日本作物学会紀事
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76 巻 , 3 号
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研究論文
栽培
  • 高橋 行継, 吉田 智彦
    2007 年 76 巻 3 号 p. 355-361
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/08/10
    ジャーナル フリー
    群馬県東毛地域の稲麦二毛作地帯では, 1993年から水稲品種としてゴロピカリが広く栽培されてきた. ゴロピカリは良食味品種ではあるが, 病害虫抵抗性や収量・外観品質面での問題点が現場で早くから指摘されており, 代替品種が要望されていた. そこで, 2000年に代替品種としてあさひの夢を東毛地域限定の形で普及に移した. あさひの夢はゴロピカリに対して病害虫抵抗性や収量性に優れるものの, やや晩生であるため当面の移植晩限を6月15日に設定した. しかし, 小麦跡二毛作地帯向けの代替品種としては, 6月25日まで移植晩限を延ばすことが可能であるかどうかが大きな課題であった. そこで, 当該地域における「あさひの夢」の小麦跡栽培の適応性について検討した. 2000年から2002年の3か年, 6月15日前後の移植を対照に晩植の作期移動試験を実施した. その結果, あさひの夢は6月25日前後の移植でも6月15日移植に対して収量や品質面で遜色はなく, 小麦跡地域でも栽培可能であることが明らかになった.
  • 高橋 行継, 窪田 裕一, 吉田 智彦
    2007 年 76 巻 3 号 p. 362-369
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/08/10
    ジャーナル フリー
    群馬県では2000年に水稲品種ゴロピカリの代替品種として「あさひの夢」を東毛地域限定の形で普及に移したが, 収穫適期に関する十分な検討がなされていなかった. そこで, 当地域における「あさひの夢」の収穫適期について検討した. 2001年~2003年の3か年, 早植と普通期の2作期を対象に試験を実施した. その結果, 早植は出穂期以降の積算気温で950℃, 帯緑色籾歩合13%, 普通期では同様に1000℃, 22%に達した時点で収量・品質が最も良好であった. また, 籾水分も概ねコンバイン収穫に適した25%まで低下しており, 収穫適期であることが明らかになった.
  • 高橋 行継, 吉田 智彦
    2007 年 76 巻 3 号 p. 370-378
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/08/10
    ジャーナル フリー
    群馬県の水稲育苗箱全量基肥施肥栽培を前提とした育苗法のうち, 熔成燐肥による覆土技術と育苗期間の延長について2005年から2か年検討した. 出芽は平置き出芽法, 育苗はプール育苗法によって実施した. 水稲育苗箱全量基肥専用肥料「苗箱まかせNK301-100」を供試し, 4月と5月に各1回播種(2006年は5月播種のみ)を実施した. 1箱当たり播種量は4月播種150g, 5月播種100g, 育苗期間は4月播種22日間, 5月播種30日間とした. 覆土に粒状培土, 国内産および中国産の砂状熔成燐肥, 国内産の球状熔成燐肥を使用した. その結果, 粒状培土は出芽, 苗の生育に問題なく, マット強度も十分であった. 砂状熔成燐肥は国内産, 中国産共に出芽時に生育障害が発生し, その後の苗の生育むらも目立った. しかし, 育苗完了時には生育むらはかなり回復し, マット強度も問題なかった. 生育は中国産がやや良好であった. 国内産の球状熔成燐肥は, 出芽時から生育障害が激しく発生し, その後の苗の生育むらも回復せず, マット強度も大きく低下するなど実用上問題があった. 熔成燐肥による覆土は, 砂状タイプの利用により育苗は可能であるが, 現場への普及技術として課題が多いことが明らかになった. 以上の結果から覆土に培土を使用することが望ましい. また, 育苗期間は30日までの延長は可能ではあるが, 慣行育苗と比較した場合に苗の徒長傾向が認められた. このため, 20~22日程度の育苗期間が健苗育成からみて無難であると結論づけた.
  • 森 静香, 柴田 康志, 小田 九ニ夫, 藤井 弘志, 安藤 豊
    2007 年 76 巻 3 号 p. 379-382
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/08/10
    ジャーナル フリー
    台風に伴う潮風害による水稲の被害程度には, これまで, 穂部に付着した塩化ナトリウム量を指標とした報告があり, 1穂当り塩化ナトリウム量が1mg以上になると被害が顕著に現れるとされている. 硝酸銀滴定や原子吸光光度, イオンクロマトグラフィーによる塩化ナトリウム量の定量は精度は高いが, 簡便性・迅速性に欠け, 設備の点からも現場における対応は難しい状況にある. そこで, 2004年の台風15号によって潮風を受けた水稲の穂部に付着した塩分量の測定に, 簡便な方法として土壌溶液中の塩類濃度の測定に用いられているEC計を利用する方法を試みた. その結果, 既知濃度の塩化ナトリウム溶液とEC測定値との関係から求めた水稲穂部の塩分量は, イオンクロマトグラフィーで定量した塩化ナトリウム量と近似しており, 穂に付着した塩分量をECによって推定することが可能であると考えられた. そして, ECから求めた水稲穂部の塩分量が多いほど籾の被害程度は大きく, 海岸線からの距離が近いというイオンクロマトグラフィーと同様の関係が示され, ECを利用した簡易診断によって潮風害程度・範囲の把握が可能であることがわかった.
  • 青木(中村) 恵美子, 伊藤 誠治, 森脇 丈治, 馬場 孝秀
    2007 年 76 巻 3 号 p. 383-393
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/08/10
    ジャーナル フリー
    雲形病の罹病性品種ミノリムギを用いて, 圃場における罹病葉の投入時期や散水の有無が, 発病程度, 収量関連形質, 精麦品質に与える影響を解析した. 出穂前の散水処理により病勢は進展した. また, 散水の有無にかかわらず, 積雪前に罹病葉を投入した区(冬投入区)では, 出穂4週間後に著しく発病し, 消雪後に罹病葉を投入した区(春投入区), 薬剤を散布した区(薬剤散布区), 罹病葉を投入せず, 薬剤防除も行わなかった区(対照区)と比較して, 発病程度が有意に高かった. 積雪前に罹病葉を投入することは遺伝資源や育成系統の雲形病抵抗性評価に有効であると推察された. 冬投入区の整粒重は他の試験区より有意に低く, 登熟期の発病程度の総和との間に有意な負の相関関係がみられた. 雲形病による収量低下の要因は, 粒の肥大が抑制され, 千粒重, 整粒歩合, リットル重が低くなったことによるものと推察され, 穂数は発病による影響を受けなかった. 精麦品質は発病程度が高くなると, 55%搗精時間が長く硝子率がやや高くなる傾向があったが, 年次間差が大きく, 55%搗精白度, 欠損粒割合, 硬度差, 粗蛋白含有率は発病による影響を全く受けなかった.
  • 臼木 一英, 山本 泰由, 田澤 純子
    2007 年 76 巻 3 号 p. 394-400
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/08/10
    ジャーナル フリー
    不耕起栽培ではトウモロコシへのアーバスキュラー菌根菌感染を促進する事が多い. しかし, 前作の異なる場合の不耕起栽培がアーバスキュラー菌根菌と作物との関係に及ぼす影響については知見が少ない. そこで耕起法および前作の冬作物の違いがトウモロコシへのアーバスキュラー菌根菌感染と生育・収量との関係に及ぼす影響について検討した. その結果, トウモロコシの生育は前年の夏作がアーバスキュラー菌根菌の非宿主作物であるソバの跡地では劣るが, ソバを栽培した後作に冬作として宿主作物のエンバクを栽培し, その跡にトウモロコシを不耕起で栽培することによってトウモロコシへのアーバスキュラー菌根菌感染率が向上するとともに生育も促進された. 特にトウモロコシの播種直前までエンバクを作付けることでアーバスキュラー菌根菌感染率の向上が顕著になった. これはトウモロコシ播種直前の宿主作物(エンバク)の栽培が重要な役割を担っていることを示しており, その要因の一つとしてアーバスキュラー菌根菌の外生菌糸ネットワークの保護が関与している可能性が考えられた. 以上のことから温暖地においてアーバスキュラー菌根菌の密度が減少した圃場では, 夏作のトウモロコシを不耕起栽培する際に播種前に宿主作物を作付けることで生育が改善される可能性が認められた.
  • 藤野 剛, 玉井 富士雄, 福山 正隆
    2007 年 76 巻 3 号 p. 401-409
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/08/10
    ジャーナル フリー
    リビングマルチ栽培において, 近年シロクローバ(Wc)が有効なマルチ植物として認められてきた. スイートコーン(Sc)栽培においてもWcリビングマルチの利用が検討され, 両者の競合を避けるためにSc生育中にWcの刈取りを行うことが提案されている. しかし, 実用性を考慮すると, Sc播種後のWcの刈取りは省力管理の必要性から避けたい作業であり, これに替わるWc抑圧法が必要である. また, 気象・土壌等の栽培環境の異なる地域でも, Wcリビングマルチ下のSc栽培を検討する必要がある. ここでは, 南関東地域の神奈川県において, Wcの秋播きと, Wc草勢を低下させる春播きとの比較を行った. さらに, 播種量の違いでの雑草抑制効果およびScとの競合関係を検討した. WcはSc播種前に一回のみ刈取りを行った. その結果, Wcは播種量に関係なく, 生育期間が長くなる秋播きで春播きよりも高い被度を保持した. 秋播きでは雑草抑制効果が顕著であり, Sc生存個体の雌穂は充実し, 品質は良好であった. 春播きでは夏雑草の侵入が見られ, Scの生育は低下した. Wcの秋播き, 春播きともにSc個体数の減少が見られたが, 秋播きでは単位面積当たりのSc生産量で慣行栽培と有意な差異は検出されなかった. 以上, 関東南部で中間刈取り無しの条件で秋播きWcリビングマルチ下のSc栽培を行うことは, 省力・無除草剤栽培として実用性が高く, 無農薬栽培への可能性が示唆された.
品質・加工
  • 大澤 実, 井上 直人
    2007 年 76 巻 3 号 p. 410-415
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/08/10
    ジャーナル フリー
    米デンプンのα-アミラーゼによる分解パターンを比較検討するために, アミロース含量の異なる水稲8品種系統を供試した. 分解パターンの解析は, Ørskov and McDonald(1979)の非線形回帰式を用いて行った. デンプンのα-アミラーゼによる分解パターンには品種間差異が認められ, それらはアミロース含量や難消化性デキストリン含量の違いに由来するものと考えられた. 主にアミロース含量は分解の全体量に, 難消化性デキストリン含量は分解速度に影響を与えていると考えられた. アミロース含量のタイプ別では, 糯や低アミロースタイプの品種は中アミロースや高アミロースタイプの品種よりも速やかに, かつ完全に分解される傾向が示された. 非線形回帰式への当てはめにより得られたパラメーターを用いて推定したグリセミック・インデックス(EGI)には, ラピッドビスコアナライザー(RVA)のブレークダウン(BD)との間に正の相関が認められた.
  • 中津 智史, 奥村 理, 山木 一史
    2007 年 76 巻 3 号 p. 416-422
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/08/10
    ジャーナル フリー
    道内の主要なコムギ8品種(秋まきコムギではホクシン, タイセツコムギ, ホロシリコムギ, キタノカオリ, きたもえとチホクコムギ, 春まきコムギでは春よ恋とハルユタカ)について, 主として麺帯の明るさ(L*)とゆで麺の硬さ(切断抵抗値)の面から, 中華麺への加工適性を評価するとともに, 市販の中華麺用粉と比較をおこなった. 麺帯のL*は品種間差が大きく, タンパク含有率の高い春まきコムギでは製麺後のL*の低下程度が大きく, タンパク含有率の低いホクシン, タイセツコムギ, ホロシリコムギ, きたもえとチホクコムギはL*の低下程度が小さかった. 一方, キタノカオリと市販中華麺用粉は春まきコムギと同程度のタンパク含有率にもかかわらずL*の低下程度が小さい特徴を有していた. 小麦粉の灰分含有率はL*と有意な負の相関が認められたが, アミロ値とL*との相関は判然としなかった. ゆで麺の抵抗値と小麦粉のタンパク含有率との間には高い正の相関が認められ, 春まきコムギとキタノカオリと市販中華麺用粉が高い抵抗値を示した. 道産コムギ品種の特徴として, チホクコムギ, タイセツコムギ, ホクシン, きたもえの秋まきコムギ5品種はL*が高いが抵抗値が低く, 逆に春よ恋やハルユタカの春まきコムギ2品種は麺の抵抗値が高いがL*が劣っていた. 供試した8品種の中で中華麺適性の最も高いと考えられたのはキタノカオリで, ゆで麺の抵抗値が最も高くL*も比較的高かった. 同一地域で収穫されたホクシンにおいて, タンパク含有率が高いほど麺帯のL*は低下したが, ゆで麺の抵抗値は高まった.
収量予測・情報処理・環境
  • 河津 俊作, 本間 香貴, 堀江 武, 白岩 立彦
    2007 年 76 巻 3 号 p. 423-432
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/08/10
    ジャーナル フリー
    近年わが国では夏期の気温が上昇傾向にある. こうした高温化傾向に向けた水稲生産の品種および耕種的な対応に資するために, 1964年から2003年までに生じた水稲栽培における気象変化を定量化し, それが水稲生産に及ぼした影響を解析した. この40年間で夏期の大気二酸化炭素濃度は45ppm上昇し, 最高気温は約0.8℃, 最低気温は約1.1℃上昇した. またこの期間に品種および作期の変化により関東以西で出穂盛期が1~2週間早期化したが, それにより出穂前の気温は低下し, 出穂後の気温と日射量は増加する傾向がみられた. これらによる水稲生産性の増加率は地方によって異なるが, 二酸化炭素の増加によるものが2.5%, 気候変化によるものが-6.0~3.1%, 早期化によるものが-0.5~6.8%であると見積もられた. このうち気候変化については, 関西以西において日射量の増加によるプラスの影響が, 気温の上昇により打ち消されていたことがわかった. 分散分析と重回帰式を用いた分析により, 出穂盛期後10から30日までの平均最低気温が1℃上昇することにともない一等米比率は平均で3.57%低下し, 同期間の日射量が1Mj増加することにより2.59%増加することが示された. 高温化傾向の対策としては作期の移動だけでは不十分であり, 高温耐性品種の育成や施肥法の改善など総合的な対策が収量や品質維持のために必要であると考えられた.
  • 大江 和泉, 上郷 玲子, 城 さやか, 倉橋 崇之, 齊藤 邦行, 黒田 俊郎
    2007 年 76 巻 3 号 p. 433-444
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/08/10
    ジャーナル フリー
    圃場条件下において播種から収穫までの長期間にわたる気温上昇処理がダイズの生育収量, 乾物生産におよぼす影響を温度勾配チャンバー(TGC)を用いて検討した. 実験は, ダイズ品種エンレイを用い, 2002年~2004年の3ヵ年にわたって行った. 試験区はチャンバー内に生じた温度勾配に沿って, 開口部から閉口部に向けて, E1, E2, E3, E4の4区を配置し, E1を対照区, E2~E4を高温区とした. E4の平均気温はE1に比べて2002年と2003年では1.0℃, 2004年は1.6℃上昇した. 最高気温はE1に比べてE4では2002年と2003年には2.0℃, 2004年は3.4℃上昇した. 2002年, 2003年のm2当り総節数は高温区で増加する傾向を示し, これには2002年では椏枝, 2003年では分枝節数の増加が関係した. 3ヵ年の開花期間は, E1に比べて2002年ではE2, E4がそれぞれ1日, 3日, 2004年ではE4が2日短くなった. 2002年, 2004年の個体当り総花蕾数は, E1に比べて高温区で18.7~31.0%減少し, これには両年を通して高次位花房の花蕾数減少が関係していた. 粒肥大終期の全乾物重は2002年, 2003年では高温区で大きく, E3が最大値をとりE4ではE3よりも小さくなった. 2004年の全乾物重は気温が上昇するほど小さくなり, E4で最も小さくなった. 最上位展開葉の個葉光合成速度の老化に伴う推移には区間で明確な差異は認められなかった. 3ヵ年のE1のm2当たり子実収量は2003年(518.0g)>2004年(424.6g)>2002年(303.4g)の順となり, 2003年で最も高くなった. 3ヵ年の子実収量は全乾物重とほぼ同様の傾向を示し, 中庸な年であった2002年および低温年であった2003年ではE3で最も高くなった. 高温年であった2004年の子実収量は, 気温が上昇するほど低くなり, E4で最低となった. 高温年における子実収量の低下には花蕾数, 莢数の減少が関係していた. 登熟期平均気温と子実収量の関係は年次によって異なり, 27~31℃の範囲では子実生産に有利に働くものの, これ以上の気温上昇は子実収量を制限する要因となると推察された.
研究・技術ノート
  • 吉永 悟志, 境谷 栄二, 吉田 宏, 山本 晶子, 若松 一幸, 菊池 栄一, 本間 昌直
    2007 年 76 巻 3 号 p. 445-449
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/08/10
    ジャーナル フリー
    水稲の湛水直播栽培では, 播種後の落水管理の普及による出芽・苗立ちの安定化にともない, 酸素発生剤(カルパー)の種子への被覆量を減量する事例が増加しつつある. 本報告では, 東北地域においてカルパー被覆量と苗立ちとの関係を播種後落水条件で比較した試験事例を収集, 解析し, 寒冷地の湛水直播栽培におけるカルパー減量が苗立ちに及ぼす影響について検討を行った. カルパー無被覆条件では, 播種後落水条件であってもカルパー被覆条件と比較して苗立ち率の変動幅が増大するとともに苗立ち率が顕著に低下した. 一方, カルパーの乾籾2倍重(標準条件)と乾籾1倍重(減量条件)被覆種子の苗立ちを比較すると, カルパー減量による苗立ち率の低下は供試データの平均値で約4%であり, カルパー減量の影響が小さいことが示唆された. しかしながら, 播種深度や出芽期気温の影響について検討した結果, 出芽期気温の低い条件ではカルパー減量による苗立ち率の低下が認められた. このため, 播種後の日平均気温が15°Cを下回るような低温の継続が予想される地域あるいは播種時期においては, 播種後落水を行う場合でもカルパー減量の判断は慎重に行う必要があると考えられた. また, カルパー減量を前提とする場合には, 標準被覆量で播種する場合よりも播種時期の気温条件に留意して播種日の設定を行う必要があるとともに, 低温条件での出芽促進技術の導入を図る重要性が高まることが示唆された.
  • 伊田 黎之輔
    2007 年 76 巻 3 号 p. 450-453
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/08/10
    ジャーナル フリー
    水稲粗玄米の粒厚分布の調査法は, 粗玄米約200 gを5分間振盪し, 各粒厚別の重量比率で示す方法が定法として適用されている. 本研究は粒厚分布調査の省力化を目的として, 登熟が良好であった品種コシヒカリおよび日本晴を用い, 粗玄米供試量(約200 g, 約100 g)と振盪時間(2分, 5分, 8分)との関係について, 2×3要因計画を3ブロック乱塊法配置により実験を行った. 供試したいずれの品種においても粗玄米供試量と振盪時間との間には交互作用は認められず, 各主効果が有意であった. 各要因の水準間の有意差について, ホルムの方法による多重比較を行った結果, 粗玄米約100gを供試し, 2分間振盪する組合せが従来の調査方法と同等な結果を示すことがわかった. 登熟が良好な条件下におけるこの方法は, 従来の方法に比べて供試粗玄米重量の削減, 振盪時間の短縮を図ることができ, 調査コスト低減を達成できる実用的な方法である. しかし, 登熟が不良な場合における粗玄米についての本調査法の適用性については明確にできなかった.
  • 赤木 功, 西原 基樹, 上田 重英, 横山 明敏, 浅野 陽樹, 佐伯 雄一
    2007 年 76 巻 3 号 p. 454-458
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/08/10
    ジャーナル フリー
    九州地方で育成された暖地向けダイズ14品種について, 2003年, 2004年および2005年の3ヶ年にわたり宮崎県で栽培し, これらのイソフラボン含量を調査した. 総イソフラボン含量は, 2003年が216~391 mg/100g DW, 2004年が87~314 mg/100g DW, 2005年が196~594 mg/100g DWの範囲にあった. 九州地方の基幹品種であるフクユタカの総イソフラボン含量は199 mg/100g DW(3ヶ年平均)で他の暖地向け品種と比較して低かった. 最も総イソフラボン含量が高かったアキセンゴクは435 mg/100g DW(3ヶ年平均)を含有しており, 西南暖地における高イソフラボン含有ダイズ品種として有望であると考えられた. 全アグリコンに占めるダイゼイン, ゲニステイン, グリシテインの含有率(アグリコン換算値)は, それぞれ23.8~44.4%, 41.2~71.5%, 4.7~18.9%の範囲にあった. ダイゼインとゲニステインの含有割合には大きな品種間差異があり, ダイゼインの含有率(D/DG率)は, 25.0~51.9%までの幅広い変異が認められた.
  • 原 貴洋, 手塚 隆久, 松井 勝弘
    2007 年 76 巻 3 号 p. 459-463
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/08/10
    ジャーナル フリー
    中国30点, 韓国30点, 日本7点の計67点のハトムギ遺伝資源を熊本県の九州沖縄農業研究センター圃場で5月下旬に播種, 栽培し, 成熟期に形態的形質を調査した. 韓国品種の形態的形質は日本品種に似ていたが, 韓国品種の着粒層は日本品種より狭く, 韓国品種には草丈が小さい品種が認められ, 機械収穫適性を改良する素材として期待できた. 中国品種は, 草丈, 主稈葉数, 稈径, 着粒層, 葉長, 葉幅で大きな値を示し, 飼料用ハトムギの改良に有望と考えられた. 各形質値の間の相関関係が高かったことから主成分分析を行った. 第1主成分は草丈, 稈径, 主稈葉数, 着粒層, 葉長, 葉幅の植物体の大きさを表す形質との相関が高かった. 第2主成分は着粒層との相関が高く, 植物体の形を表していると考えられ, 中国品種, 韓国品種は日本品種より分布域が広かった. 以上のことから, 韓国, 中国品種はともに, わが国ハトムギの草型の変異拡大に寄与すると考えられた.
  • 本間 香貴, 堀江 武, 白岩 立彦
    2007 年 76 巻 3 号 p. 464-467
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/08/10
    ジャーナル フリー
    気象庁が収録している世界気象資料について紹介した. この資料には気象観測値として気圧や気温, 降水量, 天気などが収められており, 日別統計値の場合そのデータポイントは1982年以降が世界各地約400地点, 1999年以降は約3000地点に及ぶ. しかしながら日射量や日照時間についてのデータが無いため, 資料の中に含まれる雲量と日平均水蒸気圧を用いて日射量を推定する方法について検討を行った. 日本における観測値を用いた場合, 日照時間を用いた日射量の推定がRMSE=2.2 Mj m-2 day-1であるのに対し, 雲量と水蒸気圧による推定はRMSE=4.1 Mj m-2 day-1であった. しかしながら積算日射量で比較すると, 雲量と水蒸気圧による推定は日照時間によるものに比べてそれほど劣っているわけではないことがわかった. モンスーンアジア各地における日射量の実測値との比較においても, 日本での推定精度とさほど変わらず, 世界気象資料の雲量と水蒸気圧を用いて, 一つの式により比較的安定した誤差範囲で温帯から熱帯までの日射量を推定できることがわかった. 従って, 目的によっては利用価値の高い資料であると思われた.
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