日本作物学会紀事
Online ISSN : 1349-0990
Print ISSN : 0011-1848
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74 巻 , 3 号
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栽培
  • 難波 輝久
    74 巻 (2005) 3 号 p. 253-259
    公開日: 2005/12/22
    ジャーナル フリー
    エジプト・ナイルデルタの1980年代の水稲(Oryza sativa)栽培では, 窒素施与量10 g m-2を約半数の農家が全量基肥, 他の半数は2回分施(基肥と幼穂形成期にそれぞれ50%)しており, 平均日射量が26 MJ m-2 d-1と極めて高いにもかかわらず精籾収量は650 g m-2であった. そこで品種Giza 172を供試し, 窒素について分施法と施与量を組み合わせた圃場試験を実施し, 多収のための最適施与法を検討した. 窒素分施法として, 移植期, 活着期(移植7日後), 減数分裂始期, 穂揃期における分施割合(%)を100‐0‐0‐0(全量基肥区), 50‐20‐20‐10(前期重点分施区), 25‐25‐25‐25(均等分施区), 0‐40‐40‐20(後期重点分施区)の4処理を, また, 窒素施与量として6, 12, 18 g m-2の3処理を設定した. 窒素施与量18 g m-2, 前期重点分施区で穂数は460本m-2, 籾数は47000粒m-2, 登熟歩合は93%であり, 精籾収量は1120 g m-2と高収であった. 前期重点分施区では個体群生長速度(CGR), 葉面積指数(LAI)および純同化率(NAR)は, 全期間を通じて高く推移し, とくにCGRはLAIに強く影響を受けるので, 大きなLAIを確保したことで高収を実現できたと考えられた. 全量基肥区では, 生育後期の窒素不足により単位面積あたり籾数は不足し, CGRも小さく, 登熟期のLAIは急速に低下した. また, 均等分施区や後期重点分施区では, 単位面積あたり穂数不足により単位面積あたり籾数は少なく, CGR, NARも小さく登熟歩合も低く, 収量は低かった. 以上の実験結果から, 本地域では窒素多施与(18 g m-2)の前期重点分施, すなわち基肥50%, 移植7日後20%, 減数分裂始期20%および穂揃期10%の施与により高収が可能であると結論した.
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  • Aye Aye Han, 梅崎 輝尚, 江原 宏, 長屋 祐一, 森田 脩
    74 巻 (2005) 3 号 p. 260-269
    公開日: 2005/12/22
    ジャーナル フリー
    ミャンマーの代表的な高収量イネ品種のひとつであるManaw Thu Kha(MTK)の生産現場での低収量性の原因解明のために施肥法に着目し, MTKと日本品種のコシヒカリ(KH)と日本晴(NB)をミャンマーの一般的な施肥法(M区)と日本の施肥法(J区)とにより三重大学内実験水田で2001年から3年間栽培実験を行った. 施肥試験区として, M区には基肥を与えず移植後30, 60日目に2回尿素を窒素成分量で合計11.4 kg/10 a追肥するM1区と2回目追肥時に同量の尿素と2.2 kg/10 aのリン酸を与えたM2区, J区には複合肥料を窒素成分量で基肥6 kg/10 aと追肥2回各2.5 kg/10 aを施したJ1区, J1区の1/2量を施したJ2区の計4区を設けた. 結果は次のとおりである. M区では尿素を追肥すると10日間でMTK, KH, NBとも草丈は急伸長し, 施肥に敏感に反応した. また, M区はJ区と比較して3品種ともに移植後の分げつの発生が遅れ, 最高分げつ期までの所要日数が大きかった. 最高分げつ数はMTKではJ2区は低かったがM区とJ1区に差がみられなかったのに対して日本の2品種はJ区に比べてM区が有意に少なく, 供試品種によって施肥法の違いが分げつの発生に大きく影響した. MTKの主稈葉の葉色値は第13~14葉まではM区, J区ともKH, NBより有意に低く, 葉色が薄かった. MTKの第14葉のSPAD値はNBより追肥後7日目以降有意に低く推移した. そして, MTKでは追肥後5週目以降急激に低下したが, NBは出穂終了後の追肥後6週目以降も追肥時と同程度の値を維持した. 出穂状態はMTKはM区, J区ともにKH, NBと比較して出穂期間が長く, 出穂のピークが2回認められた. 出穂期のMTKの群落はNBの群落に比べて葉面積指数が大きく, 吸光係数も大で, 受光態勢が悪かった. MTKは尿素だけを追肥したM1区では穂数が多い反面, 1穂籾数の減少や登熟歩合の低下がみられた. しかし, リン酸を同時に追肥したM2区はM1区よりも1穂籾数が多く, 登熟歩合も高く, J1区と同程度の精籾重が得られた.
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  • 野間 貴文, 廣瀬 大介
    74 巻 (2005) 3 号 p. 270-275
    公開日: 2005/12/22
    ジャーナル フリー
    水稲(コシヒカリと稀珍黒米)に硝酸態窒素もしくはアンモニア態窒素を施用し, それぞれの根系発達を比較した. 両品種とも乾物重, 根長及び節根数は, 硝酸態窒素施用に比べ, アンモニア態窒素施用の方が有意に高い値を示した. しかし, 比根長については, 両品種とも硝酸態窒素施用の方が有意に高い値を示した. また, アンモニア態窒素施用と硝酸態窒素施用の根の生理活性については一定の傾向は見られなかった. これらのことから, 水稲においてはアンモニア態窒素施用の方が硝酸態窒素施用に比べ, 根系の長さが優れることが示された. また, 根系の長さの差は, 根の分枝発達程度の差ではなく, 節根数の差が一因と考えられた. さらに, 根系の発達様相には品種間差があることが示唆された.
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  • 神田 英司, 鳥越 洋一, 小林 隆
    74 巻 (2005) 3 号 p. 276-284
    公開日: 2005/12/22
    ジャーナル フリー
    水稲冷害早期警戒システムで作成した発育モデルを拡張し, 圃場内における有効穂や穎花が減数分裂期などの特定の発育ステージにある割合を推定する手法を作成した. この手法は発育に内在する形態形成の規則性に起因する変異を対象とし, 移植時の個体葉齢変異, 有効穂の幼穂形成期変異, 穎花の開花日変異を発育モデルの初期値とすることで取り扱う. この手法を1999年, 2001年, 2003年の東北農業研究センターと青森県十和田, 八戸, 青森の生育診断圃場に適用し, この手法の実用性を検討した. 1穎花の危険期間を設定して危険期にある穎花割合を推定すると, 穎花レベルの危険期のピークは有効穂レベルの減数分裂期のピークよりも2~3日遅かった. また, 冷害年である2003年は冷温で発育が緩慢となり, 減数分裂期の有効穂, 危険期の穎花ともに圃場に存在している期間が長くなった. 穎花レベルの開花期のピークも有効穂レベルの出穂期のピークよりも2~3日遅かった. 出穂および開花期に冷温となった2001年は出穂する穂および開花する穎花が圃場に存在する期間が冷害年の2003年よりも長くなった. この手法で成熟期を推定すると, 2001年や2003年のように冷温で登熟が遅延したときに, 圃場レベルで成熟期に未達でも有効穂や穎花レベルでは一部で成熟しているとみられた. 障害型冷害の危険期冷却量を求めたところ, 1999年は不稔発生は少ないが, 2001年, 2003年は冷却量が大きいと不稔歩合が大きかった. この手法で圃場内の発育の変異を推定することができた.
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  • 境垣内 岳雄, 森田 茂紀, 阿部 淳, 山口 武視
    74 巻 (2005) 3 号 p. 285-290
    公開日: 2005/12/22
    ジャーナル フリー
    ポットおよび水田で栽培した水稲品種コシヒカリを用いて, 追肥窒素が水稲に吸収される様相を把握するため, 追肥後における茎基部からの出液速度と出液の窒素濃度から出液中の窒素量を推定し, その経時的な推移について検討した. ポット, 圃場試験ともに, 出液の窒素濃度は硫安追肥後6時間目以降に上昇が認められ, 24時間目に最大となった後は漸減した. 出液の窒素濃度の上昇までに6時間以上が経過しているが, これは追肥が土壌中で拡散して根に吸収されて木部導管に入るまでに要する時間と考えられた. 圃場試験の追肥後168時間目では, 追肥区の出液の窒素濃度が追肥を施用しない対照区と同じレベルまで低下しており, 追肥の吸収は終了したと考えられた. なお, 出液の窒素分析の結果から, 圃場試験の追肥後168時間目での追肥硫安の利用率を推定すると約55%であった. 一方, 出液速度は, ポット, 圃場試験ともに, 出液の窒素濃度の上昇から12時間以上が経過した後に, 追肥区で対照区よりも高くなった. この時間的なズレが生じた原因は, 導管液中の窒素化合物の増加が直接的に根の吸水を促進したというよりは, 追肥による根の生理機能の向上により, 間接的に根の能動的吸水が促進されたためと考えられた. 葉色の反応はさらに遅れて, 追肥後48時間目に初めて追肥区が対照区よりも高くなった. 以上のように, 出液の窒素分析から, 追肥が吸収される様相を詳細かつ迅速に把握できることが明らかとなり, さらに追肥窒素の利用率や土壌中での挙動についても把握できる可能性が示された.
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  • 池永 幸子, 松本 二香, 井上 博茂, 稲村 達也
    74 巻 (2005) 3 号 p. 291-297
    公開日: 2005/12/22
    ジャーナル フリー
    本研究は, 輪換田における土壌の窒素発現と水稲(Oryza sativa L.)の窒素吸収を一毛作田と比較することによって明らかにすることを目的とした. 調査は, 2000年から2003年, 奈良県桜井市大西の窒素無施肥条件下の試験区水田を対象に実施した. これらの水田は, 水稲-コムギ-ダイズの2年3作の田畑輪換を行う二つのブロック(総面積29 ha)と, 水稲一毛作を行う水田(0.3 ha)に分かれている. 輪換田土壌の窒素発現量は, 一毛作田と比較して増加せず, それは輪換が繰り返されることで全窒素, 全炭素が低くなることが原因と考えられた. 出穂期と成熟期の水稲による窒素吸収率と水稲窒素保有量は, 一毛作田に比較して輪換田で高くなり, 1穂頴花数の増加によって輪換田水稲が多収となった. 調査期間内において, 輪換田土壌の窒素発現量は年次間で一定であるが, ブロック間で大きく異なった. このブロック間差の一因として輪換田間で異なる土壌の物理化学性とブロック間で異なる水稲作付け前の気象条件が考えられた. このようなブロック間変異は, 田畑輪換での土壌の物理化学性の空間変異に応じた水稲の窒素施肥管理に有為な技術情報であると考えられた.
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  • 磯部 勝孝, 染谷 聡美, 江花 慶美, 山口 美緒, 氏家 和広, 石井 龍一
    74 巻 (2005) 3 号 p. 298-303
    公開日: 2005/12/22
    ジャーナル フリー
    アマランサスやキノアについて地下水位が生育や収量へ及ぼす影響を明らかにした. 供試したアマランサスはA. caudatus L., A. cruentus L., A. hypochondriacus L.の3種でキノアの供試品種はBaer2とNL-6である. 地下水位は水を入れた深さの異なる容器にポットを浸して調整した. A. hypochondriacus L.はA. caudatus L.やA. cruentus L.に比べ, より高い地下水位でも出芽率や生育・収量の低下が少なかった. また, A. hypochondriacus L.は地下水位3 cmでも播種後70日目の枯死率が対照区と変わらなかった. このことから, 供試した3種のアマランサスの中でA. hypochondriacus L.は高地下水位における生育量の低下が他の2種に比べ少ないと考えられた. 一方, キノアはアマランサスのA. hypochondriacus L.より地下水位の上昇による生育量の低下が生じやすく高地下水位に対する耐性はA. caudatus L.やA. cruentus L.と同程度であると考えられた. さらに, これらを栽培するにあたってはダイズを栽培する時以上に地下水位を低下させる必要があると考えられた.
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品種・遺伝資源
  • 石崎 和彦, 佐藤 徹, 浅井 善広, 長澤 裕滋
    74 巻 (2005) 3 号 p. 304-309
    公開日: 2005/12/22
    ジャーナル フリー
    いもち病真性抵抗性遺伝子型Pia, Pii, Pita-2, Piz, Pik, Pik-m, Piz-t及びPibを単独で有すると推定されるコシヒカリ新潟BL1号, コシヒカリ新潟BL2号, コシヒカリ新潟BL3号, コシヒカリ新潟BL4号, コシヒカリ新潟BL5号, コシヒカリ新潟BL6号, コシヒカリ新潟BL7号及びコシヒカリ新潟BL8号について, 原品種との同質性及び主要品種との区別性を評価した。主要特性のうち, BL8号とコシヒカリの出穂期に1日程度の有意な差が認められた以外は, 極めて同質性が高い結果であった. また, 新潟県における主要作付け8品種とコシヒカリ新潟BL1~8号の特性を主成分分析で解析したところ, 両者を明確に区別することが可能であった. 以上の結果, コシヒカリ新潟BL1~8号は, 原品種コシヒカリと極めて類似し, 他品種との区別性も明らかなことから, 一般栽培への供用が可能と判断された.
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  • 佐藤 弘一, 斎藤 真一, 吉田 智彦
    74 巻 (2005) 3 号 p. 310-315
    公開日: 2005/12/22
    ジャーナル フリー
    加工形態に対応した糯品種を育成するための育成段階での選抜技術を確立するために, 現在栽培している品種, 育成品種について, 餅製品の加工上重要な指標とされる餅硬化性, ラピッド・ビスコ・アナライザー(RVA)による糊化特性, 尿素崩壊性について検討した. 餅硬化性には品種間差が認められ, こがねもちは餅硬化性が高かった. また, 品種と年次間に交互作用が認められた. 育成系統について餅硬化性試験を行ったところ, ヒメノモチより著しく餅硬化性が劣る系統, あるいはこがねもちより明らかに優る系統は認められなかった. 餅硬化性は, RVA特性値中の糊化温度, ピーク温度, 最低粘度, 最終粘度およびコンシステンシーと正の相関関係にあり, ブレークダウンと負の相関関係にあった. また, 餅硬化性, 糊化温度, ピーク温度, 最低粘度, 最終粘度およびコンシステンシーは, 登熟期間の気温との相関係数が高いことから, 登熟気温の影響を受けると考えられた. 育成系統の糊化特性を簡易に判定するために, 尿素崩壊性について検討した. 尿素崩壊性には品種間差があり, 糊化温度と相関関係にあることから, 少量で簡易な餅硬化性の選抜方法として利用できると考えられた. 餅硬化性の優れた品種育成を目的とする場合は, 登熟気温を考慮した餅硬化性の優れた品種を交配母本に選定し, RVAおよび尿素崩壊性により餅硬化性を間接的に初期世代から選抜可能であると考えられた. なお, その場合には, 登熟気温別に選抜するなどを考慮する必要性が認められた.
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  • 野原 努, 中山 則和, 高橋 幹, 丸山 幸夫, 島田 信二, 有原 丈二
    74 巻 (2005) 3 号 p. 316-324
    公開日: 2005/12/22
    ジャーナル フリー
    土壌中の無機態窒素が多くなると, ダイズの窒素固定能は低下する. この窒素固定能の低下は土壌窒素への依存度を高め, 地力や子実収量の低下をもたらすことが懸念される. そこで, 高土壌窒素条件の圃場において日本品種4, アメリカ品種2および根粒超着生品種を栽培し, 生育期間中の根粒数, 根粒重および根重, 窒素固定への依存度の指標となる茎基部からの出液中の相対ウレイド値を測定し, 高土壌窒素条件下における窒素固定依存度の品種間差異とその要因を解析した. 相対ウレイド値は, 降雨の少なかった2002年より降雨に恵まれた2003年が総じて高い値を示し, 土壌乾燥による窒素固定依存度の低下が推察された. 両年とも生育期間中の相対ウレイド値には顕著な品種間差が認められ, とくに根粒超着生品種作系4号では45~85%と高く推移した. また, 普通品種についてみると, アメリカ品種は11~48%で, 日本品種(14~67%)よりも全般に相対ウレイド値が低く推移した. 播種後63日目の日本品種の根粒数, 根粒重はともにアメリカ品種と比べて多い傾向がみられた. また, 根粒数および根粒重は出液中のウレイド態窒素量と高い正の相関関係を示した. これらのことから, 本研究で供試した品種の範囲では, 日本品種はアメリカ品種より高土壌窒素条件下における根粒着生能に優れ, その結果, 窒素固定への依存度が高いことが明らかとなった.
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作物生理・細胞工学
  • 中山 則和, 島田 信二, 高橋 幹, 金榮 厚, 有原 丈二
    74 巻 (2005) 3 号 p. 325-329
    公開日: 2005/12/22
    ジャーナル フリー
    ダイズ種子は吸水時に障害を受けやすく, 種子を冠水処理すると, 種子への急激な水の浸入により種子組織が物理的に破壊される結果, 出芽およびその後の植物体の生育が大きな影響を受ける. しかし, 種子の吸水速度を調節するためポリエチレングリコール(PEG)を添加した高張液に種子を浸漬した場合, 48時間浸漬し続けても冠水障害の発生は見られなかった. 種子含水率約70%(乾物重%)までPEG溶液中で緩やかに吸水させた種子では, その後に蒸留水中で冠水処理を行っても冠水障害は認められず, 種子吸水の初期段階の吸水速度が冠水障害発生に重大な影響を及ぼすことが示された. 以上の結果から, 種子の初期の吸水速度を抑制して種子の物理的な破壊を防げれば, 冠水障害を大幅に軽減できること, 種子吸水時の冠水障害発生の主要因は種子の物理的な破壊であり, 酸素欠乏は大きな要因ではないことが示唆された. しかし, 正常に吸水を終えた種子であっても, 幼根が種皮を貫通して伸長を始めた発芽後の種子を冠水処理した場合にも, 乾燥種子を冠水処理した時と同様, 処理後の出芽および生育が阻害されることが観察された. 発芽後の冠水障害は, 種子吸水時の冠水障害とは発生要因が全く異なり, 酸素欠乏による生理的な障害の側面が大きいと考えられる. 今後ダイズ発芽時の湿害について考える場合は, 発芽中(吸水中)と発芽後(幼根抽出後)を明確に区別する必要があるだろう.
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  • 義平 大樹, 唐澤 敏彦, 中司 啓二
    74 巻 (2005) 3 号 p. 330-338
    公開日: 2005/12/22
    ジャーナル フリー
    1980年代以降にポーランドで育成された秋播性ライコムギ品種は北海道中央部において適応性を示し, 多収となる. その要因を乾物生産過程から明らかにするために, 5年間にわたり, 北海道育成のコムギ品種, およびポーランドのほか, ドイツ, 韓国育成のライムギ品種とともに栽培して成長解析を行い, 作物間で比較した. ライコムギはすべての試験年次において, コムギおよびライムギよりも多収を示した. ライコムギとコムギの子実収量の差は主として全乾物生産量の差に起因し, 起生期から止葉期までの期間の個体群成長速度(CGR)の差と関係していた. この高いライコムギのCGRは, 平均葉面積指数(MLAI)が大きくかつ純同化率が高いことによってもたらされた. 一方, ライコムギとライムギの子実収量の差は収穫指数の差に起因し, 開花始期から乳熟期までの期間の穂の乾物重の増加速度(EGR)の差と関係していた. このライコムギの高いEGRは, MLAIが大きいことによってもたらされた. これらの作物間差異は品種間差異よりも大きかった. 本実験の結果から, 供試したライコムギ品種の多収性は, ライムギ品種の具備する起生期から止葉期までの高い乾物生産能力と, コムギ品種の具備する開花始期から乳熟期までの高い穂部乾物重増加速度をあわせもつことにより実現したものと推察した.
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  • 望月 篤, 白岩 立彦, 中川 博視, 堀江 武
    74 巻 (2005) 3 号 p. 339-343
    公開日: 2005/12/22
    ジャーナル フリー
    ダイズの莢先熟の発生には開花期以降の高温とそれによる莢実器官の発達の不良が関与している可能性がある. ダイズ6品種を温度傾斜型チャンバー(TGC)内およびそれに隣接する畑圃場で栽培し, 温度環境が個体ごとの収量関連諸形質および成熟整合性程度に及ぼす影響を調査した. TGC内は, 生育前半にはほぼ外気温条件に保ち, その後全品種が開花期に達した時期から成熟期まで4つの温度区(T1~T4区で平均気温23.1~25.8°C)を設けた. 1花当り精粒数, 1粒重および株当り収量は高温区ほど低下する傾向があり, T4区はT1区に比べてそれぞれ13, 10および17%低い値を示した. しかし, 莢先熟の発生には温度処理区で有意差はみられなかった. TGC内の調査個体および同時に隣接圃場で栽培した全個体の調査結果から, 莢先熟個体(成熟整合性程度2以下)と正常成熟個体(同3以上)の成熟期諸形質の平均値を品種ごとに比較した. ほぼすべての品種において, 花痕+莢数, 着莢率, 1莢当り粗粒数および完全粒歩合にはグループ間に明瞭な差異はなかった. これに対して主茎長, 地上部乾物重および精粒乾物重は, 莢先熟個体が正常個体よりも平均して15~28%大きい傾向があった.
     以上より, 生殖成長期間における約3°Cの温度上昇がダイズの莢実器官の発達と収量形成に悪影響を与えることがわかった. しかし, そのことが莢先熟発生の増加につながる直接的な原因とはいえなかった.
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  • 角 明夫, 森 彩恵, 村田 和代, 朝比奈 愛, 郡山 朋子, 下敷領 耕一, 矢ヶ崎 和弘, 箱山 晋
    74 巻 (2005) 3 号 p. 344-349
    公開日: 2005/12/22
    ジャーナル フリー
    乾物生産量と蒸発散量の測定を介して共生窒素固定量を評価する可能性を探るために, 根粒着生に関するダイズの同質遺伝子系統, T201 (根粒非着生系統) とT202 (根粒着生系統) をそれぞれ3段階および5段階の窒素 (N) 施用条件下で栽培した. T201の葉緑素含量 (SPAD値) はT202より低く推移し, また両系統の差は無Nから多N区へと順次拡大した. さらに, 根粒重 (Ndw) とSPAD値における系統間・処理区間差が大きくなるにつれて, 乾物生産量 (DM) と蒸発散量 (ET) の間の量的関係における違いが拡大した. 生育期間中のDMとETとの間には1次回帰式で表せる関係が認められ, DMが0のときを仮定したET (ETw=0) は T201よりもT202で大きく, またT201におけるETw=0は地面蒸発量 (E0) にほぼ一致した. 一方, N施用量によりT202のNdwとETw=0はともに変動し, 両者には密接な関係が認められた. T201とT202の間のETw=0差 (δETw=0) から推定したDM差 (δW) と両系統間のN集積量の差から評価した固定N量との間に有意な正の相関関係が認められた (P<0.001). これらの結果はN固定のエネルギー・コストに着目した共生窒素固定量の推定が可能であることを示している.
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  • 前川 富也, 国分 牧衛
    74 巻 (2005) 3 号 p. 350-356
    公開日: 2005/12/22
    ジャーナル フリー
    根粒超着生ダイズ品種作系4号は, 窒素固定能と葉面当り光合成能が高いことから多収のポテンシャルを持つと期待される. 本品種の宮城県内における収量性を窒素の肥効パターンの影響の面から検討するため, 年次と場所の異なる3つの圃場試験(試験1~3)を行った. 供試品種は作系4号のほか, 親品種エンレイおよび根粒非着生系統En1282を用い, 肥料は速効性肥料(尿素)と緩効性肥料(LP-70あるいはLP-100)を用いた. 3種類の肥料効果を比較した試験1(2001年, 仙台)では, 作系4号とエンレイの収量はLP-100>LP-70≒尿素であったのに対し, En1282では尿素>LP-70>LP-100であった. 尿素とLP-100を用いた試験2(2002年, 仙台), 試験3(2002年, 鳴子)の結果では, 開花期, 子実肥大期における地上部乾物重はLP-100区が尿素区を上回る傾向がみられ, この傾向は作系4号において顕著であった. 作系4号のLP-100による乾物重増加は, 葉面積指数の増加に依存していた. 試験2, 3の収量は作系4号ではLP-100区が尿素区を上回ったが, エンレイとEn1282では肥料の種類の効果はみられなかった. 供試した3品種・系統の収量は, エンレイ>作系4号>En1282の傾向がみられ, 開花期と子実肥大期の乾物重の差を反映していた. 以上のように, 作系4号に対する緩効性肥料による増収効果はある程度認められるが, さらに多収を目指すには, 生育前半の生育量を増大させる他の栽培手段が必要である.
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  • 大潟 直樹, 高橋 宙之, 田口 和憲, 岡崎 和之, 中司 啓二
    74 巻 (2005) 3 号 p. 357-363
    公開日: 2005/12/22
    ジャーナル フリー
    テンサイ根部に含まれるアミノ態窒素は製糖品質を低下させる有害性非糖分の一つである. 本実験では, 圃場接種により根腐病が発病したテンサイO型系統の根冠部に含まれるアミノ態窒素含量および根中糖分, また, これらの分布を経時的に調査した. その結果, 根腐病抵抗性の強弱にかかわらず, 根冠部のアミノ態窒素含量は, 根腐病の発病に伴い増加した. また, 根腐病抵抗性系統は, 無接種下においても感受性系統よりアミノ態窒素含量が2 meq/100 g以上と多かった. 一方, 根冠部の根中糖分は根腐病の発病により低下したが, 抵抗性系統は感受性系統よりも低下の程度が少なかった. 次に, 発病により, 根部のアミノ態窒素の分布は無接種下の分布から変化し, 中心部維管束帯付近で多く, 表皮側で明らかに少なかった. また, 根中糖分は発病によりアミノ態窒素と同様に表皮側が低下した. 以上の結果から, 根腐病の発病はテンサイの根中糖分を低下させるとともにアミノ態窒素含量を増加させ, 製糖品質の低下につながることが明らかとなった. アミノ態窒素含量は, 根腐病抵抗性に関与しており, 製糖品質の優れた抵抗性品種の育成にとって障壁になる可能性がある.
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研究・技術ノート
  • 伊藤 博武, 宮武 勝美, 小松 輝行
    74 巻 (2005) 3 号 p. 364-368
    公開日: 2005/12/22
    ジャーナル フリー
    北海道斜網地域の地形は, 三方が山地と台地に囲まれた斜里平野, 四方が低地の小清水台地と網走台地, 藻琴山からオホーツク海にかけて広がる台地が侵食されてできた波状地形, の3つに大きく分けられる. ジャガイモの霜害の被害程度を調査したところ, 斜里平野は被害が重く, 小清水台地と網走台地では被害が軽く, そして波状地形では異なる被害程度が複雑に現れた. 最低気温は被害の重かった所ほど低く, 氷点下経過時間についても被害程度が重い所は長かった. 降霜が発生した時の風は, 高地より低地側へと流れていた. つまり, 高地の地表面付近の冷気は低地へ移動し, 冷気が収束した斜里平野では氷点下経過時間が長くなり被害が重く, 低地へ冷気が発散した小清水台地と網走台地では気温が氷点下まで下がらなかったために被害がなかった.
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