日本作物学会紀事
Online ISSN : 1349-0990
Print ISSN : 0011-1848
76 巻 , 4 号
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総 説
  • 廣津 直樹, 柏木 孝幸, 円 由香, 石丸 健
    2007 年 76 巻 4 号 p. 501-507
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/07
    ジャーナル フリー
    米生産の副産物である稲わらは, 生産コストが低く食糧生産との競合がないことから, 我が国におけるバイオエタノール資源として適している. イネにおいては草丈を高めることが, 稲わら(バイオマス)量の増加に向けた主要なターゲットとなる. 本総説では, 近年の遺伝生理学の進展により得られてきた新たな知見をもとに, 稲わらのバイオマス増産に向けた草丈研究の方向性をジベレリン, ショ糖リン酸合成酵素(SPS)および窒素による制御の観点から示す. 加えて草丈に関する量的形質遺伝子座(QTL)解析と準同質遺伝子系統(NIL)の集積によるバイオマス増産に向けた改良について論じる.
研究論文
栽培
  • 濱田 千裕, 中嶋 泰則, 林 元樹, 釋 一郎
    2007 年 76 巻 4 号 p. 508-518
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/07
    ジャーナル フリー
    水稲の不耕起乾田直播栽培は, 生産コストの低減と栽培の省力化に有効と期待されてきたが, 前作に起因する圃場の不陸や残渣のために, 出芽不良, 鳥害, 雑草防除, など実用化には多くの問題があることを著者らは指摘してきた. そこで著者らは, 生産を安定化することによってその技術の実用化を図るために, 愛知県安城市で, 転作に使用した水田を均平にするために慣行的に行われてきた, 冬季に代かきをして圃場を乾燥固結する整地方法(以下, 冬季代かき)を適用して不耕起乾田直播栽培を安定化しようとした. 本研究では, 農家圃場で農家, 関係機関と一体となって実証的に研究を進める現場解決型手法を適用して, 課題解決に当たった. まず, 冬季代かきの効果を明らかにするために, 大規模な農家圃場試験を行った. その結果, 冬季代かきは整地処理を行わない不耕起圃場(以下, 完全不耕起)に比較し, 出芽苗立ち率が向上すること, 鳥害の発生を顕著に抑制しうることを明らかにした. つぎに, 播種時の雑草生育量について, 冬季代かきと完全不耕起を比較調査し, 冬季代かきにより雑草量を有意に低減でき, 播種作業と雑草管理を容易にできることを明らかにした. さらに, 播種時の圃場の土壌硬度を調査し, 冬季代かきには完全不耕起と同等の地耐力があり, 降雨により播種作業が影響を受けない不耕起乾田直播の特長を具備できることを明らかにした. また, 1994~1999年の冬季代かきによる不耕起乾田直播栽培の農家圃場試験の出芽数及び収量を調査したところ, 出芽数は65~328本m-2, 収量は408~658g m-2に分布し, いずれも実用的な水準にあることを確認した. 以上から, 冬季代かきを播種前の整地法として取り入れることにより水稲の不耕起乾田直播栽培を飛躍的に安定化できると結論した.
  • 古畑 昌巳, 有馬 進
    2007 年 76 巻 4 号 p. 519-528
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/07
    ジャーナル フリー
    現在, 普及面積が増加している点播や条播などの湛水土中播種ではころび型倒伏よりなびき型倒伏あるいは挫折型倒伏が生じることが多く, これらの耐倒伏性には従来報告されてきた深根性だけではなく, 稈基部の物理的性質も寄与している可能性が考えられる. そこで, 国内外14の品種・系統を供試し, コンクリート枠水田を使って湛水直播栽培した水稲について, 根の伸長角度および稈基部の物理的性質と耐倒伏性との関係を検討した. その結果, 播種深度に関わらず深根性, 断面係数および葉鞘付挫折時モーメントと耐倒伏性の間には有意な相関関係が認められたが, 葉鞘付挫折時モーメントは深根性に比べて標準偏回帰係数および偏相関係数が大きく, 稈基部の物理的性質が深根性に比べて点播や条播などの湛水直播水稲の耐倒伏性により密接に関係していることが示唆された.
  • 古畑 昌巳, 有馬 進
    2007 年 76 巻 4 号 p. 529-539
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/07
    ジャーナル フリー
    出穂後日数の経過が湛水直播水稲の耐倒伏性と稈基部の物理的性質に及ぼす影響を14品種・系統で検討した. 出穂後2週間目に比べて5週間目では, 大半の供試品種・系統で押し倒し抵抗値は小さく, 倒伏指数は大きくなり, 一部の品種・系統ではなびき型倒伏が生じた. この要因として, 穂重/地上部重比が増加したことおよび稈基部の生葉鞘数の減少にともなって断面係数および葉鞘付挫折時モーメントが低下したことが考えられた. 多収系統である西海203号は葉鞘の老化が遅く, 出穂後5週間目においても断面係数および葉鞘付挫折時モーメントが大きく維持されていたため, 押し倒し抵抗値が大きく, 倒伏指数が小さいことから耐倒伏性に優れていることが明らかとなった.
  • 王 俊剛, 津田 誠, 平井 儀彦
    2007 年 76 巻 4 号 p. 540-547
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/07
    ジャーナル フリー
    中国北部では塩害地が広がりさらに水不足が起こるため, イネの収量は低い. このような地域の収量を改善するために, 塩土壌におけるイネの水ストレスに対する反応を解析した. 水稲品種アキヒカリを用い, NaCl(0, 5, 10, 15g/ポット)を混ぜた水田土壌を詰めた容量4リットルのポットで移植栽培した. 幼穂形成期に給水停止日数を変えることによって程度の異なる一時的な水ストレスを与える処理区と常時湛水する区を設け, 成熟期まで栽培した. 水ストレスの強さは, 水ストレスの期間と程度を考慮した指数である積算水ストレス(CWS)で示した. 出穂は塩によって遅延するとともに, 水ストレスによってさらに遅延した. 個体当り穂乾物重も塩土壌で低下するとともに, それぞれの土壌でCWSに比例して低下した. 水ストレス感受性(CWSの増加に対する穂乾物重の低下割合)は, 土壌の塩濃度が高いほど大となった. 植物体のNa含有率は塩土壌で増加したが, 水ストレスによる影響は小さかった. 水ストレス感受性は植物体のNa含有率に比例的に増加したことから, イネを塩土壌で栽培すると植物体のNa含有率が高まるとともに水ストレス感受性が大となることが分かった.
  • 島村 聡, 高橋 幹, 中村 卓司, 中山 則和, 山本 亮, 金栄 厚, 島田 信二
    2007 年 76 巻 4 号 p. 548-554
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/07
    ジャーナル フリー
    近年, 根粒超着生ダイズ品種作系4号(関東100号)はエンレイだけではなくタマホマレからも由来した育成品種であることが明らかにされた. 本研究では, 作系4号が有する根粒超着生形質が収量向上に貢献しうるのかを確認するために, エンレイおよびタマホマレとともに, その生産性を水田転換畑圃場で2年間比較し, 作系4号の収量改善効果について解析した. 作系4号の開花期, 成熟期および子実中窒素含有率はエンレイとタマホマレの間にあった. 2004年の収量を比較すると, 作系4号は不耕起狭畦密植・窒素増肥条件下で最高収量297kg/10aを示し, エンレイに対してほぼ同程度か高い傾向を示した. ところが, 不耕起狭畦密植区のタマホマレは標準施肥条件で368kg/10a, 窒素増肥条件で322kg/10aを示し, 作系4号の最高収量を大きく上回っていた. 一方, 2005年では, 播種時期の連続した降雨により播種が適期より1ヶ月程度遅れ, さらに茎疫病などの発生により栽植密度がやや減少して作系4号の能力が発揮できない状況下では, 作系4号の最高収量は233kg/10aで, エンレイ, タマホマレよりも明らかに低かった. また, 作系4号は開花期に地上部乾物重が200kg/10aを超えた場合には, その収量はエンレイを大きく優るとされるが, 本研究ではその現象を確認できなかった. 以上の結果より, 作系4号の収量は耕起狭畦密植・窒素増肥条件ではエンレイと同程度以上であるが, タマホマレよりは劣ることが明らかとなった. 従って, 作系4号が持つ根粒超着生形質による収量向上への貢献は困難であると判断された.
  • 宮崎 成生, 吉田 智彦
    2007 年 76 巻 4 号 p. 555-561
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/07
    ジャーナル フリー
    家畜ふんの農耕地での利用を促進するため, 生ふんを原料に成分を調整し成型した肥料を製造する方法を開発し, 肥料の性質および施用効果を明らかにした. 豚ぷんおよび牛ふんを加熱乾燥で水分を15%程度にし, 尿素, 熔リンおよび塩化カリを添加・混合後, 湿式押出造粒機でペレット状に成型した. さらに水分5%程度まで乾燥し家畜ふん肥料とした. 乾燥家畜ふんの成分および水分を基に化学肥料の添加量を算出, 計量し混入することにより, 目標の成分を含有する肥料が試作できた. ロットによる有効成分の変動は小さく, 安定して均質の肥料ができた. 本試作肥料の成分は窒素5%, リン酸5%, カリ5%程度であった. 樹脂袋に密封することにより変質なく長期保管できた. 家畜ふん肥料重は原料の生ふん重に対し1/3程度となった. 家畜ふん肥料に含有する重金属類の量は低く, 大腸菌群数は検出限界以下であった. 静置培養法(畑状態, 30°C)による家畜ふん肥料の窒素無機化率の時期的推移は, 市販の有機入りペレット肥料とほぼ同じ傾向を示した. ポットでのコマツナおよびホウレンソウ栽培では, 家畜ふん肥料の施用による発芽および生育障害がなく, 市販の有機入りペレット肥料と同等以上の収量があった.
品質・加工
  • 西村 実, 宮原 研三, 森田 竜平
    2007 年 76 巻 4 号 p. 562-568
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/07
    ジャーナル フリー
    低グルテリン, 26kDaグロブリン欠失等, 水稲の種子貯蔵タンパク質において種々の特性をもつ品種・系統を異なる施肥条件下で栽培し, 種子タンパク質組成の相対量, 総タンパク質量およびタンパク質組成の相対量の出穂後の集積過程に及ぼす施肥方法の影響を検討した. タンパク質組成の相対量に対して施肥条件の違いが影響を与えることは少なく, 施肥条件が変わっても相対量はほぼ一定であることが示された. これに対し, タンパク質組成の相対量の出穂後の集積過程を調べたところ, 多肥条件(基肥8, 追肥4 kg/10a)ではグルテリンの相対量の集積がやや抑制される傾向が示唆されたが, 概して施肥条件によってタンパク質成分の集積様式に対する影響は少ないと考えられた. 一方, 総タンパク質含有率では追肥の効果が特に大きく, 品種間差や元肥の効果は年次によっては有意とならない場合もあった.
  • 入来 規雄, 石井 現相, 桑原 達雄, 田引 正, 西尾 善太, 藤田 雅也, 石川 直幸, 関 昌子, 渡部 信義
    2007 年 76 巻 4 号 p. 569-575
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/07
    ジャーナル フリー
    アントシアニンを果皮に含むpurple pericarp品種と糊粉層に含むblue grain品種の全粒粉のアントシアニン含量には, 品種間差および栽培環境の影響が観察され, 全粒粉のアントシアニン含量とメタノール抽出溶液の抗酸化活性には正の相関が認められた. アントシアニンを含まない品種では, XYZ-dish法により評価した全粒粉の抗酸化活性の平均値は, 種皮色が赤粒品種のほうが白粒品種よりも有意に高かった. したがって, 種皮色も抗酸化活性に影響を及ぼすと考えられた. 種皮色等の遺伝的背景の影響を除いて種子のアントシアニンが抗酸化性に及ぼす影響を評価するため, blue grain品種のBlue Darkに春播コムギ品種ハルユタカ(赤粒品種)を戻し交雑した. BC7F4種子におけるメタノール抽出溶液の抗酸化活性および種子休眠性を評価したところ, 抗酸化活性はBlue Darkと同等であり, また, 種子休眠性がハルユタカに比べて高かった. したがって, blue grainの形質は, 種子の抗酸化活性を高めるとともに, 種子休眠性を向上させることが明らかとなった.
  • 中村 善行, 藏之内 利和, 石田 信昭, 熊谷 亨, 中谷 誠
    2007 年 76 巻 4 号 p. 576-585
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/07
    ジャーナル フリー
    サツマイモ蒸切干(干しいも)は伝統的なサツマイモ加工品で, 茨城県, 静岡県など東日本の一部地域では重要な地域特産品の一つとなっている. しかし近年, 安価な外国産品の輸入が増加し, 国内産地を維持するうえで品質向上が急務となっている. そこで, 蒸切干片の中央部が白色不透明化して硬くなり, 商品性が失われる重大な品質低下障害である中白の原因を究明するべく, 品種や栽培条件の違いに基づく障害の発生機作を検討した. 本障害は, 蒸切干用主力品種「タマユタカ」, でん粉原料用品種「ハイスターチ」などのでん粉含有率の比較的高い品種で発生しやすく, 低でん粉品種「沖縄100号」や低糊化温度品種「クイックスイート」などでは発生が少なかった. また, MRI画像解析などから, 供試したいずれの品種でも蒸煮塊根組織の中白部分は正常部分に比べて水分含量が低いことが判明した. 一方, 「タマユタカ」塊根の正常部分と中白発生予測部分との間にはでん粉含有率, 可溶性糖類含量および糖化酵素β-アミラーゼの活性に顕著な差異は認められなかったが, 「ハイスターチ」塊根の中白部分ではでん粉蓄積の不足した細胞群が観察された. さらに, 「タマユタカ」では, 塊根肥大期の土壌乾燥によって収穫した塊根の含水率が低下すると中白の発生が顕著になった. 以上の結果から, 中白障害の発生には塊根におけるでん粉の糊化不良や蓄積不足が関与しており, 「タマユタカ」においては, 土壌乾燥に伴う塊根の水分低下が蒸煮時のでん粉糊化不良を招き, 障害の発生が助長されると考えられる.
研究・技術ノート
  • 丹野 久, 相川 宗嚴, 山崎 信弘, 森脇 良三郎, 天野 高久
    2007 年 76 巻 4 号 p. 586-590
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/07
    ジャーナル フリー
    北海道において1980~1982年および1985年に, 湛水土壌中直播栽培の播種様式, すなわち散播区, 条間15cm, 20cm, 30cmの条播区, および点播区(畦間30cm×株間10cm)の苗立ち期(5葉期)の乾物重, 茎数, 精玄米収量および収量構成要素を比較した. 苗立ち期の個体当たり乾物重や分げつ期のm2当たり茎数, 最高茎数および穂数の値は, 散播区と条間15~20cmの条播区が大きく, 点播区が小さかった. そのため, m2当たり籾数は, 散播区と条間15~20cmの条播区で他の播種様式の区よりも多くなった. しかし, 散播区では屑米が多く, 精玄米収量は条間15~20cmの条播区が条間30cmの条播区対比で107~108%と最も多かった. 一方, 点播区は, 同対比96%とやや低収であった. 条播では条間が狭いほど耐倒伏性といもち病抵抗性が劣ることを考慮すると, 寒地における播種様式として条間20cmの条播が最良と考えられた.
  • 丹野 久, 田中 英彦, 古原 洋, 佐々木 亮, 三浦 周
    2007 年 76 巻 4 号 p. 591-599
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/07
    ジャーナル フリー
    寒地の北海道での落水出芽法による水稲の湛水土中直播(以下, 直播と記す)栽培において, 1999~2003年に, 早生品種の「ゆきまる」 および中生品種の「ほしのゆめ」 と「きらら397」 の3品種を供試して, 播種期と出穂期を, 19の市町村別に各品種, 延べ27~40ヵ所で調査した. それらをもとに, 北海道の移植作付け基準策定の方法により風速, 日照時間および水温の影響を加えた日最高気温と日最低気温から算出した日平均気温を用いて, 播種翌日から出穂期までの簡易有効積算気温を明らかにした. その簡易有効積算気温を用いて同5ヵ年の気象での出穂日を推定したところ, 実測値とほぼ一致した. 一方, 直播栽培の登熟日数については, 1997~2002年の4地域におけるほぼ同一の窒素施肥量での試験から, 移植栽培に比べて3.2~6.7日短かった. また, 直播栽培は一穂籾数が移植栽培の70%と少なく, 13~23%低収となった. 出穂後35日間の日平均積算気温と登熟日数には両栽培法とも直線関係があったが, 直播栽培の登熟日数は, 移植栽培よりも約6日短かった. 両栽培法間の登熟日数の差異が最小の品種で3日であったことから, 直播栽培の出穂晩限を, 移植栽培の栽培基準の出穂晩限の3日後とし, 各市町村において, 平年の気象から簡易有効積算気温を用いて推定した出穂期をもとに直播栽培の適否を判定した. その結果, 直播栽培の適地は中生品種では南部を中心とする一部にすぎなかったが, 早生品種では北部など気象条件の厳しい地帯を除いた主要な稲作地域が含まれた.
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