野生稲
Oryza officinalis Wall ex Wattの耐塩性を評価するために,耐塩性の高い
O. latifolia Desv.,
O. sativa L. cv. Pokkaliおよび感受性野生稲の
O. rufipogon Griff.,
O. australiensis Dominを用いて,播種後60日目から32日間の塩水処理(12 dS m
-1 NaCl)を行ない,乾物生産,葉身のイオン含有率および光合成速度を比較した.塩ストレス環境下の
O. officinalisおよび
O. latifoliaの葉身乾物重の低下程度は,Pokkaliより低かった.また
O. officinalisおよび
O. latifoliaの葉身水分含有率はPokkaliと同程度であり,葉身のNa
+含有率は,Pokkaliより高かった.播種後81日目 (塩水処理21日目) の
O. officinalisおよび
O. latifoliaの光合成速度は,Pokkaliより低下しなかった.光合成速度と葉内CO
2濃度の関係から,
O. officinalis,
O. latifolia,
O. australiensisおよびPokkaliにおける光合成の低下要因は,気孔開閉の影響が大きいと考えられた.しかし,光合成速度と気孔伝導度の関係では,
O. officinalisは高い相関,
O. latifoliaは中程度の相関が認められた.以上の結果,塩ストレス環境下の
O. officinalisは,Pokkaliより葉身にNa
+を多く蓄積するにも関わらず,光合成速度および乾物生産の低下は少ないことから,
O. latifoliaと同等の耐塩性を有することがわかったものの,光合成速度の律速要因は別であることが示唆された.
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