日本作物学会紀事
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62 巻, 3 号
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  • 磯部 勝孝, 藤井 秀昭, 坪木 良雄
    1993 年 62 巻 3 号 p. 351-358
    発行日: 1993/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ダイズ (品種 : エンレイ) におけるVA菌根菌の生態について調査し, ダイズ栽培におけるVA菌根菌利用について検討した. VA菌根菌の感染は出芽後50日目に植物体のリン酸含量を増加させた. さらに, 感染によるダイズの生育や収量の向上には環境等の条件を満たすことが重要である. また, 過リン酸石灰の施用量に伴う有効態リン酸の増加によって感染率が低下するとともに胞子形成も抑制された. その結果, 今後もダイズ栽培においてリン酸肥料の施用を続けていく限りVA菌根菌による土壌中のリン酸の利用は容易ではなさそうである.
  • 森田 茂紀, 根本 圭介
    1993 年 62 巻 3 号 p. 359-362
    発行日: 1993/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水稲根系の形態について研究していく場合, 根系の枠組みを構成している1次根の伸長方向は, 重要な形質となる. 著者等は, 1次根の伸長方向を定量的に推定するための方法を開発改艮してきた. しかし, ある根系における1次根の空間的な分布を評価したり, 異なる根系を相互に比較する方法は, いまだ確立していなかった. そこで, 1次根が空間的に均等に伸長していることを仮定した水稲1次根均等伸長モデル (均等モデル) を想定した. この均等モデルの特性について検討を行なった結果, 1次根の走向角 (1次根と水平面とがなす角度) をθとした場合, 走向角別の1次根の頻度分布がcos θであること, 走向角の平均値が約32.7゜であること, 走向角が0-30゜と30-90゜の1次根の数が等しいことなどが分かった. 実際に, 水稲品種むさしこがねおよびIR50の根系における1次根の走向角別頻度分布を均等モデルと比較したところ, いずれの品種も斜横方向が若干「空いて」いるが, 斜下方向が若干「混んで」いるという傾向を示した. さらに, 両品種の差異についてみてみると, IR50に比較してむさしこがねが下方向で1次根の相対的な密度が高いことも分かった. 以上のように, 均等モデルは1次根の空間的分布における品種間差異の解析にも有効であることが分かった.
  • 山本 富三, 田中 浩平, 角重 和浩
    1993 年 62 巻 3 号 p. 363-371
    発行日: 1993/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    福岡県内の代表的な水田土壌を対象に, 土壌窒素の無機化特性と水稲生育期間中の窒素吸収パターンについて検討した. 代かき前の作土を採取し, 室内定温培養実験を行った結果, 窒素無機化量 (N) と培養日数 (t) との関係は, モデル式 : N=N0 (1-e-kt)+Bによく適合し, 土壌窒素の無機化を特徴づける3つの特性値 : 可分解性窒素量N0, 25℃における速度定数k (25℃), 見かけの活性化エネルギーEaが得られた. kは土壌の種類で著しく異なり, 地力窒素発現量はkの大きい土壌で多かった. 同一種の土壌では, 地力窒素発現量はN0の値に左右され, 地力増強が進んだ圃場でN0の値が大きかった. 温度変化によって受ける影響の大きさを表すEaには差がないと考えられた. さらに, 各試験地内の圃場で地力窒素発現量の推定を行うとともに, 水稲窒素吸収量の時期別推移を調べた. 窒素無施用区の水稲窒素吸収量を地力窒素吸収量の指標とすると, 地力窒素吸収量は圃場間で著しい差があり, 肥沃度が低い圃場は高い圃場に比べ, 地力窒素の総吸収量に占める生育前半の吸収割合が少なかった. 地力窒素発現量に対する地力窒素吸収量の割合は, 移植後25日 (7月半ば) 頃までは35%前後であったが, 移植後35日以降は70~80%で推移し, 地力窒素が効率的に水稲に吸収されていることが窺われた. 肥料窒素の吸収量は土壌間で異なるものの, 地力窒素吸収量の土壌間差に比べ小さかった. また, 肥沃度が異なる各水田圃場の調査結果を基に, 収量レベルに対応した生育期間中の窒素吸収量の指標値を求めた.
  • 佐藤 暁子, 小柳 敦史, 和田 道宏
    1993 年 62 巻 3 号 p. 372-377
    発行日: 1993/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    コムギ3品種について, 凍霜害の被害程度に対する播種密度の効果を, 節間伸長期の窒素, リン, カリウム, 糖類及びデンプンの含有率との関係から検討を加えた. 子実収量は低密度区 (150粒/m2) で高く, 高密度区 (300粒/m2) で低かった. 低密度区では, 主要分げつが凍死しても, 節間伸長期の窒素及びカリウム含有率が高いため, 分げつ中期以降に出現した分げつが有効化し収量に寄与した. 一方, 高密度区では節間伸長期の窒素やカリウムの含有率が低く, 分げつ中期以降に出現した分げつが弱小化し, 主要分げつが凍死しても, これらの分げつが有効化しないため, 減収程度が大きくなった.
  • 大川 泰一郎, 石原 邦
    1993 年 62 巻 3 号 p. 378-384
    発行日: 1993/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    耐倒伏性に関係する稈基部の曲げ応力が著しく異なる7品種の水稲を用いて, 稈を構成するどのような構成成分が曲げ応力と関係し, 品種間の曲げ応力の相違をもたらすかを検討した. 稈の細胞壁構成成分の組成割合には品種間で数%の相違は認められたが, この組成割合と品種間の曲げ応力の相違との間に明確な関係は認められなかった. 稈の構成成分の含有量と曲げ応力との関係を明らかにするため, 単位組織体積当りの細胞壁構成成分含有量, すなわち, 細胞壁構成成分密度を品種間で比較した. その結果, 細胞壁多糖類構成単糖であるグルコース密度, キシロース密度および同じく細胞壁を構成するリグニン密度に大きな品種間差異があった. 曲げ応力が大きいことによって葉鞘付挫折時モーメントが大きく倒伏抵抗性の大きい台中189号, 台農67号では, 曲げ応力の小さいコシヒカリ, フジミノリに比べてグルコース密度, キシロース密度, リグニン密度が大きかった. 一方, これらの品種に比べて断面係数は約2倍大きいが, 曲げ応力はコシヒカリ, フジミノリ同様に小さい密陽23号では, グルコース密度, キシロース密度は大きかったがリグニン密度はコシヒカリ, フジミノリと同様に小さかった. 実験に用いた7品種について, 細胞壁構成単糖密度, リグニン密度それぞれと曲げ応力との偏相関係数を求めた結果, リグニン密度と曲げ応力との間に偏相関係数0.81の高い相関関係が認められた. 以上の結果から, 稈の細胞壁構成成分の1つであるリグニンの密度は, 耐倒伏性と関係する稈の曲げ応力の品種間差異をもたらす主な原因であると推察した.
  • 楠谷 彰人, 浅沼 興一郎, 木暮 秩
    1993 年 62 巻 3 号 p. 385-394
    発行日: 1993/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水稲における収量性向上のための育種目標を検討するために, 100品種を供試し, その収量構造を比較した. 供試品種は平均籾比重 (S) によってI (S1.10以上) およびII (S1.10未満) に, また, 茎葉から籾への貯蔵同化物の転流割合 (T/Y) によってA (T/Y19.8%未満), B (T/Y19.8~35.0%) およびC (T/Y35.0%以上) に区分された. IおよびIIとA~Cとの組み合わせによって, 品種は収量構造を異にする5つの型に細分された. 最も多収を示したIC型は稔実籾総容積 (NV) が極めて大きく, SとT/Yが高かったが, 穂揃期後の同化量 (ΔW) はそれ程多くなく, ΔW/NVは5型中最も低かった. また, この型では同じ登熟歩合でのSが他の型よりも高かった. 型別の今後の多収性育種の方向を検討した結果, IA型ではNVの拡大, IIA型では転流量 (T) の増加, IBとIC型ではNVの拡大とΔWの増加, IIB型ではΔWの増加が, それぞれ収量性向上のための最も重要な育種目標になると考えられた.
  • 平井 源一, 中條 博良, 田中 修, 奥村 俊勝, 竹内 史郎, 平野 高司, 大森 雅代
    1993 年 62 巻 3 号 p. 395-400
    発行日: 1993/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    昼間における大気の相対湿度が60% (低湿度区) と90% (高湿度区) の2区を, 気温24/20℃ (昼温/夜温) (低温), 28/24℃ (適温), 32/28℃ (やや高温), 36/32℃ (高温) のそれぞれの温度について設けた. これらの条件で5葉期の水稲を4日間水耕栽培し, 処理期間中の標識窒素 (15N) の吸収量を調べ, 窒素吸収に及ぼす大気湿度の影響を検討した. 1. 処理開始後4日間における個体当たりならびに各葉位葉および根部の乾物重増加量は一部の場合を除いて気温24/20℃と28/24℃では相対湿度90%区が60%区より多く, 32/28℃と36/32℃では60%区が90%区より多かった. 2. 個体当りならびに各葉位葉および根部の15N吸収量ならびに含有率は, 一部の場合を除いて気温24/20℃と28/24℃では相対湿度90%区が60%区より多く, 32/28℃と36/32℃では60%区が90%区より多かった. 以上から, 水稲幼植物の窒素吸収は大気湿度に影響され, その影響は温度によって異なることが明らかになった.
  • 王 培武, 礒田 昭弘, 魏 国治
    1993 年 62 巻 3 号 p. 401-407
    発行日: 1993/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    乾燥条件下でのダイズの葉の調位運動の実態と葉温との関係を調査するため, 乾燥地域である中国新疆ウイグル自治区石河子のコンクリート枠圃場で実験を行なった. 適宜かん水処理した区 (かん水区) と一定期間かん水を行なわなかった区 (無かん水区) を設け, 調位運動の活発な珍珠塔2号と不活発な黒農33号の2品種を栽培し, 登熟中期に, 葉群構造, 頂小葉の葉温を調査した. 黒農33号の無かん水区は茎長が小さくなり, 葉面積指数もかん水区の約半分になった. 珍珠塔2号の無かん水区は茎長は余り変わらないものの, 各層の葉面積指数が小さくなり, 全体の葉面積指数がかん水区の半分になった. 珍珠塔2号の無かん水区は早朝から葉身が立ち上がり, 日中は太陽光線と平行に近い状態となった. かん水区も調位運動を行なったが無かん水区ほど顕著ではなかった. 最上層の葉温はかん水区で午前中気温より少し高くなったが, 正午前から低く推移した. 無かん水区ではほとんどの時間気温より低く推移した. 黒農33号の無かん水区では葉身に萎れがみられた. かん水区では珍珠塔2号ほど活発ではなかったが, 昼間太陽光線と平行になろうとする調位運動を行なっていた. かん水区の最上層の葉温は正午前から気温より低く推移したが, 無かん水区では朝から気温よりかなり高く推移し日射量の変化に影響されていた. 珍珠塔2号の無かん水区に一時的にかん水を行なったところ, かん水5日後においても水分ストレス条件下と同様な太陽光線を避ける調位運動が認められた.
  • 佐藤 徳雄, 渋谷 暁一, 三枝 正彦, 阿部 篤郎
    1993 年 62 巻 3 号 p. 408-413
    発行日: 1993/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    速効性の硫安を基肥および追肥に用いる慣行栽培を対照区として, 肥効調節型被覆尿素を用いた水稲 (品種チヨホナミ) の全量基肥不耕起栽培 (LP区) を試み, 次の結果を得た. 1) LP区の水稲は生育のごく初期に対照区よりやや劣るものの, 6月初旬以降は草丈, 葉色, 茎数および乾物重のいずれにおいても対照区より優った. 2) 対照区では, 湛水直後に急激な土壌無機態窒素の消失が起こり, 稲体は窒素欠乏状態 (クロロシス) を追肥時期まで示した. これに対してLP区の水稲は, 栽培期間中正常な生育を示した. 3) LP区の玄米収量は, 登熟期が高温・多照で経過した1990年が57.1kg/a, 低温・寡照で経過した1991年が51.2kg/aで, 対照区よりもそれぞれ55%および33%優った. 対照区の低収量の原因は, 施肥窒素が湛水とともに消失し, 主としてm2当たり穂数が少なくなり, 籾数の確保が不充分であったためと考えられる. 4) LP区の窒素吸収量は, 対照区に比べて分げつ盛期以降は著しく優り, 成熟期には対照区の1.57倍に達した. 施肥窒素の利用率は, 全量基肥区のLPが63.2%, 対照区の基肥硫安が8.5%, 幼穂形成期の追肥硫安が52.8%, 穂揃期の追肥硫安が41.5%であった. 5) 以上の結果から, 水稲の不耕起直播栽培に対する肥効調節型被覆尿素の全量基肥施用効果が大きいことが明らかになった.
  • 源馬 琢磨, 三浦 秀穂, 林 克昌
    1993 年 62 巻 3 号 p. 414-418
    発行日: 1993/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    わが国の水田利用再編対策のもとで, ワイルドライス (アメリカマコモ) のもつ水生植物としての特性や寒冷地での適応性は, 北日本での実用的な水田栽培の可能性に対する興味を刺激している. 本研究では, 幼植物体の生育に及ぼす水深と温度の影響を検討するため, ニつの実験を行った. 実験1はNetumを用いてガラス室で, 実験2はK2を用いて人工気象室で実施した. 移植後30日目の乾物重でみた生育は, 実験1では水深2cmで, 実験2では2~6cmで促進された. これらには葉と根の数とサイズの増加が貢献していた. 草丈は水深の違いによって大きく影響されないが, 8cm以上の水深で栽培したとき徒長気味の生育を示し, 幼植物体の乾物重は大きく低下した. 実験2でみた温度の影響は強く表れ, 12℃に比べ20℃での生育が優った. 温度と水深の間には相互作用がなく, これら二つの要因は独立して幼植物体の生育に影響を及ぼすとみられた.
  • KARIM M.A., 縄田 栄治, 重永 昌二
    1993 年 62 巻 3 号 p. 419-428
    発行日: 1993/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    六倍体ライコムギの栽培における塩分と温度の複合的な影響を検討する目的で, 50mMの塩化ナトリウム水溶液をかんがい水として用い, 昼/夜温を20/15℃の低温または30/25℃の高温条件で試験栽培した場合の収量, 体内の無機イオン濃度, および光合成速度等の生理学的諸形質を解析した. 試験は遺伝的背景の異なる2品種, WelshおおびCurrencyを用いたガラス室内でのポット栽培試験によった. その結果, 塩分の生育および収量に対する抑制的な影響は, 低温区よりも高温区において顕著であった. 種子収量を指標として比較した場合, 高温区ではCurrencyの方がWelshよりも耐塩性が大であったが, 低温区ではこの関係が逆転した. 塩分と高温の複合的な影響により可稔穂数や個体当たりの種子数が著しく低下した. また, 塩分は浸透ポテンシャル, 蒸散速度および光合成速度を低下させるが, その低下はとくに高温区において著しくなること, さらに塩分は葉のClおよびNaイオン濃度を上昇させるが, それはとくに高温区において著しいこと, またKイオン濃度をWelshにおいては低下させるが, Currencyにおいては上昇させること, そしてCaおよびMgイオン濃度を低下させることなどが明らかになった.
  • PHANSIRI Salak, 三宅 博, 前田 英三, 谷口 武
    1993 年 62 巻 3 号 p. 429-437
    発行日: 1993/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ダイズ (Glycine max (L.) Merr.) プロトプラストを懸濁培養から分離し, 培養時の形態変化を透過型電子顕微鏡で観察した。プロトプラスト表面での細胞壁形成時は細胞質から細胞膜の外側への滑面小胞の放出が伴った. これらの小胞は細胞壁形成のために細胞質から膜物質を運ぶものと思われる. 時間の経過とともに, 膜物質は徐々に蓄積し, 培養2-3日後に複雑な形の細胞壁が形成された. セルロース・ミクロフィブリルの微細構造は多糖染色法を用いて培養約3日後に明確に観察された。細胞壁形成の間, 多数の滑面小胞が常に細胞膜と新しく合成された細胞壁との間に観察された. 核分裂そして細胞分裂が培養約1日後に観察された. 今回及び前回の研究結果から細胞壁形成は通常細胞分裂より早く起こり, 両反応は同時に進行すること, また滑面小胞が細胞壁形成に大きな役割を果していることが結論として言えよう.
  • 桃木 芳枝, 桃木 徳博
    1993 年 62 巻 3 号 p. 438-446
    発行日: 1993/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    マレーシア (熱帯常緑降雨林地域) 品種のサンジャクササゲ, キュウリおよびダイコンとそれらの日本 (温帯地域) 品種との比較においてアセチルコリン (ACh) 分解酵素の活性ならびにストレス後の酵素活性の変化を検討した。ACh分解酵素の活性は, サンジャクササゲでは葉枕, キュウリでは茎と節, そしてダイコンでは葉柄と根で高かった. また, ACh分解酵素活性は, 熱ストレス後, サンジャクササゲでは第1および第2葉枕, キュウリでは茎と節そしてダイコンでは葉柄と根で増加した. とくに, マレーシア品種の活性は, 日本品種の同じ器官に比較し2倍以上高く, また, これらのマレーシア品種はストレス後ACh分解酵素が著しく変化した. さらに, これらのACh分解酵素活性は, ACh分解酵素の抑制物質であるネオスチグミンによって82-95%抑制された。以上の結果から, ACh分解酵素活性は, 明らかに熱ストレスに反応し, サンジャクササゲの葉枕, キュウリの茎と節およびダイコンの葉柄と根において熱ストレス後ACh分解酵素の活性が著しく増加した. とくに, マレーシア品種では, 熱ストレスに対する酵素活性の変化が著しいことが認められた.
  • 田中 実秋, 山内 章, 河野 恭廣
    1993 年 62 巻 3 号 p. 447-455
    発行日: 1993/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    耐肥性程度の異なる水稲4品種を用い, 異なる窒素施用量が根系発達に及ぼす影響を, 根系構成要素別に比較検討した. 窒素施用量の違いにより3処理区をもうけ, 各品種3反復で実験を行った. 処理区は5N区 (5kg-N/1000m2), 10N区 (10kg-N/1000m2), 30N区 (30kg-N/1000m2) とし, 施肥量を2分して基肥と追肥 (播種後35日) で与えた. サンプリングは播種後33日と出穂期に行なった. 播種後33日目の個体では, 全品種で窒素増肥に伴い節根数は10N区と30N区で増加したが, 総節根長, 総根長の窒素増肥に対する反応は, 5N区に対し, 30N区で減少する品種と, 全処理区で同等の値を示す品種に別れた. 出穂期の個体では, 全ての品種において33日目の個体と比較して, 窒素施用量の増加に伴う節根軸長の抑制程度が小さく, 節根数の増加とあいまって総節根長は増加した. 一方, 側根の発達程度には品種間差異が認められ, 品種の耐肥性程度の大小によって明確に異なる反応を示した. 耐肥性程度の小さな品種は, 窒素増肥に伴って側根を発達させ, 30N区においても側根長を増加させたが, 耐肥性の大きな品種は, 30N区において側根長を増加させず10N区と同様の値を示した.
  • 加藤 恒雄, 桜井 直樹, 倉石 晉
    1993 年 62 巻 3 号 p. 456-461
    発行日: 1993/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    粒大の異なるイネニ品種, BG1とコシヒカリを用いて, 出穂開花後の発育中の粒における遊離型の内生アブシジン酸 (ABA) 含量の変化を観察した. 両品種とも一粒当たり内生ABA含量およびABA濃度は, 出穂後増加し粒重増加期の中間において最大値に達し, その後減少して粒重増加が完了した時期以降は低いレベルにとどまった. 粒重増加速度および最終粒重の高い品種BG1はどの時期においても高い一粒当たりABA含量を示した. 一方, ABA濃度に関しては, 両品種に差は認められなかった. これらの結果は, 発育中の米粒内の内生ABAが同化産物の粒への蓄積に対して何らかの役割を果たし, かつ粒重増加速度の品種間差の一因となりうることを示唆する.
  • 井上 吉雄, 森永 慎介, 芝山 道郎
    1993 年 62 巻 3 号 p. 462-469
    発行日: 1993/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    2種類の分光放射計を用い, トウモロコシ, ラッカセイ, ダイズおよびコムギの4種類の畑作物の着生葉および採取葉の反射スペクトルを, 3種類の測定条件で測定した ; すなわち, 着生葉を対象として圃場で太陽光下および人工光源と野外用に工夫した積分球を用いて行った測定, および採取した葉を対象とした実験室内での積分球付き分光放射計による測定である. 空気中の水蒸気による吸収のため, 1350-1480nm, 1800-2000nm, および2350-2500nmの波長域では, 晴天日の日中でも野外における葉の反射スペクトルの計測は困難であった. 相対含水率 (RWC, %) は反射スペクトル指標1n (ρ1910), ρ1430および1n (ρ1650) と, 単位葉面積当り含水量 (WC, H2Omg cm-2) はρ1200/ρ1430, ρ1650/ρ1430, ρ800-ρ1200およびρ1100-ρ1200とそれぞれ密接に関係していた. RWCと各スペクトル指標の間には, 個々の作物別には非常に高い相関関係があったが, 全作物に共通の回帰直線は得られなかった. WCと各指標の間には, 葉厚, クロロフイル濃度等にかかわらず作物共通の密接な直線関係が得られた. 波長1121nmにおける1次微分係数値が葉の水分状態と密接な関係にあることが見出された. また, 2010nm付近のスペクトルパターンの変曲点の位置が, 葉の乾燥に伴って2080から1880nmまで約200nmも変化し, その移動量は葉の水分状態と高い相関関係にあった. 圃場において, 土壌水分の異なる条件でのダイズ着生葉の水分状態の日変動を, 反射スペクトル計測によって非破壊で連続的に評価する試みを行った.
  • 濱田 千裕
    1993 年 62 巻 3 号 p. 470-474
    発行日: 1993/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
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