, 取り込み直後の葉身内の14C量が多く, 同化後3日以降には穂で多くなった. 特に, 同化後7日における穂の14C量の差は大きく, 稈では対照区よリBR処理区の方が少なかった. 以上のことから, イネの生殖生長期におけるブラシノライド処理は, 登熟期に同化産物の穂への移行を促す, すなわちイネの登熟促進作用を示すものと推察された.
  • 東江 栄, 森 和一, 窪田 文武, Peter B. KAUFMAN
    1992 年 61 巻 2 号 p. 200-206
    発行日: 1992/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水耕液中のケイ酸濃度および光強度をそれぞれ2段階変えた条件下で水稲3品種(日本晴, コシヒカリ, 水原258号)を約4週間栽培し, 処理に対する乾物生産および光合成速度の反応特性を解析した. 生長促進や乾物生産増加に対するケイ酸の効果は3品種いずれにも認められたが, 日本型品種, 特に遮光区のコシヒカリで顕著であった. ケイ酸施用は老化にともなう光合成速度の低下やクロロフィル含量の減少を抑制する効果があった. また, ケイ酸施用により過剰蒸散が抑制され, 水利用効率が向上した. これにより下位葉の水分や生理的活性が維持され, 個体の乾物生産が向上したと考えられた.
  • 窪田 文武, 岡野 智, 縣 和一, 片山 忠夫
    1992 年 61 巻 2 号 p. 207-212
    発行日: 1992/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    西アフリカ地域で栽培されている Oryza glaberrima の乾物生産特性を明かにするため, 関連する主要生長パラメータや光合成速度の水耕液濃度に対する反応について, 同地域の O. sativa およびわが国の代表的品種である日本晴と比較, 解析した. O. glaberrima 7系統, O. sativa 9系統および日本晴をロック・ウール水耕装置を使用して, 木村氏B液で栽培した. 発芽後はじめの1カ月間は標準の75%の水耕液濃度で栽培し, その後の1力月間を3段階(標準濃度の50, 150および400%)の濃度条件で栽培して, 調査, 測定を行った. その結果, (1)西アフリカ産2種の生育は旺盛であり, 特に, 乾物重と葉面積は日本晴の値に比較して大きかった. (2) O.glaberrima の乾物重, 葉面積および稈数は, 全濃度区において O.sativa の値を上回った. また, 水耕液濃度に対する反応にも種間で明確な差があり, 栽培種として未分化とされている O.glaberrima の反応が鋭敏であった. (3) O.glaberrima の個葉光合成速度は, 全濃度区を通して O.sativa よりも低い値であったが, 光合成速度の水耕液濃度に対する反応は O.glaberrima が鋭敏であった.
  • 津田 誠, 高見 晋一, 横江 大樹
    1992 年 61 巻 2 号 p. 213-217
    発行日: 1992/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    イネの穂では, 葉鞘から抽出した後, 蒸散が始まる. 従って, 穂の水ポテンシャルは出穂前は安定しているのに対して, 出穂後は蒸散に応じて変わると考えられる. そこで, このことを確かめるために, 湛水条件下で幼穂分化後成熟まで水稲品種コシヒカリの穂と展開葉身の水ポテンシャルを測定した. その結果, 日中の穂の水ポテンシャルは出穂前に一時上昇するものの, 全般的には葉身の水ポテンシャル同様生育に伴って低下した. また, 穂の水ポテンシャルは, 出穂前にはほとんど日変化しなかったが, 出穂後は蒸発散能に追随する日変化を示した. さらに, 葉身水ポテンシャルと比較すると穂の水ポテンシャルは, 登熟期末期以外は, 常に高かった. 以上より, イネの穂の水ポテンシャルは, 出穂前には生長に左右されるのに対して, 出穂後は蒸散の影響が卓越すると同時に, 植物体内の通導抵抗が増大するため, 発育に伴い低下すると考えられた.
  • 松江 勇次, 古野 久美, 吉田 智彦
    1992 年 61 巻 2 号 p. 218-222
    発行日: 1992/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    登熟期間中の気象条件と米の食味や理化学的特性の関係を明らかにするために, 登熟中期以降の各期の遮光処理が食味と精米中のタンバク質含有率, アミロース含有率およびアミログラム特性に及ぼす影響について検討した. 登熟中期以降の遮光処理によって食味の低下が認められ, 遮光による食味低下程度は処理時期が早いほど大きかった. 遮光処理によってタンパク質含有率およびアミロース含有率は増加したが, その増加程度は遮光時期が早いほど大きかった. アミログラムの最高粘度, ブレークダウンは遮光によって低下し, 遮光時期が早いほど低下程度は大きかった. 品種別にみると, コシヒカリは日本晴に比べ, 遮光による食味の低下程度が小さかった.
  • 有馬 進, 田中 典幸, 原田 二郎, 松本 和大, 窪田 文武
    1992 年 61 巻 2 号 p. 223-228
    発行日: 1992/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    移植時期と栽植密度を変えてトウビシ(Trapa bispinosa Roxb.)を水田栽培し, その収量成立過程を葉冠数の動態に着目して検討した. その場合, 収量は生重が10g以上の経済的価値をもつ精果実の単位面積当り総生重と規定し, 平均精果実重(g/個)と精果実数(個/m2)の積とした. また, 精果実数は単位面積当りの最終葉冠数と1葉冠精果実数の2要素に分けて分析した. 葉冠数は, 移植後, 分枝茎の発生にともなって増加し, 最高葉冠期に達して最大数(最高葉冠数)となり, その後やや減少して安定(最終葉冠数)した. 最終葉冠数は, 早期移植あるいは密植栽培によって生育初期における葉冠数の増加が促進され, 最高葉冠期が早まるほど増加する傾向を示した. 収量は, 780gm-2~1140gm-2の範囲で変異し, 早植あるいは密植するほど多くなった. 平均精果実重は比較的変異が小さく, 収量は精果実数の多少によって決定された. また, 1葉冠精果実数の変異は小さく, 精果実数は最終葉冠数に伴って増減した. したがって, 構成要素のなかでは最終冠数が最も収量との密接な正の相関関係を示した. 以上の結果, 葉冠数を増す栽培管理がトウビシの多収に向けて重要であることが明らかとなった.
  • 有馬 進, 原田 二郎, 田中 典幸
    1992 年 61 巻 2 号 p. 229-234
    発行日: 1992/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水田に栽培したトウビシ(Trapa bispinosa Roxb.)の葉群落形成の遅速と収量成立の関係を解明するために, ビニールハウス, 遮光および露地の栽培条件と施肥の有無を組み合わせた異なる6条件下で検討を行った. その結果, 各条件で立葉群落の形成速度が異なり, 最終葉冠数は最高葉冠期が早まるほど増加する傾向を示した. また, 浮葉群落から立葉群落への移行および立葉群落の完成時期は, ハウス区, 露地区, 遮光区の順に早まり, 同じ栽培条件では施肥によって早まった. 一方, 開花開始期にも最高葉冠期の遅速に対応した約20日の早晩を認めた. さらに, 収量は, 立葉群落の形成が早まるほど多くなる傾向を示し, 506~1190gm-2の範囲で変異した. その場合, 1葉冠当り積算開花数の増加は開花の早晩にかかわらずほぼ一定の時期に停止し, 積算開花数は開花開始期の早晩と高い相関関係を示した. また, 最高葉冠期と開花開始期, および積算開花数と1葉冠精果実数の間にそれぞれ高い相関関係が認められた. したがって, 1葉冠精果実数の増加は, 初期生育が旺盛で立葉群落の形成が早まり, 開花開始期が早まった場合に開花期間が長期化して, 1葉冠当りの積算開花数が増加することによって実現することが明らかとなった.
  • 高橋 清
    1992 年 61 巻 2 号 p. 235-243
    発行日: 1992/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水稲品種ササニシキを用い, 節間伸長に対する葉鞘の慟きを検討した. 第2節間(穂首節間の1つ下の節間)の伸長開始期に, 葉鞘切除, 代替物による被覆, あるいは植物生長調節物質(PGRs)処理を行い, 第2節間や第1節間の伸長に及ぼす影響を調べた. 第2葉鞘切除の影響は, 切除程度が大きいほど大きかった. 全体切除では, 節間の伸長はほぼ完全に抑制された. この抑制は, AF(アルミホイル)やWF(ラップフィルム)等の被覆処理では, 影響をうけなかった. しかし, ジベレリン(GA3)処理により, 無処理区の伸長の30%程度の伸長が見られた. 一方, 部分切除の影響は, 葉鞘長と同程度の長さのAF被覆あるいはWFとの2重被覆によってほぼ完全に解消された. 第1葉鞘の部分切除の影響は, 葉鞘切除部と同程度の長さのWF被覆で, ほぼ解消された. また, 葉鞘の切除程度が小さい場合は, 穂のAFやWFの被覆によっても葉鞘切除の影響が解消された. さらに, 葉鞘と穂の同時部分切除による第2節間の伸長抑制は, GA3処理で解消された. その他のPGRsの作用は明瞭ではなかった. 以上の結果から, 葉鞘は節間基部の伸長部位を包むことによって, 節間の伸長反応性を保持する慟きがあること, また, 第1葉鞘では穂を包むことによって, 穂のジベレリンなどの生成を高め, 節間の伸長を維持する慟きがあること, などが示唆された.
  • 奥野 元子, 安達 一明
    1992 年 61 巻 2 号 p. 244-250
    発行日: 1992/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    本研究では, 吸水経過に差異をもたらす精米の形質を明確にするため, 水温と精米の吸水経過の関係, 立地条件の異なる2地区において栽培された水稲5品種, チドリ, コシヒカリ, ニホンマサリ, 日本晴および近畿33号の精米の性状, すなわち, 搗精歩合, 水分含量, 生粒重, 乾粒重, 体積, 比重および硬度と, 水に浸漬した場合の吸水経過との関係を最大吸水速度と最大吸水量を指標として調査した. その結果, 1)水温20℃以下では, 精米の吸水は水温の影響を大きく受け, 低温ほど最大吸水速度が小さく, また最大吸水量が若干多いことが明確になった. 2)搗精歩合を一定にした場合の精米性状の品種間の変動は, 栽培地が異なっても硬度で最も大であった. 3)精米の最大吸水速度および最大吸水量は精米の硬度と最も相関が強く, 硬度が大きいほど, 最大吸水速度が高く, 最大吸水量も多いことが明らかになった. 4)搗精歩合を異にした米粒間では, 搗精歩合が低いほど, 切断荷重, 最大吸水速度および最大吸水量が大きいことが明確になるとともに, 吸水経過と硬度の関係が搗精歩合によって異なることが明らかになった. 5)搗精歩合が異なった場合の吸水経過と硬度の関係の品種間比較から, 日本晴とコシヒカリの米粒の内部構造の質的差異が窺われた. これらの結果から, 精米を水に浸漬した場合の吸水経過の差異には, 搗精歩合および硬度の違いが密接に関連し, 吸水経過の差異は精米の形質の差異に基づく吸水特性の差異であるといえた.
  • 長谷川 博
    1992 年 61 巻 2 号 p. 251-256
    発行日: 1992/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    わが国で現在栽培されているオオムギ品種のなかから, 六条皮麦, 六条はだか麦および二条大麦各4品種, 計12品種を供試して, 水耕栽培を行った播種後7日目の幼植物における硝酸イオン吸収を調査した. 25~1000μMの硝酸カリウム溶液(いずれの溶液も500μMの硫酸カルシウムを含んでいる)からの硝酸イオン吸収量を処理開始2, 4時間後に調査して, 吸収速度と培養液中の硝酸イオン濃度との関係をミハエリス=メンテンの酵素反応式で解析した. 供試した品種の中で, 25℃におけるミハエリス定数(Km)については50.9~111.7μM, 最大吸収速度(Vmax)については2.24~4.99μmol・gf.w.-1(総生体重)・h-1の変異の幅が認められた. KmとVmaxの間には有意な正の相関があった. KmとVmaxは温度の低下とともに低くなったが, その低下程度は品種間で異なっており, Kmについてみると15℃の値が25℃の値に比べて1/2以下になる品種から低下の認められない品種があった. Vmaxと幼植物の生体重, 根長, 第1葉長の間には相関は認められなかった. 硝酸イオン吸収速度が植物体の大きさと相関を示さないことは幼植物における硝酸イオン吸収は植物体の生理的要因に依存するところが大きいことを示唆している.
  • 陳 日斗, 佐野 芳雄, 井之 上準
    1992 年 61 巻 2 号 p. 257-263
    発行日: 1992/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    アジア稲およびアフリカ稲とそれぞれの祖先野生種, および他の9種の野生稲について, 籾離脱部位の解剖形態的特性を調査し, 栽培稲と祖先野生種, および野生種間における比較検討を行った. その結果, アフリカ稲の祖先野生種(O. barthii)には, 栽培稲(O. glaberrima)におけると同じく「完全離層」を有する系統のほかに「部分離層」を有する系統がみい出されたが, アジア稲の祖先野生種 (O. nivara)と他の9種の野生稲には「部分離層」を有する系統はみい出されなかった. 本実験に供したOryza属12種の野生稲では, O.longistaminataを除いて, 離層組織は完熟期にはほぼ完全に崩壊していたが, アフリカ稲の祖先野生種では栽培稲と同じく離層組織と中心維管束の間に厚壁組織が発達していて, 完熟期の離層部位における籾と小枝梗の連絡部(supporting zone)はかなり太かった. ところが, アジア稲の祖先野生種やO. longistaminata など11種の野生稲においては離層部位には厚壁組織がほとんどみられず, 完熟期においては籾は中心維管束だけで小枝梗に連結していたため, アフリカ稲の祖先野生種より非常に脱粒性が強かった. なお, 離層組織の形状には蛮曲型, 直線型およびV字型があり, Aゲノム種ではすべて蛮曲型であった.
  • 島田 信二, 国分 牧衛, 芝田 英明, 松井 重雄
    1992 年 61 巻 2 号 p. 264-270
    発行日: 1992/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    葉面積の拡大は作物のCO2固定能力を増大させる一方, 蒸散の増大を招き, 水ストレスを引き起こしやすくすると考えられる. そこで, 葉面積と水分供給量の組合せ効果がダイズの葉のみかけの光合成速度(AP)および収量に及ぼす影響を明らかにするために, ポット栽培したダイズに灌水処理と摘葉処理をそれぞれ3水準ずつ組み合わせて, 開花後約2週間目から成熟期まで処理を行い, 作物体の光合成, 蒸散および収量に及ぼす影響を検討した. 灌水量が少ない場合, 個体当りの蒸散量(Tr/P)は葉面積の大小にかかわらず灌水量とほぼ同等になり, それは気孔コンダクタンス(gs)によって調節されていた. 灌水量が十分にある場合, Tr/Pは葉面積の増大に伴い増大した. 灌水量が多いほどgs, APが高かった. 一方, 灌水量が少ない場合は摘葉程度が大きく葉面積が小さいほど葉身の水ポテンシャル(Ψl)が高く維持され, gsが増し, APも高かった. 継続的な水ストレスは登熟後期の葉緑素含量, 光合成能力を低下させた. 灌水量が多い場合, 子実重は葉面積と相関が高く, 葉面積が大きいほど多収となったが, 灌水量が少ない場合は葉面積が収量へ及ぼす影響は認められず, 灌水量が収量規制要因となっているように思われた. 以上からダイズで多収を得るためには, 葉面積の確保だけではなく, 葉面積に見合った十分な水分供給を行い, Ψlを高く維持し, 光合成能力を高く維持することが必要であると考えられる.
  • 巽 二郎, 遠藤 伸子, 河野 恭廣
    1992 年 61 巻 2 号 p. 271-278
    発行日: 1992/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    光強度がトウモロコシ幼植物の種子根の生長と光合成同化炭素の分配に及ほす影響を~<13>Cをトレーサーとして調べた. 特に, 根軸に沿った種子根の根軸と側根に着目した. 2日間遮光処理したトウモロコシ(光強度を対照区の57%または25%に低下)に13CでラベルしたCO2を2時間にわたって供与した. その後3日間にわたって種子根の生長と体内での13Cの動きを追跡した. 遮光処理は13C同化時ならびにその後の実験期間中継続した. 種子根の伸長速度は遮光の影響を受けなかったが, 種子根軸上の総側根数・長は顕著に減少した. 種子根軸に沿った, 根端より10-30 cmの部位では第1次側根長(L型+S型)の, 同じく30-基部の部位では第2次側根の減少が生じた. これとは対照的に根端より10cm以内では, S型側根数の著しい増加がみられた. 同化後1日目における側根への13Cの分配は, 対照区と比較して低下したが, 種子根軸では逆に増加した. 側根への13C分配の減少は側根の生長の減少と対応していた. 根軸への13Cの分配の増加は, 特に根端および根端から10cm以内の部位で顕著であり, この部位での側根の生長促進, 根軸伸長の維持と対応していた. 以上のように, 種子根を構成する各部位の, 遮光に対する生長反応とそこへの光合成同化産物の分配の様相が, 平行的であることが示された.
  • Md. Abdul KARIM, 宇都宮 直樹, 重永 昌二
    1992 年 61 巻 2 号 p. 279-284
    発行日: 1992/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    六倍体ライコムギの発芽及び幼苗期における生長に対する塩化ナトリウムの影響を明らかにするため, 10品種を用いて室内実験を行った. 用いたNaCl水溶液の濃度は0, 50, 150, 250, 及び350mMである. 各濃度別に用意した濾紙敷の発芽容器に播種した後, 各発芽容器にそれぞれの濃度の液を等量ずつ与え, 以後, 濾紙が乾燥しないように各発芽容器にそれぞれの濃度の液を1日2回等量ずつ2週間にわたって加えた. その結果, 250及び350 mM区ではどの品種も萌芽は見られたが, 発芽には至らなかった. それ以下の濃度区ではNaClの濃度が高くなるほど幼苗の生長は抑制された. 幼苗期の苗条の生長は, 種子の萌芽及び発芽や根の伸長よりも塩類に対する高い感受性を示したので, 六倍体ライコムギの生育初期における耐塩性検定の重要な指標になると考えられた. 耐塩性には品種間差異が見られ, 供試10品種の中で Currency, Yoreme, Welsh 及び Beaverは幼苗期の諸形質において高い耐塩性を示し, 一方, Broncoの耐塩性は比較的低かった. ただし, このような耐塩性の品種間差異を供試品種の細胞質及び染色体構成の違いに帰することはできなかった.
  • 坂 齊, 高原 昭雄, 奥村 稔, 渡邊 紳一郎
    1992 年 61 巻 2 号 p. 285-291
    発行日: 1992/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    出穂期から糊熟期にかけてのポット及び圃場栽培イネから切り採った穂及び止葉葉身のエチレン生成能の明暗条件による差異, 生育時期別変化及びこれに対する植物生長調節剤の影響について検討し, 以下の結果を得た. 1)乳熟期の穂と葉身を各々ガラス試験管に入れ, 密栓して培養しエチレン生成能を調べたところ, 明暗条件で著しい差異を認めた. すなわち, 穂でのエチレン生成能は光条件下(約30μE・m-2・sec-1)で著しく促進され暗黒条件下で阻害されたが, 葉身では暗黒下で顕著に促進され, 光条件下では阻害された. 2)両器官からのエチレン生成は, 少なくとも培養開始後48時間までは培養時間と生成量との間にほぼ直線関係が認められたので, 穂は光条件で, 一方葉身は暗条件で最初の24時間に生成したエチレン量を指標として各器宮からのエチレン生成能を検討した. 3)穂のエチレン生成能は, 開花・受精後から徐々に増加し始め, 乳熟期に最高値に達した後漸減して糊熟期には低いレベルに落ち着いた. 一方, 止葉の葉身についてみると, 開花後から乳熟後期までは一貫して高レベルのエチレン生成能を維持したが, その後は葉身の老化に伴って生成能が激減した. 4)イネい登熟に促進的に作用するとされる矮化剤(パクロブトラゾール, GRH-624)とブラシノステロイド(ブラシノライド, エビブラシノライド)は, エチレン生成能に対する処理薬量間差異は明白ではなかったが, 何れもイネの穂が乳熟期に示すエチレン生成能の最高値を更に押し上げると共に一穂重を増加させた.
  • 鈴木 克己, 谷口 武, 前田 英三
    1992 年 61 巻 2 号 p. 292-303
    発行日: 1992/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    イネ接合子では開花後12時間までに, 第1回目の細胞分裂が見られ, 細胞壁が胚軸に対してやや斜め横に生じ, 上部の細胞と基部の細胞からなる2細胞となった. 開花後18時間では上部の細胞は縦に, 基部の細胞では横に細胞壁を生じ4細胞胚となった. 開花後24時間では基部細胞由来の上位細胞が縦, 下位の細胞が横に細胞壁を生じ6細胞に, 開花後30時間では胚の上部及び中部の細胞は縦に細胞壁を形成してそれぞれ4細胞となり, 基部の2細胞を加えで計10細胞からなる幼胚となった. その後の胚では, 細胞分裂方向が下規則となった. 初期胚の細胞内部には, 層状の小胞体, カップ状のミトコンドリア, デンプン粒を含むカップ状のプラスチドなどを持つ細胞質が, 核の周囲に存在した. 周辺部細胞質には小液胞が多く見られた. 基部の細胞では上部の細胞に比べ液胞が大きかった. 花粉管の侵入しなかった助細胞は, 4細胞胚の時期には完全に退化した. 胚乳細胞の細胞質は, 胚の体積が増加し始めたのち胚の周辺近くで密に分布した.
  • 中元 朋実, 松崎 昭夫, 下田 和雄
    1992 年 61 巻 2 号 p. 304-309
    発行日: 1992/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    Profile wall methodによって, 圃場に栽培した6種(7品種)の雑穀類の根系分布を経時的に調査した. うねに直角方向に設けた土壌断面(深さ1m, 幅1m)において5cm平方のます目ごとに根長密度を測定し, 根系の2次元分布を推定した. アワの根系では, 鉛直方向にも水平方向にもうねから離れるにしたがい根長密度が指数関数的に減少した. これに対しヒエの根系には, 浅い土壌層に根長密度が高くかつ一定した領域がみとめられた. その他の種の根系はこれらの中間的な形態を示し, 根系の分布様式に着目して, アワ, トウモロコシ, キビ, トウジンビエ, ハトムギ, ヒエをこの順に並べることができた. この順序はこれら雑穀類の湛水に対する感受性の強弱とよく一致しており, 根系分布と種の生態特性との関連が示唆された.
  • 稲葉 健五
    1992 年 61 巻 2 号 p. 310-311
    発行日: 1992/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
  • 彌冨 道男, 窪田 文武, 縣 和一, 諸隅 正裕
    1992 年 61 巻 2 号 p. 312-313
    発行日: 1992/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
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