日本作物学会紀事
Online ISSN : 1349-0990
Print ISSN : 0011-1848
75 巻 , 3 号
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総説
栽培
  • 居 静, 山本 由徳, 宮崎 彰, 吉田 徹志, 王余 龍
    2006 年 75 巻 3 号 p. 249-256
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/05
    ジャーナル フリー
    中国で育成された大穂の多収性インド型品種揚稲4号の減数分裂期(減分期)及び穂揃期の切り株断面からの出液速度と幼穂形成前期(出穂期前23~27日前, 幼形前期)から出穂期にかけての窒素吸収量に及ぼす肥料の種類[一般肥料(塩安, 過リン酸石灰, 塩加, CF)と緩効性肥料入り複合肥料(くみあい被覆尿素入り複合肥料, LP複合444E-80, SRF)と施肥量[窒素, リン酸, カリが成分量で0(無施肥, Non-F), 6(L), 12(M), 18g(H)m-2の4段階]の影響について, 出穂期がほぼ等しい日本稲品種ヒノヒカリを対照品種として検討した. 幼形前期と出穂期の有効茎(青葉数が4枚以上をもつ茎)数は, 施肥量の増加とともに多くなり, Non-F区に対する増加割合は, 揚稲4号に比べてヒノヒカリで, またCF区に比べてSRF区で大きかった. 同一施肥条件下の有効茎数は, 揚稲4号に比べてヒノヒカリで1.6~2.3倍多かったが, 1茎重は揚稲4号で1.9~2.5倍の値を示した. 減分期と穂揃期の株当たり出液速度は, Non-F区ではヒノヒカリが, 施肥区では穂揃期のL-SRF区を除いて, いずれも揚稲4号が優った. 両品種の株当たりの出液速度は, 施肥量の増加に伴って増大したが, 同一施肥条件下では肥料の種類による有意差は認められず, Non-F区に対する増加割合は揚稲4号で大きかった. 両時期の株当たり出液速度の平均値は, ヒノヒカリでは幼形前期と出穂期の株当たり有効茎数の平均値とのみ有意な正の相関関係を示したが, 揚稲4号では, 有効茎数と茎当たり出液速度の平均値の両者と有意な正の相関関係を示し, 相関の程度は後者の方が高かった. また, 両時期の株当たり, あるいは有効茎当たりの出液速度の平均値は幼形前期から出穂期にかけての窒素吸収量と密接に関連した. これらより, 揚稲4号では, ヒノヒカリに比べて茎当たりの出液速度が株当たりの茎数差を上回り, 株当たりの出液速度が優ったために, 窒素吸収量も高くなったものと推定された
  • 渡邊 肇, 日高 秀俊, 三枝 正彦, 大江 真道, 渋谷 暁一
    2006 年 75 巻 3 号 p. 257-263
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/05
    ジャーナル フリー
    気候が冷涼で障害型冷害の危険性が高い中山間地における稲作では, 深水栽培の導入は, 安定多収を図る上で有効であると考えられる. そこで, 水稲深水栽培の中山間地への適用性について, 深水管理の時期が水稲の生育と収量に及ぼす影響を, 品種「ひとめぼれ」を用いて1999年と2000年に検討した. 試験区として活着期から深水管理を行う深水?T区, 最高分げつ期直前から深水管理をする深水II区, 慣行の水管理を行う慣行区を設けた. 深水?T区の最高茎数は両年ともに慣行区を下回り, 穂数は1999年は深水II区に対して, 2000年は慣行区に対して有意に少なかった. これに対して, 深水II区は両年ともに最高茎数は慣行区とほぼ同等であったが, 穂数は2000年において慣行区よりも有意に少なかった. 2000年において穂数が少なかったのは, 最高分げつ期における地上部窒素濃度が1999年に比べて約25%低下したため, 深水時のストレスに耐えられなかったものと推測された. このことから, 深水管理においては適切な施肥管理を行う必要があると考えられた. また, 収量は両年ともに深水?T区において最も少なかった. 一方, 深水II区は両年ともに慣行区と同程度の収量を確保した. 収量と穂数, 総籾数との間には有意な正の相関関係が認められたが, 収量と一穂籾数との間には有意な相関関係は認められなかったことから, 収量確保には穂数が重要であると考えられた. 以上より, 中山間地における水稲深水栽培は, 最高分げつ期直前の比較的生育後半からの深水管理が適するものと考えられた.
  • 渡邊 肇, 日高 秀俊, 三枝 正彦, 大江 真道, 渋谷 暁一
    2006 年 75 巻 3 号 p. 264-272
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/05
    ジャーナル フリー
    中山間地における育苗箱全量施肥不耕起移植深水栽培が水稲の生育と収量に及ぼす影響を1999年と2000年に検討した. 品種「ひとめぼれ」を供試し, 活着期から有効分げつ決定期まで水深を10 cmとし, 有効分げつ決定期から出穂期までの水深を20 cmとした深水I区, 有効分げつ決定期から出穂期までを水深20 cmとした深水II区, 慣行の水管理を行う慣行区を設けた. 水稲の草丈は両深水区とも, 深水管理開始後から慣行区を上回った. 最終的な葉数は水管理で有意差はなかった. 葉色は両深水区ともに, 概ね水管理の影響を受けなかった. 茎数は1999年では, 深水I区の最高茎数と穂数が慣行区と深水II区に比べて有意に減少したが, 深水II区の穂数は慣行区と同等であった. 2000年は茎数の推移における水管理の影響はみられなかった. 登熟歩合は, 両年とも深水管理によって増加した. 収量は両年とも水管理で有意差はみられなかった. 1999年は収量と穂数の間に相関関係がみられなかったが, 2000年と両年を込みにした場合には, 収量と穂数, 総籾数との間に正の有意な相関関係がみられ, 収量と一穂籾数には相関関係がみられなかった. これらから, 安定収量には穂数の確保が重要と考えられた. さらに, 肥効調節型肥料を用いた不耕起移植深水栽培の施肥窒素利用率は, 水管理の影響を受けなかった. 以上, 有効分げつ決定期から入水を開始する育苗箱全量施肥不耕起移植深水栽培は中山間地における水稲の安定生産に貢献でき, 環境負荷軽減・省力化の面からも期待されると考えられた.
  • 稲村 達也, 陳福 剛, 間藤 徹, 井上 博茂, 山末 祐二
    2006 年 75 巻 3 号 p. 273-280
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/05
    ジャーナル フリー
    カドミウム規制の対象とならない非汚染水田で生産される低濃度レベル(約0.06 ppm)の玄米中カドミウムの抑制を検討した. 土壌中のカドミウム濃度がそれぞれ2 ppmおよび5 ppmとなるようにカドミウムを添加した灰色低地土と黒ぼく土をポットに充填し, 窒素源としてメタン発酵消化液および硫安を用い対照として無窒素処理を設け水稲を栽培した. 水稲の生育時期別に見た土壌の還元とカドミウムの吸収および玄米への分配, および玄米中カドミウム量と玄米重との関係を解析した. メタン発酵消化液施用により両土壌の還元が進み, カドミウムの吸収量と玄米への分配率が化学肥料と無窒素処理に比較して低下し, 玄米中のカドミウム量も低下した. 窒素を含むメタン発酵消化液を分施した場合,玄米重が確保され, 玄米中のカドミウム濃度は化学肥料と無窒素に比較して更に低下した. この様に, メタン発酵消化液は, それを施用した場合, 両土壌において低濃度レベルの玄米中のカドミウム濃度を低下させる資材としての可能性があると考えられた.
  • 荻内 謙吾, 勝部 和則, 及川 一也, 岩舘 康哉
    2006 年 75 巻 3 号 p. 281-288
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/05
    ジャーナル フリー
    土壌伝染性のウイルス病害で, 近年発生面積の拡大しているコムギ縞萎縮病は, コムギ播種後の気温が高く雨が多いと感染率が高まり被害が増大するが, 播種時期を遅くすると発病が軽減されることが知られている. そこで, 秋播性のコムギを根雪前に播種する冬期播種栽培が, コムギ縞萎縮病の発生に及ぼす影響をナンブコムギを用いて検討した. コムギ縞萎縮病の発生がみられる圃場において, 10月上中旬播種の秋播栽培標準播種区(標播区)と12月上中旬播種の冬期播種栽培区(冬期区)のコムギ縞萎縮病発病程度を比較したところ, 標播区は病徴のみられる株の割合で示す発病株率, 病徴の程度を示す発病度が冬期区よりも高く, 特に発病の多い多発圃場では発病株率が100%, 発病度も99と高かった. これに対し冬期区は, 発病株率0~5%, 発病度0~2と標播区に比べ有意に低かった. 標播区は播種後の日平均気温(地温)が高く, コムギ縞萎縮ウイルス(WYMV)の感染適温とされる日平均気温5°C(地温7°C)以上の日数が40日以上あった. 冬期区では播種から根雪期間終了後である3月下旬まで日平均気温5°C(地温7°C)以下の低温で経過していたことから, 冬期区で発病が抑止された要因としては, 播種後の低温条件によりWYMVのムギへの感染が妨げられた可能性が考えられた. 冬期区は, 標播区に比べ穂数が多く千粒重が重い傾向にあり, 発病程度の高い標播区に比べ最大で23~65%増収した.
  • 中村 順行, 森田 明雄
    2006 年 75 巻 3 号 p. 289-295
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/05
    ジャーナル フリー
    チャでは, 挿し木苗の定植から成木園になるまでの幼木期が6~7年以上と長く, この期間の短縮化が望まれている. チャの幼木期の生育促進には苗の分枝数の多さが重要となる. そこで, ペーパーポット育苗時における分枝数の多い挿し木苗の作出方法と定植後の初期生育を調べた. その結果, 挿し木(6月)後に生育した新梢の残葉数が5枚となる位置で9月中に苗床でせん枝することにより, 定植時(翌年3月)までに分枝数7本以上の苗を育成することができた. また, 苗床でのせん枝処理により分枝を2本あるいは4本に増加させたポット苗を本圃に定植した場合, 幼木期の分枝の増加も多く, 初期生育に優れ, 収量性も高い傾向が認められた.
品質・加工
  • 境 哲文, 二瓶 直登, 高田 吉丈, 河野 雄飛, 高橋 浩司, 島田 信二
    2006 年 75 巻 3 号 p. 296-305
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/05
    ジャーナル フリー
    ダイズ子実中のイソフラボン含量に及ぼす栽培条件, 品種, 栽培年次および栽植密度の影響について1999, 2001, 2002年の3ヶ年にわたり解析した. 12品種を供試した評価では, イソフラボン含量は普通畑標播<転換畑標播<普通畑晩播, 年次間変動は普通畑晩播<普通畑標播<転換畑標播の順に増加する傾向を示した. 3ヶ年の平均イソフラボン含量の品種間差および年次間変動係数は普通畑標播区でそれぞれ3.0倍, 6~27%, 普通畑晩播区で同2.3倍, 4~31%, 転換畑標播で同2.2倍, 10~44%でいずれも品種間差は顕著であった. 栽植密度がイソフラボン含量およびその成分組成に及ぼす影響は有意ではなく, 含量と子実収量との間にも相関関係は認められなかった. 2000年には播種期が遅延するに従いスズカリのイソフラボン含量が増加することを確認した. また, 土壌の種類に関して, ふくいぶきでは灰色低地土より黒ボク土でイソフラボン含量が高い傾向を示したが, 窒素施肥の影響は明らかでなかった. 以上の結果は, 晩播と密植化およびより肥沃度の高い圃場での栽培を組み合わせることで, 低収化をカバーし, なおかつ付加価値の高い高イソフラボン含有ダイズの生産が可能であることを示している.
  • 藤井 敏男, 吉田 智彦
    2006 年 75 巻 3 号 p. 306-310
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/05
    ジャーナル フリー
    高品質の甘茶品種育成のため, まず甘味の主成分であるフィロズルチンのHPCLを使用した分析法の分析時間短縮化を試み, 1日当り従来約20点だったものを50点分析可能とした. 分析精度は育種のためには十分であった. 甘茶向けの品種を用いた交配を行い, 50 ppmジベレリンの播種直後散布, 液肥の葉面散布などで健全苗を多数得た. アマチャ×アマギアマチャの組み合わせの交配後代で, 1株当たり生葉重, フィロズルチン含有率, 1株当たりフィロズルチン量は頻度が連続的な正規分布であり, 多数遺伝子によって支配されていることが推察された. 1株生葉重やフィロズルチン含有率は多くが両親の間に分布したが, 1株当りフィロズルチン量では両親を上回るものが多数あった. 生葉重とフィロズルチン含有率との相関はなく, 生葉重とフィロズルチン含有率の両方の値が高く, その結果1株当たりフィロズルチン量が両親を大きく上回る系統が比較的容易に得られたものと思われる. フィロズルチン含有率の年次間相関は高かった.
品種・遺伝資源
  • 劉 建, 辺嘉 賓, 塩津 文隆, 豊田 正範, 楠谷 彰人
    2006 年 75 巻 3 号 p. 311-317
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/05
    ジャーナル フリー
    中国の華北地域産品種30と日本の新旧品種30の発芽時および幼植物耐塩性を比較した. 水道水を対照とし, NaCl濃度0.2%(34 mM), 0.4%(68 mM), 0.6%(103 mM), 0.8%(137 mM)および1.0%(171 mM)での発芽試験を行った結果, 中国品種と日本品種の発芽時耐塩性に有意差はなかった. 0.25%(43 mM)の塩水中で16日間葉齢7前後の幼植物を栽培したところ, 幼植物耐塩性は, 中国品種の方が日本品種よりも有意に高かった. 発芽時耐塩性と幼植物耐塩性との間に有意な相関関係は認められなかった. しかし, 中国品種墾育18や津籾206は発芽時耐塩性と幼植物耐塩性の両方が高く, 日本品種の中では, あきげしき, 愛国, フジヒカリの幼植物耐塩性が高かった. したがって, これらの品種は今後の華北地域における耐塩性育種の有用な育種母材になるとみられた.
  • 中村 恵美子, 伊藤 誠治, 林 敬子, 馬場 孝秀
    2006 年 75 巻 3 号 p. 318-326
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/05
    ジャーナル フリー
    北陸地域においてより安定的した収量性, 精麦品質をもつ新品種を育成するために, 現在栽培されているミノリムギとファイバースノウを含む精麦用オオムギ4品種を用い, 収量や精麦品質の年次変動の品種間差を調査した. その結果, 穂数, 千粒重, 整粒歩合, 粗蛋白含有率, 硝子率, 硬度差の各形質では, 品種と年次との交互作用は検出されなかった. 一方, 整粒重, リットル重, 55%搗精白度, 55%搗精時間には交互作用があった. ミノリムギはオオムギの生育に良好な年では整粒重が多かったが, 多雪年や登熟期に降雨が多い年では整粒重の低下が著しかった. 一方, 北陸皮35号は整粒重の年次変動が少なく安定的な品種であった. リットル重は年次によって最も重い品種と軽い品種が異なっていた. 55%搗精白度と55%搗精時間においては, シュンライが年次変動が最も小さく安定していた. ミノリムギは年次にかかわらず55%搗精白度が最も低く, 55%搗精時間が最も長かった. 整粒重には登熟期の降水量や積雪の多少が, リットル重, 55%搗精白度, 55%搗精時間には登熟期の降水量がそれぞれ影響を及ぼし, その程度は品種により異なっていた. 整粒重, リットル重, 精麦品質が安定して高位である形質をもった品種育成のためには, 多雪年を含み登熟期の降水量の異なる複数年の試験を行うことが必要であると考えられた. 雲形病発病程度は年次間差のみあり, 罹病性品種は自然感染の条件下では安定して発病しなかった.
  • 岡部 昭典, 菊池 彰夫, 猿田 正恭
    2006 年 75 巻 3 号 p. 327-334
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/05
    ジャーナル フリー
    近畿, 中国, 四国地域で栽培する大豆品種に必要な特性を明らかにするため, 当地域の府県で奨励品種等として採用され, 栽培された新旧ダイズ品種の特性比較を行った. 43品種を育成年次により, 1945年以前(I期), 1946年~1970年(II期), 1971年以降(III期)の3群に類別して比較した. I期は戦前, II期は戦後の米増産時代, III期は水田利用再編対策等によりダイズの生産振興が図られた時代に相当する. 2003年および2004年に供試品種を水田転換畑で栽培し, 生育, 収量, 品質関連形質について比較した. その結果, 年代が新しくなるにしたがって変異は減少する傾向があり, III期では花色は紫, 毛茸色は白に統一された. また, I期およびII期には早生, 中生, 晩生各熟期群に品種が分散していたが, III期では中間型品種の普及により中生に集中した. III期品種の開花迄日数は短縮し, 結実日数は延長する傾向にあり, 多収化のための条件を備える方向に変化した. 草型に関してはIII期品種では主茎長および主茎節数とも大幅に減少して小型化し, 耐倒伏性が強化されたが, 青立ちについては改善の跡が認められなかった. また, III期品種は百粒重が増加したが, 節数が減少したため収量の増加は認められなかった. しかし, タマホマレとサチユタカは短茎化しても晩生の大型品種並の子実重を確保しており, 子実の生産効率が高いと推察された. 品質に関しては, 大粒化, 白目への統一, 裂皮粒の減少, 高蛋白質含量等, 時代の要請に応じて改良が図られてきた.
  • 森下 敏和, 山口 博康, 出花 幸之介, 手塚 隆久
    2006 年 75 巻 3 号 p. 335-344
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/05
    ジャーナル フリー
    ダッタンソバの農業関連形質および子実成分等の特徴を明らかにするために, 九州(熊本県)と関東(茨城県)でそれぞれ2カ年圃場試験を実施した. その結果, 草丈, 主茎長, 主茎節数, 一次分枝数などの形態的な形質, および全重, 収量などの生育量に関する形質の年次変動の程度は異なるが, 品種間差が認められ, 品種の序列も各年次でほとんど変化が無く, これらの形質は品種の特性を表す指標になると考えられた. 草丈などの形態的な形質の年次変動は小さいが, 全重, 収量などの生育量に関する形質の年次変動は大きかった. さらに個体サイズや生育量の大きい品種が多収を得るのに有利であることが示された. 早播と標播を比較した結果, 播種日の移動に対する反応は品種により異なることが示された. 子実成分を調査した結果, ダッタンソバ子実のルチン含量は普通ソバの100倍以上であったが抗酸化能は普通ソバの3~4倍であったことから, ダッタンソバと普通ソバでは抗酸化能に寄与する主な物質が異なると推測された.
  • 長菅 輝義, 窪田 文武
    2006 年 75 巻 3 号 p. 345-349
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/05
    ジャーナル フリー
    水ストレス処理後の乾物生産能力の早期回復は, 植物の耐乾性の向上に強く寄与する要素である. ネピアグラスは水ストレスによって乾物重を大きく減少させてもその後に土壌水分条件が改善されると乾物重を回復させる. 本研究では, 水ストレス処理後のネピアグラスの乾物重の回復が速やかに行われる否かを確認するため, 同一ポット内にて生育させたネピアグラスおよびトウモロコシを, 生育盛期に強度の水ストレスを与え, その後に十分な土壌灌水を行った際の両種の全乾物重(TDW), 葉面積(LA)および個葉の光合成速度(Pn)の変化を比較した. 6日間の水ストレス処理を施したトウモロコシのTDWおよびLAは対照区とほぼ同程度に維持された. 個体成長速度(PGR), 相対成長率(RGR)および純同化率(NAR)は, 水ストレス処理中も対照区とほぼ同様であり, それ以降においては土壌水分条件が回復したにもかかわらず対照区の約50%まで低下した. また, Pnは水ストレス処理によって速やかに低下し, 土壌灌水後の回復も遅かった. 一方, ネピアグラスでは6日間の水ストレス処理によってTDWは対照区の約70%, LAは対照区の約30%にそれぞれ低下した. しかし, 灌水再開後にはLAが再び増加して灌水再開後6日目では対照区の約50%に回復した. PGRおよびRGRは水ストレス処理期間中および灌水再開後も共に低かったもののNARは維持された. Pnは土壌乾燥条件下では緩やかに低下し, 灌水再開後には速やかに回復した. 灌水再開後6日目までの乾物重の増加は小さかったが, LAおよびPnは速やかに回復した.
作物生理・細胞工学
  • 野原 努, 中山 則和, 中村 卓司, 高橋 幹, 丸山 幸夫, 有原 丈二, 島田 信二
    2006 年 75 巻 3 号 p. 350-359
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/05
    ジャーナル フリー
    高土壌窒素条件下におけるダイズの窒素固定能の品種間差異を解析するため, 普通ダイズ6品種, 根粒超着生品種および根粒非着生系統の合計8品種・系統を肥沃な普通畑圃場(101 kg-NO3 ha-1)で栽培し, 各生育時期における窒素集積量と出液中の相対ウレイド値から窒素固定量を推定した. また, これらの値から算出される各品種の全生育期間における窒素固定寄与率(RU-%Ndfa)を比較した. 根粒超着生品種作系4号の窒素固定量は供試品種・系統の中で最も多く, アメリカ品種WilliamsおよびLeeの窒素固定量はいずれの時期も同熟期の日本品種よりも少なかった. 特に, アメリカ品種は生育中期以降の窒素固定量が少なく, その期間の窒素固定量と生育中期の根粒重との間には高い正の相関関係が認められた. RU-%Ndfa15N自然存在比から算出した窒素固定寄与率(δ15N-%Ndfa)との間には密接な正の相関関係が認められた. 作系4号のRU-%Ndfaは他の普通品種に比べて著しく高く, WilliamsおよびLeeのRU-%Ndfaはそれぞれ同熟期の日本品種に比べて低い傾向が認められた. 以上のことから, 高土壌窒素条件下では, Williams, Leeは同熟期の日本品種より窒素固定量が少なく, 窒素固定寄与率が低いことが明らかとなり, この品種間差異には生育中期までの根粒着生能が影響していると推察された.
  • 何 寧, 小嶋 道之, 黒澤 聡, 加藤 清明
    2006 年 75 巻 3 号 p. 360-365
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/05
    ジャーナル フリー
    出芽期における耐冷性の強い品種アカネダイナゴンと耐冷性の弱い品種斑小粒系-1を用いて低温遮光処理後の緑化処理が過酸化水素含量と抗酸化酵素の活性に及ぼす影響を調べた. 28日間低温遮光処理(10°C~13°C, 72%遮光)したアカネダイナゴン初生葉は, 緑化処理(20°C~25°C, 自然光)により, クロロフィル合成速度が18日間低温遮光処理した時よりも遅延したが, 緑化は進行し, 枯死体は全くみられなかった. しかし, 28日間低温遮光処理した斑小粒系-1初生葉は, 緑化処理を行ってもクロロフィル合成が進行しなかった. さらに, 緑化処理する前の枯死率は約20%を示し, 緑化処理により枯死率はさらに増加した. 28日間低温遮光処理した斑小粒系-1初生葉に含まれるH2O2含量とSOD活性は, 18日間低温遮光処理した場合に比べて著しく増加した. また, 緑化処理によりSOD, APXおよびCAT活性は顕著に低下した. しかし, 同条件によるアカネダイナゴン初生葉のH2O2含量とSOD活性の増加はほとんどみられず, 抗酸化酵素活性にも顕著な影響は認められなかった. 以上のことから, 長期の低温遮光ストレスを受けることにより, 出芽期の耐冷性が低い品種である斑小粒系-1初生葉のH2O2含量が蓄積していることが明らかとなった. 出芽期のアズキ品種における耐冷性の違いは, 低温遮光処理により生じるO2-の生成量の差によるのかもしれない.
研究・技術ノート
  • 中嶋 泰則, 濱田 千裕, 池田 彰弘, 釋 一郎
    2006 年 75 巻 3 号 p. 366-375
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/05
    ジャーナル フリー
    2月中旬のコムギ立毛中に水稲を不耕起播種する「水稲麦間不耕起直播栽培」の省力安定化技術の確立を目的に, コムギ播種前の秋季代かきと播種同時施肥について検討した. 不耕起V溝播種機を供試し, 開口部2 cm, 深さ5 cmのV溝に水稲播種と同時に施用する肥料を検討したところ, 水稲の生育や窒素の溶出パターンから, 基肥としては肥効調節型肥料のLPSS100(シグモイド型被覆尿素100日タイプ)が適合すると考えられた. また, LPS120(シグモイド型被覆尿素120日タイプ)が穂肥としての肥効を示すことも示唆された. これらの肥料は, コムギ生育中での窒素の溶出量が少なく, コムギの収量・品質に悪影響を与えなかった. コムギ播種前に秋季代かきを実施することで, 水稲播種時における圃場の均平と硬度が確保され, 播種作業によるコムギへの傷害が少ないうえ, 水稲の播種精度が向上し出芽・苗立ちが安定した. このような結果に基づき, 1999年にコムギ播種前の秋季代かきおよびLPSS100の水稲播種同時施肥を水稲麦間不耕起直播栽培体系に組み込み, 94 aの大区画圃場において検討したところ, 1 ha当たりの全刈り収量はコムギ4.94 t, 水稲5.32 tで合計10.26 t, 圃場内労働時間23.5時間が達成でき, 本栽培体系における省力安定性が示された.
情 報
日本作物学会シンポジウム記事
連載ミニレビュー
  • 廣瀬 竜郎
    2006 年 75 巻 3 号 p. 401-404
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/07/06
    ジャーナル フリー
    In situハイブリダイゼーション法は染色体,細胞あるいは組織切片中の特異的な核酸配列を検出する技術である.なかでも,組織切片を用いて特定のmRNAの局在を調べる技法は幅広く使われており,医学分野では臨床検査の常法として定着し,ハイブリダイゼーションから染色までを自動的に行う装置も市販されている.最近では植物試料を対象とした利用例も多数におよび,多様な材料・組織に対応して手技の改良が行われている.ここでは,筆者らが主にイネを対象として用いている方法を紹介したい.
  • 下田代 智英, 稲永 忍
    2006 年 75 巻 3 号 p. 405-408
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/07/06
    ジャーナル フリー
    植物の根は個体を支持し,生育に必要な養水分の吸収をするという重要な役割を果たしている.これらの機能は根系の構造や分布,さらには根系を形成している個々の根の生育と密接に関係していると考えられる.そのため,土壌中における根系形成や個々の根の生育過程を把握することを目的として,様々な根の成長の非破壊計測法が開発されてきた(Böhm 1979).実験室レベルでの土壌中の根の非破壊計測法としては,根箱法など透明な壁面に沿って生育する根を観察する方法があるが,この種の方法では観察する壁面と根との境界が特殊な環境となるため,インタクトな状態の根を観察しているとは限らない.また最近では,中性子ラジオグラフィー(中西1995),NMR(Bottommlyら1993)なども利用されるようになっており,土壌中の根をインタクトに近い状態で把握できるようになってきたが,これらの方法では経時的な観察や測定が必ずしも容易ではない.このように,土壌中の根の生育を非破壊的に継続して計測することは困難である.ここでは,根が伸長する際に発生する音響パルス(AEパルス)に注目した根端位置の非破壊計測法について紹介する.
  • 根本 圭介, 安井 秀
    2006 年 75 巻 3 号 p. 409-411
    発行日: 2006年
    公開日: 2009/07/06
    ジャーナル フリー
    この半世紀,「緑の革命」に代表される増産主体の栽培技術は,人口爆発に伴う食糧需要をなんとか支えてきた反面,農業生態系全体の調和・持続性との間に大きな摩擦を生んできた.さらなる人口増,工業化や砂漠化による耕地面積の減少,地球規模での異常気象などによってこのジレンマが拡大の一途を辿るなかで,作物の生産性や環境耐性の強化が強く求められている.従来,こうした生理生態的形質の制御を研究するにあたって最も重要な材料とされてきたのは,品種の間にみられる農業特性の違い,すなわち品種間差である.突然変異体とは異なり,品種と品種の間の違いには多数の遺伝変異が関与している.しかも,それらの遺伝変異は,その大半が後述の“自然変異”である関係上,人為突然変異とは異なり微動遺伝子として振舞うことが多い.このため,品種の間の遺伝的差異を個々の遺伝子座に分割して解析することはきわめて難しいことであったが,1980年代末における量的遺伝子座解析法の登場以来,この難問もかなりの程度まで克服されつつある.本稿ではこうしたアプローチを取り上げ,筆者らが主として扱ってきたイネを中心にその基礎を概説する.
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