日本作物学会紀事
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74 巻 , 2 号
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栽培
  • 岡部 繭子, 玉井 富士雄, 元田 義春, 名越 時秀, 武田 元吉
    2005 年 74 巻 2 号 p. 125-133
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/02
    ジャーナル フリー
    乾田直播栽培における, 耕うん・播種法の相違が出芽や生育におよぼす影響について, 小面積圃場試験によって検討した. 水稲コシヒカリを供試し, 播種時の土壌条件として耕起, 不耕起および不耕起V溝(深さ5cm)播種の条件を, さらに播種法として耕起条件では穴播きで播種深度1,3cmおよび5cm, 不耕起条件では穴播きで1cmと3cm, 不耕起V溝播種では覆土少量, 覆土多量の処理区を設定した. 施肥は現地慣行の元肥少肥, 追肥1回とし, 土壌表面に散布した. 参考として出穂以後の調査には移植栽培も加えた. 乾田直播では耕起5cm区を除いて, 70%以上の出芽率が確保された. 処理区によっては, 出芽するまでに特に第2節間が伸長した. 初期の茎数の増加は抑制され, どの区も無効分げつの発生が少なかった. 耕起1cm区と3cm区では7月下旬から茎数の増加がほとんど見られなくなった. 穂首節から下の4節目の節から分げつする穂(高節位分げつ穂)が, 耕起1cm区および3cm区以外の直播区で多発した. 出穂後の茎葉の乾物重層別分布では, 移植区に比較して直播区は茎葉が下層に多く分布していたが, 耕起1cm区は移植区にやや近い分布を示した. 出芽から登熟にいたる生育全体を検討した結果, 不耕起V溝覆土少量区がもっとも優れていたが, 倒伏の危険が若干認められた. また, 不耕起3cm区では出芽率はほぼ80%で十分であり, 倒伏も見られなかったが, 茎数・穂数の確保がやや不良であった. 生育全体を通してみると, 不耕起栽培, とくに3cmの深さに穴播きする栽培法が安定生産の面でいくつかの利点を持つことが明らかになった.
  • 古畑 昌巳, 楠田 宰, 福嶌 陽
    2005 年 74 巻 2 号 p. 134-140
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/02
    ジャーナル フリー
    打込み点播機での播種を想定した水稲の湛水土中直播栽培において, 湛水播種・落水栽培法における落水時期が出芽・苗立ちに及ぼす影響をポット実験で検討した. 過酸化カルシウム剤で被覆した水稲種子を湛水土壌中に播種した後に落水を行った場合, 落水直後からの土壌収縮によって土壌水分が低下して固相率が増加し, 土壌構造が大きく変化した. 播種直後に落水した区では, 播種後3日目頃から気相が出現して通気性は向上したが, 土壌の孔隙が水で満たされている状態の飽水区および播種5日後に落水した区では, 播種後9日目でも気相は出現しなかった. 播種直後に落水した区は, 他の区に比べて播種から出芽, 第1葉抽出および苗立ちまでの日数が短く, 茎葉部および根の乾物重は著しく増加した. 以上の結果, 湛水播種・落水栽培法では, 播種直後からの落水が出芽・苗立ちの向上に有効であることが示唆された.
  • 稲葉 健五, 北野 正顕
    2005 年 74 巻 2 号 p. 141-148
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/02
    ジャーナル フリー
    高温年において, 1株植付苗数を1, 3, 5, 7, 9本と変えて水稲品種キヌヒカリを圃場栽培し, 1株植付苗数が分げつの発生の仕方を中心とする生育にどの様に影響するかを検討した. 分げつの発生期間は, 1株植付苗数が多くなるほど短くなり, 9本区では1本区より2週間短い4週間となった. 発生時期は植付苗数が多くなるほど, 早い時期に集中した. 発生数は移植3週間までの分げつ初期では5本区までは植付苗数が多いほど多く, それ以上の場合は少なかった. 植付苗数が少ないほど, 1次分げつは主茎の高節位まで発生し, 1本区は3号分げつ(以下T3と表示)からT9まで, 3本区はT3からT8まで, 5, 7, 9本区はT3からT7まで発生した. 2次分げつは, 分げつ前期において3本区および5本区で多く発生し, 2次分げつが発生する主茎上の1次分げつの節位も1次分げつ上の節位も植付苗数の少ない区で多くなった. 出穂期間は5, 7, 9本区では8~9日であったが, 1, 3本区になると, 出穂期間が10~12日と広がり, 1本区では出穂開始日が数日遅くなった. 1穂籾数は次位が高い分げつほど少なくなり, 最も大きい穂をつける1次分げつは, 1, 3, 5, 7, 9本区でそれぞれT7, T6, T5, T5, T4であり, その前後で小さくなった. 2次, 3次分げつの1穂籾数には, 節位の違いによる明確な差はなかった. 以上の様に, 高温多照条件下の栽培においては, 1株に植付する苗数の違いによって, 分げつ発生時期, 分げつ発生数, 出穂時期, 節位別の穂の大きさに差がみられることが明らかになった.
品質・加工
  • 金和 裕, 金田 吉弘, 柴田 智, 佐藤 馨, 三浦 恒子, 佐藤 敦
    2005 年 74 巻 2 号 p. 149-155
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/02
    ジャーナル フリー
    中苗あきたこまちにおいて, 精玄米重, 整粒歩合, 精米タンパク質含有率を主茎および分げつの次位・節位別に解析し, 高品質・良食味を安定的に両立させる生産技術を確立するための基礎資料を得た. 主茎および第4~7節の1次分げつは, 分げつの発生頻度や穂への有効化率が安定して高く, 1穂精玄米重が重い. また, 整粒歩合が高いのは主茎および第4~7節1次分げつ, 精米タンパク質含有率が低いのは, 主茎および第4・5節, 次いで第6節の1次分げつであり, 早期に発生した低次位・低節位分げつで低い傾向にあった. 以上の結果から, 中苗あきたこまちでは, 主茎および第4~7節の1次分げつの確保により, 分げつの発生頻度と穂への有効化率の向上, 着生粒の精玄米重および整粒歩合の増加, 精米タンパク質含有率の低下に基づく高品質・良食味米安定生産が可能となると考えられた.
  • 境 哲文, 菊池 彰夫, 島田 尚典, 高田 吉丈, 河野 雄飛, 島田 信二
    2005 年 74 巻 2 号 p. 156-164
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/02
    ジャーナル フリー
    ダイズ子実に含まれているイソフラボンは, 様々な薬理効果が報告されており, イソフラボン含量が高い高機能性の品種開発が期待されている. そこで, 子実中のイソフラボン含量と組成の遺伝的改良が可能かどうかを明らかにするため, 1996~2002年の7年間に, ダイズとその野生種であるツルマメの遺伝資源延べ約2,000点を供試し, イソフラボン含量の品種・系統間差および年次間変動について解析した. その結果, イソフラボン含量は23.5~848.5mg/100gDWに分布し, 一般に早生群は低く, 中生~晩生群では品種・系統間差が顕著であった. イソフラボンの総アグリコンに占める総ダイゼインの割合は18.6~81.7%と品種・系統間の変異幅が大きく, かつ安定していた. また, 18品種・系統を6年間供試しイソフラボン含量の年次間変動係数を調査したところ13.1~60.7%であり, 含量と年次間変動係数に相関関係はみられなかった. このうち15品種・系統の2ヶ年にわたる平均イソフラボン含量は標播区より晩播区で高くなる傾向にあり, 両区の含量には高い有意な正の相関関係が認められた. また, 供試した遺伝資源において含量と種皮色, 子葉色, 百粒重および粗蛋白質含有率には相関が認められなかった. 以上のことは, 子実の外観, 大きさが変異に富み, 高含量かつ安定してイソフラボンを含む品種育成と栽培による高含量化の可能性を示している.
  • 安本 知子, 杉浦 誠, 小巻 克巳, 勝田 眞澄
    2005 年 74 巻 2 号 p. 165-171
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/02
    ジャーナル フリー
    ゴマ種子中のセサミンおよびセサモリン含有量の品種間差異を評価するため, 含有量の個体内変動を明らかにするとともに効率的で的確なサンプリング方法を検討した. ゴマは, 茎の伸長に伴って下位節から上位節に向かって順に開花するので, 同じ個体の中でも早く開花した低い節位のさく果ほど種子の登熟が進んでいる. 種子重は, 開花後30日から40日目のさく果で最大になり, それより開花後日数が経過したさく果における種子重は変わらなかった. 種子中のセサミンおよびセサモリンの含有量は, 開花後30日目ごろのさく果の種子で最大となり, これより開花後日数が経過したさく果の種子における含有量は減少していた. 種子重および二つの成分含有量は, 2週間間隔で刈り取った株ごとの開花日が同じさく果を比較した場合でも, 同一個体内のさく果と同様に開花後日数に対応する変動が認められた. したがって, 個体内におけるセサミンおよびセサモリン含有量の変動はさく果の登熟ステージを反映したものであると結論した. 品種や系統の成分特性を的確に評価するには, 登熟に伴う成分含有量の変動を考慮する必要があり, 開花日が同じさく果で種子の成分含有量を分析することによって, 播種期が異なる材料でも品種や系統の成分特性を評価できることが明らかになった.
品種・遺伝資源
  • 坂田 勲, 小柳 敦史, 井辺 時雄, 坂井 真, 吉田 智彦
    2005 年 74 巻 2 号 p. 172-178
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/02
    ジャーナル フリー
    湛水直播栽培において重要視される耐ころび型倒伏性を育種目標とした場合, 効率的に品種育成を行うためには幼植物で選抜ができることが望ましい. そこでまず, 国内外の特徴的な20品種を圃場で栽培し, 出穂後14日に押し倒し抵抗を測定し, 同時に株を分解して下部茎の挫折強度を測定した. その結果, 挫折強度は12.9~27.9 Nと, 大きな品種間差を認めた. 押し倒し抵抗と挫折強度は非常に高い正の相関関係にあった. 次に同じ20品種について, 播種後23日における幼植物の茎葉部基部における挫折強度を測定した結果, これも2.66~6.68 Nと大きな品種間差を認めた. これと出穂後14日の押し倒し抵抗, および下部茎の挫折強度との間には有意な正の相関関係があった. 20品種のうち出穂後の下部茎の挫折強度の変化が特徴的と考えられる8品種について出穂後の押し倒し抵抗と下部茎の挫折強度を経時的に測定したところ, 押し倒し抵抗は大きく変化しなかった. 下部茎の挫折強度は明らかに低下したものが3品種, 大きく変化しなかったものが5品種あった. しかし出穂後10日, 20日および30日において, 押し倒し抵抗と下部茎の挫折強度は常に高い相関関係にあった. 以上の結果から, 幼植物の茎葉部基部の挫折強度は登熟期間における下部茎の挫折強度および, これと相関の高い押し倒し抵抗の品種間差をよく表していると考えられるため, 品種の耐ころび型倒伏性を生育初期の短期間で検定できる可能性が明らかになった.
  • 長菅 輝義, 窪田 文武
    2005 年 74 巻 2 号 p. 179-184
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/02
    ジャーナル フリー
    超多収性作物であるネピアグラスの地上部, 特に茎部の水輸送特性を明確にするため, 高圧流量計を用いてネピアグラスの地上部各部位の水の通導抵抗を測定した. 結果を以下に述べる. 1)ネピアグラスの地上部, 葉身部および茎節部の水の通導抵抗(Rshoot, RleafおよびRstem)は, すべてトウモロコシに比較して有意に高かった. 特に, Rstemの種間差は大きく, トウモロコシの約4倍だった. 2)ネピアグラスの茎の断面積(SA)はトウモロコシよりも小さく, RstemSAで正規化したRSstemではRstemの場合と比較して両種の差が大きく低下した. しかし, RSstemは依然としてネピアグラスの方が有意に高く, ネピアグラスの高いRstemSARSstemの相乗効果によるものと考えられた. 3)茎部の水の通導抵抗を, 節の葉鞘方向の水の通導抵抗(γγ), 節の茎頂方向の水の通導抵抗(γa)および節間の水の通導抵抗(γin)の3つに分割した. ネピアグラスのγγおよびγaは共に高く, 特にγγで顕著な種間差が確認された. これらのことよりネピアグラスのRSstemの高さには節部の水の通導性が関与しており, 茎の細さと節部の高い水の通導抵抗の相互作用によって本植物1茎全体の水の通導抵抗が増加したものと考えられた.
作物生理・細胞工学
  • 新田 洋司, 本多 舞, 松田 智明
    2005 年 74 巻 2 号 p. 185-191
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/02
    ジャーナル フリー
    移植時に断根された水稲稚苗の, 本田移植後における冠根原基の形成過程の様相を, 冠根原基が形成される辺周部維管束環の大きさ等との関連において形態学的に検討した. すべての出現根を基部から切除した葉齢3.2の苗を水田に移植し, 葉齢7.2まで経時的に個体を採取した. 主茎の連続横断切片を作製して光学顕微鏡で観察した. その結果, 断根処理によって, 移植後, 辺周部維管束環の側面積は茎全体(鞘葉“単位”から第5“単位”までをとおしてみた場合)および頂端側の茎の部分(第3“単位”よりも頂端側)で小さくなったが, 冠根原基の数に差異はなかった. 一方, 冠根原基の基部直径は, 一時的(葉齢4.2および5.2)に第3“単位”でとくに細くなったが, その後は回復した. これらのことにより, 断根処理区では, 茎全体(鞘葉“単位”から第5“単位”までをとおしてみた場合)および頂端側の茎の部分(第3“単位”よりも頂端側)で, 辺周部維管束環の単位側面積あたり冠根原基数が多く推移し, 冠根原基基部断面積の和が辺周部維管束環側面積に占める割合も大きい傾向が認められた. 以上より, 稚苗は移植時に断根されると, 移植後, 辺周部維管束環の大きさは小さくなるが, 冠根原基は一時的に細くなるものの数はかわらないことが明らかになった. したがって, 辺周部維管束環の冠根原基への分化能力および冠根組織の形成能力が高くなったことが示され, このような形態学的な変化が個体の植え傷みからの回復に寄与することが推定された.
  • 坂田 雅正, 山本 由徳
    2005 年 74 巻 2 号 p. 192-199
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/02
    ジャーナル フリー
    高知県の海岸平野部に定着している早期栽培用早生水稲の収量成立要因を明らかにするため, 早生品種とさぴか, ナツヒカリ, コシヒカリの中苗, 稚苗を4月5日に移植し, 6月3日植え普通期水稲の黄金錦(中生品種)と収量性および乾物生産特性を比較した. 早生品種の移植日から幼穂形成期までの日数は, とさぴかが最も短く, ついでナツヒカリ, コシヒカリであり, いずれも中苗区がやや短かった. 中苗区, 稚苗区の間では玄米収量に差はみられなかったが, 品種間ではコシヒカリが最も多収を示した. これは, m2当たり籾数が多く, 登熟歩合も比較的高いためであった. 一方, とさぴかにおいてはm2当たり籾数がコシヒカリと同程度であったものの, 登熟歩合が低く, 玄米千粒重も軽いため, ナツヒカリ, 黄金錦との間には有意な収量差はみられなかった. 黄金錦に比べて, 早生品種の地上部全乾物重は, 全生育期間を通じて低く推移したが, これらの品種では穂揃期以降, 純同化率が高く維持されたことから, 登熟期間の個体群生長速度が高く, さらに穂への乾物分配割合も高かった. 一方, シンク/ソース比(m2当たり籾数/穂揃期の葉面積指数)は, 黄金錦が最も小さく, とさぴかは最も大きかった. これらより, 極早生品種でありながら, 西南暖地で多収が期待できるとさぴかにおいて安定増収を図るには, ソース容量の増大によってシンク/ソース比を低下させ, 登熟度を高める必要があると考えられた.
  • 稲葉 健五
    2005 年 74 巻 2 号 p. 200-206
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/02
    ジャーナル フリー
    水稲品種コシヒカリを用い, 幼穂形成期に当たる出穂2週間前以降に高温(昼-夜温;35-30℃)とUV-B(強UV-B;60.4 kJ/m2・day, 弱UV-B;18.1 kJ/m2・day)を組合せた処理を5日間行い, 開花・結実にどのような影響があるかを検討した. 強UV-Bだけを処理した場合, 不稔籾が対照区に比べて多少増加したが, その他には大きな影響を受けなかった. 高温区と高温+弱UV-B区の場合は, 出穂2週間前と出穂日からの処理で不稔が増加し, 出穂2週間後からの処理で多少籾重が減少した. 高温+強UV-B区の場合は, 出穂2週間前からの処理で不稔が増加し, 籾や葯の大きさが小さくなった. 開花日からの処理で不稔が大きく増加し, 葯長が短く, 花粉の充実度が大きく低下した. また, 出穂2週間後からの処理で籾重が減少した. 更に止葉の光合成速度も一時的に低下した. 以上のように高温と強UV-Bを同時処理すると, 高温やUV-Bの単独処理ではなかったような生育に対する悪影響が現れたり, 高温やUV-B単独の影響で現れた不稔や花粉の不良などの悪影響が増強されて発現した.
研究・技術ノート
  • 小林 俊一, 吉田 智彦
    2005 年 74 巻 2 号 p. 207-211
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/02
    ジャーナル フリー
    栃木県産米の品質向上及び原種, 及び原々種の混種防止を目的として, 栃木県奨励品種を中心に, 品種登録申請中の栃木7号, 及び栃木酒14号(酒造好適米)等, 合計20品種についてのRAPD法による品種識別技術を確立した. これらの品種識別は7種類のランダムプライマーを用いてDNAを増幅した後, 1.5%アガロースゲルで電気泳動を行い, エチジウムブロマイド溶液で染色後に現れた9種類のDNAマーカーの多型を比較することで可能であった.
  • 古畑 昌巳, 楠田 宰, 福嶌 陽
    2005 年 74 巻 2 号 p. 212-217
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/02
    ジャーナル フリー
    圃場条件下において, 播種前の代かきおよび播種後の落水程度が打込み点播機を利用した湛水直播水稲の出芽と苗立ちに及ぼす影響を調査した. パディハローを用いた代かきを2行程行った場合(2倍代)は, 1行程の場合(標準代)に比べて播種, 落水後の土壌含水率は高く, 酸素拡散速度は低く推移した. また, 同じ代かき区内においても土壌の均平は不完全でムラがあるため, 落水の良否によって土壌含水率および酸素拡散速度は変化し, 落水が良好な(播種後翌日には落水した)箇所は, 落水が不良な(播種後数日にわたり表面水が停滞した)箇所に比べて土壌含水率は低く, 酸素拡散速度は高く推移した. 2倍代は標準代の落水良好箇所に比べて水稲の苗立ち数は少なく, 標準代の落水不良箇所は, それよりさらに苗立ち数が少なく, 出芽した個体の生育も悪かった. これらの結果から, 打込み点播機による湛水播種・落水栽培法では, 過度に代かきを行わないことと圃場の均平に留意して水の停滞箇所を作らないことが, 安定した出芽・苗立ちに必要であると考えられた.
  • 片野 學, 真鍋 孝, 難波 正孝
    2005 年 74 巻 2 号 p. 218-223
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/02
    ジャーナル フリー
    昭和61年度, 収量停滞打破を目指す一方策として, 熊本県菊池郡市に第6葉抽出成苗(不完全葉を1とする)ポット苗移植機が導入された. 本機導入に伴う栽培管理方法は, 導入先進地である山形県からもたらされたものであり, その特殊個別技術として6ないし8条を1つの単位(複条)とし, それらの間に2条間分に相当する60cmを空ける栽植方法(以下, 複条並木植, 複条と複条との条間を複条間と呼ぶ, また, 複条内の条間は30ないし33cmである)があった. 調査を行った水田は品種コシヒカリおよびミナミニシキが複条並木植されていた9水田であり, 両品種とも成熟期に, 複条並木植の各条から連続した15株を収穫し, 15株の占有面積を測定後, 常法に従って収穫物調査を行った. まず, 6月5日に移植し, 9月20日に収穫した複条間が約60cmであったコシヒカリ2水田における最外列(各複条の最外列2条をいう, 以下同様)単位面積当たり収量は中央列(最外列2条以外の条, 以下同様)の82%と87%であった. 次に, 6月下旬に移植し10月末から11月上旬に収穫したミナミニシキ7水田における複条数は6, 8および12, 複条間も45と60cmなど様々であった. 中央列に対する最外列単位面積当たり収量は, 複条間が約45cmであった2水田ではほぼ同じであったが, 60cmの場合, 毎年2~5t/10 a相当の完熟豚糞が施用された1水田を除く4水田の場合には78%~91%にとどまっていた. 両品種ともに複条の最外列では, 占有面積拡大分に見合う穂数と1穂収量の補償効果が認められなかったためであった. 以上のように, 複条間を60cmとする移植法については減収する場合が多いことが明らかになり, 昭和62年度にはこの複条間距離で栽培する農家はいなくなった.
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