日本作物学会紀事
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Print ISSN : 0011-1848
73 巻 , 3 号
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栽培
  • 江原 宏, 川嶋 みず恵, 森田 脩, 末松 優
    2004 年 73 巻 3 号 p. 247-252
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/17
    ジャーナル フリー
    窒素組成の異なる培養液を用いてマット育苗した草姿が異なる水稲苗の植え傷みを比較するモデル実験を行った. コシヒカリの催芽種子を, 不織布を敷いた育苗ベッドに播種した. 播種後7日間は水道水のみ, 8日目からはNH4-N:NO3-N=28%:72%とした培養液を与えた後, 15日目から1区ではそのままの培養液で, 2区では窒素源をNH4-Nのみとして21日目まで育苗した. その後, 根を基部から1cm残して切り揃えた部分剪根処理と全ての根を切った全剪根処理を行い, スチロール板を支持体として水耕装置に移植した. 移植時の苗は1区に比べて2区で草丈が約10%小さく, 最長根長は約61%短かった. 移植後の生長を同一育苗条件で比較すると, 両区とも剪根割合が大きいほど, 草姿を表すほとんどのパラメーターが小さい傾向が見られたものの, それらの減少程度は2区で小さかった. また, 同一剪根処理で比較すると, 根長は移植後5日, 10日目を通じて両剪根処理とも2区で長かった. さらに, 乾物重は両剪根処理とも2区で大きい傾向にあり, 特に全剪根処理で顕著であった. 草丈は, 両剪根処理とも移植後5日目では1区で大きかったが, 10日目になると1区と2区の差はほとんど見られなくなった. これらの結果から, 移植時の窒素源の差異によってもともと根が短い苗では, 剪根処理の移植後5日目, 10日目の影響が小さく抑えられ, 剪根ストレスからの回復が早く進行していたと考えられた.
  • 高橋 行継, 佐藤 泰史, 前原 宏, 阿部 邑美
    2004 年 73 巻 3 号 p. 253-260
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/17
    ジャーナル フリー
    群馬県では水稲の出芽方法として無加温積み重ね出芽法, その後の育苗にプール育苗法が広く用いられている. この出芽方法は, 播種作業から出芽後の育苗箱展開までに育苗箱の移動が数回必要となり, 多くの労力が必要である. 栃木県で開発された平置き出芽法は, 播種作業を育苗場所で実施し, 積み重ねを行わずにそのまま出芽, 育苗する方法である. このため大幅な労力軽減が可能である.しかし, 本技術は主として栃木県における4月播種のハウス内育苗条件で開発されたものであり, プール育苗もほとんど取り入れられていない. そこで, 群馬県での水稲の普通期栽培 (6月中下旬移植) の露地プール育苗における平置き出芽法の適用性について検討を行った. 平置き出芽法における出芽時の被覆資材について7種類の材料を供試した. 標準の無加温積み重ね出芽法に対し, いずれの資材も0~3日程度の遅れで出芽させることが可能であった. 無被覆では夜間の低温と覆土乾燥のため出芽が遅れやすく, 被覆資材が必要であった. 供試した7資材のうち, 生育むらや高温障害, 覆土の乾燥が少なく, 緑化作業の省略も可能な3資材(パスライト, 健苗シート, ダイオラッセル1600黒)が優れていることが明らかとなった. 草丈の伸長や葉齢の進展がみられる場合もあるが, 育苗完了時の生育は標準に対してほぼ同等で, 実用可能であると判断した.
  • 臼木 一英, 山本 泰由, 松尾 和之, 辻 博之
    2004 年 73 巻 3 号 p. 261-267
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/17
    ジャーナル フリー
    トウモロコシ-イタリアンライグラス体系を長期継続した圃場へのダイズ, ダイコンおよび休閑の1, 2年間の導入が, その後のトウモロコシとイタリアンライグラスの収量に及ぼす影響について検討した. その結果, ダイズ, ダイコンおよび休閑の1年間導入と2年間導入との間には差異が認められず, 後作1作目トウモロコシの生育と収量はダイズ導入跡ではトウモロコシ-イタリアンライグラス体系を継続したイネ科連作跡よりも優り, ダイコン導入跡および休閑跡ではイネ科連作跡に比べ初期生育がやや劣る傾向を示したものの収量はほぼ同等となった. このイネ科作物の連作中断の影響に関わる要因には無機態窒素などの残存する土壌養分のみならずアーバスキュラー菌根菌が関与することが推察された. しかし, 後作2作目イタリアンライグラスや後作3作目トウモロコシの収量にはイネ科作物連作の中断による影響は認められなかった. 今後, ダイズ, ダイコン以外の作物の導入についても検討を要するが, 長期にわたるトウモロコシ-イタリアンライグラス体系の1, 2年間の中断がその後のトウモロコシとイタリアンライグラスの収量性に及ぼす影響は中断後の1作目にほとんど限られると考えられた.
  • 高橋 肇, 島内 佳奈恵, 中川 悠子, 柴田 香織, 飯山 豪
    2004 年 73 巻 3 号 p. 268-275
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/17
    ジャーナル フリー
    西日本で北海道育成のコムギ品種ハルユタカを栽培するにあたり, 茎葉の繁茂を促さずに登熟期間の群落の純同化率を高めて粒重を高めることを目的に, 九州育成のコムギ品種ダイチノミノリを比較対照として, 1999/2000年には茎立期に, 2000/2001年には開花期に追肥処理を行った. その結果, 両年・両品種ともに追肥処理による粒重の有意な増加は認められなかった. さらに, 両年ともにハルユタカでは追肥処理により登熟期間の純同化率(NAR)が増加せず, 個体群成長速度(CGR)も増加しなかった. 2000/2001年における植物体の窒素動態についてみると, 植物全体の窒素重量は, 両品種とも追肥処理区でのみ開花期から成熟期まで増加した. 子実の窒素重量は両品種, 両処理とも, とくに乳熟期から成熟期までに大きく増加し, 成熟期では植物体全体の窒素重量のほとんどを占めていた. 乳熟期における葉身ならびに成熟期における子実の窒素含有率は, 両品種とも追肥処理により有意に増加した. これらのことから, 追肥処理は, 両品種ともに植物体の窒素吸収量を高め, 葉身の窒素含有率を高めて, これを登熟後期に子実へと転流させた結果, 子実の窒素含有率を高めたものと推察した. しかしながら, 追肥をしてもNAR, CGRは高まらず, 粒重は増加しなかった. これは, とくにハルユタカでは, 過繁茂状態の群落において窒素追肥により群落内部の葉身の呼吸が高まったためであろうと推察した.
  • 高橋 肇, 島内 佳奈恵, 中川 悠子, 柴田 香織, 飯山 豪, 藤本 香奈, 山口 真司, 張 立
    2004 年 73 巻 3 号 p. 276-281
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/17
    ジャーナル フリー
    北海道育成のコムギ品種ハルユタカは, 西日本暖地で栽培すると登熟期間を通じて緑色表面積指数(GAI)が高いものの, 純同化率(NAR)が低く, 個体群成長速度(CGR)が低くなるために粒重が低下する. ハルユタカは群落が過繁茂となるため, これら現象がみられると仮定し, 止葉, 第2葉を残して止葉期に下位葉をすべて取り除いた下位葉除去処理と発生した分げつをすべて取り除いた分げつ除去処理を行い, 過繁茂を解消することでNARおよび粒重が増加するかどうかについて検討した. 下位葉除去処理は, 年次によってはハルユタカの千粒重を増加した. その際, 処理により登熟期間のNARが増加し, CGRが増加した. さらに下位葉除去処理はハルユタカの開花期から乳熟期にかけて稈の可溶性炭水化物含有率を高め, 成熟期にこれを子実へと転流させていることが示唆された. 分げつ除去処理は, ハルユタカの千粒重を高めたものの, 穂数が減少して粒数が大きく減少した. 下位葉除去処理の結果は, ハルユタカが粒数を十分に確保し, ソース/シンク比を大きく減少させたとしても, 群落の過繁茂を解消することで粒重を増加させることができることを示唆した.
  • 佐藤 導謙, 土屋 俊雄
    2004 年 73 巻 3 号 p. 282-286
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/17
    ジャーナル フリー
    春播コムギ(品種「ハルユタカ」)の初冬播栽培において, 窒素施用法が製パン品質に及ぼす影響について検討した. 試験は総窒素量4~16gm-2で, 融雪直後に全量を施用した「融雪期施用区」, 融雪直後の4~13gm-2に加え止葉期に3~6gm-2を追肥した「止葉期施用区」, 融雪直後の10~13gm-2に加え出穂期に3gm-2を追肥した「出穂期施用区」, 及び比較として春播栽培における窒素10gm-2基肥処理の「春播対照区」を設置した. 融雪期施用区で窒素施肥量の効果をみると, 粉のタンパク質含有率は窒素13gm-2以上の区で高く, ほぼ春播対照区並となった. 粉色の明度を示すL*値は, 窒素施用量が多くなるに従って低下する傾向がみられたが, いずれも春播対照区よりも高かった. パン比容積は, 窒素施用量が多くなるに従ってタンパク質含有率とともに高まる傾向がみられた. 止葉期ないし出穂期の窒素追肥により粉のタンパク質含有率の上昇, 粉のL*値の低下, ファリノグラム生地形成時間の延長, およびパン比容積増大の傾向がみられた. また, 追肥量が多いほど粉のタンパク質含有率は高まった. 以上のことから, 北海道中央部における春播コムギの初冬播栽培において, 総窒素施用量13gNm-2以上, 融雪期7~10, 止葉期3~6gNm-2の窒素増施・分施体系は, 粉のタンパク質含有率と製パン用としての品質を高め, 多収と高品質を両立できる技術であると判断された.
  • 内川 修, 福島 裕助, 松江 勇次
    2004 年 73 巻 3 号 p. 287-292
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/17
    ジャーナル フリー
    水田転換畑におけるダイズ高タンパク質安定生産技術を確立するために, 播種時期と栽植密度が個体内における主茎と分枝着莢の子実タンパク質含有率に及ぼす影響について検討した. 主茎および分枝着莢の子実タンパク質含有率は播種時期が遅くなるにしたがい, また栽植密度が高まるほど高くなる傾向が認められた. 主茎着莢子実のタンパク質含有率はいずれの播種時期, 栽植密度においても分枝着莢子実に比べ高かった. 子実タンパク質含有率と個体当たり分枝数(以下, 分枝数と記載)および登熟期間の積算温度との間にはそれぞれ負の相関関係が認められ, 分枝数が少ないほど, 積算温度が低いほど子実タンパク質含有率が高くなることを示した. 子実タンパク質含有率の積算温度間と分枝数間の分散成分の値を比較すると, 分枝数間の分散成分の方が積算温度間の分散成分より大きかったことから, 子実タンパク質含有率は分枝数の影響が大きいことが示唆された. また, 子実タンパク質含有率の向上効果は播種時期の方が栽植密度より大きかった. このことは栽植密度より登熟期間の積算温度の影響や, 分枝数の影響の方がより大きいことによるものと考えられた.
  • 遠藤 浩志, 大野 正博, 丹治 克男, 境 哲文, 金子 憲太郎
    2004 年 73 巻 3 号 p. 293-299
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/17
    ジャーナル フリー
    スズユタカと高イソフラボンダイズ系統の東北126号を用いて, 播種期および登熟期の環境条件が収量および子実中のイソフラボン含量にどのような影響を及ぼすかを検討した. 東北126号は, 播種期や栽培地の差異にかかわらずスズユタカよりも多収であり, さらに子実中のイソフラボン含量も顕著に多かった. 両品種とも晩播ダイズは, 標播ダイズより収量は低かったがイソフラボン含量は顕著に多かった. また, 登熟期, 特に後半の平均気温が低いほどイソフラボン含量が多い傾向が認められた. 開花期後30日を境に登熟前半と後半を分けて気温が異なる場所でポット栽培した場合, 登熟期後半に気温が低い条件で栽培したスズユタカは, 同じ条件で栽培した東北126号並にイソフラボン含量が高まり, 特に登熟後半の気温とイソフラボン含量との関係が密接であることから, ダイズのイソフラボン含量は品種の他に登熟期, 特に後半の気温の影響を強く受けることが示唆された.
品種・遺伝資源
  • 小柳 敦史, 乙部(桐渕) 千雅子, 柳澤 貴司, 三浦 重典, 小林 浩幸, 村中 聡
    2004 年 73 巻 3 号 p. 300-308
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/17
    ジャーナル フリー
    根系の深さが異なるコムギ実験系統である浅根性の9系統(浅根群)と深根性の9系統(深根群)を2作期にわたり栽培し, 土壌の過湿と追肥を組み合わせた処理を行って生育と子実収量を比較した. その結果, 2002年産の試験では過湿処理した水田, 対照として過湿処理を行なわなかった水田とも深根群に比べて浅根群のほうが収量が多かった. 浅根群のほうが収量が多い傾向は過湿水田でより強く, 無追肥区と追肥 1 回区では両群の収量に有意な差がみられた. これは浅根群では地上部全重と穂数において過湿処理による低下程度が軽微であったためである. 2003年産の試験では群間に有意差はみられなかったものの, 過湿水田では浅根群のほうが収量が多く, 対照とした畑では両群で同程度か深根群のほうが若干, 収量が多かった. 過湿水田で各系統が栽培された圃場内の位置の土面の高さを調べたところ, 栽培された位置により結果的に地下水位が高くなった系統ほど収量が少なくなる傾向が認められ, 同じ水位で比較すると浅根群のほうが深根群より収量が多かった. なお, 根の分布を調査した結果, 根系の平均的な深さを示す「根の深さ指数」からみて, 過湿水田よりも対照畑のほうが根系が深く群間の差も大きかったが, どちらの圃場でも浅根群の根系は浅く, 深根群の根系は深いことが確認された. 以上のことから, 遺伝的な浅根化によりコムギの耐湿性をある程度向上させることができるといえる.
形態
  • 佐々木 良治, 鳥山 和伸, 柴田 洋一, 杉本 光穂
    2004 年 73 巻 3 号 p. 309-314
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/17
    ジャーナル フリー
    水稲の散播直播栽培における茎数制御の基礎的知見を得るために, 苗立密度と個体当たりの最高茎数を規定する1次最終分げつの出現節位との関係を水稲品種どんとこいとキヌヒカリを用いて調査した. どんとこいは3ヶ年, キヌヒカリは2ヶ年試験を行い, 苗立密度はどんとこいで24~208個体m-2, キヌヒカリでは24~202個体m-2の範囲内に設定した. 1次最終分げつの出現節位は苗立密度の増加にともなって直線的に低下したが, その低下程度に有意な年次, 品種間差は認められず, 苗立密度10個体m-2の増加に対して0.15~0.17節位の割合で低下した. 苗立ち期から生育初期の湛水深が深かった場合には, 下位節分げつの出現は抑制されたが, 苗立密度の増加に対する1次最終分げつの出現節位の低下程度への影響はなかった. 下位節分げつの出現の抑制によって1次最終分げつの出現節位は, どんとこいで平均1.3節位, キヌヒカリで0.6節位上位へと移行したが, これは下位節分げつの出現が抑制された結果, 茎数の増加が遅れたことにより個体間の生育競合の時期が遅れたことによるものと推測された.
作物生理・細胞工学
  • 小葉田 亨, 植向 直哉, 稲村 達也, 加賀田 恒
    2004 年 73 巻 3 号 p. 315-322
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/17
    ジャーナル フリー
    近年, 西日本を中心に乳白米多発による品質低下が起きている. 乳白米発生原因としては, 登熟期高温による子実成長過程への直接的影響, あるいは着生穎花数が多い, あるいは葉色の落ちたイネで乳白米発生が著しくなるなどから子実への同化産物供給不足が考えられる. そこで, 本研究では3年間にわたり島根県と大阪府の気温・立地条件の異なる3地域でコシヒカリを栽培し, 圃場条件下での乳白米発生状況と登熟期間引きにより物質生産を増やしたときの乳白米発生を調べ, 同化産物供給不足が乳白米発生の主原因であることを明らかにしようとした. 一部地域では登熟期にフィルムで覆った高温区を設けた. その結果, 穂揃い後30日間の平均気温(T30)は23~29℃となり, 籾の充填率は70~90%, 乳白米発生率は0.8~16.0%の変異を示した. T30が高いほど乳白米率が大きなばらつきを持ち増加した. そこで穂揃期以降, 栽植密度を半分に間引いたところ, どの地域, 温度処理でも間引きにより籾の充填率はほぼ90%近くまで増加し, ほとんどの地域で乳白米率が6%以下に減少した. 全結果を込みにすると, 充填率が増えると乳白米発生率が低下した. したがって, 間引きは幅広い温度域で籾の充填率と乳白米発生率を改善した. 以上から, 乳白米は子実の同化産物蓄積過程自体が高温で阻害されるよりも, 高温によって高まった子実乾物増加速度に対して同化産物供給が不足することにより主に生ずると推定された. そのため, 登熟期の同化促進技術は乳白米発生の抑制に有効であると考えられた.
  • 中山 則和, 橋本 俊司, 島田 信二, 高橋 幹, 金 榮厚, 大矢 徹治, 有原 丈二
    2004 年 73 巻 3 号 p. 323-329
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/17
    ジャーナル フリー
    ダイズ9品種の種子を冠水処理し, 冠水ストレスがダイズに及ぼす影響とその品種間差について, 冠水前の種子含水率との関連で検討するため, 室内および圃場試験を行った. Pekingでは冠水による障害はほとんど認められなかったが, 他の品種はいずれも, 冠水処理により出芽および出芽後の植物体の生育が阻害された. 冠水ストレスに対する感受性は種子含水率により大きく変化し, 含水率6.5%の種子を冠水処理した時の地上部総乾物重(出芽数 × 出芽1個体当たり地上部重)は, 冠水処理をしなかった対照区の0.5~54%まで減少したが, 種子の含水率を高めることで冠水害は軽減され, 含水率を14.5%まで高めた種子では冠水区の地上部総乾物重は対照区の65~97%を示した. 含水率10%種子では冠水感受性に有意な品種間差が見られたが, 含水率14.5%種子ではその品種間差が縮小されて明瞭でなくなり, 高含水率種子を用いて冠水害を回避する手法が, 品種に関係なく適用できる普遍性の高い手法となる可能性が示唆された. 冠水害軽減効果は過湿状態の圃場でも確認され, その効果は室内実験よりも限定的ではあったが, 含水率調節による冠水害回避の有効性が示された.
収量予測・情報処理・環境
  • 長岡 泰良, 沢田 壮兵, 加藤 清明
    2004 年 73 巻 3 号 p. 330-335
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/17
    ジャーナル フリー
    アズキの種皮色は粒大とともに品質に関係する重要な外観形質である. 種皮色に対する登熟期の温度の影響を明らかにするために品種エリモショウズを用いて2つの実験を行った. 種皮色をXYZ表色系で表した. 実験1では, 成熟度を異にする3種類の莢(未成熟莢, 成熟初期莢, 成熟莢)を, 温度4水準(5, 15, 30, 40℃)と日数7水準(2, 4, 6, 8, 10, 12, 14日間)の組み合わせで処理した. 温度の影響は未成熟莢で大きく, 成熟莢で小さかった. 高温になるほど主波長(色相)は長くなり, Y値(明度)は小さくなった. 刺激純度(彩度)は, 成熟莢では高温とともに小さくなったが, 未成熟莢と成熟初期莢では30℃処理まで上昇し, 40℃で減少した. 実験2では, 圃場で白色莢(成熟初期莢)に印を付け, それ以降10日間の平均気温と収穫した種子の種皮色との関係を調べた. 10日間の平均気温と, 主波長には正の高い相関関係(r=0.913)が, Y値(r=-0.911)と刺激純度(r=-0.893)とは負の高い相関関係があった. これらのことは, 登熟期の気温が高いと主波長が長くなり, Y値と刺激純度は小さくなるため, 種皮色が濃くなることを示している. 白色莢以後10日間の平均気温から収穫時の種皮色を予測する推定式を作成した. 主波長yD=0.7947x+591.3, Y値yY=-0.3452x+12.64および刺激純度yE=-0.5507x+44.4に, 白色莢を観察した日から10日間のその地域における平年値の平均気温を代入することにより, それぞれの値を求めることができる.
  • 長田 健二, 滝田 正, 吉永 悟志, 寺島 一男, 福田 あかり
    2004 年 73 巻 3 号 p. 336-342
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/17
    ジャーナル フリー
    胴割れ米発生と登熟期の気象条件との関係を明らかにする目的で, 圃場試験およびポット試験を行った. 水稲13品種を圃場で5年間計6回栽培し, 刈り遅れ条件で収穫時の胴割れ発生を調査した結果, 供試したいずれの品種も登熟初期の高温多照条件で胴割れ率が高くなる傾向にあった. 特に日最高気温との関連が強く, 出穂後1~10日ないし同1~5日の平均日最高気温と胴割れ率との間には, 供試した全品種で5%水準以上の有意な正の相関関係が認められた. また, ポット試験を行った結果, 開花後6~10日に高温処理を行うと胴割れ発生が著しく増加した. この時期は, 最終籾乾物重の約14~40%を示す穎果発育ステージに相当した. 以上より, 米粒の胴割れは, 登熟初期の高温条件で発生が増加することが明らかになった.
研究・技術ノート
  • 伊田 黎之輔
    2004 年 73 巻 3 号 p. 343-347
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/17
    ジャーナル フリー
    稚苗移植水稲の圃場試験区規模(1区面積10.71m2, 総株数238)における収量査定を一定の信頼度および精度で行うための「斜線刈取法」による調査個体数の決定と, これらの調査個体から選出される代表株を対象にして行う「水稲収量簡易速決診断法」の籾摺歩合について検討した. 238株の母集団から無作為抽出した30株の収量および収量構成要素の変動係数(CV)は, 収量(精籾重)≒総穎花数>穂数>平均1穂穎花数>登熟歩合>精籾千粒重であった. 収量のCVは21%を示し, これを信頼度95%, 精度5%で査定するための調査個体数は1区当たり52株を要する. 収量査定のシミュレーションの結果, 目標の信頼度と標本数に応じた精度により, 代表株の収量から試験区の実際の平均収量をよく推定できた. 次に, 1979~2001年に農業試験場および現地の試験圃場で品種, 作期, 施肥量などを異にした稚苗移植水稲(不完全葉を第1葉とする3.0~3.6葉苗)および成苗移植水稲(同6.5~7.0葉苗)の籾摺歩合について検討した. 稚苗移植水稲において, 比重1.06の塩水選により選別された代表株の精籾重から精玄米重に換算するための籾摺歩合は0.824±0.009(平均値±標準偏差)であり, そのCVは1.1%と極めて小さいことから, 一般的な換算係数として使用できることがわかった. 一方, 成苗移植水稲では0.844±0.005(CV=0.6%)であり, 両者間には統計的に有意な差が認められた. このことから, 従来報告されていた籾摺歩合0.840は成苗移植水稲における固有の換算係数と判断された.
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