日本作物学会紀事
Online ISSN : 1349-0990
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76 巻 , 2 号
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研究論文
栽培
  • 高橋 行継, 大島 賢一, 神沢 武男, 吉田 智彦
    76 巻 (2007) 2 号 p. 171-180
    公開日: 2007/06/06
    ジャーナル フリー
    群馬県の早植・普通期水稲栽培地帯において, 省力施肥を目的に水稲育苗箱全量基肥栽培の導入の可能性について検討した. 育苗は県下で普及しているプール育苗とし, 水稲育苗箱全量基肥専用肥料「苗箱まかせ」を供試し, 4か年にわたり圃場試験を実施した. その結果, 肥料の過剰溶出による徒長が発生しやすく, 育苗は20日間程度が限界であった. また, 本田移植後に肥料の濃度障害とみられる生育抑制が発生する場合もあったが, 湛水深を3 cm以上とすることで被害の軽減が可能であった. その後, これらの問題は肥料の改良によりほぼ解決した. 活着後の水稲生育は, 従来の肥効調節型肥料に特有な生育を示した. 初期生育はやや抑制され, 茎数は少ないものの, 有効茎歩合, 登熟歩合が高まり, 基肥+追肥の標準体系の34~40%減の施肥量で収量, 品質ともに同等以上となった. 以上の結果から, 群馬県の水稲早植・普通期栽培地帯において, 育苗箱全量基肥栽培技術の導入が可能であると結論づけられた.
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  • 渡邊 和洋, 新野 孝男, 村山 徹, 南條 正巳
    76 巻 (2007) 2 号 p. 181-188
    公開日: 2007/06/06
    ジャーナル フリー
    定植前リン酸苗施用の水稲への適用を図るため, まず15品種の水稲を供試し, 移植前の苗へのリン濃度= 0.25, 0.5, 1%のリン酸カリ水溶液の浸漬処理が, 移植後の初期生育及び無機養分吸収に及ぼす影響を調査した. 移植前リン酸苗施用により, 移植後4週間の乾物重, 葉面積, 分げつ数は, 無処理苗に比べいずれも増加する傾向が認められた. 特に, 移植後2週間では同化産物の葉身への分配が高まることで葉面積比(LAR)が, 2~4週間では純同化率(NAR)が高まった. また, 移植後2週間までに分げつ数の増加が認められることから, 移植前リン酸苗施用は活着を早めるものと考えられた. 移植2週間後の各部位のP含有率は, いずれの品種でも処理濃度が高いほど高まったが, 増大の程度には品種間差があり, インド型品種など熱帯から日本の西南暖地で育成された品種で高くなった. 移植4週間後には, 移植前リン酸苗施用区と慣行区のP含有率の差は小さくなったが, 乾物重が大きくなったため, 総P含有量は移植前リン酸苗施用で大きくなり, 移植前リン酸苗施用によるPの吸収促進効果は少なくとも4週間は持続するものと考えられた. この結果, 移植前リン酸苗施用により, 水稲でも移植後のPの吸収が促進されることにより, 初期生育が促進されることが明らかとなり, 本施肥法によるリン酸減肥栽培の可能性が示唆された.
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  • 稲村 達也, 吉川 茜, 松本 憲悟, 池永 幸子, 井上 博茂, 山末 祐二
    76 巻 (2007) 2 号 p. 189-197
    公開日: 2007/06/06
    ジャーナル フリー
    イネ‐コムギ‐ダイズを2年3作で作付ける田畑輪換田において, 2002年から2004年播コムギを対象に, コムギ収量の圃場内変動をもたらす要因を解析し, その要因の圃場内変動に応じて肥料や種子などの農業資材の投入量を変化させ圃場内の収量変動を是正する可変量管理の可能性を検討した. 収量変動に対して穂数の寄与が1穂整粒数および千粒重に比較して高く, 収量を是正するには穂数を可変量管理の対象とするのが効率的と考えられた. そして播種量が苗立ち数を左右し, 苗立ち数に影響される小穂分化期窒素保有量そして茎数が穂数を左右すると共に, 播種時土壌含水比は出芽深度を左右することで穂数に強く影響していたと考えられた. これらの事から, 播種時土壌含水比の圃場内変動に応じて播種量を制御する可変量管理によって, 場所ごとの穂数を是正することで圃場の平均収量を是正し得るものと考えられた. この可変量管理は, 収量の圃場内変動のうち是正できる可能性を有する変動の42.7%を是正できると判断された.
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  • 濱谷 耕介, 矢橋 里美, 野々川 香織, 矢作 洋樹, 磯部 勝孝, 高橋 幹, 石井 龍一
    76 巻 (2007) 2 号 p. 198-203
    公開日: 2007/06/06
    ジャーナル フリー
    根粒超着生ダイズ品種, 作系4号は高い窒素固定能力を有するが, この特性を活かせば水田転換畑のような高地下水位条件になりやすいところでも収量の低下を軽減できるのではないかと考えられる. そこで本研究では作系4号とエンレイを用いて異なる生育段階に高地下水位処理を行い, 作系4号の収量形成, 特に開花・結実に注目して調査を行った. 高地下水位処理によって, 両品種とも子実重と莢数が花芽分化期前, 花芽分化期に処理した場合に低下し, さらに作系4号ではエンレイで高地下水位処理の影響が小さくなる開花始期以降の処理でも子実重と莢数が著しく減少した. また, エンレイでは開花盛期に処理を行っても莢数の低下は小さかったが, 作系4号ではこの時期に処理を行うと高次位花房の莢数減少と子実重の著しい低下を招いた. 以上のことから, 作系4号は開花盛期の高地下水位処理でも子実重の低下が著しかったが, これは主に高次位花房の落花・落莢が生じ, 莢数が減少することが主な原因であると言える. 以上, 本実験では, 作系4号は高地下水位条件での収量低下を軽減することはできなかった.
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  • 齊藤 邦行, 平田 和生, 柏木 揚子
    76 巻 (2007) 2 号 p. 204-211
    公開日: 2007/06/06
    ジャーナル フリー
    エンレイを供試し, 畦間80 cm(広畦区)・30 cm(狭畦区)の2水準, 栽植密度11.1本m-2(標準区)・22.2本m-2(密植区)の2水準で, 2001年と2002年に畑栽培を行い, 花房次位別に収量と収量構成要素を調査した. 両年ともに, 密植により主茎節数, 椏枝節数そして総節数が増加した. 狭畦(広株間)によりm2当たり分枝数, 分枝節数, 椏枝節数そして総節数が増加した. 主茎長は標準区に比べ密植区, 狭畦区に比べ広畦区で大きくなった. 茎重, 茎径, 茎断面積は密植区より標準区で, 広畦区より狭畦区で大きくなった. 子実収量は2002年に比べ2001年で著しく多く, 密植区>標準区, 狭畦区>広畦区となり, 特に2001年狭畦・密植区では668 g m-2と高かった. 子実収量の相違には2001年には莢数が, 2002年には莢数と百粒重の両者が関係していた. 密植区は主茎と椏枝, 狭畦区は分枝と椏枝の占める割合が高く, 日照の多かった2001年は特に椏枝の莢数の変動が収量と密接に関連した. 狭畦区では群落上層に葉面積が多く分布したにも拘わらず, 吸光係数が小さく, 良好な受光態勢を有していた. 広畦区では畦間と株元の日射量の違いが大きく, 狭畦区では群落内の日射量分布は均一であった. 狭畦栽培は広畦栽培に比べ密植したときの増収程度が大きく, これには狭畦区では株間が広く個体間競合が緩和され, 徒長抑制と分枝の発達が促進されたこと, また開花期以降群落上層の空間が有効利用され, 椏枝の発生と莢数の増加したことが関係すると推察された. 倒伏抵抗性の強化や初期の雑草防除が課題であると考えられた.
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  • 濱田 千裕, 釋 一郎, 澤田 恭彦, 小島 元
    76 巻 (2007) 2 号 p. 212-218
    公開日: 2007/06/06
    ジャーナル フリー
    愛知県における大規模なダイズ栽培の収量安定化を図るために, 著者らは, 梅雨期の過湿な条件でも高能率の播種が可能な不耕起播種機と, その栽培技術の開発を進めてきた. 本研究では, 不耕起播種栽培における冠水害の発生要因を調べるために, まず圃場実験を行い, 播種翌日に降雨があった場合にのみ, 出芽率が著しく低下し, 圃場面の高さが低く, 圃場内明きょからの距離が大きいほど出芽率が低下することを見いだした. 続いてポット実験によって, 播種当日の冠水では不耕起播種, 耕起播種法ともに出芽数が減少し, また, 不耕起播種の播種4日後, 耕起播種の播種3, 4, 5日後の冠水で苗立ち数が減少することを見いだした. また, ポリエチレングリコール (PEG)で浸透ポテンシャルを調整した溶液中で, 吸水に伴う種子の膨張力を測定したところ, PEG濃度が低いほど短時間に大きな膨張力を示した. さらに, 異なるPEG濃度の溶液中で予浸した種子の出芽はPEG濃度が低いほど劣った. これらから, 播種当日の冠水害は種子の急激な吸水が原因であることが確認された. また, 種子の出芽力を測定したところ, 播種後, 平均5日目に最大の出芽力を示した. この時期は冠水処理により苗立ちが劣った播種4日後(不耕起播種), 播種3, 4, 5日後 (耕起播種) と重なり, この時期の冠水害は下胚軸伸長期に酸素が不足するために発生すると考えられた. 以上から, 不耕起播種栽培の安定化には播種後5日間における冠水害の回避, 軽減が必須であると結論した.
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  • 濱田 千裕, 釋 一郎, 澤田 恭彦, 小島 元
    76 巻 (2007) 2 号 p. 219-225
    公開日: 2007/06/06
    ジャーナル フリー
    ダイズの不耕起播種栽培においては, 圃場面に前作に起因する凹凸が残るため, 播種後の降雨により冠水状態が発生しやすい. 播種直後から出芽までの冠水はダイズの発芽や初期生育を著しく阻害するため, 播種後5日間程度の冠水回避は栽培を成立させる前提条件である. そこで, 愛知県農業総合試験場式ダイズ不耕起播種機の播種様式を利用して, 圃場内明きょ, 弾丸暗きょ, 播種溝底に設けたスリットを連結した簡易排水システムを考案し, その排水性能が出芽苗立ちに及ぼす効果について検討した. その結果, 播種直後に多雨に遭遇した場合にも, 考案した簡易排水システムは的確に機能し種子近傍の滞水を速やかに排水して冠水害を回避できることが明らかとなった. しかし, 現場透水性が著しく小さく, 地下水位が慢性的に高い地域では簡易排水システムの効果は不十分であった. 以上により, 地下水位が高い不適地を避け, 簡易排水システムの施工を前提とすることで, ダイズの不耕起播種栽培は出芽が安定化し, 多雨条件における高能率作付け法として実用化が可能になる. これにより, 愛知県に展開するような大規模ダイズ栽培における適期内の播種が可能になり, 低収で年次による変動が大きい愛知県のダイズ収量を大幅に改善できると考えられた.
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品質・加工
  • 荻内 謙吾
    76 巻 (2007) 2 号 p. 226-231
    公開日: 2007/06/06
    ジャーナル フリー
    秋播性コムギ(品種「ナンブコムギ」, 「ゆきちから」)を根雪前に播種する冬期播種栽培が, アミログラム特性や製粉性, 60%粉特性, 製パン性, 製麺性等の加工品質に及ぼす影響について調査し, 秋播栽培したものと比較検討した. 試験区は二つの異なる栽培法として, 12月中旬~下旬播種の冬期播種栽培区(以下, 冬期区という)と10月上旬播種の秋播栽培区(以下, 秋播区という)を設置した. 冬期区と秋播区で, 子実の外観品質やアミログラム最高粘度に有意な差はみられなかった. 冬期区は秋播区よりも成熟期が 3~5日遅くなるものの, 多雨条件となる前の 7月上旬の収穫が可能であり, 熟期の遅れによる降雨の品質への影響を回避できた. 冬期区は秋播区に比べて千粒重が軽かったが, 容積重は秋播区と同等以上であり, 製粉特性や粉の色相, ファリノグラム特性値は両区で有意な差がみられなかった. また, 原粒の灰分含有率は冬期区が秋播区よりも低く, タンパク質含有率は統計的に有意ではないものの冬期区が秋播区と同等ないし高い傾向であった. 製パン特性やゆで麺特性は統計的な差は認められなかったが, 「ゆきちから」では冬期区のパン体積やパンの合計点が秋播区を上回った. 冬期区のタンパク質含有率の向上は, 冬期区の施肥レベルが秋播区に比べて高いことに起因し, それが製パン性の向上につながったものと考えられた. 以上のことから, 秋播性コムギの冬期播種栽培は, 慣行の秋播栽培と比較して生育相が大きく異なるものの, 子実の外観品質のみならず, アミログラム特性や製粉性, 製パン性, 製麺性といった加工品質も慣行の秋播栽培と同等以上を確保できると判断された.  
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  • 小川 敦史, 田口 悟, 川島 長治
    76 巻 (2007) 2 号 p. 232-237
    公開日: 2007/06/06
    ジャーナル フリー
    我が国において近年増加傾向にある腎臓病透析患者は, カリウムを体外に充分排出できないため, カリウムの摂取を制限されている. 本研究ではカリウムの施肥量を制限することで, 可食部の生育を維持しつつ, カリウム含有量の少ないホウレンソウの栽培方法を確立することを目的とした. ホウレンソウの栽培は水耕法を用いて行い, 「栽培期間を通して水耕液中のカリウム濃度を減らして栽培した処理区」と, 「栽培初期はカリウムを減らさず栽培し, 栽培期間の途中から水耕液中のカリウム濃度を減らした処理区」を設定した. カリウム添加量を減少させた各処理区において, 収穫時の可食部の新鮮重は対照区と比較して有意な差は認められなかった. 新鮮重あたりのカリウム含有量は, 栽培期間を通して水耕液中のカリウム濃度を減らして栽培した処理区で最大32%, 栽培期間の途中から水耕液中のカリウム濃度を減らした処理区で最大79%減少した. この結果, カリウム施肥量を制限することにより, ホウレンソウ可食部の生育を維持しつつ, 収穫時の体内のカリウム含有量を減少させることが可能であることが明らかになった. 特に, 栽培初期はカリウムを減らさずに育て, 途中からカリウムを与えない栽培方法によって効率よくカリウム含有量を減らせることが明らかになった. また, カリウムの減少を補うようにナトリウムおよびマグネシウム含有量が増加していた. これらはカリウムに代わり浸透圧調節を行ったと考えられた.
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品種・遺伝資源
  • 佐藤 弘一, 吉田 智彦
    76 巻 (2007) 2 号 p. 238-244
    公開日: 2007/06/06
    ジャーナル フリー
    福島県農業試験場で育成した系統および福島県で現在まで作付けされてきた水稲品種(比較品種)の家系分析を行った. 育成系統の最終の祖先品種と育成系統との近縁係数を計算したところ, 値が最も大きかったのは旭(朝日), 次に愛国, 大場(森田早生), 亀の尾, 器量好(選一, 神力), 上州, 京都新旭の順であった. 北部九州地域の材料と異なり, 育成系統は旭(朝日), 大場(森田早生), 亀の尾の遺伝的寄与が高かった. 旭(朝日)の遺伝的寄与が高かったことは農林21号を数多く母本とし利用し, 改良を進めてきたためと考えられた. また, 大場(森田早生), 亀の尾は東北地域で育成された品種であり, 北部九州, 東北南部といった地域性の違いが影響していると考えられた. 玄米品質について, 育成系統は対コシヒカリ, 対亀の尾の近縁係数と有意な負の相関関係にあり, 対旭(朝日)近縁係数と有意な正の相関関係が認められた. 食味について, 比較品種は対コシヒカリ, 対農林22号の近縁係数と有意な正の相関関係にあったが, 育成系統は有意な相関関係が認められなかった. 育成系統は対コシヒカリ近縁係数が高く, コシヒカリの改良後代を利用することによる食味の改善が進んだために有意な相関関係が認められなかったと考えられた. コシヒカリによる良食味化とは異なる新たな母本の探索が今後の良食品種育成に必要であると考えられた. このように近縁係数を検討することにより品種の遺伝的背景が明確になり, 食味, 玄米品質の改良など交配目標にあった交配母本の選定が合理的に進められると考えられる.
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  • 平山 正賢, 根本 博, 平澤 秀雄
    76 巻 (2007) 2 号 p. 245-252
    公開日: 2007/06/06
    ジャーナル フリー
    畑圃場で栽培した中生及び晩生の日本陸稲8品種と水稲1品種を用いて, 6年にわたり成熟期の根系の発達程度を調査し, 深根性が耐干性に及ぼす影響を明らかにすると共に, 中晩生品種群における深根性程度の基準品種を設定した. 根系の発達程度の観察には発掘法, モノリス法, コアサンプリング法の3種類の方法を用いた. 1994年~1996年は発掘法により土壌層位毎に根数と根の太さを達観で観察し, 根系の最深到達深度を計測した. 1996年はモノリス法により根を採取し, 層位毎に根長と根の乾物重を測定した. 1998年, 2001年, 2002年はコアサンプリング法により根を採取し, 層位毎に根の乾物重を測定した. 調査期間を通して, 耐干性程度の異なる中生・晩生熟期の日本陸稲品種では, 根系の発達程度に品種間差が認められた. 特に30 cmより深い層の根量は大きな品種間差が認められた. ゆめのはたもちなど耐干性が強い品種は30 cmより深い層の根量が安定して多いの対し, ミズハタモチなど耐干性が弱い品種は根量が少なかった. よって, 耐干性の強弱と深根性との間には明らかな関連があることが圃場条件で実証された. 今回の調査結果から, 中生・晩生熟期の日本陸稲品種における深根性の基準品種として, 深根性ゆめのはたもち, やや深根性陸稲農林糯26号, やや浅根性ミズハタモチを設定した. また, 根系の調査法として, コアサンプリング法による土壌深層の根量, モノリス法による土壌深層の根量及び発掘法により直接観察した根の深さとの間にはそれぞれ正の相関関係が認められ, コアサンプリング法が簡易かつ信頼性のある根系採取法として実用的であると考えられた.
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  • 前川 富也, 国分 牧衛
    76 巻 (2007) 2 号 p. 253-261
    公開日: 2007/06/06
    ジャーナル フリー
    根粒超着生ダイズ品種作系4号は, 窒素固定能と葉面積当りの光合成能が高いことから多収のポテンシャルを持つと期待されているが, 宮城県において慣行的に栽培した場合, 初期生育が劣ることがわかった. 単位面積当りの初期生育量の確保には, 単位面積当りの個体数で補完する意味で密植が有効と考えられるため, 標準区とその2倍の栽植密度の密植区を設けて栽培し, 親品種のエンレイおよび根粒非着生系統En1282と生育・収量を比較した. 試験1(2003年, 鳴子)では, 密植により, 乾物重と葉面積指数(LAI)は品種・系統にかかわらず有意に増加したが, 収量は作系4号でのみ有意な増加がみられた. 試験2(2004年, 仙台)では, 密植により, 作系4号の乾物重およびLAIは有意に増加したが, 収量は3品種・系統とも有意な増加はみられなかった. 供試した3品種・系統の収量は, 標準区と密植区のいずれも, エンレイ>作系4号>En1282の傾向がみられ, 開花期と子実肥大期の乾物重の差を反映していた. 節数, 莢数, 粒数および結実率などの収量構成要素について, エンレイと作系4号を比較すると, 主茎では両品種とも密植により増加が顕著であったが, 分枝ではエンレイのみで明瞭な増加がみられ, 作系4号では減少した. 以上のように, 作系4号に対する密植の効果は認められたが, 収量はエンレイを上回ることはなかった. 作系4号は, 密植した場合に分枝の成長が劣ることから, 多収化のためには主茎により大きく依存した栽培条件が必要と推測される.
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形態
  • 塩津 文隆, 劉 建, 豊田 正範, 楠谷 彰人
    76 巻 (2007) 2 号 p. 262-272
    公開日: 2007/06/06
    ジャーナル フリー
    穂首節間維管束の大きさと炭水化物の転流量が水稲の登熟に及ぼす影響について, 印度型および日印交雑型の多収性品種と日本型品種を供試して比較した. 籾全体の登熟歩合(R), 1次枝梗籾の登熟歩合(R1), 2次枝梗籾の登熟歩合(R2)の平均値は, ともに多収性品種の方が日本型品種よりも低かった. そこで, 出穂期から成熟期までの籾当たり炭水化物増加量(ΔC/N)および稈+葉鞘中の炭水化物減少量(T/N)と登熟歩合との関係を品種群別に検討したところ, 多収性品種ではT/NとR, R1およびR2との間に有意な正の相関関係が認められた. また, 多収性品種のT/Nは籾当たり大維管束面積(Vb/N)と有意な正の相関を示した. 一方, 日本型品種においては, これらの間に有意な相関関係は認められなかった. さらに枝梗別籾の登熟歩合に対する重回帰分析の結果, 多収性品種のR2にはVb/Nが強く寄与していることが判明した. これらより, 多収性品種ではVb/Nが大きい品種ほどT/Nが多くなり, とくにR2の上昇を通じて全体の登熟歩合の向上に貢献すると考えられた. しかし, 日本型品種における炭水化物の転流には維管束以外の要因も関与しているため, 維管束の大きさは登熟の良否に直接影響しないと推測された.
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作物生理・細胞工学
  • 渡邊 好昭, 三浦 重典, 湯川 智行, 竹中 重仁
    76 巻 (2007) 2 号 p. 273-278
    公開日: 2007/06/06
    ジャーナル フリー
    積雪地帯で大きな被害をもたらす褐色雪腐病に対するオオムギの拡大抵抗性に関して, 低温順化処理期間, 光条件及び低温順化後の温度条件の影響について検討した. 拡大抵抗性程度は, 完全に展開した第3葉に褐色雪腐病菌を接種し, 病斑長を測定して評価した. オオムギ品種ミノリムギをガラス室で3週間生育させ, 低温順化処理(2℃, 12時間日長)を行った後, 拡大抵抗性程度を測定した. 無処理区と比較して, 7日間の低温順化処理区において抵抗性程度が有意に増加した. 低温順化処理14日間でさらに抵抗性が増加したが, 28日間ではそれ以上の抵抗性の増加は認められなかった. 7日間の低温順化処理で抵抗性が増加するためには, 全7日間で明条件(12時間日長)が必要であったが, 光の強さ, 波長の影響は認められなかった. さらに, 7日間の低温順化処理で増加した抵抗性程度は, その後15℃, 暗黒条件に2週間おくことにより, 低温順化処理前と同等まで低下した. また, 7日間の低温順化処理後に0.5℃, 暗黒条件に4週間置くと低温順化処理前よりも抵抗性程度が低下した.
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収量予測・情報処理・環境
  • 神田 英司, 鳥越 洋一, 三輪 哲久, 小林 隆
    76 巻 (2007) 2 号 p. 279-287
    公開日: 2007/06/06
    ジャーナル フリー
    冷害気象時に被害を可能な限り早い時点で推定するため, 連続した短期間の発育ステージの冷却量に基づく障害不稔歩合推定モデルを作成した. 不稔歩合の推定には, 隣り合う偏回帰係数βの値は大きく異ならないという制限付きのノンパラメトリック回帰を用いた. 恒温深水処理における「あきたこまち」のポット試験の水温と不稔歩合の関係より偏回帰係数(水温パラメータ)を決定した. 水温パラメータを用いて他年度の「あきたこまち」を推定すると寄与率77.2%と比較的高い精度であった. また, 本手法では品種の耐冷性の違いを冷却量算出の基準温度(T0)の違いとすることで水温パラメータが他品種にも適用できる. このT0は「あきたこまち」20.5℃に対し,「ササニシキ」21.0℃,「ひとめぼれ」19.5℃であった. 2003年冷害における耐冷性の異なる品種が混在する東北6県の生育調査圃の気温と不稔歩合の関係による偏回帰係数(気温パラメータ)を決定した. 気温パラメータは, 現地圃場では推定精度が落ちるものの事前の被害診断には十分有効であった. 障害不稔歩合推定モデルをリアルタイムで実行すると被害の発生が予想される地点や地域の特定が容易になり, 現地調査を効率的に行うことができ, 被害実態の正確な把握に役立てることができる.
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  • 籾井 隆志, 井澤 敏彦
    76 巻 (2007) 2 号 p. 288-294
    公開日: 2007/06/06
    ジャーナル フリー
    愛知県農業総合試験場では, 1926年から水稲の四要素(窒素, りん酸, カリ, 石灰)と堆肥の連用試験および窒素, りん酸, カリ, 石灰各要素連年無施用の試験を行っている. 2002年までの77年間における試験の中で, 窒素, りん酸, カリ, 石灰の各要素欠除は収量へ負の効果を示し, 堆肥施用は収量増への効果を示した. このうち窒素およびりん酸欠除区の対四要素区収量比は77年間にわたって減少傾向が続くことが推察された. 逆に堆肥施用区の対四要素区収量比は増加傾向にあり, 堆肥施用効果が年次経過につれ増加していると考えられた. 無カリ, 無石灰区においても対四要素区収量比は年次を経るごとに増加傾向にあったが, その要因については明確にならなかった. また, 窒素, りん酸, カリ, 石灰の各要素欠除区, 及び堆肥750 kg, 堆肥2250 kg区と四要素区との収量差をそれぞれの各要素の施用効果, 無肥料区における収量を地力とし, これに経過年次を加えて, 各々を説明変数として用い, 収量を目的変数として, 重回帰分析を行ったところ, 無りん酸, 無カリ区では石灰施用が収量へ負の効果を示した. 無カリ区では, 石灰施用によりカリ欠乏が惹起していることが考えられ, また, 無りん酸区では, 石灰施用によってりん酸吸収条件が良くなったが土壌養分としてりん酸が吸収できるほど残存しておらず, 一方で, 施用されたカリとの競合が起き, 石灰施用が負の効果を示すものと考えられた. 無石灰区においてはカリ施用が収量へ負の効果を示した. また, 無石灰区では, カリ施用によりカルシウム欠乏が惹起していることが示唆された.
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  • 福井 邦明
    76 巻 (2007) 2 号 p. 295-300
    公開日: 2007/06/06
    ジャーナル フリー
    宮城, 福島, 茨城, 鹿児島各県における3品種, 一ノ瀬, 改良鼠返, しんいちのせの4カ年のクワ枝条伸長調査データを用いて, 気温, 日長, 最長枝条長を説明変数としたクワ枝条伸長生長予測モデルの広域適用性と予測精度の検証を行った. 枝条伸長速度の最大値を表すパラメータPRmaxを, 各県共通とした場合と各県独自とした場合とでは, 後者の方がモデルの推定精度が向上した. これは同一品種内でのPRmaxの値が, 福島県でのみ他県に比べて低くなったためであり, 福島県では他県に比べて水条件が悪かったのがその原因であると推測された. モデルによる推定値と実測値との誤差は, PRmaxを各県独自とした場合でどの品種とも約9 cmであり, また, 推定値は実測値の年次変動をよく表したものであった.
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研究・技術ノート
  • 石崎 和彦, 金田 智, 松井 崇晃
    76 巻 (2007) 2 号 p. 301-305
    公開日: 2007/06/06
    ジャーナル フリー
    糯米の多くは加工された後に流通することから, 加工適性が重要視される. 切り餅やあられの製造では, 餅つきから切断または包装までの時間短縮のため, 硬化性の優れた糯米, 即ち餅つき直後の生地を冷却したときに速やかに硬化する糯米が求められる. そこで, 水稲糯品種の栽培条件と加工適性の関係を明らかにする目的で, 穂肥窒素の施用と移植期及び品種の違いが餅生地の冷却後の硬さ(硬化度)に与える影響を調査した. その結果, 穂肥窒素の施用は硬化度に与える影響が小さなことが明らかであった. しかし, 穂肥窒素の施用と品種との間に交互作用が認められ, “わたぼうし”は窒素施用量の増加にともない硬化度が低下し, “こがねもち”は増大した. 一方, 移植期の早晩及び品種の違いによって硬化度に有意な差が認められ, それぞれの寄与率は6.4%及び81.0%であった. これに符合して, 移植期の15日の遅れにより硬化度が0.90 kg cm-2低下し, 品種間では“わたぼうし”が“こがねもち”よりも3.10 kg cm-2低い値を示し, 硬化度は品種の違いに大きく依存することが明らかであった. 以上のことから, 加工適性の優れた糯米を生産するためには, 品種の選択を最も重視し, さらに, 登熟気温が高まるように移植期を早めることが望ましい. また, 穂肥窒素の施用は品種によって反応が異なるものの, 移植期及び品種の違いに比べて硬化度に対して大きな影響を与えないことから, 食味を低下させない範囲内で多収を目指した栽培が可能と思われた.
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  • 重宗 明子, 笹原 英樹, 後藤 明俊, 三浦 清之, 吉田 智彦
    76 巻 (2007) 2 号 p. 306-310
    公開日: 2007/06/06
    ジャーナル フリー
    食味官能試験の精度を確認するために, 各食味評価項目(総合評価, 外観, 香り, うま味, 粘り, 硬さ)の識別性, 各パネル構成員の評価値と全体の評価値平均との相関と品種識別能力との関係, あきたこまちとコシヒカリの識別性について解析した. 5回の試験について各評価項目別に品種を要因とした分散分析の結果, 総合評価, 外観, うま味, 粘り, 硬さは全ての回で品種間の差が1%水準で有意であり, 品種間差の識別性が高かったが, 香りは他の項目に比べて品種間差の識別性が低かった. 外観, 香り, うま味, 粘りは総合評価との間には有意な正の相関がみられたが, 硬さと総合評価との間には有意でない負の相関がみられた. 重回帰分析の結果, 総合評価はうま味によって多くが説明された. 食味総合評価値が異なるコシヒカリ, あきたこまち, コチヒビキをサンプルとして含む3回の試験に参加した15名のパネル構成員について, これら3品種の総合評価値の分散分析のF値を検討すると, 15名のうち5名が5%水準で有意であった. また, 品種の識別性が高いパネル構成員の評価値は, 全体の平均値との相関が高かった. さらに10名のパネル構成員による5回の試験において, コシヒカリとあきたこまちの2品種の分散分析を行ったところ, 半数の5名のF値は5%水準以下で有意であった. これらの結果から, 当水稲品種育成地で行っている食味試験は, 十分な精度を有することが示された.
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  • 坂田 勲, 吉田 智彦
    76 巻 (2007) 2 号 p. 311-316
    公開日: 2007/06/06
    ジャーナル フリー
    高山市高根町留之原地区にある黒ボク土壌の圃場全面で, ホウレンソウの葉脈間がまだら状に黄化したため出荷できなくなった. 葉脈間黄化は程度の差はあるが, この地区ではしばしば起こる問題である. 原因を知るため, 同じ圃場内の葉脈間が黄化した株と, 対照として通常の緑色をした株, およびこれらの生育土壌を採取して分析した. 対照と比較して, 葉脈間が黄化した葉で最も含量が劣ったのはマンガンであり, 土壌についても同様であった. そこで葉脈間が黄化したホウレンソウに硫酸マンガン2 g L-1水溶液を葉面散布したところ, 4日後に黄化症状は消失した. また葉脈間黄化が発生した圃場における土壌の易還元性マンガンの含量は, 熔成リン肥を大量投入した同地区内の農家圃場, あるいは葉脈間黄化の発生したことのない他地区の圃場のそれよりも大幅に低かった. 一方, 易還元性マンガンの含量が30 mg kg-1以下で葉脈間黄化症状が起こりやすいことが報告されている砂質土とは異なり, 当地の黒ボク土壌においては60 mg kg-1程度でも同様の黄化が頻繁に起こる圃場がいくつかある. 以上から高山市高根町留之原地区におけるホウレンソウの葉脈間黄化の原因はマンガン欠乏であり, 欠乏症は, マンガンを強く吸着する黒ボク土壌の土性によって助長されていると考えられた.
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日本作物学会シンポジウム記事
連載ミニレビュー
  • 和田 富吉
    76 巻 (2007) 2 号 p. 339-341
    公開日: 2009/07/03
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    X線微小部分析電子顕微鏡で使用するエネルギー分散型分析法(EDX分析法)は,数ミクロン以下に絞り込んだ電子線を,透過型あるいは走査型電子顕微鏡内の超薄切片や組織表面の微小部に照射し,発生するK線,L線,M線などの特性X線から,測定部位に存在する無機構成元素を判定する.点分析法,線分析法,面分析法などがある.水平・Russ(1978),Morgan(1985),合志・佐藤(1989)などの図書に,その操作法が記述されている.本稿では,透過型電子顕微鏡で含リン顆粒すなわちフィチン顆粒を点分析した方法などを述べる.
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