4種土壌において節位別分げつの出現とその有効化の過程を検討し, 収量性の差異を明かにするとともに, その改善方策を見いだそうとした. 品種はアサカゼコムギ, 農林61号および農林64号を供試した. 収量は灰色低地土で高く, 赤色土, 厚層多腐植黒ボク土, 淡色黒ボク土で低く, それらの差異は主に穂数の違いに起因していた. 赤色土ではT
c(鞘葉の葉腋から出現した分げつ), T
1, T
2, T
3(主稈の第1~3葉の葉腋から出現した分げつ)およびT
1P (T
1のプロフィルの葉腋から出現した分げつ)の出現率は, 多収を示した灰色低地土とほぼ同様であったが, 有効化率が低かった. また, T
R(上記以外の分げつ)は出現率, 有効化率ともに低く, T
3, T
1Pとともに収量に対する寄与度が小さかった. 可給態リン酸の極めて少ない厚層多腐植黒ボク土と淡色黒ボク土では, 生育初期に発生するT
c, T
1および分げつ期後期に出現するT
1P, T
Rの出現率が低く, これらの分げつは収量に対する寄与度が小さかった. これらのことから, 赤色土では, 1月以降に窒素成分を補う施肥や春先の地温上昇に伴って有効化してくる地力窒素を培養する必要があり, 2種類の黒ボク土では生育初期のリン酸吸収が旺盛となる土壌条件に改善する必要があると考えられた. また, 農林64号は, 他の2品種に比べ, 両黒ボク土でのT
1の出現率と有効化率が高く, 低リン酸土壌で多収性を示した.
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