日本作物学会紀事
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61 巻, 3 号
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  • 新田 洋司, 星川 清親
    1992 年 61 巻 3 号 p. 339-348
    発行日: 1992/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水稲の不伸長茎部すべてにわたる連続横断切片を光顕観察して, 冠根原基の形成部位, および形成数の分布を明らかにするとともに, 不伸長茎部上部における冠根原基形成部位について検討した. 従来, 冠根原基(出現した冠根も含む)の形成部位は, 外部形態からみた節横隔壁の上・下の冠根の出現部位と対応させて, その2部位だけであると限定されていた. しかし, 連続横断切片を観察した結果, 冠根原基の形成数は, 節間が極端に短い不伸長茎部下部を除く不伸長茎部上部においては, 各節の横隔壁形成部下部で極大, 同上部で極小になりながら, 隣接する上・下の部位で連続的に増減を繰り返していた. また, 不伸長茎部上部の下位の部位よりも上位の部位で, 辺周部維管束環が分断されている部位よりも分断されていない部位で, さらに, 維管束組織のより発達している部位においていずれも形成数が多かった. これらの観察結果にもとづき, 従来の"節根"および"要素根"による冠根原基形成部位の分け方と対比して検討した. その結果, 辺周部維管束環の分断の様相によって, 冠根原基形成部位を分断部I(葉鞘の中肋側で1~2箇所で分断), 分断部II(葉鞘からの大維管束の貫入によって多数箇所で分断), および非分断部に分け, この3つを1つの"単位"とする分け方が適当であると考えられた.
  • 佐藤 暁子, 末永 一博, 高田 寛之, 川口 數美
    1992 年 61 巻 3 号 p. 349-355
    発行日: 1992/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    4種土壌において節位別分げつの出現とその有効化の過程を検討し, 収量性の差異を明かにするとともに, その改善方策を見いだそうとした. 品種はアサカゼコムギ, 農林61号および農林64号を供試した. 収量は灰色低地土で高く, 赤色土, 厚層多腐植黒ボク土, 淡色黒ボク土で低く, それらの差異は主に穂数の違いに起因していた. 赤色土ではTc(鞘葉の葉腋から出現した分げつ), T1, T2, T3(主稈の第1~3葉の葉腋から出現した分げつ)およびT1P (T1のプロフィルの葉腋から出現した分げつ)の出現率は, 多収を示した灰色低地土とほぼ同様であったが, 有効化率が低かった. また, TR(上記以外の分げつ)は出現率, 有効化率ともに低く, T3, T1Pとともに収量に対する寄与度が小さかった. 可給態リン酸の極めて少ない厚層多腐植黒ボク土と淡色黒ボク土では, 生育初期に発生するTc, T1および分げつ期後期に出現するT1P, TRの出現率が低く, これらの分げつは収量に対する寄与度が小さかった. これらのことから, 赤色土では, 1月以降に窒素成分を補う施肥や春先の地温上昇に伴って有効化してくる地力窒素を培養する必要があり, 2種類の黒ボク土では生育初期のリン酸吸収が旺盛となる土壌条件に改善する必要があると考えられた. また, 農林64号は, 他の2品種に比べ, 両黒ボク土でのT1の出現率と有効化率が高く, 低リン酸土壌で多収性を示した.
  • 後藤 雄佐, 斎藤 満保
    1992 年 61 巻 3 号 p. 356-363
    発行日: 1992/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    宮城県の慣行栽培法を基に, 水田で基肥窒素量の異なる2区(N 3.0区:窒素成分で3.0g m-2, N 4.5区:4.5g m-2)を設定し, 標準的な管理下での水稲品種ササニシキの生長を調べ, 茎数増加様式を解析した. 1次分げつは2号分げつ(T2:以降n号分げつをTnと略記)からT7までが出現し, 特にT3からT6までの出現率が高かった. 2次分げつはT2からT5までの1次分げつから出現し, 特にT3, T4からの2次分げつが多かった. 茎数増加はN4.5区で早く, 最高茎数も多かったが, 有効茎数は両区でほぼ同じであった. 主茎葉齢はN 4.5区の方が早く進み, 特に茎数急増期には両区間の差は0.5となった. 主茎葉齢をタイムスケールとして実測の茎数増加曲線を描くと, 茎数急増期に両区とも重なる. これは, この時期に主茎葉齢の進み方がN 4.5区で速かったために, 茎数増加もN 4.5区で速かったことを示す. 一方, 各分げつが同伸葉理論通りに出現したと仮定したときの茎数増加曲線を, 分げつ位ごとの出現率から描くと, N4.5区の方が茎数増加が速かった. このことについては, T3の相対葉齢差(主茎と分げつの葉齢の進み方の差)がN 3.0区の方が大きく, N 3.0区でT3からの2次分げつがN 4.5区より早く出現したため, 両区の主茎葉齢をタイムスケールとした実測値の茎数増加曲線が重なったと考察した. また, 「有効分げつ決定期」が, 水稲の生育を解析する上であまり意味を持たないことを示した. さらに, 稚苗移植栽培においてもT2が出現・生長したことに関して, T2の分化・発達をも含めて考察した.
  • 平井 源一, 中條 博良, 田中 修, 平野 高司, 大森 雅代
    1992 年 61 巻 3 号 p. 364-368
    発行日: 1992/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    昼間における大気の相対湿度60%区(低湿区)と90%区(高湿区)の2区を気温22/18℃(昼温/夜温)(低温) , 28/24℃(適温), 34/30℃(高温)のそれぞれの温度条件について設け, これらの条件で3葉期の水稲を10日間水耕栽培し, 種々の気温で乾物生産に及ぼす大気湿度の影響を検討した. 乾物重増加量は, 低温および適温では高湿区の方が, 高温では低湿区の方がそれぞれ大きかった. また, このような湿度の影響は, 低温および高温では地上部よりも根部において大きかった. その結果, T-R率は低温では低湿区が, 高温では高湿区が大きく, 適温では両区間の差は小さかった. RGRおよびNARは低温あるいは適温では高湿区が低湿区より大きかったが, 高温では高湿区が著しく小さかった. 以上の結果から, 水稲幼植物の生長と乾物生産に及ぼす大気湿度の影響は気温によって異なることが明らかになった.
  • 山本 富三, 田中 浩平, 角重 和浩
    1992 年 61 巻 3 号 p. 369-374
    発行日: 1992/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    地域や肥沃度が異なる水田で, 地力窒素の発現が暖地水稲の生育や収量に及ぼす影響と水田土壌の地力窒素レベルに応じた適正な施肥量について検討した. まず, 速度論的方法を適用し, 水稲生育期間中の地力窒素発現量の推定を行った結果, 地域間で著しく異なり, また同じ地域内でも地力増強程度の違いにより10a当たり5kg前後も異なった. 窒素無施用区の水稲窒素吸収量を水稲による地力窒素吸収量の指標として, 地力窒素発現量の推定値と比較すると, 発現量に対する吸収量の割合はほぼ7~8割であった. 基準量を施肥した条件下で, 地力窒素吸収量と水稲ニシホマレの収量との関係についてみると, ニシホマレの収量は地力窒素の吸収量が10a当たり8kgまでは, 地力窒素量に応じて高くなる傾向にある. しかし, さらに多くなリ9kg近くになると収量は頭打ちとなり, 稲体中の窒素量は増えるが, 玄米生産に結びつかず, 過剰分に相当する窒素の吸収はむだであることから, 施肥量を減肥してよいと判断された. 良食味品種ヒノヒカりは地力窒素の影響を受けやすく, 施肥区の収量は地力窒素吸収量が10a当たリ8kg近くで頭打ちとなるのがみられた. また, 地力窒素吸収量と基肥量との関係についてみると, 地力窒素吸収量が少ない水田では基肥量として10a当たリ6kg程度が必要であるが, 地力窒素量が7~8kgの圃場では4.5kg程度が適量であり, 8kg以上ではさらに減肥が必要であった.
  • 星野 次汪, 谷口 義則, 伊藤 誠治
    1992 年 61 巻 3 号 p. 375-379
    発行日: 1992/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    東北地方の主要品種であるキタカミコムギ, コユキコムギ, ナンフコムギの3品種を用いて収穫時期が品質に及ぼす影響を明らかにするために, 1988年から1989年に早刈と遅刈2時期, 1989年から1990年に早刈, 適期刈, 遅刈の3時期について粗蛋白含量, 灰分含量及びコムギ粉生地の物性などについて試験を行った. 分散分析の結果, 収穫時期間に有意差が認められた成分は60%粉, ストレート粉及び末粉の灰分含量, セデメンテーション・バリュー(SV), 有意差が認められなかった成分は原粒及び60%粉の粗蛋白含量, 原粒の灰分含量であった. 収穫時期が遅くなるにしたがって灰分含量が低下し, 灰分移行率が高まり, 60%粉の品質が向上した. 製粉歩留は, 収穫時期間の差異は小さかったが1%水準の有意差が認められた. 収穫時期が遅くなるにしたがって, B/M率, ミリングスコアは増加し, セモリナ生成率は低下した. ファリノグラムノ各特性値は, 収穫時期間に有意差が認められ, 収穫時期が遅くなるにしたがって生地が固くなる方向へ変化したが, エキステンソグラムの各特性値は生地がだれる方向へ変化した. アミログラムの各特性値はいずれも収穫時期間に有意差は認められなかった. 本試験の早刈, 適期刈, 遅刈の範囲内ではアミログラムの最高粘度の低下を引き起こすような遭雨の危険がなければ, 灰分含量, ミリングスコア, SVからみて遅刈が品質的に優れていると結論できる.
  • 寺島 一男, 秋田 重誠, 酒井 長雄
    1992 年 61 巻 3 号 p. 380-387
    発行日: 1992/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    直播栽培における稲の耐ころび型倒伏性を生理生態的視点から解析する目的で, 地下部による株の支持力を品種間, 各種栽培法で比較した. 供試品種には移植条件で育成されてきた日本品種および半矮性インド型品種と直播条件下で育成されてきたアメリカ品種を用いた. 株支持力は上村らの手法に基づいて押し倒し抵抗を測定することにより推定した. 各品種の押し倒し抵抗ところび型倒伏の発生程度との間には負の相関関係がみられ, 耐ころび型倒伏性の評価における押し倒し抵抗測定の有効性が認められた. 栽培条件の押し倒し抵抗に対する影響については, 播種深度を1cmとして栽培した場合には地表面への播種に比べ, また, 水管理を間断潅漑で行うと常時湛水条件に比べてそれぞれ押し倒し抵抗が高まる傾向がみられた. 条間を一定とし, 条内の播種密度のみを変えた場合には, 播種密度の違いが押し倒し抵抗に及ぼす影響は小さかった. 品種間における押し倒し抵抗の差異は以上のような栽培方法の違いによる変動に比べて大きかった. アメリカ品種および穂重型の半矮性インド型品種は日本品種より高い押し倒し抵抗値を示し, ころび型倒伏程度もより軽微であった. 以上から, 直播水稲の耐ころび型倒伏性の改善のためには, 地下部による株支持力の育種的改良がより重要であることが示唆された.
  • 佐々木 修
    1992 年 61 巻 3 号 p. 388-393
    発行日: 1992/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水稲の葉および冠根の分化・発育時期に短期間(1~3葉間期)の高水温処理(35℃)を行い, 成熟時における葉と冠根の量的形質におよぼす影響について検討した. 対照区の水温は30℃とした. 葉身幅と葉身長はいずれも高水温によって抑制されたが, その影響のもっとも大きい時期は両者で異なっており, 葉身長については, 出葉中の"要素"から数えて1つ高位の"要素"の葉で影響が著しく, 葉身幅についてはさらにそれより1つ高位の"要素"の葉で影響がもっとも大きかった. 葉鞘長についても高水温の影響は認められたが, その処理時期による差は必ずしも明瞭ではなかった. 冠根数については, 高水温の処理時期によって抑制, 促進の双方が認められ, 冠根の分化期では促進, その前あるいは後の時期ではむしろ抑制された. 冠根直径については, その分化期より前の時期では高水温は抑制的に働いた. 一方, 冠根の分化期以降では必ずしも明瞭ではなかったが, 上位根では促進, 下位根では抑制される傾向が認められた. このように, 葉および冠根の分化・発育程度の違いによって, これらの形態に対する高水温の影響は著しく異なることが示唆された.
  • 中谷 誠, 幸田 泰則
    1992 年 61 巻 3 号 p. 394-400
    発行日: 1992/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    塊根茎作物の貯蔵器官形成のメカニズム解明に資するため, バレイショ茎断片培養法を生物検定系として用い, 我が国への新規導入が期待される塊根茎作物を含め9種の植物の抽出物の塊茎形成活性を調査・比較した. 供試した植物の地上部抽出物の内, バレイショの塊茎形成を誘導する活性が強かったのは, サツマイモの水溶性分画と酸性酢酸エチル(AE)分画, キクイモのAE分画, ヤーコンのAE分画, スギナのAE分画で, キャッサバのAE分画も比較的強い活性を示した. 一方, 食用カンナ, コンニャク, サトイモや塊根を形成しないサツマイモ近縁野生種では, いずれの分画も活性は低かった. 強い活性を示した分画の内, サツマイモのAE分画に存在する活性物質は精製の結果, ジャスモン酸と同定した. また, スギナのAE分画に存在する活性にはABAが関与しているものと思われた. 地下貯蔵器官の抽出物では, AE分画にバレイショ塊茎形成活性を示すものが見られ, キクイモの塊茎で特に活性が強く, キクイモのふく枝, ヤーコンの塊茎や塊根, サツマイモの塊根, キャッサバの塊根も比較的高い活性を示した. 一方, 食用カンナの肥大茎, コンニャクの球茎, サトイモの塊茎では活性が弱く, コンニャクの吸枝では全く活性は認められなかった. 上記のバレイショ塊茎形成活性を指標にして, 地下貯蔵器官形成の生理的機構のバレイショとの類似性という視点で塊根茎作物を比較・類別すると, 塊茎作物の内キクイモ, ヤーコンは類似性が高く, 塊根作物のサツマイモ, キャッサべでも一定の類似性を持っているが, サトイモ, 食用カンナ, コンニャクではバレイショとの類似性は低いと思われた.
  • 伊藤 浩司, 稲永 忍, 森棟 尚, 石井 康之
    1992 年 61 巻 3 号 p. 401-411
    発行日: 1992/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ネピアグラス(Pennisetum purpureum Schumach, 品種 Merkeron)は栄養生長期にも茎の節間伸長を行う. この節間伸長と呼吸速度との関連性を検討する目的で本研究を行った. 自然状態で育てた材料における生育に伴う地上部の夜間呼吸速度の変化を調査するとともに, 矮化剤処理により茎の節間伸長を抑制した材料と無処理の材料とを比較した. 矮化剤処理区には「パクロブトラゾール」0.538%(LL-1)溶液を草高が約1mの時期に1回のみ地上部全面に噴霧した. 葉身及び稈(茎と葉鞘)の呼吸の温度係数(QSUP10)は1.94と推定された. 葉身及び稈の呼吸活性(25℃における単位乾物重, 時間当りの呼吸速度)はいずれも生育に伴って低下し, その低下は稈の方が著しかった.矮化剤処理によって稈の節間伸長が抑制されるとともに稈の呼吸活性の低下が抑制されたため, 地上部全体の呼吸活性は処理区の方が大きかった. これらの調査結果と既報の乾物重の値などを用いた一連の回帰分析により, 圃場条件下における夜間及び全日の地上部全呼吸速度に関する維持呼吸率を推定した. 無処理の材料の維持呼吸率は他の作物についての既往の値のなかの比較的小さい値に相当した. 一方, 処理区の維持呼吸率は無処理区に比べて大きかった. 以上により, ネピアグラスの茎の節間伸長とその後の老化は地上部の維持呼吸率を低下させて光合成産物の呼吸による損失を軽減する意義があると推察された.
  • 楠田 宰
    1992 年 61 巻 3 号 p. 412-418
    発行日: 1992/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    標本調査では標本をランダム抽出するのが原則であるが, 調査労力や試験区面積の制約などから, 標本をシステマティックに抽出する場合が多い. しかし, このような抽出法により得られた標本平均値の精度と, 同じ標本数をランダム抽出した場合の精度との差異については, 収穫期の坪刈り調査を除いてほとんど明らかにされていない. そこで, 最高分げつ期および穂揃期の茎数・穂数・生体重を対象として, 各種の抽出法によって得られた標本平均値の精度を標本数が20株の場合について調査, 解析して, 調査の精度の確保と効率化の面から有効な標本抽出法について検討した. 手植え試験区では第1に, 最高分げつ期, 穂揃期の量的形質の株間変動の様相は, 条方向で大きく条間では小さかった. このために, 条方向に少数の標本を抽出する方法は精度が悪く, 条方向に多数の標本を抽出する方法は精度が高かった. 第2に, 試験区を条方向, 株方向ともに二等分して4ブロックに分け, 対角に位置する2ブロックからそれぞれ条方向に連続した10株を抽出する方法は, ランダム抽出とほぼ同等の精度が安定的に得られ, 労力的にもランダム抽出に比べると省力的であり, 有効な抽出法であることが分かった. 調査対象形質の変動係数が小さい穂揃期には, 条方向に連続した20株を抽出する方法および条方向に連続した10株を抽出した後に, 左右どちらかの隣接条に移動してそこからさらに条方向に連続した10株を抽出する方法が, より簡便で精度も比較的に高く, 有効な抽出法であった.
  • 大川 泰一郎, 石原 邦
    1992 年 61 巻 3 号 p. 419-425
    発行日: 1992/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    国内外22品種の水稲を用いて, 圃場条件下における耐倒伏性の品種間差異を検討した. わが国の長稈品種は倒伏しやすく, 国外の品種に比べていずれも稈基部の挫折強度を表す葉鞘付挫折時モーメントが著しく小さかった. 収穫期まで倒伏しなかった長稈品種および短稈品種は, 登熟期間を通じて倒伏指数の増加程度が小さかった. このことには, 地上部モーメントは大きいのに葉鞘付挫折時モーメントが高く維持されていることが関係しており, 葉鞘付挫折時モーメントは耐倒伏性と密接に関与する性質で, 品種によって大きく異なることがわかった. 葉鞘付挫折時モーメントが異なる要因を検討した結果, 葉鞘付挫折時モーメントの小さいわが国の品種はいずれも葉鞘補強度が小さく, 稈の挫折時モーメントも小さかった. 一方, 葉鞘付挫折時モーメントの大きい台中189号, 台農67号のような長稈品種は, 葉鞘補強度が大きく, 断面係数および曲げ応力がともに大きいことによって稈の挫折時モーメントが大きかった. また, 葉鞘付挫折時モーメントの大きい短稈品種には葉鞘の老化が遅く葉鞘補強度が49%と高いアケノホシ, 稈の断面係数が著しく大きいことによって稈の挫折時モーメントが大きい密陽23号のような品種があった. 本研究の結果, 葉鞘補強度, 断面係数および曲げ応力を大きくし稈の挫折時モーメントを大きくすることによって, 長稈穂重型品種に強稈性を付与することが可能であることがわかった.
  • 黒田 俊郎, 郡 健次, 熊野 誠一
    1992 年 61 巻 3 号 p. 426-432
    発行日: 1992/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ダイズの結英に及ぼす栽植密度の影響を花房次位の観点から明らかにするため, 品種タチスズナリとタマホマレを栽植密度3段階で圃場栽培し, 開花と結英状況を経時的に調査した. 開花は, 低次位(1次・0次), 高次位(2次椏枝・2次・3次・4次)の順に明確な時期的ずれを示し, 品種と栽植密度を異にしてもその推移は変わらなかった. 個体の花数は密植区で減少したが, 低次位よりも高次位の減少が顕著で, 低次位花の占める割合が増大した. タマホマレの結莢率は密植区で上昇したが, 低次位が大きく寄与した. クチスズナリでは微下降にとどまったが, これも低次位の結莢率の低下が小さかったためであった. 個体の稔実莢数は密植区で減少したが, 低次位の減少程度は小さかった. 面積当たり莢数は密植区で増加したが, 低次位が大きく貢献した. 密植による増収には, 低次位と主茎の花房が重要な役割を果たすことが示唆された.
  • 浅沼 興一郎, Thomas Basuglo BAYORBOR, 木暮 秩, John ANIM OFOSU, 鈴木 則行
    1992 年 61 巻 3 号 p. 433-438
    発行日: 1992/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ガラス室において, 3水準の窒素レベル(0, 100, 200ppm)で砂耕栽培したダイズを用い, 乾物生産, 根粒着生, CO2交換, ならびに収量に及ぼす影響について調査した. 培養液の窒素濃度が高くなるほど乾物重と葉面積は増加したが, 根粒の発達は顕著に抑制された. 200 ppmで百粒重及び収量がわずかに高かったとはいえ, 収量とその構成要素は窒素レベルによって大きな影響を受けなかった. 見かけの光合成及び地上部の呼吸は植物体の大きさを反映し, 地下部の呼吸は根粒着生程度と関連していた. これらの結果より, 窒素の過剰供給は栄養器官の生長を促進するが, 子実収量は大きく増加させず, このことは地下部による炭素消費が大きいことと関連しているものと推察された.
  • Md. Abdul KARIM, 縄田 栄治, 重永 昌二
    1992 年 61 巻 3 号 p. 439-446
    発行日: 1992/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    塩分濃度の異なる塩水かんがいが六倍体ライコムギの乾物生産と無機イオンの体内分布に及ぼす影響を解析し, それによって耐塩性機構を検討する目的で, 遺伝的背景の異なる2品種, Welsh及びCurrency, を用いてガラス室内でポット栽培による比較試験を行った. 塩水かんがい処理は, ポットに移植後3週間目の幼苗期から成熟期まで2~4日おきに1個体あたリ200ml の塩化ナ卜リウム水溶液を0, 25, 及び50mMの濃度区に分けて行った. その結果, 穀実収量の比較によりCurrencyの方がWelshよりも耐塩性が大であることが示唆された. 塩水処理により, 両品種とも茎葉の乾物重が低下した. 塩水処理による穎の乾物重の低下は, Welshの方がCurrencyより著しかったが, 根の乾物重の低下はCurrencyの方が大であった. 植物体各器官のナトリウム及び塩素の濃度は, 一般に処理に用いた塩水の濃度が高くなるほど上昇した. この傾向は, 根以外のすべての器官でWelshの方がCurrencyよりも著しかった. 根におけるナトリウム濃度は, 各処理区で品種間差は認められなかったが, 塩素濃度はCurrencyの方が高かった. このことから, 六倍体ライコムギにおいては各器官のナトリウム及び塩素の蓄積が耐塩性に関与し, とくに根が地上部へのこれらイオンの輸送調整に関する重要な役割を果していることが示唆された. カリウム, カルシウム及びマグネシウムの濃度は, 品種間及び器官間で一定の傾向が見られず, 耐塩性に関するこれら3無機イオンの役割は明らかでなかった.
  • 侯 福分, 曽 富生
    1992 年 61 巻 3 号 p. 447-453
    発行日: 1992/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ダイズ種子の冠水抵抗性検定法を確立するために, 種子の浸漬条件ならびに発芽時における環境条件の影響を実験室と温室において検討した. この結果, 浸漬によって種子が破る障害が発芽率低下の要因であることが示された. 従って, 冠水抵抗性検定に供する種子は病害を受けていたり, 種子に傷があったりしてはならない. 室内実験の結果と土壌に播種した実験の結果は有意な相関関係にあり, ダイズ種子の冠水抵抗性は室内実験で検定し得ることが示された. ダイズ種子の冠水抵抗性検定法は次の通りである. 1) 70%エノタールで30秒間消毒した種子を試験管に人れ, 蒸留水90 mlを加え25℃で4日間置く. 2) 浸漬処理終了後種子を乾いたろ紙上に6時間放置して風乾する. 3) 乾燥した種子を湿ったろ紙2枚を敷いたシャーレに置床し, 25℃で発芽させる. 4) 置床後4日目に発芽率を調査する. 5) その発芽率で種子の冠水抵抗性を表示する.
  • 佐竹 徹夫, 柴田 和博
    1992 年 61 巻 3 号 p. 454-462
    発行日: 1992/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    小胞子の分化から受精に至るまでの発育過程を4段階に分け, それぞれの段階で受精に関係する要素(受精構成要素)を定義し, 受精率を4要素(分化小胞子数, 発育花粉歩合, 受粉歩合および柱頭上花粉の受精効率)の積によって表した. 危険期に冷温処理された穎花の受精率およびそれを構成する要素の大きさには, 品種間に顕著な差が認められた. 耐冷性の異なる19品種を用いて, これら要素の受精率に対する寄与率を重回帰分析法によって評価した. 危険期に冷温処理された穎花の受精率における品種間分散の82%が, 分化小胞子数, 発育花粉歩合および受粉歩合の3要素によって説明された. 第4要素の柱頭上花粉の受精効率(この要素は柱頭上における花粉の発芽歩合と発芽花粉の受精効率より構成される)は本論文では評価されなかった. 染分, 赤毛, キタアケ, 道北糯18号, 中母42号, はやゆき等は小胞子分化数が大きく, 染分, ハマアサヒ, キタアケ, トドロキワセ, はやゆき, コチミノリ等は花粉発育歩合が大きく, そらち, 中母42号, はやゆき, キタアケ等は受粉歩合が大きく, それぞれの要素の供与親として注目された. 受精構成要素の概念は, 耐冷性の遺伝子を各要素ごとに探索する手段として育種事業に利用できるばかりでなく, 耐冷性の生理機構を解析するための手段としても利用できる.
  • 中谷 誠, 古明地 通孝
    1992 年 61 巻 3 号 p. 463-468
    発行日: 1992/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    サツマイモ塊根のデンプン含量の品種間差の機構を解明するため, 3~14品種を用いて, デンプン含量等とデンプン合成酵素並びにADP-グルコースピロホスホリラーゼ活性との関係を調査した. 可溶性並びに可溶性+結合性デンプン合成酵素の活性とデンプン含量や乾物率とは関連が認められかった. 一方, 一葉押し接ぎ木植物や通常栽培した品種の塊根デンプン含量と塊根生重当たりのADP-グルコースピロホスホリラーゼ活性とは有意な正の相関を示した. さらに, 本酵素活性の生育に伴う変化はデンプン含量の変化と比較的類似していた. これらから, サツマイモ塊根のデンプン蓄積過程において, ADP-グルコースピロホスホリラーゼが重要な調節機能を果していることが示唆された.
  • 権 五昌, 鄭 正韓, 佐藤 忠彦, 谷口 武, 前田 英三
    1992 年 61 巻 3 号 p. 469-475
    発行日: 1992/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    パンジーの葉肉細胞と無菌培養した野生ビオラカルス細胞から, 酵素処理によリプロトプラストを分離し, 両者を電気的に融合させた. 形成された融合体の微細構造を透過型電子顕微鏡を用いて研究した. 各融合プロトプラストについて細胞核・葉緑体・プラスチドなどを観察し, 両者が融合したプロトプラストと一方のみが融合したものを, 微細構造の面から区別することができた. また融合プロトプラストの細胞壁再生活性を, その微細構造に基づいて論じた.
  • Tiemi NAKAMURA, 谷口 武, 前田 英三
    1992 年 61 巻 3 号 p. 476-486
    発行日: 1992/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    コーヒーの体細胞胚が以卜の各段階を経て発生することを, 走査電子顕微鏡で確認した:球状細胞または胚母細胞期, 胚柄をもった球状初期, 球状期, 伸長期, 心臓状初期, 心臓状期, 魚雷状期, 発達した胚柄をもった子葉状期. 成熟葉片を二段階法で培養したとき, 体細胞胚はカルス上に高頻度で生じた. 低頻度の体細胞胚発生は, 若い葉片を一段階法で培養したとき, 葉片の切断面に生じた小さなカルス塊上に見られた. 以上の研究から, コーヒーの体細胞胚発生が, 単一細胞起源であることを示した. また各発生時期における体細胞胚の形態的特徴を明らかにした.
  • Salak PHANSIRI, 三宅 博, 前田 英三, 谷口 武
    1992 年 61 巻 3 号 p. 487-493
    発行日: 1992/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ダイズ懸濁細胞から酵素を用いてプロトプラストを分離し, 液体培地で培養した. プロトプラストの露出表面における細胞壁再現を蛍光及び走査電子顕微鏡を用いて研究した. 蛍光顕微鏡法(Calcofluor White 染色法)により, プロトブラスト分離後数分後に新しい細胞壁物質の形成があり, 9-12時間でプロトプラスト全体が新しい細胞壁物質で被われた. 最初の分裂は培養15時間後に見られ, 1-2日後にしばしば観察された. この再形成された細胞壁はセルラーゼで分解されたが, ペクチナーゼでは分解されなかった. 走査電子顕微鏡でプロトプラスト表面上に蓄積した細胞壁物質が観察された. 培養9時間以後には突起部に付着した短い繊維が原形質膜上に観察された. その後, 長い繊維が形成され, 膜表面上に広まった. 培養1日後, 繊維は蓄積し, 複雑な膜構造物に変形した. 分裂しているプロトプラストは培養12時間後にも観察された.
  • Teresita O. GALAMAY, 山内 章, 巽 二郎, 河野 恭広
    1992 年 61 巻 3 号 p. 494-502
    発行日: 1992/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    イネ科作物の根系は, その個体発生において, 順次発生してくる種子根, 中茎根, および鞘葉節から発根する鞘葉節根, 第1節から発根する第1節根などの主軸根から構成される. 本研究の主な目的は, これらの主軸根の組織学的特徴を, とくに皮層内厚壁組織の発現に関する異形根性に注目し検討することである. ハトムギ, ヒエ, トウジンビエを, 室温25℃に設定した人工気象室内に設置した根箱で生育させ, 第7葉展開期にそれらの根系を採取した. いずれの種においても, 種子根および中茎根では皮層内厚壁組織の発達は認められなかった. また, ヒエとトウジンビエの中茎根の中には, 後生木部中央大導管を欠くものも観察され, これも一種の異形根性と考えられた. 3種とも, それぞれの根系の形成過程において, 最初に皮層内厚壁組織の形成発達が観察されたのは鞘葉節根であった. すなわち, 皮層内厚壁組織の発達に関する異形性は, 種子根・中茎根と鞘葉節根・第1節根・第2節根の間に存在することが明らかとなった. しかし, トウジンビエでは, 供試した鞘葉節根の内の半数に, 皮層内厚壁組織の発達を欠くものが観察され, このことは本組織が可塑性に富む性格の組織であることを示唆するものと解された. また, 第1節根, および第2節根でもこの組織の形成発達が認められたが, その組織学的特徴は, 上位節から発根した節根ほど明確であった. この結果は, 皮層内厚壁組織の形成発達が個体発生の進行にともなって確立することを示している.
  • 村上 高, 細川 大ニ郎, 大橋 祐子
    1992 年 61 巻 3 号 p. 503-510
    発行日: 1992/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    形質転換植物中に導入された外来遺伝子の組織・細胞特異的発現の様相を明らかにするためのレポーター遺伝子として, β-グルクロニダーゼ(GUS)遺伝子が近年最もよく用いられている. しかし細菌由来のタンバク質であるGUSの植物細胞内における局在性に関しては明らかな知見がない. そこでGUSリポーター遣伝子を導入した形質転換タバコを材料として光学顕微鏡的および免疫電子顕微鏡的組織化学によりGUSの局在性を調べた. 葉身や茎の緑色組織では, GUSの反応生成物である青色色素が, 葉緑体を始めとする細胞内小器官上およびそれらの周囲付近に例外なく見出されたが, GUS活性の高い細胞では, これに加えて細胞内に青色の液状染色が観察された. このような細胞を原形質分離(PL)させることにより, 細胞外や細胞壁には全く活性がないことを確認した. そこで, これらの細胞におけるGUS染色像を, 液胞特異的染色色素である中性赤(NR)の赤色染色像とPLさせながら比較すると, 両者とも全く同様の挙動をした. また, 若い木部柔組織や毛茸では, 液胞が小さくまだ細胞内に充満していないが, NRによる染色が, GUSによる青色染色と全く類似の像として観察された. さらにGUS特異的抗体を用いたプロテインA-金コロイド法による電顕的観察では, 多くの金粒子が液胞内の電子密度の高い小胞中に局在するが, 他の部位にはごく稀か殆ど見出されないことが示された. これらの結果は, GUSは細胞質で作られた後, 最終的には液胞内に排出されることを示唆するものと考えられる.
  • Teresita O. GALAMAY, 山内 章, 野々山 利博, 河野 恭広
    1992 年 61 巻 3 号 p. 511-517
    発行日: 1992/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    異なる土壌水分条件(湛水区, 適湿区, 乾燥区)の, 節根軸内の保護組織(下皮, 皮層内厚壁組織, 内皮)の発達に及ぼす影響を解剖学的に調べた. 根箱で41日間生育させたハ卜ムギ(耐湿性大, 耐早性小), ヒエ(耐湿性, 耐早性とも大), トウジンビエ(耐湿性小, 耐早性大)の第1節根軸の基部から2cm毎の横断切片を作製し, 光学および蛍光顕微鏡観察を行った. ハトムギでは, 湛水, 適湿, 乾燥条件になるに従って, 下皮および皮層内厚壁組織の向頂的な木質化が促進される傾向を示した. また, 乾燥条件による地上部乾物重の減少はあまり大きくなかった(対適湿区比56%). 一方ヒエでは, 乾燥, 適湿, 湛水条件になるに従って下皮での木質化がやや促進され, また, 皮層内厚壁組織では湛水, 乾燥両条件下で促進される傾向を認めた. 地上部乾物重は湛水, 乾燥区でそれぞれ適湿区の95%, 70%で, 他種に比べて明らかに減少は少なかった. これらに対し, トウジンビエにおいては, 湛水区では木質化は内皮のみに限られ, 皮層内厚壁組織は分化そのものが抑制された. 一方乾燥区では, 3組織ともに向頂的木質化が顕著に促進された. それに伴い, 地上部乾物重は湛水区で大きく減少した(対適湿区比18%)のに対し, 乾燥区では減少割合は比較的小さかった(同64%). これらの結果は, 節根軸内のこれら3保護組織, と くに皮層内厚壁組織における向頂的木質化の進行が, その種にとって不適な土壌水分条件下での個体の発育に影響し, その作物の耐湿性・耐早性を規定していることを示唆している.
  • 渡邊 和洋, 土屋 幹夫, 小合 龍夫
    1992 年 61 巻 3 号 p. 518-526
    発行日: 1992/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    NaCl濃度処理に対する19種のコムギ属およびAegilops属植物の形態的生理的反応を比較検討した. その結果, (1)NaCl処理濃度に対する相対生長率(RGR)の変化には, 濃度に対して直線的に低下する種, 50 mMで急激に低下する種, 50 mMでむしろ高まる種など種間差が認められ, NARの変化の違いに基づくところが大であった. (2) NaCl処理濃度の上昇に伴いNa+およびCl-の含有率は高まり, K+含有率は低下したが, その増減の程度にも種間差が認められた. 特に葉身のNa+の含有率の種間差は顕著で, Dゲノムを持つ種で低い傾向にあった. (3) 個葉の光合成と蒸散速度の低下率についても種間差が認められ, 野生種で小さく, 普通系の種で大きく, 水蒸気拡散抵抗(ra'+rs')の増大と密接に関係していた. そして, ra'+rs'の増大は本来比葉面積(SLA)が大きい種で顕著で, 中でも葉身のNa+含有率が低い種ほど著しいこと, SLAの小さい種ではNa+含有率に関係なくra'+rs'が低く維持されることが明確になった. 以上の結果から, コムギ属およびその近縁植物では, 第一義的にはSLAが小さいことが, 次には葉身のNa+含有率が高いことが, 各々耐塩性に関連する重要な形質と推察された.
  • 鳥越 洋一, 天野 哲郎, 小川 奎, 福原 道一
    1992 年 61 巻 3 号 p. 527-535
    発行日: 1992/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    群馬県嬬恋村全域を対象としてキャベツ根こぶ病の発生箇所検出の可能性をランドサッ卜TMデータを用いて検討する前段階として, キャベツ圃場が精度高く識別できることを確認した. 1986年7月28日, 8月13日, 29日および1990年8月8日に得られたデータの内, 熱赤外を除く6バンドを解析に用いた. 主成分分析によると, データ変異の98%以上は3主成分に要約され, それらは明るさ, 湿潤, 緑色の程度を表す指標であった. 自然植生と農作物とは明るさの指標で, またキャベツ圃場とジャガイモ圃場とは湿潤の指標により区別された. キャベツ未収穫圃場と収穫直後ならびに収穫後の植物体の乾燥の進んだ圃場は相互に誤判読されることは少ないことが判明した. 根こぶ病検出の最適時期は病徴の現れる時期と収穫の進行を考慮すると8月上中旬と考えられた.
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