日本作物学会紀事
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80 巻 , 2 号
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総 説
  • 今井 勝
    80 巻 (2011) 2 号 p. 145-156
    公開日: 2011/04/28
    ジャーナル フリー
    食用カンナは南米のアンデス地域に起源し,紀元前2500年頃にはすでに利用されていた記録がある.大型の多年生単子葉類の草本で,育種的改良はほとんど受けていないと思われるが,世界各地の熱帯・亜熱帯において小規模に栽培されている.観賞用の花カンナとは異なり,地際にイモ(根茎)を多数形成してデンプンを蓄積する.食用カンナのデンプンの物理的・化学的性質に関する研究は進んできたが,用途には未開発の部分が多い.草高が3 m,LAIが12にも達する大きな茎葉部は,直接家畜の青刈り飼料となるが,サイレージとしての利用も可能である.大型で楕円形の葉を着生する茎は,根茎から生じて分枝はしない.野生型の植物は湿気のある林地の周縁部に見出され,栽培型も多湿の土壌を好み,旺盛に無機養分を吸収する.光合成の面からは,多様な光環境と温暖な気候に適応した,中庸な純光合成速度を有する陽生のC3植物である.生育中・後期の個体群は高い葉面積指数を有し,良好な個体群成長速度を維持することができ,キャッサバやジャガイモに匹敵するかまたはそれ以上の生産能力を有しているものと考えられる.しかしながら,この植物に関する植物学的および農学的観点からの研究はかなり限られている.本総説では,多くの可能性を秘めた食用カンナの来歴,形態形成に関わる特徴,光合成,乾物およびデンプン生産能力,利用の側面等について包括的な紹介を行った.
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研究論文
栽培
  • 佐藤 徹, 東 聡志, 市川 岳史
    80 巻 (2011) 2 号 p. 157-164
    公開日: 2011/04/28
    ジャーナル フリー
    北陸地域における水稲鉄コーティング湛水直播栽培の出芽・苗立ちに及ぼす鉄コーティング量,播種深および播種後の水管理の影響を調べるため,現地試験,場内試験およびバット試験を実施した.現地試験および場内試験の結果,播種後の気温と水管理が出芽・苗立ちに影響することが示され,鉄コーティング量の影響は判然としなかった.また,場内試験において,鉄コーティング量を乾籾の0.25倍と0.5倍,播種後の水管理を落水,湿潤,湛水に変え,過酸化カルシウムコーティング種子を比較として専用条播機で播種したところ,苗立ち率は鉄0.5倍種子より鉄0.25倍種子および過酸化カルシウムコーティング種子が,また,水管理では湛水区より落水区および湿潤区が高かった.さらに,播種深を表面播種と土中播種に変えた場合には,鉄コーティング種子は過酸化カルシウムコーティング種子に比べ土中播種した場合の苗立ち率の低下が大きかった.バット試験の結果,土壌表面播種により落水区の出芽が遅れたが,種子の水分含量の増加とともに出芽率が高まり,土中播種の場合には湛水区の苗立ち率が低下した.以上のことから鉄コーティング直播栽培において苗立ち率を高めるためには,鉄0.25倍種子を土壌表面播種し,播種後の水管理は落水を基本とし,適宜,灌水して出芽に必要な水分を籾に供給することが重要と考えられた.
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  • 津田 昌吾, 森 元幸, 小林 晃, 高田 明子
    80 巻 (2011) 2 号 p. 165-173
    公開日: 2011/04/28
    ジャーナル フリー
    バレイショ採種での低増殖率を解決する一つの手段として,器内培養で大量に増殖したマイクロチューバーを種イモにする栽培(MT栽培)が検討されている.これまで,MT栽培では収量形質に大きな品種間差異が生じることが認められているが,その作用機作や年次安定性は明らかになっていない.そこで,本研究では,MT栽培特性の異なる4品種を用いてMT栽培および慣行の種イモを用いる栽培(CT栽培)を5ヵ年行い,生育・収量を比較した.各年次とも,塊茎数のCT栽培に対するMT栽培の割合(MT/CT比)と平均塊茎一個重のMT/CT比の間には有意な負の相関関係が認められ,CT栽培と比べMT栽培で一個重の低下は小さいが塊茎数が大きく減少する品種(個重型)と,塊茎数の減少は小さいが一個重が大きく低下する品種(個数型)に分かれた.この理由を解析したところ,CT栽培で各品種とも塊茎肥大初期に塊茎数が決定しているのに対して,MT栽培ではCT栽培に比べて塊茎数の決定時期が遅れ,その後の塊茎数増加割合に有意な品種間差異が認められた.この塊茎数増加割合が大きい品種ほど塊茎数のMT/CT比が大きくなり,MT栽培で個数型になった.また,塊茎数増加割合と塊茎肥大初期の塊茎生重の間に有意な負の相関関係が認められ,塊茎数決定時期(塊茎形成の終了時期)の早晩に塊茎肥大初期における塊茎肥大量が関与することが示唆された.本研究で明らかになった品種特性を利用することにより,従来よりも増殖率の高いMT栽培を確立できる可能性がある.
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  • 大平 陽一, 佐々木 良治
    80 巻 (2011) 2 号 p. 174-182
    公開日: 2011/04/28
    ジャーナル フリー
    ホールクロップサイレージ用水稲(飼料イネ)を収穫する際に,圃場に脱落した種子に由来するイネが翌年以降に一般食用水稲品種を栽培する圃場に発生し,雑草化する問題が生じている.そこで,雑草害の軽減を目的として,普及あるいは育成中の15~19の飼料イネ品種・系統などを黄熟期に収穫し,種子を水田圃場表面あるいは深度15 cmの土中で越冬させ,翌春に回収して発芽力を調査した.越冬処理は,2006~2007年と2007~2008年の2回行った.「(越冬処理後の発芽率/越冬処理前の発芽率)×100」として算出した越冬後の発芽指数は,圃場表面に設置した処理では0~44,土中に埋設した処理では0~24であり,明らかな品種間差異が認められた.また,発芽指数は,ほとんど全ての品種・系統において,種子を圃場表面で越冬させるよりも土中に埋設して越冬させた方が低下した.越冬後の発芽指数は,越冬処理前の種子の休眠程度と正の相関関係を示し,特に,土中に埋設した場合に相関係数は高かった.また,土中で越冬させた種子には発芽の痕跡が認められ,この発芽痕のある種子の割合は,休眠程度の小さい品種・系統ほど高まり,両者は負の相関関係を示した.これらのことから,休眠程度の小さい飼料イネ品種ほど収穫後から越冬期間中に土中で発芽・枯死する可能性が高まり,越冬後の発芽力は低下しやすくなると考えられた.
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品質・加工
  • 平井 儀彦, 津島 洋, 津田 誠
    80 巻 (2011) 2 号 p. 183-189
    公開日: 2011/04/28
    ジャーナル フリー
    ダイズの裂皮粒発生を抑制する栽培法を確立するため,環境条件と子実の粒大が形状の異なる裂皮粒発生に及ぼす影響を調査した.開花期に,カルシウム肥料,ケイ酸肥料,あるいは窒素燐酸カリの化成肥料を与えた追肥区を設け,さらに,登熟期の9月14日から収穫期の10月24日までを10日毎の4期に分け,各期の気温が対照区より3~4℃高い高温区 (9月14日から10日毎にH1区,H2区,H3区,H4区),土壌を乾燥させた乾燥区 (同様にD1−D4区),土壌が過湿の過湿区 (同様にW1−W4区)を設けた.その結果,高温区の精粒の裂皮粒率は子実肥大盛期にあたるH2区と子実肥大盛期後のH3区で高かった.また高温区では,種皮が不定型に裂ける不定形裂皮粒率が,粒大にかかわらずH2区,H3区,H4区で高かった.開花期のケイ酸追肥では,大粒化は認められなかったが,線状に種皮が裂ける線形裂皮粒率が高く,粒大別では7.9 mm以上の子実で高かった.登熟期の土壌水分の影響については,土壌乾燥が裂皮発生に及ぼす影響は小さかったが,過湿土壌では,W1区とW2区の裂皮粒率が低い傾向にあり,形状別ではW2区の不定形裂皮粒率が低かった.以上より,不定形裂皮粒と線形裂皮粒では発生環境が異なり,両裂皮粒では発生機構が異なると考えられた.
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収量予測・情報処理・環境
  • 角 明夫, 森 彩恵, 林 琢二
    80 巻 (2011) 2 号 p. 190-198
    公開日: 2011/04/28
    ジャーナル フリー
    根粒着生程度の異なる3系統,関東100号(根粒超着生)とエンレイ(根粒着生)およびEn1282(根粒非着生)の乾物生産量(W)-蒸発散量(ET)関係を調査した.これとは別に,フクユタカ(正常品種,F)とT201(根粒非着生系統,T)を用いて,F/F(接穂/台木)(花無切除),F/F (花切除),F/T(花無切除),F/T(花切除)および2F/F(花無切除)を作出して,これらのW-ET関係を比較した.根粒非着生ダイズで認められたW-ET関係を基準とするとき,窒素(N)固定量が大きかった系統および組み合わせは同一のWに達するのに要したETが大きく,またこのET差(ΔET)に対応する乾物重差(=ΔET/蒸散係数,ΔW)は根粒重(Ndw)およびN固定量と密接に関連づけられた.関東100号は著しく大きいNdw/ΔWを示したが,N固定コストに関しては根粒着生系統と異ならず,また実験間に明確な差異は認められなかった(0.098±0.006 Ng g-1乾物).以上から,ΔWはN固定量の良い指標であると結論した.
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  • 角 明夫, 森 彩恵, 林 琢二
    80 巻 (2011) 2 号 p. 199-206
    公開日: 2011/04/28
    ジャーナル フリー
    少窒素(N)および多N条件下で,ソラマメ,ヘアリーベッチ,ササゲおよびラッカセイを栽培し,施肥Nの多少が全乾物重(W)と蒸発散量(ET) の間の量的関係に及ぼす影響を共生窒素固定量との関係から検討した.根粒着生量が多かった少N条件では,同一のWに達するのに要したETが多N条件より大きかった.W−ET関係の差異は,ソラマメ,ヘアリーベッチ,およびササゲでは,‘高さ(Wが0のときを仮定したET)’の違いによって,またラッカセイでは‘傾斜’の違いによって特徴づけられた.少N条件では窒素固定に伴う窒素付加がみられたのに対して,多N条件ではヘアリーベッチを除いて,窒素損失量が窒素固定量を上回った.少Nと多Nの間のET差(ΔET)に対応する乾物重差(ΔW)と窒素収支差の間に関連性が認められた.以上の結果から,ΔWは共生N固定量の違いを代表する良い指標であると結論した.
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研究・技術ノート
  • 松田 裕之, 森 静香, 中場 勝, 藤井 弘志
    80 巻 (2011) 2 号 p. 207-212
    公開日: 2011/04/28
    ジャーナル フリー
    山形県酒田市におけるダイズ生育期間中の豪雨日(100 mm 日-1以上)は2000年以降ほぼ2年に1回あり,それ以前と比較するとダイズ冠水被害の危険性が増加している.山形県庄内地域では,2008年8月14日から15日にかけて局地的な豪雨に見舞われ,ダイズでは冠水被害が発生したため,成熟期にダイズ品種 「リュウホウ」 における冠水害の被害調査を実施した.その結果,株当たり全莢数は調査地点による大きな差は認められず,いずれも株中位に着生する莢数が多く株の上下に正規分布する傾向を示したことから,冠水による落花・落莢の発生は少ないと推定された.また,推定冠水時間が長くなるほど不稔莢数と不稔莢比率が高く,着粒数が少なかった.なお,いずれの地点も小粒比率が高くかつ整粒比率が低く,推定冠水時間との関係は明確でなかった.株の着生位置別にみると,いずれの地点も下位部に着生した莢ほど不稔莢比率が高く,かつ小粒比率が高い傾向を示した.その理由として,株の下位部になるほど酸素不足の時間が長く,濁水による傷などの損傷程度が大きいこと,および冠水遭遇後下位葉から早期に落葉したことが要因と推察された.品質では,しわ粒・変質粒・皮きれ粒の発生により整粒比率が大きく低下したが,株の着生位置による明確な傾向は認められず,いずれの着生位置でも50%以下と低かった.以上のことから,本事例では品質低下を防ぐために冠水被害のない健全な大豆と分けて別刈り対応すべきと考えられた.
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  • 片山 勝之, 細野 達夫, 細川 寿, 塩谷 幸治, 野村 幹雄
    80 巻 (2011) 2 号 p. 213-219
    公開日: 2011/04/28
    ジャーナル フリー
    北陸地域の水田転換畑でのエダマメの早期直播栽培における安定生産技術の確立を目的として,ポリマルチ被覆による早期直播栽培の有効性を評価した.透明・黒色ポリマルチ直播区は無マルチ区や黒色ポリマルチ移植区に比べて生育期間中の乾物重が増大した.また,透明・黒色ポリマルチ直播栽培区において莢収量の有意な増加が認められた.このような生育量の増大や収量の増加が生じた要因として,高い出芽率,葉面積指数の早期拡大および莢数の増大が考えられた.一方,透明ポリマルチ直播区の雑草乾物重は,黒色ポリマルチ被覆した直播区や移植区に比べて顕著に増大した.これらのことから,早期直播栽培では畝を黒色ポリマルチ被覆することが収量安定化と雑草抑制に有効であると判断された.
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  • 守田 和弘, 高橋 渉, 杉森 史郎, 古畑 昌巳
    80 巻 (2011) 2 号 p. 220-228
    公開日: 2011/04/28
    ジャーナル フリー
    近年の温暖化条件下において,高温登熟回避を想定した作期移動が水稲「コシヒカリ」の生育,収量および品質に及ぼす影響を調査するとともに,作期ごとの適正な栽植密度について2ヶ年検討した.移植時期を4月下旬 (早植) から5月中旬 (晩植) に遅らせた結果,5月中旬区では4月下旬区に比べて移植~最高分げつ期までの日数が短縮することで最高分げつ数が減少し,穂数が少なくなることで減収した.また,晩植によって登熟気温が低下した2005年では5月中旬区で外観品質が向上した.各移植時期において栽植密度と収量,品質との関係を検討した結果,4月下旬区では栽植密度を高めることで穂数が増加するものの収量は増加せず,過繁茂による葉色の低下や品質の低下が認められた.一方,5月中旬区では,晩植による穂数不足を補うために栽植密度を高めることが有効であり,栽植密度を高めるほど穂数増加,収量増加につながるとともに,外観品質が向上することが明らかになった.これらのことから,高温登熟回避を想定した晩植栽培では,早植栽培に比べて栽植密度を高めることが生育,収量および品質の安定化に有効であると判断された.
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  • 堀内 宜彦, 虎尾 健志, 佐藤 崇紀, 廣野 祐平
    80 巻 (2011) 2 号 p. 229-232
    公開日: 2011/04/28
    ジャーナル フリー
    永年性木本植物である茶樹が生育期間中に固定する二酸化炭素量を,実測値および文献値から推定した.その結果,2年生幼木の二酸化炭素固定量は一株あたり28.8 gで,10 aあたり53.3 kgとなった.成木では更新の有無により固定量が異なり,更新直後では一株あたり3.9 kgで,10 aあたり7.3 tとなった.通常の摘採年では6.3 kg/株で,10 aあたり11.6 tとなった.モモ,ナシ等の果樹及び森林樹木と比較すると,チャは単位面積あたりの植栽密度が果樹より高いことから,樹体への二酸化炭素固定量は果樹より茶樹で多いと推定されるが,森林に比べ低かった.
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