日本作物学会紀事
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Print ISSN : 0011-1848
78 巻 , 1 号
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総 説
  • 東 哲司, 笹山 大輔, 伊藤 一幸
    2009 年 78 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    浮稲は, 洪水環境で栽培可能な唯一の作物であり, それは主として深水状態で急速に節間を伸長させる能力に基づく. 環境ストレスに対するこの浮稲の適応機構は, 生態学や形態学, 遺伝学, 生理・生化学, 分子生物学などの様々な観点から研究がなされてきた. 本稿では, 浮稲節間の急速な伸長成長に関して, 植物ホルモンによる調節と細胞壁の構造変化を中心に調査してきた著者のグループの研究について主に紹介したい.
研究論文
栽培
  • 佐藤 三佳子, 五十嵐 俊成, 櫻井 道彦, 鈴木 和織, 柳原 哲司, 奥村 正敏
    2009 年 78 巻 1 号 p. 9-16
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    春まきコムギにおける開花期以降の尿素葉面散布が, 収量, 子実タンパク質含有率に与える効果と, その効果が栽培条件の違いによりどのような影響を受けるか検討した. 北海道北部地域3地点でパン用春まきコムギ「春よ恋」を様々な窒素施肥条件下で栽培し, 開花期以降に尿素葉面散布(1回につき窒素成分で0.92 g m-2, 計2.76 g m-2)を行った. その結果, 開花期以降3回(開花期, 開花期から7日目, 開花期から14日目)の尿素葉面散布は, 硫安土壌施用よりも安定的にタンパク質含有率を向上させる効果があり, 同時に千粒重と収量を増加させる傾向が認められた. ただし, 倒伏や生育途中での葉の黄化が発生した場合, 尿素葉面散布の効果は劣った. 尿素葉面散布区のタンパク質含有率(y)は, 無散布区のタンパク質含有率をx(%)とすると, y=0.790x+3.6(9.6<x<13.9, n=25, r=0.973, p<0.01)の回帰式で示された. すなわち, 無散布区のタンパク質含有率が高くなるような条件下では, 尿素葉面散布の効果は低減し, 逆に, タンパク質含有率が低くなるような条件下では, 効果が高まることが明らかとなった. タンパク質含有率は窒素施肥条件に影響されることから, 窒素施肥条件の多少により尿素葉面散布の効果は変動すると推測された.
  • 小林 和幸, 高橋 能彦, 福山 利範
    2009 年 78 巻 1 号 p. 17-26
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    新潟県が開発した巨大胚水稲品種「越車」の育苗における殺菌剤の施用, 加温出芽, プール育苗及び播種量について検討し, 機械移植による苗の植え付け精度を調査して, その実用性を評価した. 「越車」の種子発芽率は98%であったが, これを育苗床土中に播種したところ, その正常出芽率は67%に低下した. 育苗時における殺菌剤の施用及び濃度を検討したが, 「越車」の出芽率及び苗立ち率を向上させる効果は認められなかった. 出芽, 育苗方法及び播種量を検討した結果, 加温出芽の効果は小さかったが, プール育苗では「越車」の草丈や根長が増し, 苗マット強度も高まる効果が認められた. 「越車」において, 慣行育苗体系並の苗立ち数を確保するためには, 乾籾300g/箱以上の播種が必要であった. 乾籾300g/箱播種, 無加温出芽, プール育苗によって養成した「越車」の稚苗は, 「コシヒカリ」と同等の正常苗立ち数及び実用上十分な苗マット強度を有していた. この苗を機械移植し, 植え付け精度を調査した結果, 欠株率は9.3%に達し, 「コシヒカリ」の約4倍であった. 不出芽籾が植え付け部位に停滞し, 浮き苗の発生原因となっている可能性が考えられた. 今後, 欠株の発生率を減らす育苗技術についてのさらなる検討が必要と考えられた.
  • 浅木 直美, 上野 秀人
    2009 年 78 巻 1 号 p. 27-34
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    マメ科緑肥であるシロクローバをリビングマルチとして利用した水稲移植栽培において, 湛水開始時期の違いが田面水および土壌N濃度, 水稲生育および収量に与える影響を圃場試験とポット試験により検討した. 湛水開始時期として水稲の移植前10日, 移植後10日および30日の3水準を設けた(それぞれ緑肥標準区, 緑肥10日区, 緑肥30日区). 圃場試験の緑肥標準区, 緑肥10日区, 緑肥30日区の田面水アンモニア態N濃度のピークは, それぞれ湛水開始後15, 4, 10日目に見られたことから, 湛水処理が緑肥の分解を促進し, 緑肥由来Nの放出時期を制御できることを確認した. 圃場試験における緑肥30日区は緑肥標準区および10日区に比べ草丈が高い傾向を示した. また, ポット試験において茎数は緑肥標準区および10日区に比べ多かった. 圃場試験およびポット試験ともに, 収穫時の水稲根, 茎葉および穂の各乾物重は緑肥30日区で緑肥標準区および10日区より有意に高いか, もしくは高い傾向を示した. さらに圃場およびポット試験とも水稲収量は, 緑肥30日区において緑肥標準区および10日区に比べ高い傾向を示した. ポット試験の緑肥処理区の収穫時雑草量は, 緑肥無処理(化学肥料施肥)区に比べ有意に少なかった. これらの結果より, 湛水開始時期の遅延により水稲の生育収量が増加する傾向にあることが明らかとなった.
  • 後藤 英次, 熊谷 聡
    2009 年 78 巻 1 号 p. 35-42
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    近年, 北海道で水稲品種 「ななつぼし」 において他の主要北海道産米である 「きらら397」, 「ほしのゆめ」より, 胴切粒(くびれ米)が特異的に多く発生したことから, 人工気象室を用いたポット試験により胴切粒の発生予見と対応策について検討した. その結果, 胴切粒は登熟初期において平均気温19℃以下である極低温区(昼間20℃/夜間14℃)と低温区(昼間22℃/夜間16℃)で顕著に誘発された. 発生位置について見ると, 胴切粒(くびれ米)は2次分げつ>1次分げつ>主稈, 2次枝梗>1次枝梗の順に多く, 着粒位置による発生の多寡は低温により誘発された子実における縦伸長の増加に対する籾殻の大きさが制限要因と判断された. 低温感受性の高い時期は, 出穂期から10日間, 特に出穂3~4日後と推察された. 他方, 出穂前の日照不足は, 籾殻生育を抑制し, 胴切粒発生を助長した. また, 調製の篩目を大きくすると製品の胴切粒比率が低下し, 篩目2.0 mm以上の場合には玄米品質規格上問題となる胴切粒を概ね取り除けた. 以上の結果から, 「ななつぼし」を作付けする場合には、当年の出穂時期と気象経過からその発生を予見し, 集荷・調製において注意するように努めるべきと判断する.
  • 三浦 恒子, 金 和裕, 佐藤 馨, 柴田 智, 金田 吉弘
    2009 年 78 巻 1 号 p. 43-49
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    肥効調節型肥料を用いた育苗箱全量施肥は, 本田における基肥および追肥を省略できることから省力技術として, 秋田県内の県北内陸部を除く全地域において栽培面積が増加している. 本報では, 2002年から2004年に育苗箱全量施肥による水稲の生育および分げつ発生と品質・食味形質との関係を検討した. 育苗箱全量施肥(以下, 箱施肥区)は, 速効性肥料による基肥全層施肥と減数分裂期追肥の慣行施肥(以下, 慣行区)に比べて茎数は少なく推移したが有効茎歩合が高まり, 慣行区と同程度の穂数が得られた. 分げつ発生頻度は, 両区とも主茎と第5~7葉の基部から発生する1次分げつが高かった. しかし, 箱施肥区は慣行区に比べて第4葉の基部から発生する1次分げつと2次分げつの発生頻度が低かった. また, 6月下旬から7月下旬までの箱施肥区の葉色は慣行区に比べて高く維持され, 登熟期における出液速度は慣行区より優った. 箱施肥区における3カ年の平均収量は秋田県の目標収量である570 g m-2を確保し, 整粒歩合が高まり精玄米タンパク質含有率が低下した. 以上のことから, 育苗箱全量施肥では, 主茎と第5~7葉基部から発生する1次分げつを主体に穂数を確保できることから, 慣行並の収量を得た場合でも高い整粒歩合と低タンパク質含有率の精玄米を生産できることを実証した.
品質・加工
  • 丹野 久, 木下 雅文, 佐藤 毅
    2009 年 78 巻 1 号 p. 50-57
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    2000~2003年に北海道の6地域で, 各年に全域で236~295, 計1044点の水稲品種 「はくちょうもち」 のもち米品質と同13~28, 計86点の搗き餅の硬化性を調査した. さらに, 各地域の生育を調査し, 年次間と地域間の差異と変動要因を明らかにした. 年次別平均値には, 不稔歩合で5.7~42.3%, 玄米収量で270~514kg/10a, 品質では整粒歩合で74.2~88.4%, 玄米白度で21.8~26.3, 精米白度で44.6~52.7, 蛋白質含有率で8.4~9.8%, 硬化性で100~244gの大きな差異があった. 地域間差異は, 整粒歩合と蛋白質含有率で年次間差異とほぼ同じであったが, 玄米白度, 精米白度, 硬化性はそれぞれ22.7~24.4, 46.0~50.3, 124~173gであり年次間差異よりも小さかった. ただし, 気象が冷涼な地域では, 冷害年の不稔発生が多く減収程度が大きいため, 整粒歩合, 玄米白度, 白米白度, 蛋白質含有率の地域内変異が大きかった. また, 不稔歩合が低く整粒歩合が高いほど蛋白質含有率が低く, 蛋白質含有率が低く出穂後40日間の日平均積算気温が高いほど玄米白度と精米白度が高かった. さらに, 同積算気温が高いほど硬化性も高かった. このように, 北海道産もち米の硬化性は年次間差異が大きく, 2003~2004年の新潟県産 「こがねもち」 と佐賀県産 「ヒヨクモチ」 に比べいずれも低かった. 以上より, 良品質もち米の安定生産には, 不稔発生回避, 低蛋白質米生産, 生育促進が重要と考えられた. さらに, 硬化性は北海道内の地域間差異も小さくなく, 硬化性の高いもち米生産には作付け地域の限定が必要である.
  • 大平 陽一, 竹田 博之, 佐々木 良治
    2009 年 78 巻 1 号 p. 58-65
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    タンパク質変異米水稲品種の米粒内における種子貯蔵タンパク質の分布特性を明らかにするために, 搗精歩合の異なる米粒のタンパク質含有量を調査し, 米粒内の層別のタンパク質含有量と存在割合を算出した. タンパク質変異米水稲品種では, 一般食用水稲品種「ニホンマサリ」と同様に, 米粒の外層部である100~>80%層に総タンパク質の44~45%が存在した. 一方, 易消化性タンパク質は, いずれの品種も100~>80%層に44~48%が存在したが, 「ニホンマサリ」では90~>80%層に最も多く, タンパク質変異米水稲品種では100~>90%層に最も多かった. タンパク質変異米水稲品種において易消化性タンパク質が最外層に多く集積する傾向は, 低グルテリン米水稲品種より低グルテリン・26 kDaグロブリン欠失米水稲品種で顕著だった. 「ニホンマサリ」では, 主要な易消化性タンパク質である37-39 kDaグルテリンαと22-23 kDaグルテリンβが90~>80%層に多く存在しているのに対し, タンパク質変異米水稲品種では, 37-39 kDaグルテリンαや22-23 kDaグルテリンβの量が低下し, 相対的に易消化性タンパク質に占める割合が高くなった57 kDa超過タンパク質と57 kDaタンパク質が100~>90%層に最も多く存在していた. したがって, 易消化性タンパク質の分布における品種間差異は, これらのタンパク質画分の分布特性の差異を反映したことによると推察された. 易消化性タンパク質は, 80~>70%層を含む層よりも内層部ではより少ない割合でしか存在しなかったので, 玄米から易消化性タンパク質を効率的に低減するには, 80%程度の搗精歩合が望ましいと考えられた.
  • 五十嵐 俊成, 柳原 哲司, 神田 英毅, 川本 和信, 政木 一央
    2009 年 78 巻 1 号 p. 66-73
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    水稲育種におけるアミロース含有率の測定は, 一般にオートアナライザーを利用したヨード呈色法で単一波長 620 nmで行われている. 我々はヨウ素吸収曲線(波長400 nm~900 nm)を自動測定できるマルチチャンネル検出器を備えたオートアナライザーを開発した. この装置を用いて, アミロースの分子量が最大吸収波長(λmax)に及ぼす影響, 登熟温度が米粉のヨウ素吸収曲線および熱糊化性に及ぼす影響と簡易な老化性指標(コンシステンシー)の評価法を検討した. λmax はアミロースの分子量が約70000以上では, 約598 nmであった. λmax とアミロース濃度との間には正の相関が認められた. λmax は登熟温度が高いほど短く, うるち品種に比べて低アミロース変異(dull)系統では登熟温度による変動が大きかった. ヨウ素吸収曲線を Fr. I(400~600 nm)と Fr. II(600~900 nm)とに分割し, それぞれのピーク面積の比(Fr. I/II)を求めた. Fr. I/II(X)とコンシステンシー(Y)には Y =(29.7X-27.1)/(0.73X-0.72)の関係が良く適合(R2 = 0.799)し, Fr. I/IIで簡易に米粉の老化性が評価できることが明らかとなった.
  • 谷藤 健, 三好 智明, 鈴木 千賀, 田中 義則, 加藤 淳, 白井 滋久
    2009 年 78 巻 1 号 p. 74-82
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    北海道内全域で栽培されたダイズのイソフラボン含量を調査したところ, 同一品種でも栽培地によって含量は変動し, 登熟期間の平均気温(以下, 登熟気温)との間に有意な負の相関が認められた. また, 同一栽培地での明らかな品種間差も確認され, 「ゆきぴりか」および「音更大袖」の含量が最も高かった. ゆきぴりかは, 各適応地帯において標準品種(トヨコマチ)比1.3~1.5倍の高含量を示す一方, 栽培地間の変動係数は年次間変動を含めても標準品種より低かった. また, ゆきぴりかの高イソフラボンは, 登熟後半におけるダイズイン類の蓄積が一般品種より顕著であることに起因しており, ダイズイン類のゲニスチン類に対する比率(D/DG率)も高まっていたが, 品種間および交雑後代系統間にイソフラボン含量とD/DG率の有意な相関は認められず, これらは, 独立した遺伝形質であると推察された. 一方, D/DG率は同一品種でも栽培地によって変動し, イソフラボン含量と同様に登熟気温と有意な負の相関が見られたことから, イソフラボン蓄積を促進する条件は, D/DG率の決定にも何らかの影響を及ぼしていると考えられた.
品種・遺伝資源
  • 吉田 智彦, 白鳥 智美, Anas , Haryant Totok Agung Dwi
    2009 年 78 巻 1 号 p. 83-86
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    トウジンビエ (Pennisetum typhoideum Rich.) の子実収量を向上させるための集団選抜を短期間で行い, かつ広域適応性を付与するため, 選抜とその効果の評価を日本とインドネシアの2カ国で行った. 早生, 短稈, 長穂の3形質での選抜を日本のポット栽培で, その選抜効果の評価をインドネシアの畑で行ったところ, 緯度の異なる2カ国で栽培することにより農業形質についての選抜と評価を1年間で行うことが可能であった. なお, 遺伝的獲得量から推定した遺伝率は出穂・成熟日が0.36, 稈長が0.59, 穂長が0.41の値が得られ, これら形質で選抜の効果があることを示した. また, 穂長と出穂・成熟日の間の表現型相関は-0.38, 遺伝相関は-0.97, 穂長と稈長の間の表現型相関は0.24, 遺伝相関は0.73の値が得られ, 本集団では長穂個体は早生の, また短穂個体は短稈の傾向を示した.
収量予測・情報処理・環境
  • 森 静香, 柴田 康志, 藤井 弘志
    2009 年 78 巻 1 号 p. 87-91
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    水稲における潮風害は, 台風により飛散した海塩粒子が穂部に付着することによって起こり, 穂部への塩分付着量が多いほど精玄米重が低下することが報告されている. 生産現場の水稲が受けたような潮風害を人為的に再現するには根からの塩水等の吸収がなく, 地上部にのみ塩を付着させる条件をつくることが重要である. 潮風害を再現するには特に穂部および上位葉部に塩を付着させる必要があるが, 穂部への塩分付着量と収量および品質との関係については再現試験によって検討した事例は少ない. そこで, 2004年台風15号通過時と同様の糊熟期に海水を1株当たり0, 5, 10および15mL 散布することによって潮風害を再現し, 散布量と穂部への塩分付着量との関係, 被害程度, 収量および品質について2004年台風15号による潮風害の実際のデータと比較検討を行った. 海水散布量と1穂塩分量との関係をみると, 海水散布量が多いほど1穂当たり塩分量は多くなった. 再現試験および実害データともに, 1穂塩分量と減収率ならびに整粒歩合との関係はほぼ同様の傾向を示した. 以上より, 海水散布により, 穂部への塩分付着によっておこる潮風害の解析は可能であると考えられた.
研究・技術ノート
  • 吉田 智彦, Anas , 稲葉 輝
    2009 年 78 巻 1 号 p. 92-94
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    作物品種の家系分析をオンラインで行うことのできる家系分析Webを作成した. 本システムでは, 利用者は各自の交配両親データを用いて, 家系図作成, 家系図中の祖先数, 遡る世代数, 近交係数, 任意の2品種間の近縁係数を計算できる. イネ, コムギ, オオムギ, イチゴ, サツマイモ, ジャガイモの最近の品種の交配両親名データベースも同時に公開したので, それに各自の材料についてのデータを追加して利用可能である. 家系が複雑になった最近の品種についても分析可能であった. ただしあまりに複雑な計算は時間制限により実行できない場合があった. 最近のイネ品種は総祖先数が500~1000の場合があり, コシヒカリとの近縁度が高いが, 古い品種である農林1号や農林22号との近縁度も依然高かった. このように, 本Webを使うことで複雑になった品種の家系の複雑さや家系間の関係を数値化することができ, その値を用いて農業形質との関係をさらに解析することが可能である.
  • 渡邊 肇, 佐々木 倫太郎, 関口 道, 鈴木 和美, 三枝 正彦
    2009 年 78 巻 1 号 p. 95-99
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    速効性肥料を用いた耕起側条施肥栽培(以下, 標準栽培)と, 肥効調節型肥料(CAF), 品種の草型, 栽植密度などの栽培条件およびCAFを用いた不耕起移植栽培における欠株が, 水稲の生育と収量に及ぼす影響を比較, 検討した. ひとめぼれを供試した標準栽培では, 茎数は欠株率が高いほど少なく推移した. 収量は, 有意差はなかったが, 欠株率が高いほど減少する傾向がみられた. 欠株による減収を5%まで許容した際, 欠株率の許容限界は15%であった. また, 一株穂数と一穂籾数は, 有意差はなかったが, 欠株率の増加に伴い増加する傾向がみられた. 欠株の位置関係では, 同条に欠株(同条欠株)がある株の方が, 隣条に欠株(隣条欠株)がある株より生育量が大きく, 同条欠株の方が隣条欠株にくらべ生育の補償作用が強かった. CAFの施用, 穂数型品種であるササニシキの使用および疎植栽培では, 欠株率の増加に伴い, 収量は減少する傾向がみられた. 収量の相対値と欠株率との関係を検討した結果, 疎植条件とCAF施用条件では, 欠株の影響が小さかった. また, ササニシキの供試と不耕起移植条件では, 欠株の影響が大きかった. さらに, 5%減収にいたる欠株率を許容限界として, その欠株率を算出した結果, CAF施用条件で17%, 疎植条件で22%であった. 一方, ササニシキ供試条件で14%, 不耕起移植条件で12%であった. このように, 本研究では, 肥効調節型肥料の使用や栽植密度の減少は, 欠株の影響が小さく, 穂数型品種や不耕起栽培では, 欠株の影響が大きいことが示唆された.
連載ミニレビュー
  • 梅本 貴之
    2009 年 78 巻 1 号 p. 107-112
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    アミロペクチンの分子構造を分析する技術の進歩により, アミロペクチンの鎖長分布がコメの食味や餅の固まりやすさなど, 作物の食味や加工適性に関わる重要な特性であることが明確になった. デンプンの70~100%を占めるアミロペクチンの鎖長分布は, デンプン合成に携わる酵素の活性バランスや, 貯蔵器官内でデンプンが合成される時期の温度の影響を受けている. これまでアミロース含量がデンプン特性や穀類の食味, とくに「粘り」の指標値として用いられてきたが, アミロペクチン鎖長分布(以下, 「鎖長分布」と略す)の特徴もデンプン糊化温度や物性と強く結びついている. そのため育種においても鎖長分布の測定が注目され, アミロペクチンの多様性を発掘するための遺伝子資源のスクリーニング等に用いられるようになってきた.
     本稿では, 筆者が鎖長分布の解析に用いてきたHPAEC-PAD法とFACE法を中心に解析方法の紹介をすると共に, 鎖長分布の特徴とデンプン特性との関連, 鎖長分布に影響を及ぼす要因について解説する. また, 他の分析法や解析法との組み合わせについても触れたい. なお, 作物デンプンに共通する部分も多いが, ここでは筆者の主な研究対象であるイネ, コメを中心とした記載となることをご了承いただきたい.
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