日本作物学会紀事
Online ISSN : 1349-0990
Print ISSN : 0011-1848
ISSN-L : 0011-1848
70 巻, 3 号
選択された号の論文の18件中1~18を表示しています
  • 国分 牧衛
    2001 年 70 巻 3 号 p. 341-351
    発行日: 2001/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ダイズは, タンパク質や脂質に富むうえに, 種々の機能性成分を含むことから, 今後も世界的な需要の伸びが期待される.しかし, 20世紀後半, ダイズの主産地はアジアからアメリカ大陸に移り, インドを除いてアジアのダイズ生産は停滞している.わが国においては, 水田転換畑における主要作物としての栽培が多くなっているが, 収量は低くかつ年次変動が大きい.今後の需要増加に応えるためには, 単収の大幅な向上が必須である.本論文では, ダイズ多収化のための生理学的な研究の現状と今後の課題について述べる.多収化の重要な鍵となる生理的形質は, 受光態勢, 光合成能と乾物転換効率, 窒素固定能, 水分吸収能および花器の形成能などであり, これらに関する研究に焦点を当てる.
  • 惣慶 嘉, 和佐野 喜久生, 山下 耕一郎, 野瀬 昭博
    2001 年 70 巻 3 号 p. 352-358
    発行日: 2001/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    カザフスタン共和国・シルダリア川下流域の高塩類集積土壌で行ったプロジェクト研究で課題となった畝内塩類集積, 作物の出芽及び初期生育に関して実験を行った.ビニルハウス内に異なる2種の畝型(平畝及び山型畝)及び3種の土性(砂壌土, 埴壌土及び軽埴土)よりなる畑土壌試験区を設定し, 濃度調整した塩水(EC=8dSm-1)を畝間灌漑して, トウモロコシの出芽及び生育に対する影響を畝型, 土性及び畝内での塩類集積分布との観点から調査・分析した.結果は, 1)出芽率は平畝区で悪く, 特にそれの埴壌土及び砂壌土区で(70%前後)顕著であった.2)播種後42日までの草丈伸長は平畝区で悪かったが, 軽埴土区では21日以降には急速に回復し, 最終的に草丈は対照区と同じ(149cm)になった.3)地上部乾物重は基本的には草丈伸長と同じ傾向を示した.4)播種位置での土壌含水比はジョロ・畝間の両灌水区とも両畝型の砂壌土で最も低く, 5~15%であった.5)播種後のECe値は平畝で高く(10~15dSm-1), その傾向は砂壌土区で顕著であった.6)畝内での塩類集積分布は山型畝では頂上あるいはその付近に, 平畝では畝の肩部でそれぞれの最高値がみられ, 山型畝では埴壌土区(46.9dSm-1)が, 平畝では砂壌土区(29.8dSm-1)がそれぞれ最大であった.7)畝内での塩類集積分布とトウモロコシの初期生育の良否は密接に関連した.以上の実験結果は, 塩類集積と作物の初期生育との関係を明らかにするための重要な示唆を与えるものであった.
  • 江原 宏, 森田 脩, 森本 智恵, 川嶋 みず恵, 末松 優
    2001 年 70 巻 3 号 p. 359-364
    発行日: 2001/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    野菜用水耕システムを利用した水稲のマット水耕育苗において, 培養液の窒素組成の違いが苗の生長に及ぼす影響について調査した.木村氏B液をベースとして窒素源にNH4-NとNO3-Nを28%:72%, 44%:56%, 72%:28%, 100%:0%の比率で施用した結果, NO3-Nの比率が高いほど草丈, 最長根長, 根乾物重が大きくなる傾向が認められた.しかし, 土耕苗と同程度の草丈が確保されたNO3-Nリッチの窒素組成では, 根長が従来の育苗箱を用いた土耕苗よりも明らかに長かったことから, ルートマットが厚くなりすぎて機械移植に用いた場合には支障をきたすことが危惧された.そこで, 育苗初期には培養液を施さず, 育苗中期にNO3-Nリッチの培養液(NH4-N:NO3-N=28%:72%)を施用し, 育苗後期には窒素源をNH4-Nのみとし, このような培養液の施用が苗の草姿に及ぼす影響を検討した.その結果, 十分な草丈を持ちながらも, 比較的根長が短い特徴を有する苗が得られ, 移植後の初期生長は土耕苗と同様の経過を示した.
  • 齊藤 邦行, 磯部 祥子, 瀬口 由美香, 黒田 俊郎
    2001 年 70 巻 3 号 p. 365-372
    発行日: 2001/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ダイズの収量成立過程において, 莢数の決定はソース能と密接に関係している.シンクとソースの相互関係を検討するため, 圃場栽培を行ったダイズ(タチスズナリ)を用いて, 開花盛期に主茎と分枝それぞれについて葉, 花, 葉花を切除した区を設け, 開花数と結莢率, 乾物生産特性の比較を行った.節数は葉・花切除により増加し, これには椏枝の発達が関係した.莢数はいずれの区においても減少し, その程度は主茎切除区に比べ分枝切除区で, 葉花切除区に比べ花切除区で大きかった.葉または花の切除は処理を行っていない主茎または分枝の開花・着莢を促進し, その程度は主茎で著しかった.葉花切除区の花蕾数の増加は葉切除区, 花切除区に比べて大きかった.すなわち, ソースとシンクいずれの切除によっても花蕾数の増加による補償が行われることがわかった.個体群生長速度はいずれの区でも低下したが, その程度は花切除区に比べ葉切除区と葉花切除区で著しかった.純同化率は葉切除区で葉面積指数が減少することにより上昇した.分枝葉切除区における分枝の莢乾物増加速度は主茎葉切除区における主茎に比べて大きかったことから, 分枝は主茎は同化産物を依存していることがわかった.葉切除区と葉花切除区では, 純同化率が高まり, 複葉から葉腋への同化産物供給の増加により花芽の分化発育が促進され, 着莢も高まることが明らかとなった.
  • 庵 英俊
    2001 年 70 巻 3 号 p. 373-378
    発行日: 2001/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    アミロ粘度が高い良質のコムギを適期に収穫するための知見を得る目的で, 1996年と1997年に北海道の主要産地で秋播コムギ(品種チホクコムギとホクシン)の登熟期における千粒重, 子実水分, フォーリングナンバー(FN)値の推移を調査した.年次による粒重の増加速度が異なり, 千粒重が最大となる時期(粒重最大期)に差異がみられた.子実水分は40%までは年次および産地を問わずほぼ一定の速度で低下した.しかし, 40%を切ってからは年次や産地により異なり, 出穂後55日でも水分が30%以下にならない場合や, 2~3日のうちに30%を切る場合などがあった.粒重最大期の年次間差や子実水分40%以降の低下速度の違いは登熟期の気温, 日照時間, 降水量の影響が大きいと考えられた.FN値は, 1996年には上昇をはじめる時期が遅くその上昇程度も小さく, 最大値が300sec以下の産地が多かった.1997年のFN値上昇は出穂後32~34日の早い時期にはじまり, ホクシンはチホクコムギよりFNの最大値が大きく, 300sec以上を示す期間が長かった.FN値が300secを超えると生理的成熟期にあたる粒重最大期を過ぎており, これ以降であればアミロ粘度が高い良質コムギの収穫が可能と考えられた.
  • 森下 敏和, 手塚 隆久
    2001 年 70 巻 3 号 p. 379-386
    発行日: 2001/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    九州においてソバ遺伝資源における各農業形質の特徴を明らかにするため, 九州の在来種など, 内外の遺伝資源を用いて栽培調査をした.まず1995年に夏栽培について検討した結果, 夏栽培が成立するためには生育期間が短く難穂発芽性品種の開発が必要であることが示された.1995年から1997年の3年間の秋栽培について農業関連形質を調査した結果, 全ての形質について品種および年次間差が有意であった.全重, 子実重などの形質は年次間差が有意であり栽培環境による影響を受けやすいと考えられた.一方で, 草丈, 主茎節数, 千粒重など形態に関する形質の年次相関は高く, 品種特性を示す指標となると考えられた.また多収を得るには草丈, 全重などの生産量を表す特性が大きいことが有利であることが示された.これらの調査に供試した遺伝資源は生育日数, 形態など原産地毎に地域特性が認められた.特に九州の在来種は生育期間が長く多収を示したことから九州の気象条件に適応した生態型を有することが示された.
  • 吉岡 秀樹, 初山 聡, 川越 博, 菊川 憲明
    2001 年 70 巻 3 号 p. 387-392
    発行日: 2001/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    近年, 宮崎県においても夜間営業店舗や街路・道路上に設置された夜間照明が早期水稲の出穂遅延を引き起こし, 水稲に対する問題が生じてきている.本研究では夜間照明が早期水稲品種の出穂遅延に及ぼす影響および夜間照明時期と強さが早期水稲品種の出穂および収量並びにその構成要素に及ぼす影響を宮崎県総合農業試験場内の水田ほ場試験で検討した.夜間照明による出穂遅延はコシヒカリがきらり宮崎より大きく, 移植から出穂期までの長期照明ではコシヒカリが約4Lx, きらり宮崎が約30Lxの照度から出穂の遅延が認められた.夜間照明によるコシヒカリの出穂遅延は, 幼穂形成始期前18~3日の照明で最も大きく, 次いで幼穂形成始期前2~後12日において大きかった.分げつ期から出穂期までの照明では約6Lxから遅延し, 照度117Lxで約25日の遅れがみられ, また長稈となる傾向を示した.幼穂形成始期前2日~出穂期の照明では登熟歩合が低下した.コシヒカリの収量低下は幼穂形成始期後13日から出穂期までの照明で最も大きく, 夜間照明の時期が出穂に近いほど登熟歩合が低下し, 減収傾向が大きくなると考えられた.コシヒカリときらり宮崎の夜間照明に対する出穂反応の差から, 街灯等に近いところの水田には, きらり宮崎を栽培することによって被害の軽減が期待される.
  • 内村 要介, 佐藤 大和, 松江 勇次
    2001 年 70 巻 3 号 p. 393-399
    発行日: 2001/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    さらなる省力, 低コストの水稲直播栽培に適する品種育成のため, 酸素供給剤を粉衣しない種籾の出芽苗立ち安定化についての基礎的知見を得る目的で, 72品種を供試して湛水土壌表面直播栽培を行い, 出芽苗立ち特性の優れる品種の評価および圃場中の水温と溶存酸素濃度の測定を行った.播種後14日間の圃場中の水中の溶存酸素濃度は約4.7~11.6mgL-1(飽和量の約50%~過飽和), 水温は日平均21.8~29.0℃で推移し, 水稲種子の発芽, 根の伸長に問題はほとんどなかった.供試した72品種はすべて発芽率が80%以上あったにもかかわらず, 播種14日後の出芽率は0~89%の変異幅が認められた.出芽率が80%以上と出芽能力が優れた11品種が認められ, そのうち8品種の譜系図に旭または朝日が認められた.転び苗および浮き苗の発生率については4%~61%の変異幅が認められた.出芽能力が優れた11品種において, 出芽率と転び苗および浮き苗の発生率との間には相関関係は認められず, 出芽率が80%以上で転び苗および浮き苗の発生率が10%以下の苗立ちが優れた品種, 神力, はえぬき, どまんなかが認められた.出芽率の高い品種は, 千粒重が重く, 比重1.1以上の割合が高く, 初期生育が優れた.転び苗および浮き苗の発生が少ない品種は, 種子の比重が1.1以上の割合が高く, 種子根の平均伸長速度が遅かった.これらの知見は, 酸素供給剤を用いない省力, 低コスト直播栽培で出芽苗立ちを安定化させる水稲品種育成のための交配母本選定に当たり有効な情報になるものであった.
  • 小柳 敦史, 乙部(桐渕) 千雅子, 柳澤 貴司, 本多 一郎, 和田 道宏
    2001 年 70 巻 3 号 p. 400-407
    発行日: 2001/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    根系の深さは作物の環境ストレス耐性や養水分吸収特性と密接な関係にある.そこで, コムギにおいて幼植物の種子根の伸長角度を指標にして, 根系の深さが異なる系統を選抜することができるかどうかを調べた.作出される系統群の遺伝的な背景を揃えるため, 一組の親組み合わせから得た姉妹系統を用い, 早期に遺伝的に固定した系統を得るため半数体育種法を利用した.まず, 三系交配由来の姉妹系統である倍加半数体535系統の中から, 出穂期が遅すぎず正常に生育する129系統を予備選抜した.つぎに, バスケット法で播種後7日目の種子根の伸長角度を調べ, 種子根の数と伸長角度の関係から, 下向きの伸長角度が小さい9系統(S群)と大きい9系統(D群)を選抜した.これらを土壌環境の異なる畑圃場と水田圃場で栽培し, それぞれ穂孕期と登熟期に改良モノリス法で深さ30cm, 条間方向への距離15cmまでの根長密度を調べた.その結果, 根の深さ指数で示される根系の深さの平均値は両群で有意に異なり, D群はS群に比べて畑圃場で22%, 水田圃場で13%深い根系を形成していることを確認した.なお, D群はS群に比べ全体として根が細い傾向にあった.一方, 地上部では茎数, 葉色, 地上部乾物重, 子実重には群間差異が見られず, 草丈と千粒重のみに群間差異が見られた.作出された2つの系統群は, これらの特性を考慮したうえで, 根系の深さが生育に及ぼす影響を調べるための比較実験などに用いることができる.
  • 有馬 進, 最所 一雅, 原田 二郎
    2001 年 70 巻 3 号 p. 408-417
    発行日: 2001/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    根径に着目した根系形態の解析方法を新たに考案し, 水稲品種ヒノヒカリの根系形成経過を調査するとともに, 出穂期における40品種の根系形態を比較した.解析に当たっては, まず根系の形態を画像化し, そのデータを用いてパイプモデル理論に基づいた根系の'仮想パイプ'を作成した.次に, その仮想パイプを基にして根径階級毎の根体積分布図を作成し, 根体積の分布の中央となる根径値を示す'平均根径指数'を算出した.また, 幼穂形成期以降において, 同分布図でみた根系が太根群と細根群とに分かれたので, 全根体積に占める細根群の体積割合を示す'細根率', ならびに各根群の根体積分布の中央の根径値を示す'太根根径指数'と'細根根径指数'を指標として利用して解析した.その結果, 生育に伴う水稲の根体積の増加パターンが明らかとなり, 根径と根体積から見た根系構造を捉えることができた.すなわち, ヒノヒカリの根系は約0.4mmの根径を境界階級とし, 主として冠根からなる太根群と主として側根からなる細根群に二分され, 各根群ともに根体積が最も多い特定の根径階級が存在して, それら二つの根径階級および境界となる根径階級は, 幼穂形成期以降においてより顕在化することが明らかとなった.また, 根体積の根径階級別分布を特徴づける平均根径指数, 太根根径指数と細根根径指数, および細根率は, 根系の生育に伴う変化や品種間差異を示す指標となると考えられた.
  • 角 明夫, 片山 忠夫
    2001 年 70 巻 3 号 p. 418-424
    発行日: 2001/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    稈(茎)長において異なる同質遺伝子系統, ソルガム2系統;Plainsman tall typeとPlainsman short type, ダイズ2系統;ヒュウガとヒュウガ矮性系統, 水稲2系統;銀坊主と短銀をポット栽培し, 正常系統と矮性系統の消費水量(CU)と乾物増加量(ΔW)および収量との関係を比較検討した.CUとΔWの間にはそれぞれ作物について直線関係が認められた.ΔW=0におけるCUは, ダイズ2系統を除いて, 蒸発量(Es)にほぼ等しかった.蒸散効率(ΔW/(CU-Es))は矮性遺伝子の有無によってほとんど影響されなかった.ΔWが大きくかつ蒸散効率(TE)の低かったヒュウガは, 供試作物中最も多量の水を消費した.またこれにはソルガム系統や水稲系統と異なり, 開花期以降ΔW=0におけるCUが蒸発量を上回る傾向を示したことも関係した.ソルガム2系統はダイズおよび水稲の2系統よりTEにおいて勝ったもののΔWが大きく, 結果的に水稲2系統と匹敵するCUを示した.これに対して矮性系統は, 供試した作物の全てで, 正常系統より常にCUが小さかった.加えて, 矮性系統は絶対収量において正常系統に劣るものの, 同一の蒸散量をより効率的に収量生産へと結びつけることが示された.このような矮性系統の特性は干害回避性と水利用の効率化という両面からも有用であろう.
  • 谷本 高広, 伊藤 亮一
    2001 年 70 巻 3 号 p. 425-431
    発行日: 2001/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    イネ葉身の巻き具合を示す巻き葉率について, 生育に伴う変化と日変化および高温低湿度条件下での葉身の水ポテンシャルへの影響について検討した.まず, 高い巻き葉率を示すC-115と対照品種としてコシヒカリを用いて, 巻き葉率と水ポテンシャルの日変化を比較した.それによると両品種の巻き葉率の最大値は大きく異なり, C-115でおよそ45%, コシヒカリではおよそ5%であった.それに対して葉身の水ポテンシャルは, ともに-0.97MPaと違いはみられなかった.このことから, 両品種の巻き葉率の違いは水ポテンシャルの差異に起因していないことが示唆された.一般栽培品種では生育が進むに従い, 日平均巻き葉率は向軸側に葉身が巻く品種では増加し, 背軸側に巻く品種では減少した.一方, 巻き葉遺伝子rl-1をもつ品種では, 終始高い値で推移した.巻き葉率の日変化では, 葉身が巻く方向に関係なく, 正午ごろを頂点とした山型の変化を示した.また, 巻き葉率の日変化は, 気温, 相対湿度, 光合成有効放射(PAR)の変化と関連が見られたが, 品種や生育時期によって関連性の強さが異なった.巻き葉率の日変化が, 気温などの蒸散に影響する気象条件の変化と関連しており, また著者は高い巻き葉率を示すほど蒸散が抑制されることを報告している.これらのことから, 巻き葉率の変化が葉身の水ポテンシャルに影響をおよぼしていると考えられた.そこで巻き葉率の異なるC-115とコシヒカリを用いて, 高温低湿度条件下での巻き葉率と葉身の水ポテンシャルの影響について検討した.その結果, C-115では巻き葉率が増加し, 水ポテンシャルも対照区よりも上昇した.一方, コシヒカリでは巻き葉率, 水ポテンシャルともに処理による変化はみられなかった.巻き葉率の増加が, 葉面境界層抵抗の増加を反映していると考えると, 高い巻き葉率を示す品種では, 過度の蒸発環境で葉面境界層抵抗を高めていると考えられた.また, このことによって, 高い水ポテンシャルを維持できることが示唆された.
  • 福島 裕助, 中村 晋一郎, 藤吉 臨
    2001 年 70 巻 3 号 p. 432-436
    発行日: 2001/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    スクミリンゴガイ生息田への野菜投入によるイネ苗の被害回避の可能性を探ることを目的として, 水槽内で野菜に対するスクミリンゴガイの選好性と摂餌行動を明らかにした.水槽内で, イネ苗と数種の野菜を同時に与えると, イネ苗よりもメロン, スイカ, レタス, ナスおよびトマトに対する貝の付着頭数または被摂食量が多かった.また, 付着頭数と野菜の被摂食量との間には正の相関関係が認められた.このことから, スクミリンゴガイは, これらの野菜に対する選好性が高いと判断された.選好性の高かったメロンとナス, 選好性の低かったイネ苗とタマネギを同時に与えて, スクミリンゴガイの摂餌行動を観察すると, 本貝は6時間以内に選好性の高い食餌を認識した.また, 選好性の低い食餌に一次付着した貝は, その後, 選好性の高い食餌へ移動した.さらに, 選好性の高かったメロンやナスへの付着時間はイネ苗よりも明らかに長かった.これらの結果から水田へ選好性の高いメロン, スイカ, レタスやナスを投入することによって, スクミリンゴガイによるイネの被害を回避できる可能性のあることが示唆された.
  • 山内 正見, 吉田 弘一, 山下 敦史, 谷山 鉄郎, 梅崎 輝尚, 長屋 祐一
    2001 年 70 巻 3 号 p. 437-443
    発行日: 2001/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    工場排水中に含まれるフッ素は河川, かんがい水ひいては土壌を汚染する可能性がある.そこで1991~1992年の2年間にわたり土壌フッ素濃度とイネの生育および収量の関係について検討した.1991年にはフッ素濃度を対照区(フッ素100ppm含む), 279, 458, 816, 1173, 1352および1531ppmの7水準に調整した土壌で水稲品種コシヒカリを栽培した.1992年には対照区(フッ素100ppm含む), 279および458ppm3水準の土壌フッ素濃度になるように調整した土壌に水稲品種コシヒカリを栽培した.その結果, 279ppmの土壌フッ素はイネの出葉経過および分げつ数にほとんど影響を及ぼさなかったが, 458ppmの土壌フッ素は出葉の遅延および分げつ数の低下をもたらした.土壌フッ素濃度が高くなるにつれ, 出葉および分げつは抑制された.279ppmの土壌フッ素は1株当り穂数, 1株当り籾数および1穂籾数に影響を及ぼさなかったが, 458ppmの土壌フッ素は1株当り穂数, 1株当り籾数および1穂籾数を抑制した.しかし, 登熟歩合および玄米千粒重に影響はみられなかった.279ppmの土壌フッ素は根の乾物重を減少させ, 458ppmの土壌フッ素は籾, 葉身, 葉鞘(稈を含む)および根の乾物重に低下をもたらした.土壌フッ素濃度が高くなるにつれ, 籾を含むすべての乾物重は減少することがわかった.
  • 山内 正見, 吉田 弘一, 谷山 鉄郎, 梅崎 輝尚, 長屋 祐一
    2001 年 70 巻 3 号 p. 444-448
    発行日: 2001/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    フッ素濃度を50ppmに調整した水耕液で分げつ盛期および幼穂形成期の10日間処理によって, 栄養生長期と生殖生長期のフッ素処理がイネの生育および収量に及ぼす影響について検討した.その結果, いずれの生育期のフッ素10日間処理も最終分げつ数を抑制した.とくに幼穂形成期のフッ素処理は著しい分げつ数の減少をもたらした.籾, 葉身, 葉鞘(稈を含む)および根の生長に及ぼす影響はあきらかで, フッ素によって乾物重は減少した.分げつ盛期処理よりも幼穂形成期処理で, すべての器官の乾物重は減少した.1株当り穂数, 1株当り籾数および1穂籾数に及ぼすフッ素の影響は顕著であったが, いずれも分げつ盛期処理より幼穂形成期処理で低下は著しかった.1株当り穂数, 1株当り籾数および1穂籾数と籾重に有意な関係がみられた.イネの生育および収量に及ぼすフッ素の影響は栄養生長期と生殖生長期で異なることを明らかにした.
  • 寺島 一男, 齋藤 祐幸, 酒井 長雄, 渡部 富男, 尾形 武文, 秋田 重誠
    2001 年 70 巻 3 号 p. 449-458
    発行日: 2001/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    1999年の夏は全国的に気温が高く推移し, 水稲の収量は平年並みであったが, 一部の地域を除いて米品質の低下が認められた.とくに, 東北や北陸地域では登熟期前半の高温の影響が著しく, 乳白粒, 背白粒等が多発し, 1等米比率が秋田や宮城, 新潟の各県で50%以下と大幅に低下した.その被害は従来品質が優れるとみられてきた品種にまで及んだ.九州では登熟期の高温に加えて寡照条件が長期にわたって持続し, 収量の減少と外観品質や食味の低下を招いた.一方, 千葉県では高温下の登熟に対応した栽培管理, 高温耐性の強い品種の育成と普及が被害の軽減に寄与した.こうした1999年における水稲の生育と被害の状況, これに関連した気象要因, 品種, 栽培条件を解析し, 作物学分野に関連した今後の研究課題について検討を行った.
  • 森田 茂紀
    2001 年 70 巻 3 号 p. 459-464
    発行日: 2001/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
  • 飯田 修
    2001 年 70 巻 3 号 p. 463-464
    発行日: 2001/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
feedback
Top