日本作物学会紀事
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61 巻, 4 号
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  • 松江 勇次, 原田 皓二, 吉田 智彦
    1992 年 61 巻 4 号 p. 545-550
    発行日: 1992/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    福岡県内で行われた水稲奨励品種決定調査での食味試験データを用い, 品種や産地の安定性の評価を行った. 7年間に供試された9品種の食味の値から計算した分散に, Finlay・Wilkinsonの方法によって求めた回帰係数を補足して食味の安定性を各品種について評価すると, 品種によって安定性が異なり, 食味が良く安定性の高い品種, 食味は良いが安定性が低い品種, 食味は劣るが安定性の高い品種, 食味は劣り安定性も低い品種の4とおりに分類できた. 次に10カ所の産地で3か年に供試された5品種の食味から計算した分散と回帰係数とで産地の安定性について評価したところ, 産地間にも差が認められ, 食味が良く安定性のある地域と食味が低く安定性の低い産地などに分類できた. このように奨励品種決定調査の食味試験データの統計的解析により, 食味からみた品種, および県内各産地の安定性を量的に評価することが可能であった.
  • 稲葉 健五
    1992 年 61 巻 4 号 p. 551-554
    発行日: 1992/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    重さが75gで窒素(N)含量の異なる種球茎(2年子)を用いてコンニャク(供試品種, 在来)をポットに栽培し, 地上部の生育状態を調査するとともに, 植付け後35, 65, 95, 140日目に葉面積・根数・各部乾物重とN含量を測定した. その結果, 多N種球茎区(N, 0.44g/球茎)は少N種球茎区(N, 0.29g/球茎)よりも小葉が多く, いずれの生育時期においても葉面積・根数が増大した. また多N種球茎区は少N種球茎区よりも葉, 根, 新球茎+生子および全体の乾物重が重く, N吸収量が多かった. 特に根数・根重とN含有率については, 植付け後35日目と65日目において両区の差が顕著であった.
  • 牧野 盛行
    1992 年 61 巻 4 号 p. 555-560
    発行日: 1992/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水稲品種コシヒカリの主稈の葉耳遊離部は, 葉位上昇につれ順次長くなり, 止葉(I葉)から下へ数えてIV葉で最長となる. しかし, 止葉の下位III葉からは逆に短くなりはじめ下位II葉でざらに短くなり, 止葉に至っては葉耳遊離部はみられなくなる. 著者は, 上位葉における葉耳遊離部が最初に短くなる葉位の葉を葉耳短縮化第1葉と呼称する. 同様の短縮化が, 葉身, 葉舌, 葉鞘にもみられた. これら4葉器官のうち, 葉耳の短縮化第1葉位は最下葉位で現れ, 穂肥適期(葉齢指数90~92)よりも前に確認でき, 穂肥の適期をこれによって予見できる. さらに発芽後の各葉位について葉器官の形態変化を調べ, (1)葉耳短縮化第1葉の出葉期と節間伸長開始期とは近接すること, (2)葉耳短縮化第1葉での葉耳短縮化が確認された時点から穂肥適期(葉齢指数90~92)までの期間は, 品種によって異なるが, 日本晴では葉齢で0.60~0.90, 日数で4~5日であることなどを明らかにした.
  • 松崎 昭夫, 高野 哲夫, 坂本 晴一, 久保山 勉
    1992 年 61 巻 4 号 p. 561-567
    発行日: 1992/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    産地が明らかな内外の水稲品種について, 食味と穀粒成分および炊飯米のアミノ酸を分析し, 両者の関係について検討し, 次の結果を得た. 1)食味の評価は本学5月祭の見学者による官能テストによった. 平均値でみると穀物検定協会のパネルによる評価の序列と一致した. 2)穀粒成分の面では良食味品種はアミロース, 窒素ともに低いが, 食味の劣る品種にはアミロースが高い場合, 窒素が高い場合, 両者が高い場合がみられた. また, P/Am・Nは食味との間に有意の相関がみられた. 3)炊飯米の溶出アミノ酸はその総量と各アミノ酸の含有比率に品種の特徴が認められた. すなわち, 日本型の良食味品種では溶出アミノ酸総量が少なく, グルタミン酸, アスパラギン酸等の割合が高かった. 4)食味に及ぼす穀粒成分の影響を重回帰分析の標準偏回帰係数の符号でみると, リンはプラスの方向に, カリウムは逆方向に作用することが認められた. 同様にしてアミノ酸の影響をみると, アスパラギン酸とグルタミン酸はプラスに作用することが認められた. 5)以上の結果から, 炊飯米から溶出してくるアミノ酸総量中のグルタミン酸やアスパラギン酸の割合は食味に対してアミロースや窒素と同様に重要な働きをしているものと推測された.
  • 山岸 順子, 矢島 経雄, 衛藤 邦男, 鈴木 晴雄, 稲永 忍
    1992 年 61 巻 4 号 p. 568-575
    発行日: 1992/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    イネにおいて, 1穂穎花数に品種間差異をもたらす要因を明らかにするための端緒として, 茎葉諸形質と幼穂分化期における生長点付近の大きさおよび穂関連形質との関係を調査した. 材料として, 1989年から1991年まで3年間にわたり, 圃場栽培した1穂穎花数の異なる9品種を用いた. 主茎のみを用いて, 1穂穎花数と密接な関係にある茎葉・穂関連形質を探索したところ, 1次枝梗あたり穎花数(1穂穎花数/1次枝梗数), 節間直径(特に最上位の第1節間直径), 穂長の3者が, 各年次を通して強い正の相関関係にあることが認められた. この関係を各品種の全茎における調査結果と比較したところ, 第1節間直径および1次枝梗あたり穎花数に対する1穂穎花数の関係は, 品種・年次を問わず, 主茎のみを用いて得られた回帰直線と良く一致することが認められた. また, 主茎において, 1穂穎花数は, 幼穂分化期の生長点付近の太さ(幼穂基部直径)および第1節間直径と強い正の相関関係にあることが明らかとなり, 生長点付近の太さが同じであれば, 品種の違いにかかわらず, ほぼ同数の穎花が分化されることが示された. そして, 幼穂分化期の生長点付近の太さが大きければ, 品種・年次・茎の種類にかかわらず, 1次枝梗あたり分化穎花数が多く, その結果, 1穂穎花数が多くなると考えられ, また, そのような茎においては第1節間直径が大きいことがわかった.
  • 高橋 肇, 中世古 公男
    1992 年 61 巻 4 号 p. 576-582
    発行日: 1992/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    1988年と1989年の15回の播種期試験における発育のデータから, 北海道育成の早生品種ハルユタカとドイツ育成の晩生品種Selpekの気温および日長に対する発育反応の違いについて回帰式により生育相別に検討した. 気温と発育速度との間には, 両品種とも全生育相で高い正の相関関係が認められ, 生育前半(生育相IとII)では高温条件下においてハルユタカの発育速度がSelpekに比べ高くなることが示され, 登熟期間(生育相IVとV)では低温条件下においてSelpekの発育速度が著しく低下することが示された. さらに生育前半では両品種ともに日長とサーマル発育速度(発育速度を気温で除したもの, 1/D(T-TB), D:日数, T:気温, TB:基底温度)との間に正の相関関係がみとめられ, ハルユタカの発育速度がSelpekに比べ日長の影響を強く受けることが示された. 一方, 1986年, 1987年および1991年の3回の試験における発育データの実測値と計算値を気温と発育速度および日長とサーマル発育速度との関係を示す回帰式を用いて比較したところ, 各生育相とも近似した値を示し, 出芽期から積算して平均3.8日の誤差が認められるに過ぎなかった.
  • 有馬 進, 原田 二郎, 田中 典幸
    1992 年 61 巻 4 号 p. 583-589
    発行日: 1992/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水田に栽培したトウビシ(Trapa bispinosa Roxb.)の果実の発育過程を茎軸上の節位および開花時期の2つの側面から観察し, 精果実重の決定機構に関する検討を行った. いずれの分枝茎においても花芽の分化, 開花, 果実の生長などの諸過程は, 茎軸上における節位の進行に同調しており, 8月中に開花して順調な発育を示した果実はその発育程度に大きな変異が認められなかった. 最終果実重と開花時期との関係をみた結果, 精果実の得られる限界開花時期の存在が示され, 開花開始期から9月中旬までの期間が精果実を得る有効な開花期間であることが明らかとなった. さらに, 開花した花の精果実生産係数の推移に基づいて開花期間を細分すると, 精果実生産係数が高く安定している8月中の開花前期, 精果実生産係数が減少する9月上旬から中旬までの開花中期, および精果実生産係数が0となる限界開花時期をすぎた9月中旬以降の開花後期に分けることができた. また, 果実の最終生長量は, 開花前期内であれば, いずれの時期に開花したものであっても変異が小さく, 分枝茎間の差異も小さかった. さらに, 開花前期が同中期より長いために, 開花前期に形成された精果実の数は総精果実数の大半を占めるものと考えられる. したがって, これらのことが, 結果的に大多数の果実の生長量の変異を小さくし, 平均精果実重を安定させている要因となっているものと考えられた.
  • 有馬 進, 原田 二郎, 田中 典幸
    1992 年 61 巻 4 号 p. 590-596
    発行日: 1992/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水田に栽培したトウビシ(Trapa bispinosa Roxb.)個体について, 分枝茎構成が精果実の生産に及ぼす影響を明らかにするために, 茎軸上の花芽の着節様式, 各構成茎について花芽数, 開花開始日の早晩および精果実数を調査した. また, 栽植密度および時期を変えて遮光した場合の花芽の着節様式の変化についても検討した. 各茎軸においては, 花芽の着生した1~2節(有花節部)と花芽の着生しない4~10節(無花節部)が交互に連続した着節様式を示した. その場合, 無花節部の節数は上位節になるほど減少する傾向を示し, 低位の有花節部における開花前期に開花する果実の成熟条件が優れていることが推定された. 茎間の生産力を比較したところ, 低次位で母茎の低節位から早期に発生した茎ほど精果実数が多くなり, 高い生産力を示した. このような茎では開花前期に開花する果実数が相対的に多くなることによると考えられた. さらに, 栽植密度と遮光時期を変更した結果, 栽植密度が7.1本/m2より少ない時, あるいは6月に早期遮光を行った場合, 第1花芽の着生節位が高くなった. それは, 分枝茎構成において低次位, 低節位分枝の比率が減少したことによると考えられた. したがって, 分枝茎構成の低次位化および早期に発生する分枝茎の増加は, 精果実数を確保し, 多収を得るために重要であることが明らかとなった.
  • 広瀬 竜郎, 伊豆田 猛, 三宅 博, 戸塚 績
    1992 年 61 巻 4 号 p. 597-602
    発行日: 1992/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ラッカセイの地上部全体の光合成速度および蒸散速度においてしばしば観察される顕著な周期的変化の発生要因について検討した. まず, 周期的変化の発生と蒸散要求との関係を調べるため, 同化箱に導入する空気の湿度を変化させた. その結果, 導入空気の気温25℃における相対湿度が25%程度の比較的低湿度条件では供試個体のおよそ90%で光合成速度と蒸散速度の顕著な周期的変化が観察されたが, 相対湿度が65%程度の比較的高湿度条件ではほとんど観察されなかった. したがって, 空気湿度の低下にともなう蒸散量の増大が周期的変化の発生にとって重要であることが考えられた. また, 低湿度条件で周期的変化を示している個体の一部の葉をアルミ箔で覆って, 個体全体の蒸散量を抑制したところ, 周期的変化が消失した. 一方, 低湿度条件においても周期的変化が発生しない個体について, その根系の一部を切除する処理を行ったところ, 周期的変化が発生した. 以上の結果より, ラッカセイの光合成速度および蒸散速度の周期的変化は蒸散要求が大きい低湿度条件において, 蒸散量に対して吸水能力が十分ではない場合に発生するものと考えられた. また, 空気湿度低下時の周期的変化の発生しやすさの個体差の原因として吸水能力が関与する可能性が示された.
  • 楠谷 彰人, 浅沼 興一郎, 木暮 秩, 関 学, 平田 壮太郎, 柳原 哲司
    1992 年 61 巻 4 号 p. 603-609
    発行日: 1992/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    暖地(香川県)における移植期と施肥法との組み合せがキヌヒカリの収量と食味に及ぼす影響を検討した. 移植期は早植区(3月28日移植)と普通植区(6月17日移植), 施肥法は標肥区(10aあたり窒素11.0kg)と多肥区(同17.3kg)および有機肥区(同17.3kgを有機質肥料を主体に供与)であった. 1. 早植区の気象上の特徴は穎花分化始期までの著しい低温, その後出穂期までの低温低日射および出穂期後の高温高日射にあった. 出穂期後収穫期までの日平均気温は, 早植区では平均26.9℃, 普通植区では平均24.6℃であった. 2. 穂数およびm2あたり総籾数は早植区の方が多く, 総籾数と収量(粗玄米重)との間には有意な正の相関関係が存在した. 総籾数と登熟歩合とは有意な負の相関関係にあったが, 同じ籾数での登熟歩合は早植区の方が高かった. 3. 玄米中のアミロース含有率は早植区の方が低かったが, 施肥法による差は認められなかった. アミログラムの最高粘度とブレークダウンは, 移植期別には早植区の方が高く, 施肥法別には多肥区で低かった. タンパク質含有率は多肥区, 標肥区, 有機肥区の順に高かったが, 移植期間に差は認められなかった. タンパク質含首率と登熟歩合との間には有意な負の相関関係が存在した. 4. 官能検査による食味の総合評価値はタンパク質含有率とのみ有意な負の相関を示し, 本試験の場合, 食味は移植期よりも施肥法に強く影響された. 5. 以上から, 多肥栽培を避けることにより早期移植で多収と理化学的食味特性の向上が同時に実現される可能性が示された.
  • 佐藤 暁子, 末永 一博, 川口 數美
    1992 年 61 巻 4 号 p. 610-615
    発行日: 1992/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    試験は赤色土, 厚層多腐植黒ボク土, 淡色黒ボク土において, アサカゼコムギ, 農林61号, 農林64号を供試して行った. 赤色土では3品種とも3回の窒素追肥により, 多くの分げつの有効化率と子実重が増加した. 農林61号と農林64号では, 窒素追肥により生育中期以降に出現する分げつが著しく増加した. これらの分げつは, 有効化率が低く, 出現の増加は過繁茂につながったと考えられ, 倒伏を助長した. アサカゼコムギは, 窒素追肥しても生育中期以降の分げつの出現が増加せず倒伏しなかったので, 平均1穂粒重の増加が大きかった. 一方, 黒ボク土ではリン酸50 kg/10 aの増肥により, 多くの分げつの出現率が増加し, Tc(鞘葉の葉腋から出現した分げつ), T1, T2, T3 (主稈の第1~3葉の葉腋から出現した分げつ)の子実重が増加した. 農林64号はリン酸の不足する黒ボク土においてはT1の出現率と有効化率が高いという有利性を示したが, リン酸増肥によりアサカゼコムギと農林61号でもT1が出現し収量に寄与することになったことで収量の品種間差異が小さくなった.
  • 佐藤 暁子, 小柳 敦史, 末永 一博, 渡辺 修, 川口 數美, 江口 久夫
    1992 年 61 巻 4 号 p. 616-622
    発行日: 1992/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    灰色低地土, 赤色土, 厚層多腐植黒ボク土および淡色黒ボク土の4種類の土壌に生育したアサカゼコムギ, 農林61号の品質について検討した. 灰色低地土で生育したコムギは粗タンバク含量が中庸であるのに対し, 赤色土で生育したコムギは子実や粉の粗タンパク含量が低く, ファリノグラフの吸水率(Ab.)およびめん官能試験の粘弾性が低かった. 2種類の黒ボク土で生育したコムギは子実の灰分含量が低く, 子実や粉の粗タンパク含量が高く, 生地の弾性が高かった. 赤色土では堆肥施用と窒素追肥により, 黒ボク土では, 堆肥施用とリン酸の多量施用によりそれぞれ増収し, 品質面では赤色土での低い粗タンパク含量が増加, 黒ボク土での高い粗タンパク含量が低下し, それぞれ適正値に近づいた. 黒ボク土では堆肥施用とリン酸の多量施用により粉の明るさおよびめんの色が向上した. さらに, 施肥法の改善により淡色黒ボク土ではアサカゼコムギと農林61号のめん適性が向上し, 赤色土と厚層多腐植黒ボク土では農林61号のめん適性が向上した.
  • 高橋 清, 大竹 博行, 星川 清親
    1992 年 61 巻 4 号 p. 623-628
    発行日: 1992/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    イネの一生を通じて, 茎の起き上がり能力の変動を明らかにするために, 水稲品種ササニシキを用いて以下の実験を行った. 第1実験Aでは1ポットあたり20粒播種し, 出現した分げつを切除し, 主茎のみを残した. 葉齢7から出穂後3週目までの期間を, 11の段階に分けて, 各生育時期にポットごと横転する処理を行った. その結果, 葉齢7から出穂後1週目までの処理では, 植物体は完全に鉛直方向へ起きあがった. しかし, 出穂後2週間目以降は, 起き上がり能力が著しく減退した. また, 生育の推移と共に, 反応葉枕は上位節へと移動すると共に, 反応葉枕数は次第に減少した. なお, 1個の葉枕の反応能力の持続期間は, 伸長茎部の葉枕で長いことが示された. 第1実験Bでは, 葉齢11.1から12.1の期間を6段階に分けて, 起き上がり能力を調査した. その結果, 前半は第10節の葉枕が最大反応を示した. しかし, 後半は第10節の反応が衰え, その低下を補うように, 第11節の葉枕が最大反応を示した. 第2実験では, 登熟期の起き上がり能力の減退要因を探った. その結果, 横転と穂切除の同時処理によって, 起き上がりが促進されることが認められた. これは, 力学的に穂による荷重が減少したためと考えられる. 一方, 横転処理開始1~2週間前に穂を切除した場合は, むしろ起き上がりは抑制された. この場合, 葉枕部の珪酸蓄積が穂切除によって顕著に増大する事が認められた. 従って, 葉枕部への珪酸蓄積が起き上がり能力の減退に関わっていることが示唆された. その他の要因についても考察を行った.
  • 原田 二郎, 田中 典幸, 有馬 進, 栄 誠三郎
    1992 年 61 巻 4 号 p. 629-634
    発行日: 1992/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    Inabenfideが水稲の分枝根形成へ及ぼす異なる2つの影響のしかたを, 1/2000 aワグナーポットを5個の部分に分割した特殊な装置を考案し, 分離して検討した. 水稲品種コシヒカリを, ポットの中央に立てた多数の小孔を開けたステンレス円筒に生育させ, Inabenfide処理後に根を周囲の4つの等しい扇形部に伸長させた. 処理ポットでは, 中央部および1個の扇形部を無処理とし, 残りの3個の扇形部に異なる濃度のイナベンフィド(セリタード5粒剤, イナベンフィド含有量5%)の処理を行い, 無処理ポットと比較した. 冠根1本当り分枝根長および単位冠根長当り分枝根長は, いずれも, Inabenfide処理ポットでは, 処理扇形区と同様, 無処理扇形区においても顕著な増加を示した. この場合, 処理ポットの無処理扇形区における増加量の無処理ポットに対する相対比は正の値を示した. 一方, Inabenfideが処理部において及ぼす影響を, 無処理ポットに対する処理ポット内の処理扇形区および無処理扇形区の差の相対比でみると, この比は負の値を示した. また, 単位総根長当り乾物根重の場合には逆の現象が認められた. したがって, イナベンフィドは, 直接的には処理土壌中で分枝根の発育を阻害するが, 処理部以外の部分において分枝根の発育を間接的に促進することが示唆され, 前報で認められた全根系にわたる分枝根形成の促進効果は, 2つのあい反する効果の総合的な結果として現れたものと考えられた.
  • BAYORBOR Thomas Basuglo, 木暮 秩, 浅沼 興一郎, OFOSU John ANIM, 鈴木 則行
    1992 年 61 巻 4 号 p. 635-641
    発行日: 1992/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ガラス室において3水準の窒素レベル(0, 100, 200pm)で砂耕栽培したダイズを用い, 窒素の集積, 子実の脂肪とタンパク質含量, ならびに子実における14C放射活性の節位別分布に及ぼす影響について調査した. 14CO2は栄養生長期, 開花期, 登熟初期, 及び登熟後期に供与した. 培養液の窒素レベルが高くなるほど各器官内窒素濃度は高く, 栄養器官では生育にともない低下した. 窒素レベルは子実の脂肪やタンパク質含量にほとんど影響しなかった. 栄養生長期, 開花期に14CO2を供与しても, 子実中に14C活性は検出されなかった. 登熟後期に供与した場合の方が, 登熟前期の場合よりも14C活性が強く検出された. 窒素レベルは14Cの量とその節位別分布に大きな影響を与えなかった. また14C活性は2次分枝<主茎<1次分枝の順であった. これらの結果から, 窒素レベルは子実の発達と品質に大きな影響を及ばさないものと考察した.
  • Tiemi NAKAMURA, 谷口 武, 前田 英三
    1992 年 61 巻 4 号 p. 642-650
    発行日: 1992/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    コーヒー葉身の形態を, 光学顕微鏡と走査型電子顕微鏡を用いて研究した. 葉の背軸側の中央脈と二次脈のあいだに, 円形または楕円形の穴としてドマチアが認められた. 穴の縁およびその付近に36μmから143μmまでの長さの単細胞性毛茸が観察された. 穴の内部が入口より大きく, ドマチアがポケット型であることを確認した. 組織培養実験の際に殺菌液がドマチアのなかにはいらず, 滅菌効果が不十分になることから, この構造が注目された. さらに, コーヒー葉の維管束や葉肉構造についても研究した. また中央脈や二次脈付近の下皮細胞に, 染色性の高い物質の存在を認めた.
  • 小出 可能, 石原 邦
    1992 年 61 巻 4 号 p. 651-658
    発行日: 1992/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    シンクが制限された時に示す作物の反応を明かにするために, 穂切除が登熟期間中の乾物生産と乾物分配, および止葉中の非構造性炭水化物含量の変化に及ぼす影響を花序が異なるコムギとオオムギについて調べた. 穂切除処理後から収穫期まで, 両作物とも対照区と穂切除区の間の全乾物重に違いは無かった. しかし, 乾物分配には大きな違いが有り, 穂切除によって老化に伴う根重の減少が小さくなり, 葉身, 葉鞘, 稈と遅発生分げつ重が増加した. 穂切除区の稈+葉鞘重はコムギでは登熟後期まで減少しなかったのに対して, オオムギでは対照区と同様に減少した. 遅発生分げつ重の増加はコムギに比べてオオムギの方が大きかった. 葉身や葉鞘の乾物重の増加はコムギでは上位葉でより大きかったがオオムギではこうした葉位間差は無かった. 穂切除による止葉の乾物重の増加は両種とも主としてシュークロース含量の増加によるもので, コムギの方がオオムギよりも大きかった. 一方, グルコースやフルクトースの増加はオオムギの方がコムギよリも大きくその開始も早かった.
  • 小出 可能, 石原 邦
    1992 年 61 巻 4 号 p. 659-667
    発行日: 1992/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    シンクが制限された時に示す作物の反応を明かにするために, 登熟期のコムギを用いて穂切除が止葉の光合成に及ぼす影響を調べた. 穂切除11日後までは対照区と穂切除区の間のCO2交換速度に有意差は無かったが, 11日以後は穂切除区のCO2交換速度は対照区より高かった. 両区の間のCO2交換速度に違いが無かった穂切除11日後までの拡散伝導度, 見かけの量子収量, 見かけのCO2固定効率とクロロフィル含量には両区の間に違いが無かった. このことから, この時期には両区の間に気孔開度, 光化学系と炭酸固定系の活性に違いが無いことが推察された. 一方, 穂切除区のCO2交換速度が高かった11日以後の両区の間の拡散伝導度, 見かけの量子収量とクロロフィル含量には違いが無かったが, 見かけのCO2固定効率とリブロース-1 / 5-ニリン酸カルボキシラーゼ含量は穂切除区が対照区より高かった. このことから, この時期の穂切除区のCO2交換速度が高かったのは炭酸固定系の活性が高かったためで, 穂切除によって止葉の老化が遅れたことがわかった.
  • Totik Sri MARIANI, 三宅 博, 谷口 武
    1992 年 61 巻 4 号 p. 668-675
    発行日: 1992/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    0.2mgl-1 2, 4-Dと0.1mgl-1 カイネチンを含むMS培地で1週間培養したシコクビエの緑色カルスから高収量のプロトプラストが分離できた. この分離には2%セルラーゼYCと0.2%ペクトリアーゼY-23を含む酵素液を用いた. プロトプラストを0.4mgl-1 2, 4-D, 0.1mgl-1カイネチン及び5%ココナッツ液を含むMS液体培地で培養すると12時間までに75%のプロトプラストで細胞壁の形成が始まった. 細胞分裂は培養後24時間以内に認められ, その割合は約15%であった. 培養4日後には分裂の継続した細胞では小型のコロニーを形成した. しかし, その後培養中にそれ以上の増殖はなく, また生存率は次第に減少した.
  • 土屋 幹夫, MUNANDAR, 小合 龍夫
    1992 年 61 巻 4 号 p. 676-682
    発行日: 1992/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水ストレスに対するイネの反応の品種間差異を評価するために, 培地水ポテンシャルと空気湿度を組み合わせた条件で, 個体当りの吸水蒸散量を重量法で調査した. 培地水ポテンシャルはポリエチレングリコール6000を用いて設定した. 水ストレス下での吸水蒸散量の品種間差異は, 空気湿度45%以下で顕著で, 低空気湿度下で培地水ポテンシャルを変えての吸水蒸散量の測定は, 品種の水利用特性を評価する有効な方法と考えられた. 吸水蒸散と葉身の含水率に基づいで, 13品種は3つのグループに分類され, 従来耐乾燥程度が大きいとされた品種では小さい品種に比較して, 低湿度低水ポテンシャル下での吸水蒸散量の低下が小さく, 含水率が高く維持されていた. また, 耐乾燥程度大の品種では, 水ストレス処理によるデンブン含量の低下と糖含量の増大が認められ, 水ストレス下でデンプンを糖に変える特性は浸透調節を通じて耐乾燥性の付与に係わる形質の一つと推定された.
  • 中谷 誠, 古明地 通孝
    1992 年 61 巻 4 号 p. 683-684
    発行日: 1992/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
  • 中谷 誠, 松田 智明
    1992 年 61 巻 4 号 p. 685-686
    発行日: 1992/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
  • 窪田 文武, Ritva KNOF, 彌冨 道男, 縣 和一
    1992 年 61 巻 4 号 p. 687-688
    発行日: 1992/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
  • 森田 茂紀, 山崎 耕宇
    1992 年 61 巻 4 号 p. 689-690
    発行日: 1992/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
  • 井之上 準, 西谷 俊昭, 望月 俊宏, 折谷 隆志
    1992 年 61 巻 4 号 p. 691-692
    発行日: 1992/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
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