日本作物学会紀事
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79 巻 , 1 号
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研究論文
栽培
  • 境垣内 岳雄, 寺島 義文, 寺内 方克, 杉本 明, 加藤 直樹, 松岡 誠
    2010 年 79 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/02/12
    ジャーナル フリー
    密植が種間交配で育成した飼料用サトウキビ品種KRFo93-1の新植での生育,収量および株出しでの萌芽,収量に及ぼす影響を検討した.栽植密度として製糖用サトウキビに準じた慣行区(63.6×103芽/ha)と1.5倍区(95.4×103芽/ha)や2倍区(127.2×103芽/ha)の密植区を設け,2007年と2008年に鹿児島県西之表市の農家圃場で試験を実施した.茎数は各区とも植付け後63日目(2007年),75日目(2008年)に最大となり,その後は減少した.茎数は生育期間を通して密植区で多くなったが,2007年より2008年で密植による茎数の増加効果が明瞭であった.この要因として分げつ旺盛期の日射量の違いが推察された.仮茎長は植付け後88日目(2007年), 102日目(2008年)まで密植区で有意に大きかったが,その後は処理間の差が小さくなった.密植区では1株茎数が少なかったため,仮茎長が大きくなったと考えられた.生育初期の被覆度は密植区で大きかった.植付け後177日目(2007年),160日目(2008年)に収量調査を実施したが,2年間の平均値では密植区で生草収量,乾物収量とも高かった(2倍区では慣行区よりそれぞれ15%,21%増収).また,植付け後88日目(2007年),102日目(2008年)までは密植の効果が明瞭であることから,より短い栽培期間では密植による増収効果が大きいと考えられる.密植区では株出しでの萌芽茎数,生草収量,乾物収量とも慣行区を上まわった.
  • 小林 徹也, 宮崎 彰, 松澤 篤史, 黒木 美一, 島村 智子, 吉田 徹志, 山本 由徳
    2010 年 79 巻 1 号 p. 10-15
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/02/12
    ジャーナル フリー
    ウコンおよびハルウコンの根茎におけるクルクミンの蓄積経過を調査した.ウコンにおいてクルクミン含有率は種イモで最も高く,次に2次分岐根茎,1次分岐根茎,主根茎,3次分岐根茎であり,地上部および根にはほとんど含まれていなかった.ウコンおよびハルウコンを5月に植付けると,種イモの乾物重は7月にかけて減少し,1次分岐根茎重は9月から11月にかけて急激に増加した.特にハルウコンでは9月から10月の生育中期に,ウコンでは生育中期(2006年)または10月から11月の生育後期(2007年)に根茎生長が最も盛んであった.ウコンにおいて種イモのクルクミン含有率は乾物重の減少に伴い増加し,1次分岐根茎より高濃度となった.1次分岐根茎のクルクミン含有率は9月から10月の根茎形成直後に増加したが,10月から11月の根茎肥大期にほとんど増加しないかやや減少した.一方,ハルウコンのクルクミン含有率は種イモにおいて5月から11月まで緩やかに増加したが,1次分岐根茎において9月から10月の根茎形成直後に有意に減少した.このようなクルクミン含有率の減少の結果,成熟期のクルクミン含有量(含有率×乾物重)はウコンに比べハルウコンで有意に低くなった.株当たりのクルクミン含有量は根茎収量の増加に伴い増加し,クルクミン含有量の増加のためには根茎収量の増加が重要であることが示唆された.貯蔵期間中のクルクミン含有率はウコンおよびハルウコンともほとんど変化しなかった.
  • 丹野 久
    2010 年 79 巻 1 号 p. 16-25
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/02/12
    ジャーナル フリー
    1991~2006年の16年間に北海道の15地域で,年次平均で42~645地点の水稲品種「きらら397」の精米の蛋白質含有率とアミロース含有率を調査し,各地域の2~3市町村での生育調査結果をまじえ,年次間と地域間の差異およびその発生要因を検討した.年次間と地域間には,それぞれ出穂期で7月29日~8月16日,7月29日~8月9日,不稔歩合で5.0~61.0,8.9~21.5%,千粒重で21.1~23.5,22.0~23.3g,玄米収量で205~576,398~593kg/10a,蛋白質含有率で7.2~8.6,7.2~8.2%,アミロース含有率で18.3~22.2,19.8~21.2%の差異が認められた.全形質とも年次間差異は地域間差異より大きく,変動係数の比で1.4~3.2倍であった.年次間では,出穂期が早く,障害型冷害危険期の平均気温が高く,不稔歩合が低いこと,千粒重が大きく多収であることなどにより,蛋白質含有率が低下した.また,出穂後40日間の日平均積算気温が,年次間,年次と地域込みで843~849℃において蛋白質含有率が最も低かった.しかし,地域間ではそれら生育特性と一定の関係は認められず,泥炭土の比率が低いこと,また分げつ期に当たる6月の平均風速が小さいことなどにより蛋白質含有率が低下した.一方,アミロース含有率は,年次間,地域間とも出穂後40日間の日平均積算気温が高いこと,とくに年次間では出穂期前の平均気温が高く出穂期が早いことにより低下した.本研究の結果,北海道における良食味米生産のための栽培指針の策定に有効な知見が得られた.
品質・加工
  • 和田 義春, 氏家 綾子, Nono Carsono, 吉田 智彦
    2010 年 79 巻 1 号 p. 26-28
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/02/12
    ジャーナル フリー
    我々は先にコムギのグルテニン遺伝子Glu-1Dx5を遺伝子銃法でインドネシアのイネ品種Fatmawatiに導入し,導入植物の玄米胚乳中でGlu-1Dx5遺伝子の発現を確認した.本報告では,コムギグルテニン遺伝子導入イネのT2世代から約100gの玄米を用いて全粒粉パンを作成し,導入遺伝子が製パン特性に及ぼす影響を調査した.コムギグルテニン遺伝子導入イネの全粒粉,グルテニン遺伝子導入イネの全粒粉にグリアジンを加えたもの,対照としてコシヒカリの全粒粉,コシヒカリの全粒粉にグルテンを加えたもの,コムギ農林61号の玄麦全粒粉および市販のコムギ強力粉の6種類を原料として,同一の焼成条件の下で玄米パンを作成し比較した.Glu-1Dx5遺伝子導入イネから作成したパンは,市販の強力粉には及ばないもののコムギ農林61号やコシヒカリにグルテンを添加したものとほぼ同程度の外観を示したので,コムギグルテニンGlu-1Dx5遺伝子導入イネは,非組換えイネより製パン特性が向上したと判断された.本実験の範囲内ではコムギグルテニン遺伝子導入イネの全粒粉にグリアジンを加えたものと加えないものとでパンの外観に明らかな違いは見られなかった.以上のことから,イネにコムギグルテニン遺伝子Glu-1Dx5を導入することで米粉の製パン特性を改善できる可能性が示された.
品種・遺伝資源
  • 五月女 敏範, 河田 尚之, 加藤 常夫, 関和 孝博, 西川 尚志, 夏秋 知英, 木村 晃司, 前岡 庸介, 長嶺 敬, 小林 俊一, ...
    2010 年 79 巻 1 号 p. 29-36
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/02/12
    ジャーナル フリー
    ビールオオムギ初のオオムギ縞萎縮ウイルス(BaYMV)I,II,III型抵抗性新品種スカイゴールデンの普及にあたり,栃木県におけるBaYMV系統の発生を調査した.その結果,栃木県南地域ではIII型が常発化しており,県中北地域ではI型が発生していることから,これまで普及していた品種では不十分なことが明らかとなった.加えて,栃木県大田原市で既知のI,II,III型と病原性が異なり,BaYMV抵抗性遺伝子rym3を犯す大田原系統を見出した.この大田原系統と,同様にI,II,III型と病原性が異なり未同定であった山口系統について,罹病する品種の差異(病原性)および塩基やアミノ酸配列の相同性や系統樹による分子系統解析を用いて同定を試みた.その結果,それぞれI,II,III型と異なる系統で,大田原系統はIV型,山口系統はV型と判定された.IV型とV型の判別は,早木曽2号または浦項皮麦3と三月を判別品種として用いることにより可能である.また,スカイゴールデン,木石港3は,BaYMV I~V型のいずれにも抵抗性を示し,抵抗性育種に有効である.今後,ビールオオムギ品種育成において,BaYMV抵抗性遺伝子rym1rym3rym5の集積が重要と考えられる.
  • 小林 俊一, 五月 女敏範, 大関 美香
    2010 年 79 巻 1 号 p. 37-43
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/02/12
    ジャーナル フリー
    公的機関と民間機関で育成された二条オオムギ品種・系統について世代数と祖先数等に基づく家系分析を行った.オオムギ縞萎縮病抵抗性遺伝子を導入した時期には,総祖先数が増加した.しかし,水稲における同様の家系分析の結果と比較すると重複する品種を除いた祖先数が少なく,二条オオムギの遺伝的多様性は小さいと推察された.遺伝的に遠縁なオオムギ縞萎縮病抵抗性遺伝子を導入した品種・系統の祖先数は多かった.家系分析で得られた近縁係数を基にクラスター分析し,デンドログラムを作成した結果,古い時代に育成された品種・系統は1つのクラスターに含まれ,そのクラスター内で育成地毎の分類が可能であったが,近年育成の品種・系統は異なるクラスターに分類できなかった.キリンビール社育成の品種・系統は2つのクラスターに集中した.今後,遺伝的な多様性を維持しつつオオムギの品種育成をするには単独の育成地に止まらず,複数の育成地の品種・系統について家系分析を実施しながら交配計画を立てることが望ましいと考えられた.また,クラスター分析の結果から,各育成地とも遺伝的多様性が限定されていると考えられる.現在求められている温暖化による環境適応性や高付加価値を持つ品種を育成するためには,オオムギ研究で実績のある研究機関との連携や醸造用二条オオムギ特有の育成系統合同比較試験制度を有効に活用しつつ,効率的に新たな遺伝変異の導入を図るべきであると考える.
  • 辺 嘉賓, 守屋 明洋, 諸隈 正裕, 豊田 正範, 楠谷 彰人
    2010 年 79 巻 1 号 p. 44-52
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/02/12
    ジャーナル フリー
    水稲の中国産品種(津籾308,津星2号)と日本産品種(コシヒカリ,ヒノヒカリ)を供試し,除草剤および化成肥料を施用する慣行区(K区)とこれらを使用せず米糠を散布する有機区(U区)における根系特性を比較した.1次根数および総根量(総根長,総根重,総根表面積)はK区の方がU区よりも大きかったが,総根量/根数から求めた平均根量は,いずれもU区の方が大きかった.比根重(総根重/総根長)と根直径はU区の方が小さかったが,根比重には明確な差はみられなかった.U区の根は土壌表面から5cmまでの層に分布する根長の割合が高く,また,土層が深くなるに従って層別根長割合が急激に低下するため,根の深さ指数はK区よりも小さくなった.これらより,U区では多くの細くて長い分枝根が浅く分布していると考えられた.出液速度/株は,ヒノヒカリを除くとU区で小さかったが,出液速度/根数は,コシヒカリ以外はU区の方が大きかった.出液速度/根表面積のU区とK区の差は小さかった.いずれの品種においても,U区の比根重の低さと平均根表面積の大きさおよび出液速度/根数の高さはよく対応していた.したがって,U区は細い分枝根が長く伸びることで1本の根の表面積,すなわち吸水面積が大きくなり,根1本当たりの吸水量が多くなったと推測される.しかし,U区は根数が少ないために出液速度/根数の大きさが出液速度/株に結びついていなかった.
作物生理・細胞工学
  • 平井 儀彦, 沼 健太郎, 中井 清裕, 津田 誠
    2010 年 79 巻 1 号 p. 53-61
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/02/12
    ジャーナル フリー
    登熟期の暗呼吸による炭水化物消費の抑制は収量の向上に貢献すると考えられる.登熟期に茎葉部の貯蔵炭水化物の再転流が少ない品種や,穂の乾物増加速度に対して暗呼吸速度が低い品種では,暗呼吸による炭水化物の消費が小さいと考えられる.そこで,穂重増加に対する茎葉部重減少の割合(ΔS/ΔE)を炭水化物の再転流の指標とし, 2000年には,ΔS/ΔEが異なるイネ4品種,2003年には2品種を用い,ΔS/ΔEの品種間差異が茎葉部の暗呼吸の効率に及ぼす影響,ならびに穂の乾物増加速度に対する穂の暗呼吸速度の品種間差異について検討した.両年とも南京11号はΔS/ΔEが高く,再転流の大きい品種であった.茎葉部の暗呼吸速度と炭水化物の転流速度との関係は,両年とも同一直線で回帰され,茎葉部の暗呼吸速度は,ΔS/ΔEに関わらず,炭水化物の転流速度に比例して増加した.一方,穂の暗呼吸速度は,同一品種では,乾物増加速度に比例して増加したが,同じ乾物増加速度で品種間を比較すると,南京11号に比べて台農67号で低かった.以上より,炭水化物の再転流の品種間差は,転流に関わる茎葉部暗呼吸の効率に影響しないこと,さらに,穂の乾物増加に関わる暗呼吸の効率は品種間で大きく異なることが明らかになった.
収量予測・情報処理・環境
  • 箕田 豊尚
    2010 年 79 巻 1 号 p. 62-68
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/02/12
    ジャーナル フリー
    埼玉県の農業試験場の畑圃場において1951年から1996年まで45年にわたり同一条件で栽培されたコムギ「農林61号」の収量に対する生育期間の気象条件の影響を検討した.その結果,播種期から成熟期までの平均気温と収量は有意な負の相関関係にあり,相関係数は1%水準で有意であった.そこで,生育の全期間を出穂期までとそれ以降に分けて調べたところ,播種期から出穂期までの平均気温と収量は負の相関関係にあり,相関係数は5%水準で有意であったが,出穂期以降の平均気温は収量に影響していなかった.一方,播種期から成熟期までの降水量と収量には有意な相関はみられなかった.このうち,播種期から出穂期までの降水量と収量には有意な相関関係がみられなかったが,出穂期から成熟期までの降水量と収量は負の相関関係にあり,相関係数は5%水準で有意であった.このことから,埼玉県において,コムギ「農林61号」は,播種から出穂までの平均気温が上がるほど減収する傾向にあること及び出穂期以降の降水量が増加することにより減収する傾向にあることがわかった.
研究・技術ノート
  • 藤田 究, 多田 伸司, 三木 哲弘, 河田 和利, 村上 てるみ, 楠谷 彰人, 河野 謙司, 中井 昌憲, 吉本 康
    2010 年 79 巻 1 号 p. 69-73
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/02/12
    ジャーナル フリー
    水稲品種さぬきよいまいは香川県酒造協同組合,香川県農業協同組合,香川大学農学部および香川県の産学官の連携により育成され,2009年に品種登録された.さぬきよいまいはオオセトと山田錦を交配して育成した品種で,オオセトと比較して穂数が多く,多収,千粒重が重い,タンパク質含有率が低い等の特徴がある.酒造原料米としては,おおむねオオセトと山田錦の中間的な性質を持ち,清酒の官能評価はオオセト,山田錦より高く,香りが良く,すっきりとしてまろやかな酒質であると評価された.このため,香川県の地酒用の酒造原料用品種として期待できる.
情 報
連載ミニレビュー
  • 田中 朋之
    2010 年 79 巻 1 号 p. 76-80
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/02/12
    ジャーナル フリー
    イネ,コムギ,トウモロコシなどのイネ科種子には10-12%,ダイズなどマメ科種子には20-40%のタンパク質が含まれるが,その多くを貯蔵タンパク質と呼ばれるタンパク質が占めている(Shewryら 2002).種子貯蔵タンパク質とは,登熟期の種子に組織特異的・時期特異的に大量に蓄積し,種子が発芽する際に必要な栄養素を貯蔵するタンパク質のことである(井出・藤原 2009).食料における穀物への依存度が高い発展途上国の人々にとって,種子貯蔵タンパク質は特に貴重なタンパク源であることから,その栄養性の改善は重要な課題である.また一部の種子貯蔵タンパク質は,優れた食品加工特性や生理機能性を有することから,それらを原材料として作られる食品の嗜好性や健康維持増進性が先進国において注目されている.一方,その遺伝子発現の特異性ゆえに,遺伝子発現調節機構(Furtadoら 2008)やタンパク質・mRNAの細胞内輸送・集積機構(Fujiら 2007,Wang ら 2008)に関する研究材料,あるいは医薬品等の有用組換えタンパク質を生産するための基盤(Takaiwaら 2007)としても研究が進められている.本稿では,このように穀物種子の品質に大きく影響を及ぼす貯蔵タンパク質に関して,著者がこれまで取り組んできたイネ種子の主要な貯蔵タンパク質であるグルテリンを例に,タンパク質の基礎的な分析方法について解説するとともに,タンパク質組成の変動をもたらす植物栄養生理に関する最近の知見を紹介する.
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