日本作物学会紀事
Online ISSN : 1349-0990
Print ISSN : 0011-1848
72 巻 , 3 号
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総説
  • 前田 和美
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2003 年 72 巻 3 号 p. 265-274
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/28
    ジャーナル フリー
    世界的な農産物貿易自由化の趨勢の中で, わが国のラッカセイは関税などの行政的保護をうけて約40%の自給率を保っている. しかし, 2002年度には, 千葉, 茨城両県だけで80%以上を占める総作付面積は約1万haと, 最も多かった1965年前後の1/6にまで減少し, 数万tの国内消費量に対して原料供給量はわずか2万tに過ぎない. また, この40年間, 全国平均単収は莢つきで250kg/10aを超えることができないが, その背景には, 戦後育成されている多収品種への転換や産地拡大に積極的でないなど需給行政の問題もある. 他方, 中国は, 栽培面積の拡大だけでなく単収向上の成果が著しく, ついにこの10年の間にインドを抜いて世界最大のラッカセイの生産·輸出国になり, わが国の食用大粒種の原料, 加工品の輸入量でもほぼ100%を占めるようになったが, 中国産の輸入原料価格は国内産の数分の一である. このように, わが国のラッカセイの需給とは密接な関係があるにもかかわらず, 中国で最大の, そして日本向けの主な産地である山東省の半島部地域のラッカセイ栽培についてはよく知られていない. その発展の歴史, 伝統的栽培技術, 現地調査による栽培の現状などについて紹介する.
研究論文
栽培
  • 寺島 一男, 谷口 岳志, 荻原 均, 梅本 貴之
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2003 年 72 巻 3 号 p. 275-281
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/28
    ジャーナル フリー
    水稲の湛水直播栽培における耐ころび型倒伏性を改善し, 生産性の安定化に役立つ水管理法を明らかにする目的で, 落水管理の処理回数, 期間等の異なる水管理条件で栽培した直播水稲を対象に, 押し倒し抵抗, 倒伏程度, 収量および品質を比較調査した. 押し倒し抵抗は, 落水管理の処理回数が多く, 処理期間の長い区でより高い値を示した. こうした落水管理の押し倒し抵抗に対する向上効果は, 播種深度が異なってもほぼ同様で, 播種深度が1mm以下の表面播種区においても落水管理を行うことによって押し倒し抵抗が高まる傾向が認められた. 地表面に播種された散播栽培における倒伏は常時湛水区でもっとも顕著に発生し, 以下, 落水1回区, 2回区と落水管理の処理回数が多く, 処理期間のより長い区で倒伏程度が軽減される傾向がみられた. 収量については, 倒伏の発生程度の著しかった常時湛水区では収量の低下がみられたが, 7日程度の落水管理を3回まで実施しても収量や品質に悪影響は認められなかった.
  • 松島 憲一, 脇本 賢三, 吉永 悟志, 田坂 幸平, 大森 博昭
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2003 年 72 巻 3 号 p. 282-289
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/28
    ジャーナル フリー
    石灰窒素によるスクミリンゴガイ防除を組み入れた湛水直播栽培技術の確立に向けて, 水稲種子への酸素発生剤被覆が石灰窒素による出芽障害に与える影響について, ポット試験による出芽試験, およびシャーレでの発芽試験により調査した. その結果, 酸素発生剤を被覆した場合, 石灰窒素散布土壌中に播種した種子の幼芽伸長が促進される傾向にあった. また, 酸素発生剤を混合した石灰窒素溶液ではカルシウムシアナミド濃度が減少したことから, 酸素発生剤は石灰窒素を分解する作用があることが解った. 次に石灰窒素散布土壌の播種前の代かきの有無が出芽に与える影響をポットによる出芽試験で調査した. 播種前の代かきにより湛水中のカルシウムシアナミド濃度が低下し, 出芽障害が抑えられた. また, 圃場条件下での出芽試験の結果, 酸素発生剤被覆種子であっても窒素量8g/m2の石灰窒素散布土壌で出芽率の低下がみられた. 以上の結果, 石灰窒素によるスクミリンゴガイ防除を湛水直播栽培において実施する場合は, 播種前に代かきを行う作業体系の播種法が適しており, スクミリンゴガイ防除と出芽障害回避の双方の視点から併せみて, 窒素量4g/m2程度の石灰窒素散布が適当であると結論された.
  • 齊藤 邦行, タリク マハムド, 黒田 俊郎
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2003 年 72 巻 3 号 p. 290-294
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/28
    ジャーナル フリー
    熟期の異なる有限伸育型5品種, 無限伸育型3品種を供試して, ビニルハウス内で雨除け栽培を行い, 花房の着生位置に着目して開花数の推移と結莢率, 収量と収量構成要素を調査した. 総節数·主茎長は晩生品種ほど, また有限型品種に比べ無限型品種で高い値を示した. 子実収量はm2当たり128∼294gの変異がみられ, 早生品種に比べ晩生品種ほど高い傾向にあった. 開花数は開花始後5∼10日頃に最高値を示しそれ以降低下する傾向がみられたが, 有限型品種では開花始後20∼30日頃に再びピークを示したのに対し, 無限型品種では持続して低下が認められた. 晩生品種の花蕾数は早生品種に比較して多く, 低次位花蕾数の割合が高くなった. 結莢率は23∼42%の変異がみられ晩生品種ほど低くなった. 以上の結果, いずれの伸育型ともに晩生品種ほど花蕾数が多くなり結莢率は低下するものの莢数ひいては収量が増加すること, 無限伸育型品種は有限伸育型品種に比べ節数が多く, 高次位に比べ低次位の莢数 (花蕾数) に対する依存度が大きいこと, 有限伸育型品種では晩生品種になるほど低次位の花蕾数が増加して結莢率の低下程度が大きくなり, 高次位の莢数に対する依存度が大きくなることが明らかとなった.
品種 · 遺伝資源
  • 太田 久稔, 上原 泰樹, 井辺 時雄, 吉田 智彦
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2003 年 72 巻 3 号 p. 295-300
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/28
    ジャーナル フリー
    水稲の湛水土中直播栽培において重要な特性である土中出芽性に関し, 深度2cmに播種できるシーダーテープを用いた圃場検定を行い, 室内検定 (催芽種子を用い25°C, 播種深度2cm条件) と比較検討した. また, 両検定の相関関係を再確認するために, 約100品種の遺伝資源を用いて, 圃場検定と室内検定を行った. いずれにおいても室内検定と圃場検定の間に1%水準で有意な相関が認められた. また, 圃場検定において最も土中出芽率が高い品種は, 中国品種のTa Hung Kuであった. Ta Hung Kuは, 日本の栽培品種であるコシヒカリ, キヌヒカリ, どんとこいより有意に土中出芽率が高く, 圃場検定によって土中出芽性に関する新たな遺伝資源を得ることができた. Ta Hung Ku, どんとこいの交配後代F3系統を養成し, 同様の検討を行ったところ, 圃場検定において, F3系統の土中出芽率は0∼40%の変異を示し, Ta Hung Ku並の土中出芽率を示した系統が認められた. しかし, 室内検定によって分離系統を評価することは困難であったため, この遺伝資源の土中出芽性を選抜·評価するための室内検定を検討する必要がある.
  • 荻原 均, 川村 陽一, 扇 良明, 谷口 岳志, 趙 志超, 吉永 悟志, 寺島 一男
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2003 年 72 巻 3 号 p. 301-308
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/28
    ジャーナル フリー
    育苗箱を用いて, 一定の播種深度でイネの低温苗立ち性を検定する方法を検討し, その方法で得た5年間のデータより帰納的に, 基準品種を選定し, 試験結果の適否を判断する方法ならびに結果を相対化する方法を検討した. 育苗箱の上端から0, 4, および8mmまで床土を詰め, その上面に播種した後, 育苗箱の上端まで覆土することにより播種深度を変えた. 1995年に21品種, 96年に19品種の低温苗立ち性を, 平均地温11.3∼20.9°Cで検定した. 品種の苗立ち率の分布と実測した出芽深度の分散程度から, 播種深度は4mmが適当と判断された. この方法は, 水田に播種した場合の品種間差をよく反映していた. 播種深度4mmでの試験を5年間行い, その結果から帰納的に, Arroz da Terra (低温苗立ち性 : 優), Calrose (良), はえぬき (普通), ふくひびき (やや劣る), Blue Bonnet (劣る) の5品種を基準品種として選定した. そのうちから指標品種としたふくひびきの苗立率が30から60%, かつ, Arroz da Terraの苗立率が75%以上だった試験の結果のみを用いることで, 品種間差の検出力が向上した. また, 毎回供試した基準品種5品種の平均値と標準偏差を用いて, 同時に供試した他の品種について擬似的な偏差値を算出した. この相対化された指標を用いることによって, 苗立ち率をそのまま集計した場合に比べて, 異なる試験間および年次間でデータを集約する際の検出力を改善できた.
  • 吉田 智彦
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2003 年 72 巻 3 号 p. 309-313
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/28
    ジャーナル フリー
    栄養繁殖作物のカンショ, バレイショ, イチゴなどの品種育成では, 限られた育種材料間での交配を繰り返すため近親交配が問題となる. そこで, これら作物で近年育成された品種の近交係数を計算した. 推論型言語であるPrologとパーソナルコンピュータを利用した手軽な処理系で計算プログラムを作成した. カンショ品種のベニアズマ, シロユタカ, サツマヒカリ, ジョイホワイトの近交係数は0.017, 0.073, 0.140, 0.009であった. バレイショ品種のトヨシロ, ニシユタカ, コナフブキ, ベニアカリでは0.043, 0.072, 0.028, 0.018, イチゴ品種の女峰, とちおとめ, 章姫では0.172, 0.262, 0.223であった. バレイショでの値はカンショやイチゴより小さい値であった. カンショでは近交係数が0.1程度までは近交弱勢がみられず, 0.2を超えると近交弱勢が顕著になると思われるが, 本研究で得られた近交係数は, カンショでは近交弱勢の限界値以内, イチゴでは限界値を超えるものであった. 古い祖先品種の記録が正しくない可能性はあるが, 最近の育成品種では祖先品種の由来の違いによる計算値間に大差なく, ここで得られた近交係数の値は概ね正確だと思われる.
  • 志水 勝好, 小村 繭子, 曹 衛東, 石川 尚人
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2003 年 72 巻 3 号 p. 314-320
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/28
    ジャーナル フリー
    ケナフ2品種 (粤豊1号および農研センター維持系統) を1999年と2001年に圃場で栽培し, 1999年は1回 (10月18日∼11月5日), 2001年は生育時期別に4回 (粤豊1号 : 茎葉生長初期 (7月3日, 播種後57日目), 茎葉生長中期 (8月9日, 播種後94日目), 茎葉生長後期 (9月7日, 播種後123日目), 開花初期 (10月11日, 播種後157日目), 農研センター維持系統 : 茎葉生長初期 (7月3日, 播種後57日目), 茎葉生長中期 (7月25日, 播種後79日目), 開花期 (9月7日, 播種後123日目), 種子登熟期 (10月11日, 播種後157日目), 部位別の生体重と乾物重を調査した. また, 2001年には主茎上位葉の光合成速度および全葉の粗蛋白質含有率と無機成分含有率を測定した. さらに, 両年とも栽培期間中の地上部形態の推移を測定した. 農研センター維持系統では両年とも播種後120日頃から主茎の節数と草高の増加が緩慢となり, 主茎残存葉数は減少した. しかし粤豊1号では, 4回目の調査期まで節数, 主茎残存葉数とも増加した. 光強度1600μmol m-2 s-1下で測定した光合成速度は両品種とも第3回の調査期まではC3植物としては高い値を示し, 農研センター維持系統の最高値 (第2回目の調査時期) は平均39.4μmol CO2 m-2 s-1であった. 粗蛋白質含有率は両品種とも生育が進むにつれて減少する傾向を示したが, 農研センター維持系統では播種後約80日目の開花後に急減した. Ca含有率は, Na, KおよびMg含有率に比較し, 生育が進むにつれて著しく高くなった. これは葉を飼料に利用する場合に有利な特性と考えられる.
形態
  • 周 紅, 劉 改雲, 江原 宏, 森田 脩
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2003 年 72 巻 3 号 p. 321-327
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/28
    ジャーナル フリー
    日本型20品種, インド型13品種を用い, 水田で表面播種, コンテナで土壌表面·土中播種して, 3葉期に異なる苗立ち型 (土中型 : 土中から出芽, 接地型 : 種籾が土壌表面に露出するものの稈基部は地面にしっかり固定, 浮上りI型 : 露出根は短くて稈基部は比較的しっかり固定, 浮上りII型 : 露出根が長くて個体が横転) の発生率と生育形質を調査し, 生態型や品種による違いを検討した. 水田とコンテナの表面播種での苗立ち型の発生率は, 日本型, インド型品種とも接地型20∼60%, 浮上りI型10∼35%, 浮上りII型25∼55%であり, 品種によって変異が大きかった. 水田とコンテナの表面播種における浮上り型 (I+II) の発生率の間には有意な正の相関関係がみられた. コンテナ土中播種では, 各品種とも土中型が56∼93%と高く, 浮上りI型はほとんどの品種で10%以下であり, 浮上りII型も20%以下であった. コンテナでの表面播種の浮上り型発生率と土中播種の浮上り型発生率との間には正の関係が窺われた. コンテナ表面播種での浮上り型発生率は, 全根長, 地下部乾物重との間に有意な負の相関関係が, また草丈/全根長比, 地上部/地下部比との間に有意な正の相関関係が認められ, 地下部が発達するか地上部に対して地下部の成長が旺盛な場合には浮上り型の発生が少なかった. さらに, 浮上り型発生率と種子根長/全根長との間には正の相関関係が認められ, 全根長に占める種子根長の割合が低い場合に浮上り型が発生し難いことが判明し, 種子根の出現に続く不定根の伸長が苗立ちに重要な役割を果たすことが明らかとなった.
作物生理 · 細胞工学
  • 姜 東鎮, 呂 運尚, 呉 乗根, 姜 正勲, 楊 世準, 石井 龍一, 李 仁中
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2003 年 72 巻 3 号 p. 328-332
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/28
    ジャーナル フリー
    本研究はフェーン現象下の気象を風洞装置を用いて再現し, 高温乾燥風に対する耐性イネ品種と感受性品種との水分状態とクロロフィル含量の差を調べたものである. 耐性品種として韓国農村振興庁嶺南農業試験場の盈徳出張所で選抜した日本型Naepung-byeo (NP), 感受性品種として同定されたオーストラリア原産の日本型Ilabong (IB) を供試し, それぞれ水田土壌をつめた1/1250aポットに移植し, 屋外自然条件下の湛水状態で生育させた. 3時間の高温乾燥風処理は出穂後4日目に行った. 穂の水ポテンシャルの変化は処理終了直後から顕著に現れ, NPでは処理開始前の-0.25 MPaに比べ, -0.75 MPaと大きく低下した. 一方, IBではさらに著しく, 処理開始前の-0.34 MPaから-1.53 MPaに大きく低下した. NPの穂の水ポテンシャルは, 処理終了後2時間目までは低下したが, 処理終了後6時間目には回復する傾向を示した. 葉身における水ポテンシャルは低下する傾向があったものの, 高温乾燥風処理による差は小さく, 品種間で有意な差は認められなかった. また, 穂の相対水分含量は水ポテンシャルと同様, NPでは高温乾燥風処理による低下はほとんど見られず, 処理終了後6時間目には回復する傾向を示した. しかし, IBでは処理終了直後の相対水分含量は処理開始前に比べて大きく低下し, 処理終了後6時間目では22%と極めて低かった. 穂のクロロフィル含量もNPで高く維持され, IBでは顕著に低下し, 処理終了後6時間目にはほとんどが白穂となった. このことから, 耐性品種であるNPは高温乾燥風に対し, 頴花で水分損失を防ぐ何らかの防御機構を有し, 時間の経過とともに回復したと考えられた.
  • 角 明夫, 箱山 晋, 村上 晃平, 朝比奈 愛, 村田 和代, 桑原 廣隆, 片山 忠夫
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2003 年 72 巻 3 号 p. 333-338
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/28
    ジャーナル フリー
    根粒着生および共生窒素固定量における差異を誘導することを目的として, ダイズ品種, 鶴の子を多窒素 (多N) と少窒素 (少N) の2条件下で栽培した. 多N条件では, 化合態窒素の施用による根粒の着生阻害が確認された. 根粒着生の差異は同質遺伝子系統T201 (根粒非着生系統) とT202 (根粒着生系統) を供試することによっても誘導された. 根粒着生量の違いが拡大したとき, 乾物生産量 (W) と蒸発散量 (ET) の間の量的関係に有意差が認められるようになった. 回帰直線の‘高さ (ETW=0, Wが0のときのET)’はN条件によって異なり, 多N条件より少N条件で, またT201よりT202で大きくなった. 蒸散係数 (ΔET/ΔW) は, N条件や系統の違いには影響されなかった. T202とT201の間のETW=0差 (δETW=0) に基づいて算出した乾物重差 (δW, δW=δETW=0÷ΔET/ΔW) は, 差引法によって推定した共生窒素固定量と比例関係にあった. 以上の結果から, ETW=0の差異は窒素固定のために必要とされたエネルギーコストの差異を代表している可能性があると結論した.
収量予測 · 情報処理 · 環境
  • 石川 哲也, 藤本 寛, 椛木 信幸, 丸山 幸夫, 秋田 重誠
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2003 年 72 巻 3 号 p. 339-344
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/28
    ジャーナル フリー
    1992年から1996年にわたる5年間, 合計9作期の多肥条件 (窒素18 g m-2) での栽培試験をもとに, 半矮性インド型水稲品種タカナリの登熟期間の乾物生産および転流に及ぼす気温と日射量の影響について, 日本型品種コチヒビキを対照として検討した. タカナリの登熟期間の平均気温は27.6∼20.0°C, 平均日射量は18.8∼11.7MJ m-2 day-1の範囲で大きな年次変動が認められた. タカナリの登熟期間の地上部重増加量は1994年5月中旬移植区が最大で987 g m-2を記録し, 同様に粗玄米重もこの試験区で最大値となる990 g m-2を記録した. タカナリの地上部重増加量には有意な試験区間差は認められなかったが, 平均個体群成長速度 (CGR) を算出すると, 有意な試験区間差が認められた. タカナリのCGRは平均気温·日射量の双方と有意な正の相関を示し, 平均日射量を一定として求めたCGRと平均気温の偏相関係数も正の値を示した. 両品種とも, 茎葉乾物重の減少量から推定した転流量には有意な試験区間差は認められなかった. タカナリの転流量は平均気温および地上部重増加量と有意な負の相関を示したが, 偏相関係数の比較から, 気温が転流に及ぼす影響は間接的であると推察された. タカナリの粗玄米重が地上部重増加量と有意な正の相関を示し, 転流量とは有意な相関を示さなかった理由として, 地上部重増加量を平均すると転流量の5.37倍と大きかったことが推定された. 高温条件で高い乾物生産能力を示し, 茎葉の非構造性炭水化物蓄積量も安定して多いタカナリは, 生産力向上のためのモデル品種として有用であると推察された.
  • 孫 太權, 李 知彦, 金 相国, 李 相哲
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2003 年 72 巻 3 号 p. 345-349
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/28
    ジャーナル フリー
    本実験は, 木酢液と木炭の混合物 (木炭80%と木酢液20%) の土壌混用処理を異なる肥料水準下で行い, 水稲の生育や収量への効果をみた. 木酢液と木炭の混合物施用は水稲の生育特性に効果があった. それぞれの肥料水準で, 木酢液と木炭の混合物処理により葉身の総窒素含量や根の活力が増加することが認められた. またそれぞれの肥料水準で木酢液と木炭の混合物処理区は木酢液と木炭の混合物を処理しない区より高い収量であった. P-K (3.5-4kg/10a), P-K (3.5-8kg/10a) そしてP-K (7-4kg/10a) の木酢液と木炭の混合物を処理した減肥料施用区では木酢液と木炭の混合物を処理しない肥料標準施用区 (P-K : 7-8kg/10a) より高い収量を示した. これは, 木酢液と木炭の混合物を処理することで土壌環境の改善による植物の地下部の活力が増進され, 植物体の生育に影響を及ぼしたためと考えられる.
研究 · 技術ノート
  • 石川 哲也, 鈴木 保宏
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2003 年 72 巻 3 号 p. 350-357
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/28
    ジャーナル フリー
    米粒の成分含量や物性を1粒単位で測定することが最近可能となり, これらの測定値と穂上の着生位置との関係を明らかにするための研究が進められている. そこで, イネの穂の分枝構造を模式的に図示し, 個々の穎花の持つ情報を穂上の着生位置に対応させて表示するためのプログラムを作成し, その有用性について検討を行った. 穂の分枝構造をリスト形式で記述することにより, その多様性に対応することが可能となった. 描画プログラムの作成には, 「パターン照合」や「単一化」などの特色を有するプログラム言語Prologを採用し, 再帰的呼び出し機能を活用した. 表形式で記録された既存の分析結果を有効に利用するため, それらをリスト形式のデータに変換するプログラムを作成した. さらに, 穎花の現存·退化といった定性的情報の表示に加えて, 新鮮重など定量的情報に対応した塗り分け機能をプログラムに追加した. 描画された模式図は, 枝梗の長さや穎花の形状という観点からは正確ではないが, 枝梗や穎花の相対的な位置は正しく表現されており, 穎花の定性的·定量的特性と着生位置との関係を直観的に把握する一助となる. さらに, この描画プログラムは, 同様の分枝構造を持つイネ属の穂や, イネの分げつ体系等の描画への応用も可能である.
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