日本作物学会紀事
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86 巻 , 1 号
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研究論文
栽培
  • 福嶌 陽, 太田 久稔, 横上 晴郁, 津田 直人
    2017 年 86 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2017/01/05
    公開日: 2017/02/03
    ジャーナル フリー

    東北地域における稲発酵粗飼料(イネWCS)用水稲品種における収穫期,品種による乾物特性や飼料成分の差異を把握することを目的とした.全乾物重は,生育期間と密接な関係にあり,収穫期が遅いほど多く,早生品種より晩生品種が多かった.水分含量は,早生品種と晩生品種のいずれにおいても,出穂後日数に伴い同程度に減少した.飼料成分に関しては,出穂20~40日後の間に非繊維性炭水化物(NFC)が多い穂の重量が増加し,これに伴い近赤外分析で推定した 可消化養分総量(TDN)も増加した.しかし,登熟に伴い,消化しにくい籾の割合も増加するため,家畜に給与した場合の実際のTDNが登熟に伴い増加するとは限らないと推察された.食用品種の収穫前に収穫できる早生品種の中では,「べこげんき」が,黄熟期の全乾物重がやや多く,穂重割合がやや低く,茎葉のNFCがやや高いことから有望であった.食用品種の収穫後に収穫できる晩生品種の中では,「たちあやか」が,全乾物重が多く,穂重割合が極めて低く,茎葉のNFCや糖含量が高いことから有望であった.

  • 福嶌 陽, 太田 久稔, 横上 晴郁, 津田 直人
    2017 年 86 巻 1 号 p. 7-14
    発行日: 2017/01/05
    公開日: 2017/02/03
    ジャーナル フリー

    農研機構東北農業研究センターが育成した中食・外食向けの水稲3品種「ちほみのり」,「萌えみのり」,「えみのあき」における窒素追肥の効果を調査した.早生品種群として,「まっしぐら」,「ちほみのり」,「あきたこまち」,中生品種群として,「ひとめぼれ」,「萌えみのり」,「えみのあき」を用いた.いずれの品種群も,前期追肥区,後期追肥区,無追肥区を設けた.東北農研が育成した3品種の窒素追肥に対する反応性は,他品種と大きく異ならなかった.そこで,品種によらない窒素追肥に対する反応性,および,窒素追肥によらない3品種の特性について解析した.いずれの品種群においても,前期追肥により,穂数が増加し,総籾数が増加することにより精玄米重が増加した.後期追肥により,総籾数がやや増加し,千粒重がやや増加することによって精玄米重が増加した.しかし,前期追肥では,乳白粒が増加し,外観品質が低下した.後期追肥では,玄米の蛋白質含量が増加し,食味がやや低下した.収量,外観品質,食味を総合的にみて,東北農研が育成した3品種においては中間時期の追肥が適切と推察された.東北農研が育成した3品種の精玄米重は,「ちほみのり」が「あきたこまち」と同程度,「萌えみのり」が「ひとめぼれ」よりやや多く,「えみのあき」が「ひとめぼれ」よりやや少なかった.これら3品種は,耐倒伏性が優れているので,「あきたこまち」や「ひとめぼれ」が倒伏するような多肥栽培や直播栽培においての多収が期待される.

  • 石川 直幸, 石岡 厳
    2017 年 86 巻 1 号 p. 15-23
    発行日: 2017/01/05
    公開日: 2017/02/03
    ジャーナル フリー

    コムギ,とりわけパン用コムギは加工適性向上のためタンパク質含有率を高める必要があり,そのためには開花期頃の窒素追肥が重要となる.しかし窒素追肥を行うと子実カドミウム(Cd)濃度が高まることが知られており,その理由は窒素肥料による土壌 pH の低下やイオン交換によって,土壌に吸着されていた Cd が脱着して植物に吸われやすくなるためであると考えられている.そうであれば,尿素の葉面散布では子実 Cd が高まらないと期待される.そこで,雨除けポット栽培と圃場栽培において,開花期に尿素を土壌施用または葉面散布し,子実 Cd 濃度等を調べた.その結果,尿素の土壌施用でも葉面散布でも,また尿素液がポットの地面に落下しないようにポットをペーパータオルで覆っても,無施用と比べて子実タンパク質含有率と子実 Cd 濃度が高まり,子実タンパク質含有率と子実 Cd 濃度の間に正の相関が認められた.土壌施用でも葉面散布でも,無施用と比べて葉の黄化が遅れ,成熟期が遅くなり,ポット栽培では千粒重および子実収量が増加し,子実の Cd,K,Ca,Mg 蓄積量が増加した.窒素追肥により植物体の活性が高く維持されたために Cd の吸収が増えたと推測される.たとえ葉面散布であっても,タンパク質含有率を高めようとすれば子実 Cd 濃度が高くならざるを得ないと考えられる.

  • 黒崎 英, 唐 星児, 林 哲央, 中村 隆一
    2017 年 86 巻 1 号 p. 24-34
    発行日: 2017/01/05
    公開日: 2017/02/03
    ジャーナル フリー

    新たな需要拡大を図るため,北海道北見地域における虎豆の早期播種,べたがけ被覆および早期根切りによる早期収穫技術を明らかにした.慣行播種6月1日より9~18日早く播種することにより,出芽期は5~10日,熟莢率30%の日は5~11日早まった.播種日からのべたがけ被覆により出芽および熟莢率30%の日がほぼ4日早まった.早期播種とべたがけ栽培により子実重は 6~7%重くなり,熟莢率30%の日はほぼ播種日を早めた日数だけ早まると考えられた.なお,べたがけ被覆は期間が長いほど生育は早まる傾向にあったが,第3本葉期以降まで被覆すると生育の急激な増大のため茎が初生葉節から折れる個体が多発するため,第1~2本葉展開期までにするべきと考えられた.根切り時期は,生産者慣行の熟莢率50%を同30%に早めても子実重および粒大に大きな影響はなく,根切り時期を5~6日早くできた.虎豆の出芽に関する有効下限温度は7.1℃,有効積算温度は107.3℃であり,さらに平年の日平均気温およびべたがけ被覆で出芽が4日早まることに基づいて北見地域の主産地における晩霜害を避ける最も早い播種可能日を推定した結果,平年播種日5月31日より13日早くなった.これらの対策技術により根切り日は平年の9月19日より18~19日早まり,乾燥期間1ヶ月ののち実需が要望する10月中旬までの出荷が可能になると推察された.

  • 松下 景, 長岡 一朗, 笹原 英樹, 前田 英郎, 渡邊 肇
    2017 年 86 巻 1 号 p. 35-40
    発行日: 2017/01/05
    公開日: 2017/02/03
    ジャーナル フリー

    短穂性の稲発酵粗飼料品種である,「たちあやか」と「たちすずか」は,牛の体内で消化率が低い籾の割合が低いことから,畜産農家から飼料としての評価が高く,普及が拡大しているが,栽培上では,採種効率が低いことが問題となっている.「たちすずか」では,幼穂形成期の窒素施用の有無や晩植などにより精籾重が向上するが,「たちあやか」においては,作期や肥培管理の差異が,種子の生産性に及ぼす影響について明らかとなっていない.そこで施肥法に着目し,2014年と2015年に総窒素施用量と幼穂形成期の穂肥窒素量が,「たちあやか」の収量構成要素におよぼす影響を調査した.その結果,施肥法が穂数および比重選歩合におよぼす影響は認められなかったが,総窒素のうち基肥よりも穂肥の施用量が多い条件で一穂籾数が有意に多くなり,これに対応して総籾数も増加した.すなわち,「たちあやか」の採種栽培においては,「たちすずか」と同様に,基肥を少なく,穂肥を多く施用し,一穂籾数を増加させることが重要と考えられた.しかし,「たちあやか」の場合,窒素施用量が10 g m–2より多い穂肥では,遅れ穂が発生する場合がみられた.

その他
  • 赤木 功, 樗木 直也
    2017 年 86 巻 1 号 p. 41-49
    発行日: 2017/01/05
    公開日: 2017/02/03
    ジャーナル フリー

    家畜排せつ物由来メタン発酵消化液の土壌施用によるネコブセンチュウ被害軽減効果を検証するために,いくつかの実験を試みた.消化液の成分分析の結果,採取1日後の消化液は殺線虫効果を持つことが報告されているアンモニア態窒素を1.86 g L–1含有することが確認された.ただし,このアンモニア態窒素は採取後の貯蔵時間の経過とともに減少していくことが示された.我が国に分布する6種のネコブセンチュウ(アレナリアネコブセンチュウ沖縄型,アレナリアネコブセンチュウ本州型,キタネコブセンチュウ,サツマイモネコブセンチュウ,ジャワネコブセンチュウ,ナンヨウネコブセンチュウ)は,消化液の5倍希釈液の浸漬処理によって,いずれのネコブセンチュウ種も90%以上の個体が不動化することが示された.また,ネコブセンチュウに汚染された砂丘未熟土への土壌1 kg当り120 mL (最大容水量60%相当) の消化液添加は,土壌中のネコブセンチュウ密度を有意に低減させることが明らかとなった.ただし,灰色低地土および黒ボク土では明確なネコブセンチュウ密度の低減効果は確認できなかった.ネコブセンチュウに汚染された砂丘未熟土への土壌1 kg当り70 mL(アンモニア態窒素200 mgを含む)の消化液施用は,根に着生する卵のうの数を対照(化学肥料施用)の25%以下にまで抑制することが示された.

研究・技術ノート
  • 大角 壮, 平内 央紀, 吉永 悟志
    2017 年 86 巻 1 号 p. 50-55
    発行日: 2017/01/05
    公開日: 2017/02/03
    ジャーナル フリー

    半矮性遺伝子をもつインド型多収水稲品種の北陸193号の早植栽培において,苗の草丈や茎葉重の減少が問題となっていることから,育苗時の保温法と,窒素追肥による苗質改善効果について検討した.ビニルハウス内で育苗する標準育苗と比較し,ハウス内で苗箱の40 cm上から無色の透明マルチをかけ,側面下部より3–4 cm隙間を空けたマルチ被覆は,苗の草丈を3.5 cm増加させ,茎葉重も同等以上となった.育苗中に水に溶かした硫安を成分量で箱あたり4 g分施すると,いずれの温度処理でも苗の草丈や茎葉重,ならびに苗の窒素含有率が高まった.苗箱をプール中に水没させるプール育苗処理では,箱上水位を2 cmとするよりも5 cmとする深水プールのほうが苗の草丈は増加した.深水プールの苗の草丈は標準育苗に比べ2.9 cm長く,苗の茎葉重にも有意な減少は認められなかった.また,深水プールと箱あたり2.5 gの追肥を組み合わせて育苗した苗を,準高冷地で機械移植し,標準育苗と比較した結果,苗の草丈と窒素含有率の増加が移植後初期の乾物生産の向上や欠株率の減少に有効であることが示唆された.

  • 境垣内 岳雄, 樽本 祐助, 服部 育男, 神谷 充, 吉田 広和
    2017 年 86 巻 1 号 p. 56-61
    発行日: 2017/01/05
    公開日: 2017/02/03
    ジャーナル フリー

    鹿児島県奄美地域における飼料用サトウキビ品種「しまのうしえ」の年2回収穫における最適な収穫を明らかにするため,4–7月区,5–8月区,6–9月区の収穫時期の異なる処理区を設けて,生育および収量性について検討した.2年間の年間乾物収量の平均値は,4–7月区が4.05 kg m–2,5–8月区が4.12 kg m–2,6–9月区が3.45 kg m–2であり,分散分析の結果,処理区による有意差が認められ,6–9月区の年間乾物収量は有意に低かった.また,4–7月区では乾物収量が高いものの,冬草(4月収穫)で倒伏や野鼠害が認められた.1,2年目の6–9月区の冬草(6月収穫)の乾物率は13.5%,11.8%と低く,サイレージ調製には不適であった.株出し初期生育での被植速度と気温には有意な正の相関が認められ,気温の高い6–9月区の夏草(6月収穫後)や4–7月区の冬草(7月収穫後)で被植速度が大きかった.一方で,気温の低い6–9月区の冬草(9月収穫後)では被植速度が小さく,雑草による生育抑制が懸念された.以上のことから,本報の収穫時期では5–8月区の設定が最適であり,特に,6–9月区の設定は避けるべきと判断される.

  • 森下 敏和, 鈴木 達郎
    2017 年 86 巻 1 号 p. 62-69
    発行日: 2017/01/05
    公開日: 2017/02/03
    ジャーナル フリー

    普通ソバは脱粒しやすいことが収量の損失をもたらしている.そこでグリーンフラワータイプの「難脱粒系統」と北海道の主力品種である「キタワセソバ」を供試して難脱粒性が損失の軽減に有効であるかどうかを明らかにするために,北海道農業研究センターの試験圃場(芽室町)で2012~2014年の3年間,およびソバ産地の現地圃場(北竜町)で2013~2015年の3年間,コンバイン収穫試験を実施した.コンバイン収穫適期である標準刈では「難脱粒系統」の‘脱穀選別損失’が大きいため「キタワセソバ」よりも損失割合が大きかった.一方刈り遅れ想定した遅刈の場合,「難脱粒系統」の‘頭部損失’は遅刈により増加したものの,「キタワセソバ」の‘自然脱粒損失’の増加と「難脱粒系統」の‘脱穀選別損失’の減少により,「難脱粒系統」の子実の損失の割合は「キタワセソバ」よりも少なかった.さらに降雨や強風および極遅刈条件等,脱粒が多発しやすい環境下では,「難脱粒系統」は自然脱粒の抑制により子実の損失を軽減させるのに有効であることが示された.

  • 赫 兵, 豊田 正範, 楠谷 彰人
    2017 年 86 巻 1 号 p. 70-77
    発行日: 2017/01/05
    公開日: 2017/02/03
    ジャーナル フリー

    2013年と2015年に香川県高松市の農家水田において水稲品種ヒノヒカリを供試し,不耕起乾田直播栽培が生育,収量,品質,食味に及ぼす影響を調査した.不耕起乾田直播栽培区(直播区)の収量は,移植栽培区(移植区)に比べて2015年は6%の減収にとどまったが,2013年は37%減収した.2013年の減収原因は播種期前後の降雨不足に伴う苗立ち抑制による穂数の減少にあった.外観品質には処理区間に有意差は認められなかった.食味に関しては,直播区産米は移植区産米よりも最高粘度とブレークダウンが大きく,味が良く,粘りが強くて軟らかいために総合評価が向上する傾向がみられた.

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