日本作物学会紀事
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86 巻 , 4 号
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研究論文
栽培
  • 松山 宏美, 関 昌子, 島崎 由美, 小島 久代, 乙部 千雅子, 高山 敏之, 大下 泰生, 藤田 雅也, 渡邊 好昭, 小田 俊介, ...
    86 巻 (2017) 4 号 p. 311-318
    公開日: 2017/10/31
    ジャーナル フリー

    早生コムギ2品種を背景とした春播性遺伝子Vrn-D1に関する準同質遺伝子系統(春播型及び秋播型系統)を,早期・標準・晩期の3つの播種時期を設定して栽培し,Vrn-D1が圃場環境下でコムギの発育過程に及ぼす影響を検討した.春播型が二重隆起形成期を越えたことが観察された時期は秋播型より,早期播種では109~112℃日,標準播種では88~102℃日早く,播種後の日平均気温が12℃以下の範囲と低温であった晩期播種では幼穂分化過程に播性間差はなかった.従って,Vrn-D1による二重隆起形成期の早期化効果は,標準的かそれより早く播種した圃場環境下では明確であるが,遅く播種した圃場環境下では観察されないと示された.春播型が頂端小穂形成期を越えたことが観察された時期は秋播型より,早期播種では113~214℃日,標準播種では30~98℃日早かった.播種から二重隆起形成期の発育の温度反応は播性間で異なったが,二重隆起形成期から頂端小穂形成期の発育の温度反応には播性間で差がなかった.春播型の茎立期は早期播種と標準播種では秋播型より早く,開花期と成熟期の播性間差はなかった.これらのことから,Vrn-D1は播種後の日平均気温が概ね12℃以上と気温が高い圃場環境において二重隆起形成期を早期化させ,圃場環境条件を介して頂端小穂形成期と茎立期も早期化させるが,その後の開花期,成熟期についてはほとんど影響しないと示唆された.

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  • 水田 圭祐, 荒木 英樹, 中村 和弘, 松中 仁, 丹野 研一, 高橋 肇
    86 巻 (2017) 4 号 p. 319-328
    公開日: 2017/10/31
    ジャーナル フリー

    暖地向けパン用コムギ品種「ミナミノカオリ」は,子実タンパク質含有率が高いものの,収量が低いという特徴がある.本研究では,熊本県のコムギ多収地域において,「ミナミノカオリ」の高品質多収化を目的として,基肥と分げつ肥を省略し,穂肥を増肥した穂肥重点施肥が,収量,収量構成要素,分げつの成長量や消長におよぼす影響を検証した.穂肥重点施肥区は,2014/15年と2015/16年のいずれも慣行分施区に比べて穂数が5~20%増加した.その結果,2014/15年では慣行分施区に比べて収量が15%増加した.子実タンパク質含有率は,収量が増加したにもかかわらず低下しなかった.2015/16年では,収量は607 g m–2と慣行分施区と同程度であったが,子実タンパク質含有率は13.8%と慣行分施区の12.5%に比べて有意に高くなった.一穂粒数と千粒重はいずれの作期でも穂肥重点施肥では増加しなかった.穂肥重点施肥区で穂数が増加した原因は,主茎第3節分げつの有効化した茎の発生率が62.2%と,慣行分施区の19.1%に比べて高いためであった.成熟期における主茎第3節分げつの乾物重は,穂肥重点施肥区で2.28 g と慣行分施区の1.67 g に比べて有意に重かった.地上部窒素蓄積量は,慣行分施区では穂揃い期から成熟期にかけて3.6 g m–2増加し,穂肥重点施肥区では5.3 g m–2増加した.その結果,成熟期では,穂肥重点施肥区で18.8 g m–2と慣行分施区の15.6 g m–2に比べて有意に多かった.穂肥重点施肥は,収量が増加しても窒素吸収量を増加させることで子実タンパク質含有率を高水準に維持するため,パン用コムギの高品質多収栽培に有効であると考えられた.

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  • 木村 利行, 下野 裕之
    86 巻 (2017) 4 号 p. 329-338
    公開日: 2017/10/31
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    寒冷地である青森県の気象条件下で,省力・低コスト化手段の一つである疎植栽培が水稲の子実収量ならびに玄米品質に及ぼす影響を評価した.青森県黒石市で3水準の栽植密度 (標準栽植株数=21.2株 m–2に対して2水準の疎植条件=15.2株 m–2,11.2株 m–2,以下,標準区,71%疎植区,53%疎植区) を2品種 (「つがるロマン」,「まっしぐら」),2作期 (5月中旬,5月下旬移植) の計12組合せによる試験で4か年 (2010~2013年) 行った.子実収量 (2品種,4年平均) は,2作期とも標準区に対して71%疎植区ならびに53%疎植区で有意差が認められなかった.ただし,53%疎植区と標準区の子実収量の差は2011年5月中旬区と2012年5月下旬区で大きかった.玄米品質は,2012年5月下旬区の「つがるロマン」において71%疎植区と53%疎植区で胴割粒の発生により検査等級が低下したが,それ以外では栽植密度による差はみられなかった.53%疎植区の収量には面積当たりの籾数,穂数と強い相関がみられた.標準区に対する53%疎植区の子実収量比は移植後11~50日の平均気温と有意な相関がみられた.53%疎植区と標準区の収量差には栄養成長期の気温が関係し,低温条件では面積当たり穂数と籾数の差が拡大して収量差が大きくなることが示唆された.

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  • 福嶌 陽, 太田 久稔, 横上 晴郁, 津田 直人
    86 巻 (2017) 4 号 p. 339-346
    公開日: 2017/10/31
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    農研機構東北農業研究センターが育成した中食・外食用の水稲3品種「ちほみのり」,「萌えみのり」,「えみのあき」における標肥移植栽培,多肥移植栽培,標肥直播栽培,多肥直播栽培の5年間の生産力検定試験の結果を解析した.多肥栽培は標肥栽培と比較して,穂数と1穂籾数が多いために精玄米重が多く,品質は同程度であった.直播栽培は移植栽培と比較して,穂数は多いが,精玄米重が少なく,品質は同程度かやや優れていた.早生品種の「ちほみのり」は,「あきたこまち」と比較して,多肥栽培,および直播栽培において,精玄米重が有意に多く,品質は同程度であった.中生品種の「萌えみのり」は,「ひとめぼれ」と比較して,多肥移植栽培および多肥直播栽培における精玄米重が有意に多く,品質はやや劣っていた.中生品種の「えみのあき」は,「ひとめぼれ」と比較して,多肥移植栽培および多肥直播栽培における精玄米重がやや多く,品質はやや優れていた.これらの結果から,東北農研育成3品種は,多収および低コスト化・省力化が求められる中食・外食向けの米生産に適していると考えられた.本研究の結果とこれまでの多収品種に関する報告との比較を通じて,東北地域における中食・外食向けのさらなる多収品種を育成するためには,1穂籾数を多く,千粒重をやや重くすることが重要であると考察した.

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  • 鈴木 大輔, 飯沼 大輔, 柴崎 さやか, 渋谷 美奈子, 伊藤 芳恵, 松井 大地, 野々川 香織, 肥後 昌男, 磯部 勝孝
    86 巻 (2017) 4 号 p. 347-357
    公開日: 2017/10/31
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    本研究では関東における梅雨明け後の7月播種での密植栽培が6月播種に比べて子実収量と莢先熟の発生に対してどの程度の差があるのかを明らかにすることを目的とした.圃場実験を2013年から2015年に日本大学生物資源科学部付属農場(神奈川県藤沢市)の普通畑圃場で行った.供試品種は「エンレイ」,「タチナガハ」,「あやこがね」である.圃場試験の試験区は6月普通区,7月普通区,7月密植区,7月超密区である.ポット試験は2014年に1/5000 aワグネルポットを用いて行った.子実収量はいずれの品種も7月密植区,7月超密区で6月普通区より増加した.また,6月普通区と7月普通区で収量に有意な差がなかった.6月普通区と7月普通区の子実収量に有意な差がみられなかった要因は7月普通区で1莢粒数が増加し,区間で100粒重に差がみられなかったことが大きいと考えられた.成熟整合性程度はいずれの品種も6月播種区で7月播種区より低く,7月播種区では栽植密度の違いは莢先熟の発生に影響しなかった.6月播種区で莢先熟の発生がみられた要因の一つにカメムシ類による被害粒の増加が考えられ,7月播種区で莢先熟の発生が少ない要因として子実肥大期以降に木部液を通して地上部に輸送されるサイトカイニン量が減少したことが考えられた.以上のことから,関東南部の普通畑で「エンレイ」や「タチナガハ」などの品種を7月に播種しても6月に播種した時と同等の子実収量が得られ,さらに6月播種に比べて7月播種では莢先熟の発生も抑制されると考えられる.また,7月播種で莢先熟が発生しない要因として7月播種区では6月播種区と比べ,開花期から子実肥大始期までの平均気温が低く,平均降水量が多かったことが要因の一つにあると推察される.

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品種・遺伝資源
  • 大久保 和男, 井上 千鶴, 辻村 雄紀, 石川 亮
    86 巻 (2017) 4 号 p. 358-366
    公開日: 2017/10/31
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    イネの脱粒性は収穫時においてコンバイン機体内部における脱穀負荷,選別精度を左右することから,作業性能や収穫量に影響を及ぼす.そこで我々は,コンバイン収穫における各種損失や収穫量に対する脱粒性の影響を評価するための実験材料として,ヘテロ型反復自殖法による日本型イネの脱粒性準同質遺伝子系統群を育成しようとした.本稿では,その育成過程を示し,育成系統における主働遺伝子と遺伝的背景の違いが脱粒性程度に及ぼす影響を解析した.脱粒性の異なる日本型品種,「朝日」と「せとこがね」の交雑から育成した11対の派生系統は,ヘテロ型反復自殖法で育成される準同質遺伝子系統群の特徴を概ね具備した.準同質遺伝子系統の脱粒型を易型と難型に大別する要因は主働遺伝子であり,その遺伝子座はqSH1と推定された.準同質遺伝子系統群において,難型系統の脱粒程度はすべて難型親の「せとこがね」と同程度であった.しかし,易型系統の脱粒程度は系統間で異なった.ヘテロ型反復自殖法で育成した準同質遺伝子系統群は同じ両親に由来する派生系統であり,系統対間において互いに遺伝的背景が異なる.これらのことから,「朝日」と「せとこがね」の交雑組合せにおいて,主働遺伝子以外にも,作用力の小さい複数の遺伝子座が脱粒程度に関与していることが示唆された.また,qSH1の機能欠損型対立遺伝子の作用は他の遺伝子座の作用に対して上位性を示した.以上から,本脱粒性準同質遺伝子育成系統は,脱粒性がコンバイン収穫に及ぼす影響評価,日本型イネにおける脱粒性の変異やその発現機構を解明するための実験材料として有用性が高いとみなされた.

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作物生理・細胞工学
  • 提箸 祥幸, 保田 浩, 北條 優子, 松浦 恭和, 森 泉, 佐藤 裕
    86 巻 (2017) 4 号 p. 367-374
    公開日: 2017/10/31
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    低温苗立ち性に優れると報告のある外国稲「Dunghan Shali」および「Italica Livorno」と,日本稲の「おぼろづき」および「日本晴」を用いて幼苗期における初期伸長性と植物ホルモンとの関係について解析を行った.27℃および12℃における初期伸長性は,どちらの条件でも「Dunghan Shali」,「Italica Livorno」が「おぼろづき」,「日本晴」に比べて優れていた.「Dunghan Shali」はジベレリンの作用により初期伸長性が優れると報告されているが,「Italica Livorno」の27℃での初期伸長性が優れるのも,ジベレリンの生合成系の遺伝子OsGA20ox1の発現が高かったことから,ジベレリンの影響が予想された.一方,12℃においては「Italica Livorno」で他の3品種よりもOsGA20ox1およびOsGA3ox1の発現が高く,ジベレリンによる伸長性の亢進が考えられた.「Dunghan Shali」では12℃におけるOsGA20ox1の遺伝子発現は「Italica Livorno」より低かったが,生長を抑える作用のあるアブシシン酸(ABA)が他の品種と比べて低く保たれていた.また,12℃において「Italica Livorno」はABAが増加したが,ABAと拮抗的な相互作用のあるサリチル酸が増えていた.このように,27℃における初期伸長性ではジベレリンの影響が大きいが,12℃の低温ストレス環境下では複数の植物ホルモンのバランスが幼苗の初期伸長性に重要であると考えられた.

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研究・技術ノート
  • 鎌田 英一郎, 高橋 肇, 稲葉 俊二, 荒木 英樹, 丹野 研一
    86 巻 (2017) 4 号 p. 375-381
    公開日: 2017/10/31
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    山口県では,麦類は瀬戸内の干拓地で栽培されており,中山間地には適さないとされてきた.中山間地は気温が低く,春播性の品種ではしばしば凍霜害が発生し,さらに収穫時期が遅れがちになり,降雨により穂発芽が発生し品質が低下する.しかしながら,秋播性の品種であれば幼穂分化期が遅く凍霜害を回避でき,安定した収量が期待できる.そこで本研究では九州で早播栽培用に育成された秋播性コムギ品種「イワイノダイチ」と長野県の高冷地で育成された秋播性コムギ品種「キヌヒメ」,山口県で奨励されている秋播性裸麦品種「トヨノカゼ」を供試し,これらの収量性を調査することで山口県の中山間地における播種適期について検討した.さらに愛媛県の中山間地で栽培されている春播性の裸麦品種「ユメサキボシ」も同時に比較した.試験は2009/2010年から2014/2015年の6試験年次で行った.子実収量は中山間地ではいずれの品種も10月下旬播きがそれ以前の播種期よりも多く,「キヌヒメ」と「トヨノカゼ」が多かった.平坦地では11月播きが10月下旬播きよりも多かったが,「トヨノカゼ」では10月下旬播きと同じであった.いずれの品種も中山間地の10月下旬播きは,平坦地の11月播きと有意差がなかった.中山間地の10月下旬播きでは,収穫日は「イワイノダイチ」と「キヌヒメ」で6月19日であったのに対して,「トヨノカゼ」は6月8日と早かった.以上より,山口県の中山間地には「トヨノカゼ」のような秋播性の裸麦品種を用いた10月下旬播種が適すると考えられた.

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  • 村田 資治, 内山 亜希, 池尻 明彦, 原田 夏子
    86 巻 (2017) 4 号 p. 382-387
    公開日: 2017/10/31
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    子実タンパク質含有率の向上のために開花期追肥が重要であるパン用コムギ「せときらら」について,穂肥と同時に被覆尿素肥料を追肥することで開花期追肥を省略できるかどうかを検討した.試験は山口県農林総合技術センター内の水田転換畑で 2013/2014 年と 2014/2015 年の 2 か年について行った.硫安を用いて穂肥と開花期追肥を行った区 (分施区) と穂肥と同時に被覆尿素を施用して開花期追肥を省略した区 (被覆尿素区) を比較した.その結果,被覆尿素区では分施区と比べて収量が増加して子実タンパク質含有率は低下した.収量と子実タンパク質含有率には負の相関関係が認められた.被覆尿素区で子実タンパク質含有率が低下したのは,被覆尿素肥料を施用してから開花期までに施用窒素量の 19~60%が溶出することで「せときらら」の穂数が増加して収量が高まることに加えて,子実タンパク質含有率向上に有効とされる開花期の溶出量が少ないためであると考えられた.また,シグモイド型被覆尿素肥料を窒素成分で分施の 2 倍施用すると,子実タンパク質含有率は分施区にはおよばなかったが被覆尿素を窒素成分で分施と同量与えた場合よりも高くなった.以上のことから,施用窒素量が同水準の場合,被覆尿素肥料の穂肥同時施用は硫安表面施用による分施と比べて子実タンパク質含有率が低くなること,被覆尿素肥料の施用窒素量を増やすことで子実タンパク質含有率を向上させられる可能性があることが明らかとなった.

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