日本作物学会紀事
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69 巻 , 3 号
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  • 宇根 豊
    2000 年 69 巻 3 号 p. 277-285
    発行日: 2000/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    農業が生み出す「自然環境」をあらためて表現し, 評価していこうとする論理が提案されている.なかでも「多面的機能」と「生物多様性」という概念はきわめて有効であろう.しかし, これらの概念は農業技術の中で位置づけされておらず, また百姓の実感からもほど遠いように思われる.そこでこれらの概念を百姓仕事の中に組み込むためには, 実感や経験に依拠する土台技術を豊かにする必要があること, また仕事やくらしの実感を通して農業が生み出す自然環境を表現し評価していく思想の回路が必要である.
  • 寺内 方克, 松岡 誠
    2000 年 69 巻 3 号 p. 286-292
    発行日: 2000/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    高い光合成能力を有するサトウキビでは, 初期成長が緩慢で, 群落形成に長期間を要することが, 生産力を制限するひとつの要因となっている.その主な原因は比葉面積(SLA)が小さいことにある.そこで, サトウキビ初期成長特性改善の方策を, サトウキビの植物学的特性と栽培技術の二つの観点から検討するために, 現行のサトウキビ経済品種6品種を用いて, 葉身と茎の形態形質および乾物重を調査するとともに, 在来種, 野生種および近縁種を含むサトウキビ遺伝資源94品種系統の葉身および茎の形態形質を調査した.その結果, SLAは葉長/葉幅比(葉形指数), および葉厚と負の相関関係が認められ, 短く薄い葉身でSLAが大きい傾向が見られた.SLAはSacchanmsinense種で大きく, このような遺伝資源を品種改良に用いることで, サトウキビのSLA向上が可能となるものと考えられた.また, 分げつ数はサトウキビの生育初期における全乾物生産速度に影響しないことから, 少分げつ性品種は, 一茎あたりの初期生長特性が優れている.密植により少分げつ性品種の欠点である立毛茎数の不足を補うことで, 群落としての初期生長特性の改善がはかれるものと推察された.我が国南西諸島地域のサトウキビ栽培では, 土地の高度利用のための収穫早期化・在圃期間短縮が課題となっている.今後, 初期生長に関連する形質を重視したサトウキビ品種育成が必要と考えられる.
  • 松葉 捷也
    2000 年 69 巻 3 号 p. 293-305
    発行日: 2000/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    「理想稲(V字)稲作理論」は, その草姿制御の原理に, 茎葉器官の同時伸長性を授用している.しかしこの原理の, 追肥や窒素吸収の制限による実証結果をみると, 上位葉身は伸縮しても, これらと同時伸長する下位伸長節間は明瞭な反応を示していない.この問題の解析から, 草姿制御で対象とすべき茎葉単位とその最適制御時期が明らかになった.すなわち, 茎葉部の伸長量は, ある節間とその下位節に着く葉身が1つの単位となって制御され, 施肥に対してはこの単位の茎葉が相伴って反応する.施肥に対する葉身の伸長反応が大きいのは, 伸長期にある若い葉ではなく, その1葉位上の, まだ分化期にある幼葉である.したがって, 草姿制御は, 上記の茎葉単位を対象として, その分化期に制御操作を加えるのが最も有効である.この法則性に基づいて作成した草姿制御モデルにより, 以下のことが統一的に説明できるようになった.(1)「理想稲稲作理論」でいう窒素吸収の制限法では, 上位葉身は短縮するが, 下位伸長節間はほとんど短縮しない.(2)生育前期の多肥条件は下位伸長節間に徒長性の素質を付与する.これに加えて, 生育中期以降に窒素吸収力が低下すると, 下位伸長節間・下位葉身が伸びて過繁茂となる上に, 上位伸長節間・上位葉身が短くなって秋落型の草姿となる.(3)生育前期を少肥条件で経過させて, 生育中期に窒素を吸収させると, 下位伸長節間が短く, 上位伸長節間・上位葉身が長い逆三角形型の草姿が形成される.
  • 崔 晶, 楠谷 彰人, 豊田 正範, 浅沼 興一郎
    2000 年 69 巻 3 号 p. 306-313
    発行日: 2000/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    アジア各国で育成された水稲の多収性品種(10品種, 多収品種群)の苗質と本田初期生育との関係を, 従来の日本品種(10品種, 日本品種群)と比較検討した.苗の草丈, 根乾物重, 胚乳消費率に有意な品種群間差が認められ, 多収品種は日本品種よりも草丈が低く, 根乾物重が重く, 胚乳消費率が高かった.苗の葉齢×充実度(茎葉乾物重/草丈)によって算出した苗質指数(SCI)は, 多収品種の方が日本品種よりも有意に高い値を示した.播種後日数(X)と葉齢(Y1)との間にY1=a1+b1X, Xと胚乳消費率(Y2)との間にY2=100-a2・exp(b2X)という関係式が得られた.常数b1(葉齢増加係数, LNC)に品種群間差は認められなかったが, 常数b2(胚乳消費係数, ECC)は多収品種の方が日本品種よりも有意に高かった.SCIはLNCおよびECCと正の相関関係にあった.移植後28日目の地上部乾物重(TW)および葉面積(LA)は, いずれも多収品種の方が日本品種よりも大きかった.SCIとTWおよびLAとの間には有意な正の相関関係が認められた.これらより, SCIが高い多収品種は移植後の葉面積が大きく展開することによって旺盛な初期生育が得られると考えられた.
  • 崔 晶, 趙 居生, 楠谷 彰人, 諸隅 正裕, 豊田 正範, 浅沼 興一郎, 丹野 久
    2000 年 69 巻 3 号 p. 314-319
    発行日: 2000/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    中国華北地域における良食味品種育成のための基礎的知見を得るために, 天津市近辺で栽培されている品種10(天津品種)と日本の新旧品種10(日本品種)を供試し, 食味特性を比較した.官能検査における総合評価は日本品種コシヒカリが最も高く, 天津品種津優9701が最も低かった.総合評価の平均値は, 天津品種は-0.42, 日本品種は-0.04であった.総合評価の判定値によって, 供試品種を+0.35以上の食味良品種群(H群), +0.35~-0.35の食味並品種群(M群), -0.35以下の食味不良品種群(L群)に分類した.日本品種では, コシヒカリ, キヌヒカリ, おくひかりがH群, 神力, 愛国, 農林18号がL群に属し, 他はM群に属した.天津品種では唯一花育13がH群に属し, 金珠1, 津稲779および津優29はM群, 他の品種は全てL群に分類された.理化学的特性のアミロース含有率, タンパク質含有率および最高粘度に有意な品種群間差は認められなかった.津稲779と花育13のアミロース含有率とタンパク質含有率はコシヒカリやキヌヒカリに近い水準にあった.以上より, 天津品種の理化学的特性はそれ程悪くないものの, 官能検査では劣ることが知られた.この理由は, 天津品種には低アミロース含有率, 低タンパク質含有率, 高最高粘度を兼備した品種が少ないためと考えられた.しかし, これらの中にあって, 津稲779と花育13は総合的に優れた食味特性を備えており, 今後の華北地域における良食味品種育成のための有用な育種素材になると期待される.
  • 浅野 紘臣, 平野 文俊, 磯部 勝孝, 櫻井 英敏
    2000 年 69 巻 3 号 p. 320-323
    発行日: 2000/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    前報において, アイガモ栽培では収穫時期を成熟期より10日間程度遅らせることにより, 青米の減少とともに収量が増加すること, また玄米中のタンパク質含有率が減少することにより, 米の食味が向上する可能性を指摘した.ここでは前報で用いた材料のタンパク質およびその組成(グルテリン, アルブミン+グロブリン, プロラミン)とアミロース含有率について調査した.玄米および白米の全タンパク質含有率は, 収穫時期が-10日, ±0日, +10日(早刈り, 成熟期刈り, 遅刈り)と遅くなるに従って品種(キヌヒカリ, コシヒカリ)や栽培法(慣行, アイガモ)を問わず減少する傾向があった.収穫時期の差によって玄米のタンパク質の組成含有率はグルテリンは66.0-67.7%, アルブミン+グロブリンは18.8-20.8%, プロラミンは12.5-14.5%と変動し, 品種や栽培法の別による若干の差は見られたが, 収穫時期によると考えられる差は見られなかった.白米においてもグルテリン, アルブミン+グロブリン, プロラミンの含有率は玄米と同様に収穫時期による一定の傾向は見られなかった.このことからアイガモ農法でも成熟期から10日程度遅刈りしてもタンパク質の組成には大きく影響しないと考えられた.アミロース含有率は品種や栽培法を問わず白米では, 早刈り, 成熟期刈り, 遅刈りの順に減少する傾向が見られた.以上のことから, 前報で報告したアイガモ農法によって生産された米の遅刈りによる食味の向上には, 青米, タンパク質含有率そしてアミロース含有率の減少による影響があったと考えられた.
  • 趙 志超, 高橋 清, 西山 岩男
    2000 年 69 巻 3 号 p. 324-331
    発行日: 2000/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    本研究では出芽様式を異にする栽培イネ(Oryza satiua L. )を用いて, 出芽様式と生長特性との関係, また, 植物ホルモンと出芽様式あるいは生長特性との関係を検討した.第1実験では, これまでの実験結果から, 特徴的な出芽様式を示したM型2品種(Tchampa, Hei Chiao Chui Li Hsiang Keng)およびS型2品種(Haginomae Mochi, Shan Kiu Ju)を供試し, 5.5cmの播種深度における幼植物の生長特性を調査した.その結果, M型品種は, S型品種と比べると鞘葉や第1葉の生長が抑えられ, 中茎伸長が優先すること, また, 中茎根の発生が認められることが特徴であった.一方, S型品種は, 出芽は遅れるが, 出芽後の生育が早く進み, 播種後15日目には, M型に比べて葉齢が進んでいた.第2実験では, M型1品種(Tchampa), F型2品種(Darmall, Kotobuki Mochi), S型1品種(Haginomae Mochi)を供試し, 5.5cmの播種深度で, 各種の生長調節物質処理が出芽様式等に及ぼす影響を調査した.その結果, F型品種およびS型品種は, ABA処理によってM型の出芽様式に変化した.また, PP-333やBX-112等のジベレリン生合成阻害処理により, F型品種はS型の出芽様式に変化した.各出芽様式は体内の植物ホルモンによって調節されていることが示唆された.
  • 柏木 純一, 岩間 和人, 長谷川 利拡
    2000 年 69 巻 3 号 p. 332-336
    発行日: 2000/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    バレイショ根系の遺伝的改良についての基礎的知見を得るために, 実生(真正種子の発芽個体)の世代における根長の表現型変異に対する栽培環境の影響を検討した.供試材料には農林1号(根長大)とコナフブキ(根長小)の交配から得た分離集団を用い, 1995年には日長や日射量の異なる3時期(夏期, 秋期, 冬期)に標準の潅水条件下で, また1996年の夏期には異なる土壌水分条件下(乾燥区, 標準潅水区, 湿潤区)で, 実生をガラス温室内のポットで栽培して, 6葉期に根長を測定した.各処理区での平均根長は, 冬期に比べ夏期の方が, また乾燥区や湿潤区に比べて標準潅水区の方がそれぞれ大きかった.しかし, 根長の表現型変異の形はいずれの処理においても類似した結果であった.すなわち, 根長小の側に分布が偏在し, 根長小の大きな山と根長大の小さな山を持つ2頂型を示した.これらのことより, 本研究で用いた交配分離集団では, 実生世代での根長の選抜を栽培環境に影響されることなく行うことができると考えた.
  • 楠谷 彰人, 崔 晶, 豊田 正範, 浅沼 興一郎
    2000 年 69 巻 3 号 p. 337-344
    発行日: 2000/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    従来の日本品種10(日本品種群)およびアジア各国で育成された多収品種10(多収品種群)を供試し, 出液速度の品種間差を調査するとともに, 収量関連形質との関係を検討した.出穂期における出液速度(BR1)および成熟期における出液速度(BR2)は, それぞれ2.20(g時-1株-1)~3.92, 1.50~2.62の範囲にあった.BR1およびBR2に有意な品種群間差は認められなかったが, 1-BR2/BR1によって求めた登熟期間中の出液速度減少率は, 多収品種の方が日本品種よりも有意に高かった.BR1と総ファイトマー数(TPN)との間に有意な相関関係は認められなかったが, BR1とBR1/TPNとは有意な正の相関を示した.BR1と出穂期における茎葉乾物重(SDW)/TPNとの間にも有意な正の相関関係が存在した.登熟期間中の出液速度減少率は, 葉色の低下と有意な正の相関を示した.さらに, 出液速度減少率と登熟歩合との間には有意な負の相関関係が認められた.これらより, 出穂期後の葉色の低下が大きく出液速度の減少率が高い品種は根の活力低下が激しく, 登熟性に劣ると考えられた.
  • 露〓 浩, 武田 和義, 駒崎 智亮
    2000 年 69 巻 3 号 p. 345-350
    発行日: 2000/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    オオムギが主食として栽培されているチベット高原の東部地域(標高2670m~3550m)において, オオムギの栽培, 生育状況を収穫期に調査した.さらに, その場で収集したオオムギ在来品種333系統を日本で栽培し, 出穂期や収量関連形質などを調べた.栽培されていたオオムギのほとんど(収集系統の99%)が六条・裸性であった.粉食をするチベット民族が製粉の容易なハダカムギを好んで栽培していると推察される.穎や穎果が紫や青色を呈する系統が多数認められた.オオムギ栽培は, 河岸段丘や山腹の小規模な畑で行われていた.ヤク(牛の一種)を使う耕起の他は, 全て手作業で栽培が行われていた.元肥として, 主に有機質肥料が使われていた.播種様式は散播が最も多かった.春播き栽培されており, 播種期(3月中旬~4月上旬)と収穫期(8月上旬~下旬)が標高により異なった.収穫物は架掛けや屋根の上で乾燥された後, 踏みつぶしや唐竿により脱穀されていた.収穫時の生育状況(草高および被度)に, 大きな圃場間差が存在した.日本での出穂期に1ケ月近くの系統間変異が認められ, 標高2900~3100mから収集した系統に出穂の遅いものが多かった.このような出穂期の遺伝的分化には, 栽培標高帯の気象条件や播種, 収穫期の早晩が関わっていると思われた.収集系統の千粒重は, 世界各地の六条・裸性品種と比べ明らかに大きかった.最後に, 現地での多収化を計る上での栽培上の視点を提示した.
  • 崔 晶, 楠谷 彰人, 豊田 正範, 浅沼 興一郎
    2000 年 69 巻 3 号 p. 351-358
    発行日: 2000/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水稲の日本品種60(日本品種群)とアジア各国で育成された多収品種20(多収品種群)につき, 収穫指数(HI)と収量(Y)の品種間差を調査した.HIは36.8%から53.4%に変異し, その平均値は, 日本品種では43.5%, 多収品種では48.8%であった.Yは22.6g/株から40.0g/株の範囲にあり, 日本品種における平均値は27.8g/株, 多収品種の平均値は34.1g/株であった.多収品種ではHIとYとの間に有意な相関関係が認められたが, 日本品種における相関関係は有意ではなかった.HIと成熟期における全乾物重(W2)との間には, 日本品種では有意な負の相関関係が存在したが, 多収品種に有意な相関関係は認められなかった.HIと物質生産との関係を明らかにするために, 籾数(N)と出穂期の全乾物重(W1)を基にHIを次の三つの構成要素に分割した.HI=Y/W2=[W1/W2]×[N/W1]×[Y/N] 両品種群とも, HIはW1/W2と有意な負の相関を示した.また, 日本品種ではN/W1, 多収品種ではY/Nとの間にも有意な正の相関関係が認められた.W1/W2, N/W1およびY/Nはそれぞれ, 出穂期前後の乾物生産のバランス, 籾数生産効率および登熟の良否を示す指標になると考えられる.従って, 以上の結果は, 水稲では出穂期前の乾物生産力に比べ出穂期後の乾物生産力が相対的に優れる品種ほど高いHIを持つことを示唆している.さらに, 日本品種では籾数生産効率, 多収品種では登熟の良否もHIに影響すると考えられる.
  • 崔 晶, 楠谷 彰人, 豊田 正範, 浅沼 興一郎
    2000 年 69 巻 3 号 p. 359-364
    発行日: 2000/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水稲における収穫指数向上の選抜指標を検討するために, 日本品種60(日本品種群)およびアジア各国で育成された多収品種20(多収品種群)を供試し, 収穫指数(HI)と形態形質および葉色との関係を調査した.日本品種のHIは, 出穂期の葉色(葉緑素計SPAD-502型による読みとり値, SV)と正, 草丈(PL)との負の相関を示した.多収品種では, HIはSVと正の相関を示したが, HIとPLとの相関関係は有意ではなかった.HIと成熟期の稈長(CL)との間には, PLと同様の関係が認められた.日本品種のHIは穂長(EL)と負の相関を示したが, 多収品種では逆に正の相関を示した.多収品種のHIとEL/CLとの間にも正の相関関係が存在した.形態形質とHIとの関係を明らかにするために, 重回帰分析を行った.その結果, HIとSV(X1), PL(X2), EL/CL(X3)との間に有意を重相関関数が得られた.また, 標準偏回帰係数比から推定したX1, X2およびX3のHIに対する貢献割合は54:15:31であった.これらより, 出穂期の葉色, 草丈, 穂長/稈長比は高い収穫指数を持つ品種を選択していくうえでの有効な指標になると考えられた.
  • 佐々木 良治, 趙 志超
    2000 年 69 巻 3 号 p. 365-371
    発行日: 2000/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    葉齢の異なる4種の乳苗(葉齢2.0~2.7)と稚苗(同3.4)を供試し, 籾を除去する胚乳除去苗と無処理苗を設けて移植し, 移植後0, 5, 10日間葉先まで水没する冠水下で生育させた.そして, 移植後10日目の生育および同25日目の生存率と総乾物重を比較することにより, 冠水期間や移植時の残存胚乳養分の影響を調査し, 葉齢の増加に伴う苗の冠水耐性の変化を検討した.冠水期間が5日以内であれば, 葉齢の異なる乳苗と稚苗はともに100%生存した.冠水期間を10日とした場合, 草丈の伸長は促進されたが, 逆に根の生長が著しく抑制され, 生存率も低下した.稚苗の生存率は22%であったのに対し, 乳苗の生存率は53~81%であり, 乳苗の方が稚苗より冠水耐性に優れた.乳苗間では, 葉齢2.5(胚乳残存割合22%)の乳苗の生存率が高い傾向にあり, 移植時の胚乳残存割合が高かった若い苗ほど, 冠水耐性に優れるとはいえなかった.また, 胚乳除去処理は, 移植時の胚乳残存割合が35%前後より高い苗の生育を低下させた.一方, この胚乳残存割合よりも低い苗では, 移植後10日間の増加総根長および移植後25日目の総乾物重は, 胚乳除去処理によって低下したが, 草丈の伸長や生存率はほとんど影響されなかった.したがって, これら苗間で生存率に差異が生じた原因は, 残存胚乳養分の多少ではないと推察された.
  • 佐々木 良治, 趙 志超
    2000 年 69 巻 3 号 p. 372-379
    発行日: 2000/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    葉齢の異なる4種の乳苗(葉齢2.0~2.7)と稚苗(葉齢3.4)とを移植後10日間完全な冠水下で生育させ, 退水後は10日間(1993年)および15日間(1994年)生育させて生存率を調べた.そして, 冠水下における生育と生存率との関係を調査し, 生存率に関与する要因について検討した.生存率は両年とも乳苗の方が稚苗よりも高く, 特に葉齢2.5の乳苗の生存率が高い傾向にあった.生存率は, 冠水8日間の茎葉乾物重の増加量と正の相関関係(r=0.951*)にあった.また, 冠水処理10日目の草丈の冠水無処理に対する比率は, 生存率と負の相関関係(1993年:r=-0.961*, 1994年:r=-0.890*)にあったが, 試験年次によって回帰直線は異なった.冠水処理開始時に抽出中の葉における冠水処理10日目の葉身長/葉鞘長比は, 生存率と正の相関関係(r=0.757*)にあり, 葉身より葉鞘の方が長く伸びた苗ほど生存率は低下する傾向にあった.そして, 冠水処理10日目の葉鞘長に対する冠水8日間の茎葉乾物重増加量の比率は, 生存率との間に高い正の相関関係にあった(r=0.998***).したがって, 苗間で生じた生存率の差異は, 冠水開始時の葉の発達段階が苗によって異なり, その結果, 冠水下での伸長程度に著しい苗間差が生じたことに加え, 伸長部位への炭水化物供給量が苗間で異なったことが原因と推察された.
  • 鄭 紹輝, 川畑 美保
    2000 年 69 巻 3 号 p. 380-384
    発行日: 2000/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ダイズを含むマメ科作物8種66品種を供試し, 20℃, 24時間浸水処理によって種子から溶出したアミノ酸や糖の種類および量を高速液体クロマトグラフで分析し, 溶出の難易の種間差や, 種子の特徴との関係について検討を加えた.その結果, 供試した全作物において種子からのアミノ酸および糖(ケツルアズキを除く)の溶出が認められた.まずアミノ酸については, 検定に用いた17種のうち溶出が認められたのはダイズで最も多く16種, 次いでインゲンマメで14種, ケツルアズキで8種などの順で, タケアズキがもっとも少なく2種類であった.またその溶出量はダイズで最も多く(種子1g当り1020μg), タケアズキでは最も少なかった(同71μg).なお, 溶出量が最も多かった成分はアルギニンであり, 溶出した総アミノ酸量の32%(インゲンマメ)~80%(タケアズキ)を占めていた.糖については, 溶出がみられたのは主にグルコース, フルクトースであったが, ダイズとインゲンマメでは溶出した品種の割合が高く, リョクトウおよびタケアズキではわずか1品種, ケツルアズキでは溶出した品種はみられなかった.また溶出量は, アミノ酸の場合と同じくダイズでもっとも多く, (種子1g当り2065μg), 次いでインゲンマメ(同1297μg)であり, 両作物とも糖の溶出量はアミノ酸の約2倍であった.このような溶出量の多少は, 種子元来の各成分の含有量とは関係がなく, 吸水の過程でリーチングの難易さを示唆したものであると考えられた.なお, ダイズ29品種においては, アミノ酸および糖ともに溶出量は種皮の厚さとは関係がなく, 種子の大きさとの間に有意な正の相関関係がみられたが, 中には不検出の品種から糖では種子1g当り最多約8800μgの溶出の品種までみられ, 溶出程度の品種間差も著しいことが示唆された.
  • 齊藤 邦行, 大中 隆史, 黒田 俊郎
    2000 年 69 巻 3 号 p. 385-390
    発行日: 2000/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    早生品種コシヒカリ, 中生品種日本晴, 晩生品種アケボノを供試し, 生長パラメータ, 暗呼吸速度を測定し, 生長効率の推移を品種間で比較した.収量はアケボノ>日本晴>コシヒカリの順に高く, 特にコシヒカリの登熟歩合が低かった.乾物総生産量も同様に晩生品種ほど高くなったが, これには葉面積指数が大きく, 生育期間が長いことが関係していた.コシヒカリの葉面積は小さかったが, 純同化率が高いことにより, 生育前半の個体群生長速度が高く推移した.個体の暗呼吸速度(Rs)は, 移植後10日頃にピークをとって以降, 生育の経過ともに低下し, 生育後半にはほぼ一定値をとった.穂のRsは出穂後約1週間以内に最大値をとり, その後急速に低下してほぼゼロに近づいたが, コシヒカリでは成熟期においても0.1mgCO2 g-1h-1程度の値を維持した.面積当たりの呼吸消費量は各品種ともに出穂期前後に最大値をとりその後急速に小さくなり, 生育全般を通じて日本晴で低く維持した.晩生品種ほど出穂期が遅くなり呼吸消費量の高い期間が持続した.生長効率(純生産量/総生産量)は生育初期には3品種ともに60%以上を維持したが, その後次第に低下して, 登熟期には日本晴>アケボノ>コシヒカリの順に高くなった.登熟期の生長効率が低下した要因として, 早生品種ほど気温が高く推移したこと, アケボノでは大きな植物体を維持するための呼吸量をより多く要したことが関係した.穂の生長効率はアケボノ>日本晴>コシヒカリの順に高くなったことから, 高温下では穂の生長に関与しない呼吸が増大することが示された.
  • 森田 敏
    2000 年 69 巻 3 号 p. 391-399
    発行日: 2000/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ポット栽培水稲を用いて人工気象室による温度処理実験を行い, 中国地方平坦部の福山市のおける平均的な8月の気温が登熟に及ぼす影響を解析した.人工気象室で登熟期に福山平年区(32°C/23°C;最高/最低気温), 低温区(28°C/19°C)および高温区(35°C/26°C)の3区を設けた.玄米1粒重と良質粒歩合は低温区に比べて福山平年区で有意に低下し, 高温区ではさらに低下した.高温による玄米1粒重の低下は粒厚の減少を伴った.また, 高温による玄米1粒重の低下は全ての節位の1次枝梗で生じた.福山平年区では低温区より発育停止籾歩合が高く, 高温区では不稔歩合が著しく高かった.高温による玄米1粒重の低下程度には品種間差異が認められ, 高温区の粒重が低温区のそれより10%以上低下した品種は, 森田早生, 大粒のジャワ型品種のArborio, 極穂重型で登熟不良となりやすい日本型品種アケノホシなどであった.高温区での粒重低下程度が5%未満であった品種は, 環境による品質の振れが小さいと言われるコガネマサリ, 小粒のジャワ型品種のLakhi Jhota, アケノホシと兄弟であり極穂重型で登熟が良いインド型品種のホシユタカであった.
  • 森田 敏
    2000 年 69 巻 3 号 p. 400-405
    発行日: 2000/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ポット栽培水稲を用いて作期移動実験と標高の異なる地点へのポット移動実験とを行い, 中国地方平坦部の福山市における登熟期の気温が登熟に及ぼす影響を解析した.標高が高く平均気温が4~5℃低い大朝町で出穂期以降に栽培した場合, 福山市で栽培した場合に比べて良質粒歩合と粒厚1.9mm以上の玄米1粒重が有意に大きくなったが, 全玄米の平均1粒重には有意差は認められなかった.作期移動実験では玄米1粒重と良質粒歩合は開花後4日目から20日間の日平均気温の上昇による影響を受けなかった.一方, 開花後4日目から20日間の日射量当りの玄米1粒重と同期間の気温間には有意な負の相関関係が認められた.また, 開花後4日目から20日間の日射量当りの良質粒歩合と同期間の気温間にも有意な負の相関関係が認められた.これらのことから, 作期間や標高の異なる地点間では日射量の影響のために登熟気温と玄米1粒重と玄米外観品質に及ぼす効果が現れ難いこと, そして潜在的には中国地方平坦部での適温を越える登熟気温が玄米1粒重と玄米外観品質を低下させる効果があることを明らかにした.
  • 谷本 高広, 伊藤 亮一
    2000 年 69 巻 3 号 p. 406-412
    発行日: 2000/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    葉身の巻く程度の異なる4品種(C-115, コシヒカリ, コガネマサリ, アキヒカリ)を用いて, 蒸散特性および水利用効率に及ぼす巻き葉の影響について検討した.巻き葉の程度は, 巻き葉率=(1-巻いた状態の葉身の幅/葉身の幅)×100として評価した.最も高い巻き葉率を示すC-115は, 個体当たり蒸散量で低い値を示した.また, 日平均巻き葉率と蒸散量の間には負の相関があり, 巻き葉率が高い品種ほど蒸散量は低い値を示した.このことから, 葉身が巻いているほど蒸散を抑制するものと考えられた.その原因として, 巻き葉率は気孔伝導度や葉温に影響しなかったことから, 葉面境界層伝導度の低下が考えられた.巻き葉率10%を境とし, 個葉の蒸散速度, 光合成速度および水利用効率と気孔伝導度の関係をみると, 巻き葉率10%以上では10%未満と比べ, 気孔伝導度の増加に伴い, 蒸散速度の最大値が低くなることが示された.しかし, 光合成速度では, 巻き葉率の影響は見られなかった.巻き葉率の増加は, 蒸散速度を抑制するが光合成速度を抑制しないことにより, 巻き葉率10%以上では, 個葉の水利用効率は高い値を示した.個体当たりの水利用効率と蒸発要求量の間には負の相関がみられたが, C-115は同程度の蒸発要求量に対して高い水利用効率を示した.これは葉身が巻くことによって蒸散は抑制するが, 乾物増加は抑制しないためであった.
  • 小葉田 亨, 菅原 誠
    2000 年 69 巻 3 号 p. 413-418
    発行日: 2000/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    イネでは出穂後約10日間の登熟初期(DAY0-10)に子実への同化産物供給が遮光などにより不足すると, 子実の乾物増加(ΔG)が早期に停止してしまい茎葉に乾物が再蓄積する, いわゆる子実発育停止がおきることが知られている.しかし, このような子実重の低下が, 子実の乾物増加能力(ΔGP)が常に十分に発揮できるような同化産物条件のもとで観察されたのかどうかは明確でない.そこで, 本研究は登熟初期の遮光によるΔGの低下は, ΔGPが減少したためではなく, ΔGPを満たすだけの同化産物の供給がなされないためであることをモデル解析で明らかにしようとした.DAY0-10のみを3段階の強度で遮光し, その後遮光を除いたところ, 子実乾物重は遮光強度に応じて低下し, 強遮光区では登熟後期に茎葉部の乾物再蓄積が観察された.一方, 10日おきに対照区の栽植密度を半減するように間引いて受光条件を改善し, 十分な同化産物供給条件のもとでのΔGPを推定した.ΔGPの変化パターンと穂揃期茎葉部非構造性炭水化物量を固定し, 全植物体の乾物増加速度(ΔW)の観察値のみを入力変数とするモデルで子実と茎葉部乾物重の推移を計算した.その結果, 遮光による登熟中期にまで及ぶΔWの抑制がΔGPの高い時期と重なり最終子実乾物重の低下を, その後のΔWの回復が茎葉部に乾物再蓄積を起こした.この計算結果は子実と茎葉部重の実測値変化をよく再現していた.以上から, 登熟初期に遮光を受けたイネで起きる子実乾物重低下と登熟後期の茎葉部乾物再蓄積は, 子実の乾物増加能力の低下を仮定しなくても起きることがわかった.
  • 中野 敬之
    2000 年 69 巻 3 号 p. 419-423
    発行日: 2000/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    葉面積指数(以下LAI)を非破壊手法で測定するため, プラントキャノピーアナライザー(LI-COR製LAI-2000, 以下PCA)の茶樹への適合性について検討した.層別刈取りと面積計で推定したLAIとPCAによる測定値との関係を調査した結果, 両者には高い正の相関関係(n=51, r=0.951, p<0.0001)が認められた.しかし, PCAによるLAI測定値は枝のみの茶樹でも3程度の値を示し, PCAのセンサーが枝も評価していることは明らかであった.枝の量は品種, 樹齢および茶樹の栽培歴によって大きく異なることから, PCAによって茶樹のLAIを正確に推定することは不可能と結論された.一方, PCAによる測定値と新梢の重量(葉と枝重の計)との関係はLAIよりも相関係数が高かった(r=0.973, p<0.0001)ことから, PCAによる測定値を地上部重に相関の高い指数として利用することによって, 生育診断などに活用できる可能性が残された.
  • 山本 晴彦, 岩谷 潔, 鈴木 賢士, 早川 誠而, 鈴木 義則
    2000 年 69 巻 3 号 p. 424-430
    発行日: 2000/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    1999年9月24日早朝, 九州西岸に上陸した台風18号は, 九州を縦断し周防灘から山口県に再上陸し西中国地方を通過した後, 日本海に抜けた.台風の経路上および経路の東側に位置した気象官署では最大瞬間風速40m/s以上の強風が吹き, 最大風速も九州中南部を中心に20m/s以上を観測した.九州や西中国地方では台風の通過と満潮が重なり, 有明海沿岸や周防灘では高潮により堤防が決壊し, 農作物に塩害が発生した.台風に伴う九州7県の農作物および農業用施設の被害総額は914億円, 被害面積20万haにも及んだ.また, 山口県の小野田市や宇部市の消防本部では最大瞬間風速が52.0m/s, 58.9m/sの強風を観測した.宇部港では最高潮位が560cmを観測し, 推算満潮位351cmを209cmも上回る著しい高潮であった.このため, 周防灘に面した山口県内の市町では高潮災害が相次いで発生し, 農林水産被害は高潮に伴う農耕地の冠水と塩害, 強風に伴う農作物の倒伏, ビニールハウスや畜舎の損壊, 林地の倒木など約100億円に及んだ.山口市秋穂二島でも堤防の決壊により収穫直前の水稲や移植直後の野菜苗に約100haにわたり塩害が発生し, 収量が皆無となった.
  • 森田 茂紀
    2000 年 69 巻 3 号 p. 431-434
    発行日: 2000/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
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