日本作物学会紀事
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63 巻, 3 号
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  • 山本 富三, 田中 浩平, 角重 和浩
    1994 年 63 巻 3 号 p. 411-417
    発行日: 1994/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    稲作期間中に水稲に供給される地力窒素の量との関連が高く, 適正な基肥量判定の基となる簡易指標を得るため, 筑後川流域の灰色低地土水田土壌(細粒~中粗粒質)を対象に, アンモニア化成量(風乾土を30℃で4週間湛水静置後に生成するアンモニア態窒素量)の適用性について検討した. 湛水前に採取した水田作土のアンモニア化成量を測定するとともに, 同圃場の窒素無施用区の水稲窒素吸収量を地力窒素吸収量として, 両者の比較を行った. 室内実験により得た乾土100g当たりのアンモニア化成量(mg/100g)から, 同圃場において調査した作土深と容積重を基に, 作土重量で換算し, 作土10a当たりのアンモニア化成量(kg/10a)を求めた. このようにして得られた10a当たり化成量と地力窒素吸収量との間には高い相関が認められた. 10a当たり化成量に対する地力窒素吸収量の割合は, 調査圃場の平均でニシホマレが42%, ヒノヒカリが40%であり, 細粒および中粗粒質土壌間での相違はみられなかった. したがって, 10a当たり化成量を求めることにより, その4割を中生品種の地力窒素吸収量とみなすことができる. 以上の結果を基に, 10a当たりアンモニア化成量を水田土壌の地力窒素供給量の指標として, 水稲の収量性や基肥適量の診断のために活用することができた.
  • 森田 茂紀, 奥田 浩之
    1994 年 63 巻 3 号 p. 418-422
    発行日: 1994/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    土壌の水ストレスがコムギ幼植物の根の生育に及ぼす影響を, 特に種子根の伸長と分枝の発達に着目して検討した. 直径26 mm, 長さ1 mのアクリル管に園芸用培土を充填した後, 土壌水分含量が30%(W 区)および20%(D区)となるような2処理区を設け, それぞれにコムギ農林61号の種子を1粒づつ播種し, 人工気象室内で育成した. 播種後9日目から34日目まで合計8回, 根系を含めた植物体全体を経時的に採取し, 観察・測定に供試した. W区に比してD区では, 葉齢の進行が遅延し, 分げつの発生も少なかったが, 根重/茎葉部重比の値が顕著に高くなっていた. 実験終了時における両区の種子根数は等しいこと, また節根数はW区の方が多かったが, この段階における節根は極めて短いことから, 両区の間における根重の差は種子根の生育に起因するものと考えられた. そこで, 特に初生種子根の形態について検討したところ, 分枝指数(=総分枝根長/総1次根長)はW区よりD区で高い値を示し, D区でより分枝が発達していることが分かった. D区の初生種子根における生育の変化を経時的にみると, 根軸の伸長が抑制され, 続いて分枝根密度が高くなり, 次に分枝根平均長の増加がみられるという順序であった. こうした変化が起こった後に, 茎葉部では葉齢の進行が鈍化し始めていた.
  • 原田 二郎, 姜 始龍, 山崎 耕宇
    1994 年 63 巻 3 号 p. 423-429
    発行日: 1994/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    根系の形や根の量と密接に関係する1次根の数と伸長方向について, 日印交雑稲(密陽23号, 水原258号)の特徴を日本型稲(日本晴, コシヒカリ)と比較して, 登熟期の1株当りおよび主茎の要素別に検討した. 水田土壌を充墳した45 lのポリ容器で栽培した各品種の根系を直径15 cmのステンレス円筒で採取し, 1次根の切断端を土層別に着色することによって, 伸長方向別の1次根数を調べた. 登熟期の1株当りの有効茎数は, 日印交雑稲が日本型稲より少なかった. しかし, 水原258号は1要素当りの1次根数が多いことによって1株当りの1次根数は日本型稲より著しく大きくなった. 日印交雑稲の下方向に伸長する1次根の割合は,1主茎および1株当りのいずれの場合も日本型稲より高かった.また,日印交雑稲は幼穂分化期以降に形成される主茎の高位要素の下位根においても, 日本型稲より下方向に伸長する1次根の割合が高かった.
  • 湯川 智行, 渡辺 好昭, 山本 紳朗
    1994 年 63 巻 3 号 p. 430-435
    発行日: 1994/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    コムギの積雪下におけるフルクタン重合度の変化を, 異なる品種と播種期について調査し, フルクタン代謝と越冬性との関連を検討した. (1)越冬前におけるフルクタン含有率は, 越冬性の高い品種および適播で高かった. 単少糖含有率は, 適播が晩播より高かったが, 品種間では越冬性との関連は認められなかった. 重合度9以上の高分子フルクタン含有率は, 各播種期ともに越冬性の高い品種で高かった. 一方, 重合度8以下の低分子フルクタン含有率は適播では品種間に差が認められず, 晩播では越冬性の高い品種で高かった. 越冬性を高めるためには, フルクタンの高分子化が重要であるが, そのためにはフルクタン含有率そのものを高める必要があると考えられた. (2)積雪下の越冬時における環境を想定して,「暗黒・1℃」の処理を行った. フルクタン含有率の減少は, 処理前半, 越冬前の蓄積の多い品種および適播において大きかった. 高分子フルクタンは, 各播種期ともに越冬性の高い品種で減少が大きかった. 低分子フルクタンは適播では越冬性の低い品種で, 晩播では越冬性の高い品種で減少が大きかった. 一方, フルクタンの減少率は, 越冬性の高い品種で低かった. このため, 品種間で越冬前後のフルクタン含有率の逆転が認められた. これらより, フルクタンの減少には, 越冬前の蓄積状態と越冬時の代謝の両方が影響すると考えられた.
  • 馬淵 敏夫
    1994 年 63 巻 3 号 p. 436-441
    発行日: 1994/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ビール麦品種種子の休眠打破を収穫直後に行うために, 休眠性程度低・中・高品種からそれぞれ「アズマゴールデン」, 「成城17号」, 「さつき二条」を供試して過酸化水素水処理の条件を検討した. 過酸化水素水濃度(0, 0.125, 0.25, 0.5, 1.0, 2.0および4.0%)と浸種時間(0, 12, 24, 36および48時間)の2要因を組み合わせて発芽試験を行った. さらに浸種時および発芽床の温度条件を検討するため, 10℃, 20℃ておよび25℃を設定した. 休眠打破に最適な過酸化水素水濃度と浸種時間は,「アズマゴールデン」では0.5%液・12時間, 「成城17号」では1%液・24時間, 「さつき二条」では2%液・36時間であって, 休眠性程度が高くなるほど過酸化水素水の濃度が高く浸種時間を長く必要とした. 浸種時の温度条件では「アズマゴールデン」25℃, 「成城17号」20℃, 「さつき二条」10℃が好適であり, 休眠性程度が高くなるほど低い温度条件が休眠打破に効果的であった. これらのことから, 収穫直後に休眠打破を行う過酸化水素水処理の条件は休眠性程度を異にする品種によって異なるが, 3日間で発芽力を検定することが可能と考えられる.
  • 冨森 聡子, 長屋 祐一, 谷山 鉄郎
    1994 年 63 巻 3 号 p. 442-451
    発行日: 1994/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ゴルフ場で使用される農薬および肥料について1991年6月から1992年5月までの1年間, 降雨直後, 3ゴルフ場6箇所の排水を採水し, 15種類の農薬と窒素, リン, カリウムの分析をした. 結果は次の通りであった. 除草剤のプロピザミド, シマジン, ナプロパミド, 殺菌剤のフルトラニル, イソプロチオラン, キャプタン, トルクロホスメチル, 殺虫剤のダイアジノン, フェニトロチオンの9種農薬が検出された. 検出頻度は各ゴルフ場で差があり, 同一ゴルフ場でも採水地点間で異なった. フルトラニル, イソプロチオラン, キャプタンが高頻度に検出された. 検出された農薬は, 調査期間中では9月が他の月に比べ全般的に高く, また, 高濃度に検出された農薬は, プロピザミド, シマジンであった. 検出された農薬の濃度は約半数が0.1~1.0μgL-1の範囲であった. ゴルフ場排水の肥料成分は, 周辺の河川水に比べ, 窒素, リン, カリウム共に高濃度であった. その濃度変化は, ゴルフ場の芝草管理のための施肥時期と密接に関係していた.
  • 中野 尚夫, 水島 嗣雄
    1994 年 63 巻 3 号 p. 452-459
    発行日: 1994/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    日本晴(1984年), ホウレイ(1985年)を30cm×15cmおよび30cm×30cmの栽培密度のもとで一株植付本数1, 4, 7本あるいは4, 7本に手植し, 分げつの発現時期を3~4時期に分け, 発現時期ごとに分げつの生存率, 穂の諸形質を検討した. 一株植付本数が多いと穂数はやや多かったが, 平均一穂籾数, 平均登熟歩合は低下した. しかし千粒重には影響がみられなかった. 発現時期によって分けた穂の一穂籾数, 登熟歩合, 有効茎歩合は, 栽植密度, 植付本数に関係なく, 伸長第一節間径と正の相関関係にあり, 茎の生長量と関係したと考えられた. 一方同一栽植密度の伸長第一節間径は, その分げつの発現したときの一株茎数(発現時一株茎数)に同時期に発現した分げつを加えた一株茎数つまりその分げつの生長開始時の一株茎数と負の相関関係にあった. さらに分げつ発現率も発現時一株茎数が多いと少なく, 登熟期の葉色も一株植付本数が多いと淡かった. したがって一株植付本数が多いと一株茎数が多くなり, そのことによって有効茎歩合, 分げつ発現率が低下して穂数増加の効果が小さく, さらに一穂籾数, 登熟歩合が低下するため, 7本植のように一株植付本数が多すぎるとかえって収量が低下することが明らかとなった.
  • 李 建民, 山崎 耕宇
    1994 年 63 巻 3 号 p. 460-466
    発行日: 1994/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    コムギにおいて, 分げつの有効化率は個体当たりの有効分げつ数の決定に対して極めて重要な役割を果している. 本研究では, まず圃場条件下で栽培したコムギを対象とした非破壊的な追跡調査に基づき, 有効分げつと無効分げつの発育パターンの異同を解析した. 最終的に有効化した分げつの出葉経過についてみると, 分げつ出現後, つねに母茎よりも若干速い出葉速度を保ちながら進行し, 最終的な葉数も, 片山の同伸理論から導き出される値より大となった. 一方, 無効化した分げつでは, 主茎の節間伸長が始まるとほぼ同時に, 出葉速度が母茎のそれより, 著しく遅滞する傾向を示した. つづいて, 同一圃場から経時的に採取した試料を追跡調査した結果と照合し, 各分げつが将来的に有効分げつになるか無効分げつになるかを判断しつつ, 各分げつにおける生育関係を解剖調査したところ, 出葉と節間の伸長, 出根および幼穂発育との関係は, 最終的に有効化する分げつと無効化する分げつの間に, ほとんど違いが見られなかった. これらの結果より, 有効分げつと無効分げつの違いは, 第1義に, 母茎に対するシュート全体の発育の遅速にあるものと考えられた.
  • 李 建民, 山崎 耕宇
    1994 年 63 巻 3 号 p. 467-472
    発行日: 1994/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    分げつの有効化・無効化は個体群におけるシュート間の競争と関連している. 本研究では, 形態的な側面からこのような関連について検討した. まず, 個体群における各シュートの高さ(最高葉高度および茎長)を追跡したところ, 節間伸長開始期より高位・高次の分げつの相対的最高葉高度は著しく低下したが, このような差異は, これらの分げつの茎長と密接に関連していた. 次に, 登熟期に, 相互に隣接する30~40個体のうちの最も小さい分げつの形態を, 1圃場内の各所について調べたところ, 局所密度の高い場所ほど, この最小分げつは止葉高度と茎長が高く, 主茎との高度差が小さかった. さらに, 各シュートの高さとその形態的特徴との関係を分析したところ, シュートの茎長が低いほど, また最小分げつにおいては主茎との茎長差が大きいほど, 光をめぐる競争に有利に働くとみられる特徴(高い比葉面積, 比茎長および葉茎比)が明かであった. このような結果から, 分げつの有効化・無効化は, 個体群におけるシュート間の競争からだけでなく, 競争関係に対する分げつの適応的な形態変化からも影響を受けていたと考えられる.
  • 後藤 雄佐, 中村 聡, 酒井 究, 星川 清親
    1994 年 63 巻 3 号 p. 473-479
    発行日: 1994/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    スイートソルガムの生長の解析法を確立するために, 疎植区(100 cm×50 cm)と密植区(50 cm×20 cm)とを設け, 節間の伸長と肥大とを調べた. 供試品種は早生のSucrosorgo 301 (S 301)と晩生のSucrosorgo 405 (S405). 収穫物の中心となる茎は, 伸長した節間の集合体であり, 収穫物からその個体の生長を解析するためには, どの節間がいつ頃伸長・肥大したものかを推定できなくてはならない. すなわち, 外観から測定できる個体の齢と内部での節間の生長との関連性を把握する必要がある. そこで, 葉身が抽出完了した時点ごとに, その葉位で個体の齢を表し(葉位齢と呼んだ), 節間の伸長・肥大との関係を調べた. 葉位齢を用い第9節間~第12節間の伸長過程を基に概念的な節間伸長の生長曲線を描いた. すなわち, 第n節間(IN n)は葉位齢n+1頃から急激な伸長を始め, 葉位齢n+2頃に最も急速に伸長し, 葉位齢n+3~n+4頃に伸長が終わった. 節間伸長への栽植密度の影響は, 伸長の速度として認められた. 節間の太さについては, 同じ節間位で比較すると, 両品種とも疎植区のほうが密植区より常に太かった. 節間の肥大は, 一つの生長曲線にはまとめられなかった. 最も単純化した場合, 栽植密度によって異なる2つの生長曲線にまとめられた. INnは, 葉位齢nくらいまでは栽植密度の影響を受けずに肥大したが, 密植区は葉位齢n+1くらいから肥大速度が鈍り, 葉位齢n+2くらいで最大径となった. ところが疎植区は, 葉位齢n+5くらいまで肥大が続き, 最大径は密植区を上回った.
  • 斎藤 邦行, 稲村 隆治, 石原 邦
    1994 年 63 巻 3 号 p. 480-488
    発行日: 1994/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ダイズ複葉の運動が個体群内の微細環境に及ぼす影響を明らかにするため, イネ個体群を対照として, 両個体群内の風速, ろ紙蒸発速度, ろ紙境界層抵抗, 空気の露点温度, CO2濃度および光強度の垂直分布を比較した. ダイズ個体群はイネ個体群に比べて上層の葉面積密度が高いため, 風速, ろ紙蒸発速度, CO2濃度が低く, 露点温度は高かった. また, ろ紙蒸発速度から算出した境界層抵抗は個体群・下層ほど大きく, 各高さともに露場風速の増大に従い小さくなったが, イネに比ベダイズ個体群で大きかった. ダイズ個体群内の相対風速は午前中に顕著に高まったことから, 個体群内への風の透過には上層における小葉の傾斜角度が関与すると推察された. イネとダイズ個体群内の各高さにおける相対光強度には日変化が認められ, 朝夕小さく, 日中大きくなった. 相対光強度の日変化から求めた個体群全層の吸光係数は朝夕大きく, 日中小さくなったが, 1日を通じてイネに比ベダイズ個体群で大きかった. ダイズ個体群上層について求めた吸光係数は日中顕著に小さくなり, これには複葉を単位とした小葉の運動現象が関与することが認められた. 以上の結果, ダイズ個体群上層における複葉の運動は, 個体群のガス交換を活発化し, 太陽高度の高くなる日中には個体群内への光の透入をよくすることが明らかとなった.
  • 野瀬 昭博, 上原 勝, 川満 芳信, 小波本 直忠, 仲間 操
    1994 年 63 巻 3 号 p. 489-495
    発行日: 1994/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    北西太平洋地域の熱帯から温帯にかけて採集された野生サトウキビSaccharum spontaneumの10系統, 種間交雑種(Saccharum hybrid) NCo 310, 南西諸島の在来種S. sinense cv. Yomitanzanを用いて, 個葉のガス交換速度の光強度と温度に対する反応を調査した. ガス交換速度に関与する要因として, 気孔伝導度(Gs), 全窒素含量(N), 可溶性タンパク質含量(SLP), ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(PEPC), NADP-リンゴ酸酵素(ME), フラクション1タンパク質含量(F1P), クロロフィル含量(CHL), 比葉面積(SLA)を測定し, ガス交換速度との関連を検討した. 強光下(1700μmol/m2/s)でのCO2交換速度(CER1700), 弱光下(180μmol/m2/s)での気孔伝導度(Gs180), N, SLP, PEPC, ME, F1P, CHL, SLAにおいて, 系統・種の間に有意な変異(P<0.05)が認められた. Tainanは, 20℃から35℃にわたって供試したSaccharum属のなかで最も高いCO2交換速度を示した. つまり, S. spontaneum系統Tainanはサトウキビの多収性育種素材として優れた特性を有していることが明らかになった. 供試したSaccharum属における強光下でのCER1700は, 気孔(Gs;=r 0.496, P<0.01)及びマンガン型ME(MEMN, r=0.838, P<0.01), マグネシュウム型, ME(MEMG, r=0.547, P<0.01), クロロフィル含量(CHL, r=0.466, P<0.01)と高い相関を示した.
  • 長谷川 利拡, 堀江 武
    1994 年 63 巻 3 号 p. 496-501
    発行日: 1994/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水田土壌の特性と環境要因から土壌窒素の無機化動向を説明することは, 水田の持つ水稲生産ポテンシャルの評価だけでなく, 合理的な施肥法の確立のために重要である. そこで本研究では, 湛水前の土壌乾燥程度と湛水期間中の温度から土壌窒素の無機化量を推定するモデルを提案した. 京都大学実験水田(沖積, SL)の作土から採取したサンプルを15, 20, 25, 30℃の4温度条件下で湿潤細土, 風乾細土について恒温湛水培養を行った. また, 鳥山らに従い, 湛水前の土壌水分を8段階設定し, 窒素無機化に及ぼす湛水前の含水比の影響を調査した. 湿潤土のN無機化量(NW)は時間に対し直線的に増加したのに対し, 乾土効果(ND)は頭打ちを示し, その上限値はいずれの温度条件においても同様であった. これらの結果に基づき, N無機化速度は, 以下のように表すことができる : dN/dt=dNW/dt+dND/dt dNW/dt=KW dND/dt=KDNOexp(-KDt) ここで, tは時間(日), NOは湛水前の土壌含水比, θの関数 : NO=7.171-0.660θ+0.0150θ2, θ≦19.56% NO=0 θ>19.56% として表される. また, KW, KDは温度の関数, アレニウスの式で近似され, その活性化エネルギーはそれぞれ24,803および14,058cal・mol-1であった. この式より求めたN無機化量は実測値とよく適合することがわかった.
  • イスラム モハマドタジュール, 森 和一, 窪田 文武, ハミッド アブドゥル
    1994 年 63 巻 3 号 p. 502-509
    発行日: 1994/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    アジア諸国から集めた63品種の光合成速度および葉面積生産に関する諸特性をポット実験で検討した, 光合成速度とその関連要因には顕著な品種間差異があり, それらの変異係数は大きかった. 特に気孔伝導度は最も大きかった. 光合成速度はその関連要因と高い相関関係にあったが, 葉肉伝導度との相関が最も高かった. 蒸散速度は他作物に比べて大きく, 気孔伝導度と密接な関係にあったが, 気孔伝導度が0.75 mol・m-2s-1以上で飽和する傾向となり, 高い気孔伝導度をもつ品種の水利用効率を高める結果となった. 光合成速度を基礎にした場合, 63品種は高, 中, 低の3群に分けられた. 高い光合成速度群に属する品種の光合成関連要因は, 中, 低光合成速度群のそれより高い値であることが確認された. 平均小葉面積と出葉速度の積から決まる葉面積増加速度は光合成速度と高い正の相関関係にあった. 平均小葉面積も光合成速度と有意な相関関係にあったが, 出葉速度との間では有意でなかった. また比葉面積重と光合成速度との間に高い正の相関関係が認められた. 以上からマングビーンの光合成速度改善の選択的指標として, 気孔伝導度に関係する気孔数, 平均小葉面積, 葉面積増加速度, 比葉重を用いることが可能である.
  • 小葉田 亨, 田中 互, 内海 基和, 原 慎一, 今木 正
    1994 年 63 巻 3 号 p. 510-517
    発行日: 1994/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    イネ穂ばらみ期の旱ばつは捻実穎花数を激減させるので収量にきわめて深刻な影響を与える. 本研究は土壌乾燥によるどのような機能阻害が稔実を低下させるのかを明らかにしようとした. 水稲日本晴, 陸稲戦捷とタチミノリをそれぞれポット栽培し, 穂ばらみ期に様々な程度の土壌乾燥を与えると, 土壌水分, 葉身水ポテンシャルの低下にともない, いずれの品種でも不稔率と穎花退化率が増加し, これは地上部の乾物生産の抑制に対応していた. そこで, 日本晴について穂ばらみ期に土壌乾燥とともに遮光によって乾物生産を抑制し, 稔実率に与える影響を見たところ, 遮光による乾物生産の低下は乾燥と違って不稔率をまったく増やさず, 穎花退化率にもほとんど影響しなかった. また, 日本晴の根を二つに分けてポットで栽培し, 片方の土壌のみを乾燥させると, 葉身の拡散伝導度が低下し, 不稔率, 退化穎花率がいずれも有意に増加した. しかし, この時葉身の水ポテンシャルは全ての土壌に十分灌水したものとほとんど違いがなかった. これらの結果から, 穂ばらみ期の旱ばつによる不稔および穎花数の減少は, 同化産物の不足や地上部器官の脱水によるよりも, 主に気孔閉鎖などによる同化を抑制しかつ不稔をもたらすような乾燥下の根系で生ずるなんらかの阻害シグナル物質による可能性が高い.
  • 桃木 芳枝, 上村 英雄
    1994 年 63 巻 3 号 p. 518-523
    発行日: 1994/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    塩ストレスは, 最近の農業において重要な課題の一つである. アッケシソウ(Salicornia europaea L.)は, 多くの作物の耐塩性を検定するための比較植物としてよく利用される. しかし, アッケシソウの耐塩機構を明らかにしたデータは殆どない. 本報では, 自生アッケシソウの生育期間中における生育, pHおよび浸透圧の推移を検定した. さらに, 生育終期における植物体よりグリシンベタインを測定した. 北海道東部に位置する能取湖周辺に自生するアッケシソウは, 3月下旬に土壌中で発芽し, 生体重, 地上部および根の生育は, 5月下旬から8月下旬にかけて最も増加した. アッケシソウの開花は, 7月下旬に始まり, 8月下旬以降, 徐々に植物体は, 緑色から赤色に変化した. 植物体の茎および枝におけるpHは, 生育初期のpH 7.6から生育終期pH 8.8まで増加し, 同様に, 茎および枝における浸透圧も生育期間中に約650mOsm・Kg-1から2600mOsm・Kg-1までに増加した. さらに, グリシンベタインが生育終期のアッケシソウの地上部および根から抽出された. これらの結果から, 細胞浸透圧調節物質の蓄積が細胞内の浸透圧の制御に関与していることが示唆された.
  • 鯨 幸夫, グローブ ジョン H, ロンザリ Jr. ペドロ
    1994 年 63 巻 3 号 p. 524-530
    発行日: 1994/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    コムギの生産に関わる種々の品種的要因の一つに根系の間題がある.作物の根系は, 土壌環境に対する適応性や養水分の吸収効率等の観点のほか, 地上部形質との相互関連性の面から研究することが重要と考えられる. ここでは, 草丈が遺伝的に異なる品種を材料に用いて, コムギ幼植物の根系形に及ぼす品種間差異をシードパックグロウスパウチを用いて検討した.実験に用いた材料は,わい性のShorter B-288 D,半わい性品種のPioneer 2548, Clark, Madison,それに普通タイブ(Tall type)のCardinalとVerneである.シードパックには,硝酸態窒素(10 mg-N/1,50 mg-N)を用いたHewittの培養液を入れ, 温室内において3反復の実験を行った. 個体の根系開度の品種間差異は, 播種後20日目と25日目において有意に認められたが, 培養液の硝酸態窒素濃度による有意差は認められなかった. 個体あたりの総根長は播種後25日において, 品種間および培地レベル間の双方において認められた. MadisonとShorter B 288 Dは広い開度の根形態を示したが, Cardinalは狭い開度の根系形態を示していた. 他方, Cardinalは最大の総根長を示し, Shorter B-288 Dは最小の総根長を示していた. 本実験の範囲内では, 同じ半わい性品種群の中でも各品種の根系には有意な差異が認められた. 他方, 個体あたりの茎数, 葉数および地上部乾物重に品種間による有意な差異は認められなかった.地下部形質である個体の根系開度と個体あたりの総根長は遺伝的形質であり, 地上部の半わい性を表現する遺伝子に影響されていないものと考えられる
  • 蒋 徳安, 平沢 正, 石原 邦
    1994 年 63 巻 3 号 p. 531-538
    発行日: 1994/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    根の生理的活性の低下に伴う光合成速度低下の要因を明らかにするため, ポットに生育させた水稲を用いて, 第10葉抽出期および出穂開始期に可溶性デンプン15 gまたは30 gを土壌中に加える処理を行った(処理水稲). この際, 土壌中の微生物の作用によって一次的に葉身の窒素含量が低下するのを防ぐため, 同時にそれぞれ硫安2.5, 5 gを施用した. 処理水稲と対照水稲について, 根の活性を表す葉身基部からの出液速度, 根のα-ナフチルアミン酸化力および午前中の最大光合成速度, 拡散伝導度, Rubisco初期活性およびRubisco含量を測定した. 可溶性デンプン処理後, 処理水稲の根のα-ナフチルアミン酸化力, 葉身基部の出液速度が減少し, 葉身の光合成速度および拡散伝導度は小さくなったが, Rubisco初期活性およびRubisco含量は対照水稲とほぼ同じかやや大きかった. また光合成速度と拡散伝導度との間には有意な正の相関関係があった. これらの結果より, 可溶性デンプン処理によって生じる根の生理的活性の低下による光合成速度の低下は, 葉内のCO2固定能力の低下ではなく, 拡散伝導度が低下し, 葉内へのCO2供給量が減少したためであると考えた. さらに, 処理水稲の光合成速度の減少は, 日数の経過とともに小さくなるか, みられなくなったのは, 可溶性デンプンとともに施用した窒素が吸収され, 葉内の窒素含量が高くなったことが関係していると推察した.
  • 蒋 徳安, 平沢 正, 石原 邦
    1994 年 63 巻 3 号 p. 539-545
    発行日: 1994/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    根の生理的活性の異なる水稲葉身の光合成速度の日変化の相違とその要因を明らかにするため, ポットに生育させた第10葉抽出期および出穂開始期の水稲を用いて, 前報と同様に土壌中に可溶性デンプンと硫安を施用し, 根の生理的活性を低下させる処理を行った(処理水稲). 処理水稲では処理を行わなかった対照水稲に比べて, α-ナフチルアミン酸化力が小さかったが, 湿度の高い早朝には葉身の光合成速度はやや高かった. 一方, 午前のおそい時刻と午後における処理水稲の光合成速度, 拡散伝導度はともに対照水稲に比べて小さかった. この日変化を光強度と光合成速度との関係に書き直してみると, 光一光合成曲線は飽和型を示し, 光強度1000μmolm-2s-1以上では, 対照水稲では午前と午後の光合成速度にほとんど相違はみられないが, 根の生理的活性の低い処理水稲では同じ光強度で午後の光合成速度は午前に比べ明らかに低かった. このような日変化を示したのは, 可溶性デンプンを処理する際, 硫安を加えているので, 処理水稲は葉身のRubisco含量, Rubisco初期活性が対照水稲より高くなり, 午前は気孔が閉じないので光合成速度, 拡散伝導度は大きく, 一方根の生理的活性の低下しているので, 蒸散の盛んな日中, 気孔の閉じる程度が大きく, 光合成速度の低下する程度が大きかったからと考えられた. このことは, Rubisco初期活性は早朝と夕方低く8時から15時まで高かったが, この間午前と午後に相違がないことからも裏付けられた.
  • チャカタカーン ソムチャイ, チャカタカーン ウィライポン, 元田 義春, 太田 保夫
    1994 年 63 巻 3 号 p. 546-548
    発行日: 1994/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
  • 山本 富三
    1994 年 63 巻 3 号 p. 549-553
    発行日: 1994/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
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