日本作物学会紀事
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65 巻, 4 号
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  • 松崎 守夫, 豊田 政一
    1996 年 65 巻 4 号 p. 569-574
    発行日: 1996/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    この報告では, 十勝地方における登熟期間の気象条件とコムギ粉のアミログラム最高粘度との関係を検討するために, 暦日にともなうアミログラム最高粘度, α-アミラーゼ活性の推移を検討した. 開花期が約2週間異なる品種のアミログラム最高粘度は, 同一年次内のほぼ同じ暦日に300BU以下に低下(低アミロ化)した. 低アミロ化は1992年には8月11日~17日, 1993年には7月21日~27日に観察され, 同じ暦日にα-アミラーゼ活性も約10 Abs/g以上の値を示した. 1992年には8月8日~l0日に約60 mmの降水量が記録されており, 1992年の低アミロ化は降雨によって起こったと考えられた. しかし, 1993年の7月18日~26日の降水量は3 mmであり, 1993年の低アミロ化には, 降雨以外の気象条件が大きく影響したと考えられた. その時期は低温寡照条件であったため, 低温寡照条件が子実の乾燥を阻害し, 低アミロ化に影響した可能性が考えられた. しかし, 登熟期間における降水遮断処理によって1993年のアミログラム最高粘度は高く維持されたため. 1mm以下の降雨や夜間の結露など, 降水量としては記録されない降水が低アミロ化に影響した可能性も考えられた. 1993年の低アミロ化においては, 低アミロ化後のα-アミラーゼ活性の増加がわずかであったこと, 最高粘度の推移に品種間差がみられたこと, 他の品質特性の劣化を伴わなかったことも特徴的であった. また, 1993年の低アミロ化の状況は1988年と類似していたことから, 1993年の低アミロ化は特殊な現象ではないと考えられ, 十勝地方においては降水量が少ない時期であっても低アミロ化が生じうることが示唆された.
  • 王 余龍, 新田 洋司, 山本 由徳
    1996 年 65 巻 4 号 p. 575-584
    発行日: 1996/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    前報の材料を用い, 日本型多収性水稲もち9004系統(L9)の精玄米千粒重の成立要因を穂の部位別の1次および2次枝梗籾(以下, 穂の部位別籾)に着目して, 対照品種とした日本稲うるち品種コガネマサリ(KM)と比較検討した. 1) 穂の部位別籾の精玄米千粒重は, 一般にKMでは上部>中部>下部, L9では下部>中部>上部であった. また1次と2次枝梗籾の精玄米千粒重の差はKMに比べてL9で小さかった. L9の1次および2次枝梗籾の精玄米千粒重はいずれの穂の部位でもKMより重く, その差は穂の下部>中部>上部の順に, また1次枝梗籾に比べて2次枝梗籾で大きかった. しかし, L9とKMの籾殻重の差は小さかった. 2) 穂の部位別籾の精玄米容積はL9>KM, 精玄米比重はKM>L9であった. また, 精玄米千粒重は容積と品種別, あるいは両品種を込みにしても, いずれも1%~0.1%水準で有意な正の相関関係を示した. 3) L9の穂の部位別籾の登熟日数はKMと同じかそれよりも短く, 逆に乾物蓄積速度はKMより速かった. この籾乾物蓄積速度の差異は登熟期前半(穂揃期後16日まで)に認められ, これにはL9の穂の含水率がKMより高く推移したことが関係していると推定された. 4) 以上より, L9の穂の部位別の1次および2次枝梗籾の精玄米千粒重がいずれもKMに比べて優ったのは, L9の穂の含水率が高く推移し, 籾の炭水化物受け入れ能力がKMより高く維持された結果, 登熟期前半の乾物蓄積速度が速くなったことによると考えられた.
  • 大里 久美, 浜地 勇次, 松江 勇次, 吉田 智彦
    1996 年 65 巻 4 号 p. 585-589
    発行日: 1996/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    どのような環境条件において食味の品種間の相対的な差が変化しやすいかを知る目的で, 水稲の良食味品種を用いて, 反復のある食味官能試験の結果から, 品種と各種の環境条件, すなわち年次, 作期, 施肥量, 貯蔵期間, 土壌型との, 食味における交互作用の有無を解析した. 品種と年次, 作期および貯蔵期間との間には交互作用が認められた. 一方, 品種と土壌型や施肥量との間には交互作用は認められなかった. これらの結果よリ, 食味の品種間における相対的な差は年次, 作期および貯蔵期間の違いによって変化しやすいことが明らかとなった. また, 年次, 作期および貯蔵期間が異なっても食味の変化が小さく, 安定性の高い品種があることが示唆された. 以上の結果, 安定した良食味品種を効率よく育成あるいは選定するに当たっては, 交互作用が認められた各種の環境条件下における食味の動向の解析も加えて, 各品種の食味特性を十分に把握することが重要であると考えられる.
  • 若林 克拓, 平沢 正, 石原 邦
    1996 年 65 巻 4 号 p. 590-598
    発行日: 1996/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水ストレスによる光合成の低下の要因には気孔閉鎖と葉肉組織の光合成活性の低下があるが, このどちらの要因によって光合成が低下し始めるかは必ずしも明らかではない. 本研究は, ヒマワリ, イネを用いて, 葉の水ポテンシャルの低下に伴う赤外線CO2分析法で測定したCO2交換速度の変化と, 気相酸素電極法で測定したO2放出速度の変化とを比較し, 光合成の低下し始める要因を検討したものである. 水ポテンシャルの低下した葉身では拡散伝導度が小さいので, 気相酸素電極法によるO2放出速度の測定は高いCO2濃度条件で行う必要がある. しかし, 高すぎると光合成が阻害される. そこでまず, 測定に用いる空気のCO2濃度を検討した. その結果, 短時間の測定であればヒマワリ, イネの両種ともにCO2濃度12O mLL-1で, CO2の阻害を受けることなく, O2放出速度を測定できることを認めた. さらに, 10-3 Mの±ABAを散布したヒマワリ葉身のO2放出速度を測定した結果, 拡散伝導度が0.09mol m-2s--1以上であれば気孔の影響を受けないでO2放出速度が測定できることがわかった. 次に種々の水ポテンシャルの葉身のCO2交換速度とO2発生速度を比較した結果, ヒマワリ, イネともに, CO2交換速度はO2放出速度より高い葉の水ポテンシャルで低下し始めることが明らかとなった. このことから両種ともに水ポテンシャルの低下による光合成の低下は最初は気孔の閉鎖によって, さらに葉の水ポテンシャルが低下すると葉肉組織の光合成活性の低下によっておこることがわかった.
  • 礒田 昭弘, 野島 博, 高崎 康夫
    1996 年 65 巻 4 号 p. 599-604
    発行日: 1996/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    無限伸育型早生ダイズのツルコガネと黄宝珠(生態型Ib)および比較品種として関東地方の奨励品種, 有限伸育型のタチナガハ(IIc)を千葉大学園芸学部実験圃場で密植栽培(20cm, 30cmの正方形植え: それぞれ20cm区, 30cm区)し, その生長パターン, 葉群構造および受光態勢から密植適応性について検討した. 葉面積指数の展開速度はツルコガネ, 黄宝珠が若干大きかったが, 品種間に有意な差はなかった. 茎葉乾物重はタチナガハが20cm区で9月中旬まで増加したが, ツルコガネ, 黄宝珠は8月下旬には増加を停止した. 草高はタチナガハが30cm区で80~90cm, 20cm区では約100cmであったのに対し, ツルコガネ, 黄宝珠は矮化し, 両区で約70cmであった. タチナガハは上層になるにしたがい小葉面積が大きくなる傾向があったが, ツルコガネ, 黄宝珠では逆に最上層が小さくなる傾向があった. また, 密植になるほどツルコガネ, 黄宝珠は有意に小さくなったが, タチナガハでは変化がなかった. 単位葉面積当たりの受光量は30cm区では3品種に差異はなかったものの, 20cm区ではツルコガネ, 黄宝珠が有意に大きくなり, 密植になるほどタチナガハは小さくなったが, 黄宝珠では逆に大きくなった. 以上のことから無限伸育型早生ダイズの受光態勢は密植条件下で良好となり, これらの無限伸育性を用いて受光態勢を改善できる可能性があるものと考えられた.
  • 岡野 邦夫, 大前 英
    1996 年 65 巻 4 号 p. 605-611
    発行日: 1996/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    茶栽培における深耕や断根等の根系制御枝術を確立する目的で, 根系を構成する各種の根が生理機能をどのように分担しているかを定量的に評価し, それに基づいて根系の理想型を考察した. 一番茶萌芽期に掘り取った定植2年目の茶樹の地上部/地下部重比は1.5前後であった. 根系を構成する根を直径別に4段階に分級し, その重量比率を求めたところ, 白色細根(φ<1mm)が30%, 褐色細根(φ1-2mm)が10%, 中根I(φ2-5mm)が15%, 中根II(φ>5mm)が45%を占めた. 乾物重当たりの窒素吸収速度や呼吸速度はエージの若い根ほど高かったが, 全可利用炭水化物(TAC)含量はエージの進んだ木化根ほど高かった. 量的にみた場合, 根系全体の呼吸活性の75%, 窒素吸収活性の90%を直径が2mm以下の細根が担っており, 特にエージの若い白色細根の役割が大きかった. 一方, 根系中のTACの84%は木化の進んだ中根に存在した. 茶の主要な呈味成分であるテアニンは白色細根に多く存在し, 木化根で少なかったことから, 合成中心は白色細根と考えられた. 木化根では窒素の蓄積形態と考えられるアルギニンが多量に蓄積した. これらの結果から, 茶樹根系の理想型は栽培目的によって異なり, 収量・品質を重視する立場からは細根比率の高い根系が望ましいが, 環境ストレス耐性を重視する場合には発達した木化根の存在が不可欠と考えられた.
  • 中野 敬之, 森田 明雄, 谷 博司, 鈴木 則夫
    1996 年 65 巻 4 号 p. 612-617
    発行日: 1996/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    機械摘み茶園において, 茶株面から生育する新芽について茎葉別の収量と全窒素, 粗繊維および遊離アミノ酸含有率を層別に調査した. 1992年一番茶生育期の4月28日から5月8日までの4時期に, 新芽葉層の最上位から1cmづつ摘採面を順次下げながら軌条走行式摘採機により摘採し, 幅1cmの層別に新芽を刈り取った. 各層について調査した結果, 葉と茎の収量は前回整枝面に近い下層で大きく, 上層ほど小さかった. 全窒素含有率は, 前回整枝面から8cmまでは上層ほど高かったが, それより上では低下, もしくは差がなかった. 粗織維含有率は上層ほど低かった. 遊離アミノ酸含有率は, 5月4日以前では葉層の中間部で最も高かったが, 5月8日になると上層ほど高かった. 得られた層別の結果から, 調査日別に摘採の高さと収量および化学成分含有率との関係を求め, 収穫が遅れても茶の品質を低下させない方法について検討した. その結果, 5月8日に5月4日と同じく前回整枝面と同じ高さで摘採すると収量は増加したが, 新芽の全窒素, 遊離アミノ酸含有率は低下し, 粗繊維含有率は増加した. しかし, 5月8日に摘採面を2~4cm上げることによって, これら化学成分の含有率を5月4日と同じ水準に維持できた.
  • 松葉 捷也
    1996 年 65 巻 4 号 p. 618-625
    発行日: 1996/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    主稈と各1次分げつ芽での葉原基の分化・発育の経過を栄養生長の全期間にわたって解剖観察した. 材料は, 直播で個体間競合が生じないように育て, 主稈各葉の抽出開始期(n.1葉期)とそれぞれの中間期に採取した. 葉原基分化の指標は, 茎頂の側面にできる「膨らみ」とした. コシヒカリの6.1葉期以降の各n.1葉期には, 抽出開始葉の内側に, 幼葉と葉原基-合わせて「内包葉」と呼ぶ-が4枚形成されていた. 内包葉は, 5.1葉期以前の各n.1葉期には3枚であった. これに比べ,極早生品種で内包葉数が1枚増加する時期は, 1,2葉齢早かった. コシヒカリの主稈の1.1葉期から10.1葉期の間に, 2~9分げつ芽での葉原基の分化は, 基本的に以下のように規則的に推移した. (1)半球状の分げつ原基が, 主稈の抽出開始葉の葉腋にできている. (2)この抽出開始葉が展開し終わるまでの1出葉期間に, 分げつ原基の茎頂では前出葉と第1葉の各原基が分化する. (3)この後の3回の各出葉期間に, 葉原基は順次それぞれ2個, 1個, そして2個分化する. ちなみに, この後者の2のうちの最新の葉原基は, 主稈がn.1葉基に達した時点の(n-3)葉節の分げつの茎頂に認められ, 膨らみ状の第6葉原基であった. この時その第2葉は抽出を開始していた. ただし, 2, 9分げつ芽では, それぞれの第6葉原基の分化が上記より少し遅れていた. これらの2~9分げつ芽は, 分げつに生長するが, 上記の規則性からはずれた高位1次分げつ芽は途中で生長を停止した.
  • 川満 芳信, 縣 和一, 比屋根 真一, 村山 盛一, 野瀬 昭博, 新城 長有
    1996 年 65 巻 4 号 p. 626-633
    発行日: 1996/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    葉身の気孔密度および気孔サイズとガス交換速度との関係を明らかにする第一段階として, 本報ではイネ科植物の気孔密度および孔辺細胞長を調査し, 亜科およびC3, C4植物間の差異を検討した. その結果, C4植物の気孔密度は, スズメガヤ亜科では418.5, キビ亜科では243.9個mm-2あり, 夏型C3植物に比べ1/2~1/3であった. 一方, ウシノケグサ亜科に属する冬型のC3植物の単位面積当たりの気孔数は少なく, サイズは大きかった. イネ亜科に属する水稲は, イネ科植物の中で最も高い気孔密度を有していたが, サイズは小さかった. また, 最高分げつ期の最上位完全展開葉に比べ出穂期の止葉の気孔密度は高く, 特に, 日印交雑品種でその傾向が顕著に認められた. イネ科植物において, 気孔密度と気孔サイズは反比例の関係にあり, また, 散布図における各亜科の分布はイネ科の系統樹と対応した.
  • 金 漠龍, 堀江 武, 中川 博視, 和田 晋征
    1996 年 65 巻 4 号 p. 634-643
    発行日: 1996/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    予測される地球規模の環境変化が水稲生産に及ぼす影響を明らかにするため, 温度傾斜型CO2濃度処理装置(TGC)を用い, 水稲アキヒカリの群落を対象に異なる温度とCO2濃度の複合処理を行い, 発育, 乾物生産および生育諸特性に及ぼす影響について検討した. TGCは長さ26m, 幅2.05m, 高さ1.7mのトンネル型のチャンバーであり, その長軸に沿って常に4での温度勾配が生じるように, 通気速度をコンピュータ制御により調節した. 実験には2つのTGCを用い, 1つのTGCは現行の大気CO2濃度(&cong;350μLL-1)を, 他方は690μLL-1のCO2濃度を維持させた. ポット(1/5000 a)植の水稲をTGC内に20株m-2の密度で配置したポット植群落(1991年)とTGC内の枠水田に25株m-2の密度で移植した枠水田群落(1992年)にそれぞれ肥料を十分あたえ, CO2×温度の複合処理を全生育期間にわたり行った. CO2濃度倍増処理は水稲の出穂に向けての発育を促進し, 出穂を早めた. その促進率は高温ほど大きく, 出穂までの平均気温が3O℃の場合のそれは11%にも及んだ. 草丈に対するCO2濃度および温度の影響は小さかったが, 茎数はCO2濃度に強く影響され, 全茎数と有効茎数ともCO2濃度倍増処理によって顕著に増加した. CO2濃度倍増処埋の葉面積への影響は, 幼穂分化期ごろまでの生育初期以降は極めて小さくなり, 過去の研究結果とよく一致した. 乾物生産はCO2濃度倍増処埋によって顕著に高まったが, それに対する温度の影響は小さく, 2作期の全温度区を平均してみたCO2濃度倍増処理による最終乾物重の増加率は約24%と推定された. なお, この乾物増加率の温度反応は過去の研究結果と異なったが, これは, 過去の研究は光が殆ど生育を制限しない孤立個体に基づいたものであるのに対し, 本実験の群落条件下では光が生育の制限要因となったためであると考えられる.
  • 金 漢龍, 堀江 武, 中川 博視, 和田 晋征
    1996 年 65 巻 4 号 p. 644-651
    発行日: 1996/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    温度傾斜型CO2濃度制御チャンバー(TGC)を用い, 2段階のCO2濃度(&cong;350μLL-1, 690μLL-1)と4段階の温度条件とを組み合わせて生育させた水稲(アキヒカリ)個体群の収量およびその構成要素器官の生長反応を1991年と1992年の2作期について検討した. 実験に供した温度範囲は, 全生育期間の平均気温として1991年は27.2~31.1℃, 1992年は26.0~29.3℃であった. 約2倍増のCO2濃度(690μLL-1)処理による水稲の最大増収率は最も低温, すなわち現行の外気温もしくはそれに近い温度条件下で得られ, 1991年と1992年にそれぞれ40%と22%であった. この収量増加は, 主としてCO2濃度倍増処理による単位面積当たりの穎花数の増加に帰せられ, 登熟歩合や粒重に対するCO2濃度の効果は相対的に小さかった. CO2濃度倍増処理による穎花数の増加率, ひいては増収率の年次間差異は, N施肥量の年次間の違い(1991年: 24 gN m-2, 1992年: 12 gN m-2)を反映した結果と考えられる. 一方, 現行の気温より高温条件下における収量は, CO2濃度にかかわらず, 気温上昇に伴って急激に低下した. 気温上昇にともなう減収程度はCO2濃度倍増区で大きい傾向にあり, 高温条件下では収量に対するCO2濃度の効果がみられなくなった. 高温条件下での収量低下の原因はまず高温による不稔穎花の増加に求められ, 次に不完全登熟籾の増加にあった. 不稔穎花の発生は開花期の日最高気温の平均値と最も密接に関係していることが認められた.
  • 小葉田 亨, 奥野 友美, 山本 孝信
    1996 年 65 巻 4 号 p. 652-662
    発行日: 1996/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    作物におけるある期間中の乾物生産量は土壌水分の吸収量すなわち蒸散量と吸収した水の乾物への変換効率(水利用効率)との積で表せる. そこで, 本報告では干ばつ下でイネが高い乾物生産量や収量をあげるためには, 土壌水分の吸収能力と水利用効率のどちらの性質がより貢献しているのかを, 耐乾性のきわめて異なる4品種のイネを用いて明らかにしようとした. 降雨を遮断した圃場条件下で, 生殖生長期開始頃から43日間にわたって潅がいを停止すると, 葉身水ポテンシャルや気孔伝導度の低下の仕方が異なり, その結果乾物生産量と収量は従来耐乾性の優れるとみなされている品種ほど高かった. さらに, この間の土壌水分消費量と乾物生産量との間には密接な直線関係があった. そして, 地表10cm以下の根重密度が高い品種ほど土壌水分の消費量が多かった. また, この土壌水分消費量から土面蒸発推定量を除した蒸散量から計算した水利用効率には大きな品種間差はなかった. さらに圃場実験に用いた品種の中から3品種を選んでポット栽培したものに, 幼穂分化期初期に給水を5段階に変えて約2週間異なる土壌乾燥を与え, 水利用効率を比較したところ, やはり土壌乾燥強度, 品種間でほとんど違いがなかった. 以上から, これまで耐干性の強いと見なされているイネは, 深く発達した根によって多くの水を吸収することで干ばつ下での乾物生産を維持しており, 水利用効率の品種間差が乾物生産の違いに強く寄与することは極めて少ないとみなされた.
  • NARCISO Josefina O., 服部 一三, 和田 富吉
    1996 年 65 巻 4 号 p. 663-671
    発行日: 1996/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    リョクトウ子葉培養におけるカルスの起源, 形成部位および発育を明らかにするため組織学的観察を行った その結果, リョクトウにおいてはカルス形成は以下のような3つの部位から生ずることが明らかとなった. すなわち, 1) 内部に形成されるカルスの起源と考えられる維管束前形成層の周縁部, 2) 外部に向かって形成される1次カルスが発達する子葉の切断端, および3) 1次カルスが出現する表皮の裂け目の部位からカルスが生じた. カルスの形成過程は各部位で異なっていた. 内部に形成されるカルスは前形成層の周縁の細胞の急速な分裂によるものであった. 子葉の切断端および表皮の裂け目から形成される1次カルスは, 主に葉肉柔細胞の肥大により生じた. これらの1次カルス細胞はすぐに液胞化が著しくなったが, これはカルス細胞塊の増加にはそれほど寄与していないものと思われた. 1次カルスの細胞は分裂活性が低いことから見て, 細胞質に富みかつ分裂活性の高いカルスの細胞は, 明らかに, もともと前形成層に由来する前形成層周辺部の小さなカルス細胞から発生したものと思われる. それ故, 子葉の前形成層内の細胞がリョクトウの子葉培養系でのカルスの主要な起源と考えられた.
  • MIAH Mohammad Noor Hossain, 吉田 徹志, 山本 由徳, 新田 洋司
    1996 年 65 巻 4 号 p. 672-685
    発行日: 1996/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    多収性の半矮性インド型水稲品種(桂朝2号, IR36; SDI)と日印交雑型水稲品種(アケノホシ, 水原258号; JI)の乾物生産特性と穂重に対する出穂期前後に生産された乾物の分配率などについて, 日本型水稲品種[農林22号, コガネマサリ; 穂重型(JP), 金南風, 中生新千本; 穂数型(JN)]を対照品種として, 作期を2回[移植日1992年5月15日(ET), 6月9日(LT)]設けて圃場試験を行い検討した. 多収性品種(JI, SDI)の穂揃期の葉面積指数(LAI)は両作期ともJP, JNより高かったが, 登熟期間での減少割合が大きく, 収穫期には低い値を示した. SDIとJIの穂揃期地上部乾物重は, LTのアケノホシを除いて, 両作期ともJP, JNより高かったが, 登熟期間の乾物重の増加量に有意差はみられなかった. 特にSDIでは登熟期間のLAIの減少割合が大きく, また, 登熟期後半のSPAD値が大きく低下したことと相まって, 登熟期間の個体群生長速度は最も低くなった. SDIおよびJIの収穫期の穂重はJP, JNと比較してETでは20~30%, LTでは18~20%高かった. また, 両作期のSDIとJIの収穫期の地上部乾物重に対する穂重の割合は, JP, JNと比較して有意に高く, この差が穂重差に反映されたものと考えられた. 穂重に対する出穂期までに茎葉に蓄積された乾物の分配率をみると, ETではJPとJNの平均値よりSDIとJIが約2倍, LTではSDIが約4倍それぞれ高い値を示した. 穂揃期の穂重(シンク容量)は収穫期の穂重と有意な相関関係を示し, シンク容量の大きい品種は登熟期間の地上部乾物重増加量が少なくなる傾向がみられた. また, 茎葉に蓄積された同化産物の穂重への分配率はシンク容量と関係が深いことが認められた.
  • 郭 康沫, 飯嶋 盛雄, 山内 章, 河野 恭廣
    1996 年 65 巻 4 号 p. 686-692
    発行日: 1996/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    根系で生産される内生アブシジン酸(ABA)とゼアチンリボシド(ZR)は, エイジングに対して対照的な働きを示すことが知られている. エイジングに伴う根系各器官・部位における, これらの内生ホルモンの濃度変化を酸素免疫測定法で調べた. 供試材料は湛水条件下で根箱栽培した水稲品種・愛知旭を用い, その根系の中から主として種子根系を対象に, 根軸, その根端, 及び側根における両ホルモンの動態を経時的に追跡した. 種子根系のABA濃度は播種後10日に, ZR濃度は同21日に最大値に達した. これらのピークのパターンは, 既報で示した窒素の根系内の濃度変化と関連性をもつことを示唆した. すなわち, ABA濃度のピークは根軸上の側根の窒素含有率が最低に達する時期に, ZR濃度のピークは同側根の窒素濃度が再び増加のピークに達する時期に, それぞれ一致した. 播種後6日の根端のZR濃度の急激な上昇は, 側根におげる2次分枝の急速な開始, 第4葉の抽出・展開および第1節根の発根開始時期とほぼ時間的に一致し, 根端のZR濃度の動態が, めばえの初期発育の出葉・発根過程に重要な役割を果していることを示すものと推論した. 根軸と側根に分けて比較した結果, 根軸は側根に比べて明らかに高いZR濃度と低いABA/ZR濃度比をもつことを認めた. なお, 根端では, ABA/ZR濃度比は根軸と基本的に同様であった. 以上のように, ABA/ZR濃度比, 並びにABAとZR濃度の変化を基準として比較した時, 側根と根軸の器官としての特徴は大きく異なることを強く示唆した.
  • 桃木 芳枝, 小栗 秀, 加藤 茂, 上村 英雄
    1996 年 65 巻 4 号 p. 693-699
    発行日: 1996/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    植物における耐塩機構を理解することは, 耐塩作物品種の利用に重要なことである. 本報では, アッケシソウにおける塩化ナトリウムの蓄積を器官レベルで測定した. さらに, Na+イオンおよびCl-イオンの器官間輸送とACh作用との関係を検討するために, AChE活性を化学的定量および組織化学的検出によって器官レベルで測定した. アッケシソウにおいて高い濃度の塩化ナトリウムは, 根と下位の茎に認められ, 発芽5カ月後の根では, 新鮮重100 g当たりNa+イオン160 nmol, およびC-イオン320 nmolがそれぞれ蓄積していた. アセチルコリン分解酵素(AChE)の活性は, 同様に根と下位の茎で高く, また, どの部位の節も節間より高い活性を示した. さらに, 組織化学的に検出されたAChE活性は, 根および茎で顕著に認められた. 根では, 維管束系を囲む内皮を含む皮層細胞と, 主根から側根の分岐部周辺に認められ, とくに, 側根周辺の内皮, 皮層および表皮細胞には強い反応が検出された. 茎では, 維管束に沿った内皮細胞と, 主茎の側枝を持った節部で極めて強い反応が現れた. これらの結果から, 主根からの側根の分岐部および主茎において側枝を持った節部でACh作用によるイオンの輸送が推定され, また, 過剰の塩化ナトリウムが根の表皮細胞から排出されることが示唆された.
  • 礒田 昭弘, ABOAGYE Lawrence Misa, 野島 博, 高崎 康夫
    1996 年 65 巻 4 号 p. 700-706
    発行日: 1996/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ラッカセイの葉の調位運動の品種間差異について, 葉面受光量, 葉温及び蒸散速度の点から検討した. 5品種(千葉半立, タチマサリ, 関東56号, バレンシア, 金時)を圃場条件下で栽培し, 地上部最盛期に防雀網で群落最上層葉を抑え, 自由に調位運動を行っている無処理区の小葉面受光量と葉温の日変化を比較した. また, 熱赤外線画像測定機で各区の群落熱画像を撮影するとともに, 無処理区の個体を対象に蒸散速度, 気孔抵抗を測定した. タチマサリ, バレンシア, 金時の3品種では, 無処理区の葉温は気温とほぼ同様に推移したが, 処理区の葉温は気温より高く推移した. 千葉半立, 関東56号においては, 葉温は無処理区で気温と同様かやや高く推移したが, 処理区では午後から気温より低くなった. 受光量は曇天日には関東56号, バレンシア, 金時で, 晴天日ではタチマサリ, 関東56号で無処理区が有意に大きくなり, 両日とも関東56号が最大の受光量を示した. 蒸散速度は千葉半立が最大で, 次いでバレンシア, 関東56号, タチマサリ, 金時の順で, 気孔抵抗とは負の相関関係があった. 熱赤外線画像測定による群落の葉温はタチマサリ, 金時で高くなり, 千葉半立, 関東56号で低い値を示した. 以上のことから, 蒸散能力の高い品種は太陽光線を避ける運動の程度が小さいことから受光量が大きくなり, 蒸散能力の低い品種は太陽光線を避ける運動により葉温を下げ, 水分ストレスを回避している傾向がうかがえた.
  • 岡野 邦夫, 松尾 喜義
    1996 年 65 巻 4 号 p. 707-713
    発行日: 1996/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    チャの窒素要求性の季節変動を調べる目的で, ガラス室内で水耕栽培した幼茶樹に対して, 年間を通じて1カ月間ずつ15Nをパルスラベルした. そして月毎に吸収された窒素について, 個体当たりの吸収量, 樹体内での一次分配, 一番茶摘採期における再分配を調査した. 窒素吸収は4月, 5月には活発であったが, 夏期にはやや低下した. 吸収は秋期の10月, 11月に再び高まり, 以後冬期に向かって低下した. しかし, ガラス室内で生育したためか, 冬期にもかなりの窒素吸収が認められた. 4月から9月の生長期に吸収された窒素の多くは葉, 特に新芽へ分配された. 一方, 11月から2月の生長停止期に吸収された窒素の大部分はそのまま根中に滞留し, 一番茶萌芽後, 新芽へ再転流した. 同位体希釈法で求めた一番茶新芽窒素に対する月別吸収窒素の寄与率は, 前年春期から夏期の各月には低かったが, 秋期から冬期にかけて徐々に上昇した. 寄与率は早春の各月にさらに高まり, 2月から4月の3カ月間の寄与率の合計値は60%に達した. このように最も間近に投与した窒素ほど, 一番茶新芽窒素への寄与率が高かった. 従って, 一番茶新芽の品質向上には, 萌芽期前後に窒素肥料を施用するのが最も効果的と考えられた. 考察では, 前年までに吸収された窒素の重要性についても議論した.
  • 杜 玉春, 野瀬 昭博, 川満 芳信, 村山 盛一, 和佐野 喜久夫, 内田 泰
    1996 年 65 巻 4 号 p. 714-721
    発行日: 1996/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    リブロース-1,5-ビスリン酸カルボキシラーゼ(Rubisco)活性の分光光度測定法はRubisco活性測定法において重要な方法である. しかし, リボース-5-リン酸から合成したリブロース-1,5-ビスリン酸を基質として用い, 分光光度測定法でRubiscoの活性を測定する時, NADHの酸化が始まるまでに数分間の遅延時間(Lag time)が生じる. 本研究では, 先ず遅延時間の程度が反応液中の3-ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK). グリセルアルデヒド-3-リン酸脱水素酵素(GAP-DH), ホスホクレチアチンキナーゼ(PCK)の濃度に密接に関係することを示した. PGKとGAP-DHの濃度を増やすと, 遅延時間は短くなったが, 完全になくすことができなかった. しかし, PCKの濃度を増すと, 遅延時間は完全になくなった. つまり遅延時間をなくすためには反応液中のPGKとGAP-DHの濃度ではなく, PCKの濃度を増加することが最も重要であることが分かった. 分光光度測定法で遅延時間が生じる原因については, 反応液中のADPの蓄積が関係していることが明らかになった. 以上のようなことを参考にした抽出・反応系を用いて, サトウキビの葉においてRubiscoの高いinitialとtotal活性を得ることができた.
  • 窪田 文武, 名田 和義, 平尾 健二, 斎藤 和幸
    1996 年 65 巻 4 号 p. 722-723
    発行日: 1996/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
  • 森田 脩, 江原 宏, 森田 貴子
    1996 年 65 巻 4 号 p. 724-725
    発行日: 1996/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
  • 高村 奉樹
    1996 年 65 巻 4 号 p. 726-730
    発行日: 1996/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
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