日本作物学会紀事
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74 巻 , 4 号
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研究論文
栽培
  • Aye Han Aye, 江原 宏, 安川 三和, 梅崎 輝尚, 長屋 祐一, 森田 脩
    2005 年 74 巻 4 号 p. 395-403
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/17
    ジャーナル フリー
    ミャンマーの主要な高収量品種Manaw Thu Kha(MTK)の移植後の初期から中期における生育と乾物生産特性の解明を目的として, 比較品種に日本のコシヒカリ(KH)と日本晴(NB)を用い, 2002年~2004年に春季と夏季の年2回ずつポット栽培を行った. MTKの生育はKH, NBに比べて出葉が早く, 茎数が多く, 葉面積が大きい傾向が見られた. 出葉速度の差は夏季よりも春季に顕著で, 移植後30日目にはMTKの主稈葉数はKH, NBよりも1枚以上多くなった. 茎数は2004年には春季, 夏季とも日本品種のおよそ2倍に達した. MTKの乾物重はKH, NBに比べると春季は同程度か小さい傾向にあったが, 夏季では大きく, 特に高温の2004年は春季, 夏季とも大きかった. また, MTKはKH, NBに比べて葉面積当り窒素含有量(NCLA)が常に低く, その差も大きかった. 生長パラメータについて見ると, MTKの相対生長率(RGR)は春季ではKH, NBと同程度かやや小さく, 夏季では同程度かやや大きかった. 純同化率(NAR)は春季, 夏季ともKH, NBより小さい傾向が見られた. 一方, 葉面積比(LAR), 比葉面積(SLA)は年, 春季, 夏季を通してMTKが常に大きかった. また, NARとNCLAの間には正の, NCLAとSLAには負の相関関係が認められたが, MTKはKH, NBに比べてNARが小さい夏季でもRGRが比較的大きかったことから, MTKは葉身が薄化してNARが低くてもLARがそれを補うほどに拡大して乾物生産を維持していた. 以上から, 移植後初期から中期にかけてのMTKの生育は日本品種に比べて出葉が早く, 分げつの発生が旺盛で, 葉身の薄化によって葉面積の拡大を図り, 乾物生産をLARに依存していることが特徴であった.
  • 中野 尚夫, 泉 拓史, 大西 政夫
    2005 年 74 巻 4 号 p. 404-409
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/17
    ジャーナル フリー
    1999, 2000, 2001, 2003年の4年間に砂丘畑(砂丘未熟土)では萎凋・枯死を避ける程度の潅水(節潅水栽培), 普通畑(赤色土壌) では無潅水でダイズを栽培し, 栽培期間の6月~10月の降雨量と子実収量の関係を検討した(実験1). また1999年には, 砂丘畑において慣行の潅水(潅水区)のもとで栽培したものと生育・収量を比較した(実験2). いずれの年においても砂丘畑での収量は普通畑のそれよりも低かったが, 降雨の多かった2001年には普通畑のそれと大差なかった. また, 普通畑ではいずれの年の収量にも大きな差がなかったが, 砂丘畑では栽培期間中の降雨が多い年ほど子実収量が高く, 栽培期間中の降雨量と子実収量との間にr = 0.80(P < 0.20)の正の相関関係があった. 実験2の潅水量の比較では, 節潅水区は潅水区に比べ, 降雨の少なかった7月上旬から8月中旬の乾物生産量が著しく少なかったが, 降雨量が少なくなかった8月中旬以降の乾物増加量には差がなかった. 生育量が小さかった節潅水区は灌水区に比べ, 草丈, 主茎茎径, 分枝数が小さい値になったが, 主茎節数には差がなかった. 節潅水区では, 降雨の少なかった7月上旬から8月中旬の分枝発生数が少なく, 分枝の節数増加も劣った. このため, 節潅水区では分枝の節数が低下して総節数が減少し, さらに結莢率の低下, 不稔莢の増加も加わって稔実莢数が総節数以上に減少した. 一方, 8月下旬以降の降雨量は少なくなかったが, 節灌水区の百粒重は灌水区よりも小さかった. これは, 9月でも3日以上降雨のないことが3回もあり, 継続して土壌に水分が十分保持されなかったことによると考えられた.
  • 三浦 重典, 小林 浩幸, 小柳 敦史
    2005 年 74 巻 4 号 p. 410-416
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/17
    ジャーナル フリー
    東北地域において中耕作業の省略と除草剤使用量の低減を目指したダイズの栽培技術を開発するために, 秋播き性の高いオオムギを利用したリビングマルチ栽培試験を行った. 試験は, 2002年及び2003年の2年間実施し, リビングマルチ, 除草剤施用, 中耕の有無を組み合わせた処理区について, 雑草の生育量とダイズの生育・収量を調べた. 2002年及び2003年ともに, リビングマルチ栽培では, 5月下旬にダイズと同時に条播したオオムギ(品種 : べんけいむぎ)は, ダイズ(品種 : タチナガハ)より3日早く出芽し, 6月下旬頃まではダイズの草高を上回っていたが, 7月上旬頃から葉が黄化し始めて8月上旬にはほぼ枯死した. 両年ともリビングマルチ栽培では, 中耕作業や除草剤土壌処理を省略しても高い雑草防除効果が認められた. また, リビングマルチと除草剤を組み合わせた区では, リビングマルチのみで除草剤を使わなかった区より雑草乾物重が少なく, 両者の組み合わせにより雑草抑制効果は高まった. リビングマルチ栽培におけるダイズの収穫時期の乾物重は, 2002年は慣行栽培とほぼ同じで2003年は慣行栽培より劣った. しかし, 両年とも稔実莢数と百粒重が慣行栽培と同程度であったため, ダイズの子実収量はリビングマルチ栽培と慣行栽培との間で有意差が認められなかった. 東北地域では, オオムギをリビングマルチとして利用することで, 倒伏の危険性は若干高まるものの, ダイズ作における中耕や除草剤土壌処理が省略可能であると判断された.
  • 臼木 一英, 山本 泰由, 田澤 純子, 松尾 和之, 辻 博之
    2005 年 74 巻 4 号 p. 417-421
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/17
    ジャーナル フリー
    温暖地の黒ボク土圃場において不耕起とロータリ耕およびそれらを交互に組み合わせた4通りの耕起法が夏作トウモロコシと冬作エンバクの生育・収量に及ぼす影響についてアーバスキュラー菌根菌の感染と関連させて検討した. トウモロコシの生育初期における乾物重とリン吸収はロータリ耕に比べて不耕起処理を前年から継続することで増加した. しかし, 出穂期以降は生育差が縮小して黄熟期の乾物収量には耕起法の違いは認められなかった. トウモロコシ播種前における土壌中のアーバスキュラー菌根菌の胞子密度には耕起法の違いによる影響は認められなかったが, トウモロコシの生育初期における同菌の感染率は不耕起処理によって高まった. これらのことから不耕起処理によってアーバスキュラー菌根菌の感染が高まり, 特に不耕起を継続することで養分吸収が促される可能性が示唆されたが, 収量に及ぼす影響は認められなかった. 一方, 冬作のエンバクでは, 耕起法の違いがアーバスキュラー菌根菌の感染に及ぼす影響は見られなかった. また, エンバクの生育はロータリ耕でやや向上する傾向にあったが収量に対しては耕起法の影響が見られなかった.
品質・加工
  • 松江 勇次, 佐藤 大和, 尾形 武文
    2005 年 74 巻 4 号 p. 422-426
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/17
    ジャーナル フリー
    全国の主要な低アミロース米7品種を供試して, 低アミロース米品種の食味とブレンド適性を検討した. 低アミロース米品種の食味には品種間差が認められるとともに, 生産年の違いによる食味の安定性も品種によって異なった. 食味における交互作用の有無を解析した結果, 品種と生産年および作期との間には交互作用は認められなかった. これらの結果より, 低アミロース米品種は一般飯米用品種とは異なり, 生産年や作期の違いによって品種間における食味の相対的な差が変化しにくいことが明らかとなった. 低アミロース米品種におけるブレンド比率別の食味は, 食味評価が不十分なブレンドされる品種(ベース品種)では概して50%が, 食味評価が優れるベース品種では25%が最も優れた. 食味評価が不十分なベース品種では, 低アミロース米品種を用いることによる食味改善効果は認められるものの, コシカリと同程度の食味レベルまでには至らなかった. 一方, 食味評価が優れるベース品種においては, 低アミロース米品種を用いることによりコシヒカリと同程度の食味レベルに改善することができた. ブレンド米の食味についてブレンド比率間と低アミロース米品種間の分散成分の値を比較すると, ブレンド比率間の分散成分の方が低アミロース米品種間の分散成分より大きかったことから, ブレンドによる食味改善効果は, ブレンド比率の影響を大きく受けることが示唆された.
作物生理・細胞工学
  • 金榮 厚, 中山 則和, 中村 卓司, 高橋 幹, 島田 信二, 有原 丈二
    2005 年 74 巻 4 号 p. 427-430
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/17
    ジャーナル フリー
    ダイズからの一酸化窒素(NO)と亜酸化窒素(N2O)の発生に根粒が関与していることを明らかにするため, 根粒着生能力の異なるダイズ品種の3系統(普通品種 : エンレイ, 超着生品種 : 作系4号, 非着生系統 : En1282)を黒ボク土の普通畑圃場に栽培して, 圃場からの一酸化窒素と亜酸化窒素の発生を経時的に調査した. その結果, 特に開花期(R2)から着莢盛(R4)までに一酸化窒素と亜酸化窒素の発生量が高かった. 一酸化窒素と亜酸化窒素の発生量は作系4号>エンレイ> En1282の順であった.
     作系4号とエンレイは, 開花期以降の生育進展に伴って一酸化窒素と亜酸化窒素の発生も高くなり, 子実肥大期の9月上旬にはほとんど発生しなくなるというパターンを示した. これらの結果から, 一酸化窒素や亜酸化窒素の発生程度とダイズ品種の根粒着生能力との間には脱窒の代謝系が密接に関与することが示唆された.
  • 前田 和美
    2005 年 74 巻 4 号 p. 431-437
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/17
    ジャーナル フリー
    ラッカセイの莢実の莢が子実の脱湿と吸湿に及ぼす影響をみるために, 大粒・厚莢の品種ナカテユタカと極小粒・薄莢の品種Chicoを用いて次の4実験を行った. (1)新鮮な莢実と剥き実を9日間, 28°C通風乾燥;(2)乾燥貯蔵した莢実と剥き実を水で飽和したバーミキュライト培地に播種(28°C, 深さ3 cm, 6日および5日間);(3)同じ莢実と剥き実を室温(25~28°C)で約13週間, 高湿(相対湿度89~99%)の気中に置く;および, (4)同じく, 低湿(同26~28%)の気中に置く. これらの実験で, 莢による子実の脱湿や吸湿の阻害と, その時間的変化の品種間差異が見られたのは, 子葉組織または培地の液相の水分が気相に変化して移動する(1)と(2)の場合のみで, (3)と(4)の気相の水分の移動では莢の影響は全く見られなかった. また, (2)と(3)の両品種で約12時間の“imbibition”期が観察されたが, (2)では, 剥き実の子実の発芽(根)が莢実よりも早く, しかし, より高い含水率で始まった. (3)では, 吸湿がごく緩慢で, 両品種で発芽開始含水率に達せず, 発芽は起こらなかった. 以上の結果は, 莢が子実の保護だけでなく, 液相水分の移動において, 子実の水分の調整機能をもつことを示唆するものと考えられた.
研究・技術ノート
  • 石崎 和彦, 松井 崇晃, 原澤 良栄
    2005 年 74 巻 4 号 p. 438-443
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/17
    ジャーナル フリー
    新潟県において育成されたいもち病真性抵抗性をもつコシヒカリの同質遺伝子系統について, これらを利用したマルチラインの主要特性を評価した. いもち病真性抵抗性同質遺伝子系統, コシヒカリ新潟BL1号(Pia), BL2号(Pii), BL3号(Pita-2)及びBL4号(Piz)を, それぞれ10%, 20%, 50%及び20%混合したマルチラインは, 原品種コシヒカリとの間に, 生育, 収量, 品質及び食味の各特性において有意な差は認められず, 極めて同質性が高かった. 一方, 穂いもち発病株率は両品種の間に1%水準で有意な差が認められ, マルチラインの発病抑制効果が実証された. また, コシヒカリポジキット(Takaraコメ判別用PCR Kit I)のマルチプレックスPCRの識別バンドは, マルチラインが5本, 原品種コシヒカリが3本を示した. 以上のことから, コシヒカリマルチラインは, 原品種コシヒカリと同じ特性を備え, いもち病に対する抵抗性を有し, DNAレベルで両者の識別が可能と考えられた.
  • 内村 要介, 古庄 雅彦, 馬場 孝秀, 山口 修, 甲斐 浩臣, 塚崎 守啓, 吉田 智彦
    2005 年 74 巻 4 号 p. 444-449
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/17
    ジャーナル フリー
    分子マーカーを利用して有用遺伝子を効率的に導入する育種法を確立する目的で, 遺伝解析の材料として半数体倍加系統を作出するため, 徳島モチ裸由来のオオムギ縞萎縮病抵抗性品種縞系6とオオムギ縞萎縮病罹病性品種lk2のF1に野生オオムギのcb2920を交配して得た胚を培養して, コルヒチン処理を行った. 半数体倍加系統の作出率は, 野生オオムギを受粉したF1の穎花数に対して, 4.5%であった. 半数体倍加系統95系統のオオムギ縞萎縮病(?T型)に対する表現型は, 抵抗性が48系統と感受性が47系統で, 期待分離比1 : 1に適合した. また, 分子マーカーにより検出した半数体倍加系統の遺伝子型は, ヘテロ型は全く検出されず, 分子マーカー37種類のうち36種類において縞系6ホモ型 : lk2ホモ型が1 : 1の期待分離比に適合した. 半数体倍加系統群は遺伝解析の材料として, 完全なホモ接合体で劣性遺伝子の形質発現が評価できること, ヘテロ型が判定できない優性の分子マーカーも有効に使えること, 表現型および遺伝子型の分離比が単純であること, 同一の遺伝子構成の材料として維持・増殖が容易なため, 様々な環境条件下で形質評価を繰り返し行うことが可能で, 遺伝子発現の評価の信頼性を高めることができる点で優れていた.
  • 吉田 穂積, 伊藤 博武, 小松 輝行
    2005 年 74 巻 4 号 p. 450-455
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/17
    ジャーナル フリー
    北海道東部に位置する網走市から斜里町にかける地域の淡色黒ボク土地帯ではリン酸肥料の過剰投入やカリウムの土壌への蓄積が認められ, 施肥量の適正化が強く求められている. 本研究では2001年から3ヶ年間にわたり当地域で現在慣行的に施肥されているリン酸とカリウム施肥量をそれぞれ25%と33%減肥し, テンサイの生育と収量に及ぼす影響について検討した. 減肥区の土壌の有効態リン酸含有量と交換性カリウム含有量は, 慣行施肥区に比べ低く推移する傾向にあったが, いずれも北海道の土壌診断基準値以上で推移していた. テンサイの草丈, 葉数, 根周は, 3ヶ年とも減肥区と慣行施肥区の間に有意差が認められなかった. 2002年の糖度は, 減肥区が慣行施肥区に比べ高かったが, 茎葉重量, 根重量および糖収量とも減肥区と慣行施肥区との間に有意差は認められなかった. 更に, 2003年にリン酸38%減肥と50%減肥及びカリウム100%減肥がテンサイ収量に及ぼす影響を検討したところ, いずれの減肥試験区でも茎葉重量, 根重量, 糖度および糖収量に慣行施肥区との有意差は認められなかったことから網走地域における淡色黒ボク土では現行の施肥量よりもリン酸とカリウムを減肥できるものと考えられた.
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