日本作物学会紀事
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87 巻 , 1 号
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研究論文
栽培
  • 杉本 充
    2018 年 87 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 2018/01/05
    公開日: 2018/01/19
    ジャーナル フリー

    京都府の新たな丹波黒大豆系エダマメ『京 夏ずきん』 (「夏どり丹波黒1号」および「夏どり丹波黒2号」の2品種による商品) の安定生産が可能な作型を開発するために,光周性を中心に開花特性を把握するとともに,露地栽培における播種期の検討および簡易施設を利用した『京 夏ずきん』品種の作期前進の可能性を調査した.限界日長の存在が認められる「紫ずきん」,「紫ずきん2号」および「新丹波黒」に対し,「夏どり丹波黒1号」と「夏どり丹波黒2号」は,日長に関わらず開花が認められた.露地における移植栽培で4~5月の間で播種期を移動させると,播種期に応じて収穫期が移動した.目標収量が得られる栽培適期は,5月上旬~下旬に播種する作型と考えられ,収穫期は8月上旬~下旬であった.4月播種によって7月中下旬の収穫が可能と認めたが,供試した『京 夏ずきん』品種には,栄養成長量と収量に高い関係性が認められ,特に4月中旬の播種栽培では他の播種期より莢数,莢重が少なかった.無加温のビニルハウスを用いて,収穫期の前進と安定収量を両立する作型を開発するには,3月1日播種栽培では栄養成長量が小さく,その結果,莢数,莢重も少なかった.これより,播種期は3月下旬以降,移植期は4月上旬以降からの時期で検討すべきと考えられ,収穫期の前進目標は6月中下旬になるものと推定された.

  • 杉本 充, 上野 義栄, 植村 亮太
    2018 年 87 巻 1 号 p. 12-20
    発行日: 2018/01/05
    公開日: 2018/01/19
    ジャーナル フリー

    京都府の新たなエダマメ商品『京 夏ずきん』として生産される丹波黒大豆系の早生エダマメ品種「夏どり丹波黒1号」と「夏どり丹波黒2号」の収穫適期を解明するために,莢の肥大や外観の変化を経時的に調査するとともに,子実の発達と食味成分の変化を調査した.供試した両品種について株内の莢厚平均値の経過をみると,高温年の2010年では莢厚が約11 mmとなった開花後51~52日頃に,ほぼ平年気温並みの2011年では約12 mmとなった開花後56~57日頃に,肥大停止点が存在した.出荷規格の一つである莢厚10 mmより薄い莢が全体の30%未満となった時期を収穫期の早限とすると,両品種とも開花期からの平均気温積算値が1400℃を超えた直後となる.また,両品種ともに収穫適期と考えられた期間中に,黒大豆の特性である子実種皮の着色が進行したが,子実における遊離糖や遊離アミノ酸の含有率は,子実のへそ全体がピンク色を呈する時期までが最も多い傾向にあった.この時期の子実を内包する莢は,厚さが10~11 mm程度と出荷規格をやや上回る程度であるため,食味からみた収穫適期は,莢の外観から検討した収穫期間の早い時期に存在するものと考えられた.

  • 荒木 英樹, 水田 圭祐, 八田 浩一, 中村 和弘, 松中 仁, 藤間 充, 丹野 研一, 高橋 肇
    2018 年 87 巻 1 号 p. 21-29
    発行日: 2018/01/05
    公開日: 2018/01/19
    ジャーナル フリー

    コムギの枯れ熟れ様登熟不良は,登熟期間中に茎葉が早枯れし子実が軽くなる登熟障害で,発生原因は明らかにされていない.本研究では,熊本県のコムギ多収地域で発生する枯れ熟れ様登熟不良の発生要因を解明するために,土壌改良剤や窒素施肥の施用効果,植物体の窒素状態,品種の感受性差異を調査した.2011/12年と2012/13年には,施肥試験を実施した圃場で開花直後~開花後15日までの間に葉や穂が早枯れした.千粒重は,未発症圃に比べて2011/12年には15%減少し,2012/13年には30%も減少した.両年とも,症状はカルシウムやケイ酸,鉄を含む土壌改良剤では軽減しなかった.2012/13年試験の発症圃では,栄養成長期の生育が旺盛であった.早枯れの程度および粒重や葉身相対含水率の低下程度は,窒素追肥を施用しない処理区で大きく,実肥を増肥した処理区でも軽減しなかったが,基肥を増肥した処理区では小さくなった.穂を切除した処理区でも,葉色計値や相対含水率の低下程度が小さかった.稈あたりの窒素含有量は発症圃で多かった.土壌の理化学性は発症圃と未発症圃で大きな違いはなかった.既報で枯れ熟れ様登熟不良耐性が弱と評価された品種は,本地域の発症圃でも症状が重かった.枯れ熟れ様登熟不良を発症したミナミノカオリは,子実の窒素要求量が高いために茎葉からの窒素再転流が早く起こり,水吸収能低下や葉の枯れ上がりが早くに進んだと考えられた.

  • 福嶌 陽, 太田 久稔, 横上 晴郁, 津田 直人
    2018 年 87 巻 1 号 p. 30-36
    発行日: 2018/01/05
    公開日: 2018/01/19
    ジャーナル フリー

    東北地域における飼料用米向け水稲品種・系統の収量性を明らかにする目的で,既存の多収品種の「ふくひびき」,「べこあおば」,新しい多収品種・系統の「いわいだわら」,「奥羽418号」を用いた生産力検定試験の結果を解析した.飼料用品種は主食用品種と比較して,標肥移植栽培においてすでに多収であり,多肥移植栽培によってその収量差は拡大した.飼料用4品種・系統の中では,多肥移植栽培における収量に有意差は認められなかった.一方,極多肥移植栽培においては,稈長が短く耐倒伏性に優れた「奥羽418号」,「べこあおば」の粗玄米重が多い傾向にあった.しかし,これらの2品種・系統の極多肥栽培による増収効果は僅か2%であったことから,極多肥栽培により収量の飛躍的向上を目指すことは困難であると判断した.さらに,その後に育成された新系統を含めた飼料用向け10品種・系統と主食用6品種の多肥移植栽培における収量性を比較・解析した.その結果,すべての飼料用向け10品種・系統に共通の特性として,穂数が少なく,1穂シンク容量 (=1穂籾数×1粒重) が極めて大きいことが認められた.しかし,既存の多収品種「ふくひびき」,「べこあおば」を明らかに上回る多収の品種・系統は認められなかった.以上の結果から,さらなる極多肥品種を育成することは困難な現況にあり,むしろ安定多収や大規模化・低コスト化を可能とする品種を育成することが重要であると考察した.

  • 福嶌 陽, 太田 久稔, 横上 晴郁, 津田 直人
    2018 年 87 巻 1 号 p. 37-42
    発行日: 2018/01/05
    公開日: 2018/01/19
    ジャーナル フリー

    わが国の水稲作においては生産者の減少に伴い経営規模が拡大すること,そして,東北地域の大規模経営においては晩植栽培の必要性が生じることが予測される.そこで,晩植栽培の収量・品質・食味,および晩植栽培に適した品種特性を明らかにしようとした.5月中旬に移植した標植栽培と比較して6月中旬に移植した晩植栽培では,出穂期が18日遅くなり,穂数および登熟歩合が減少し,千粒重はやや増加し,1穂籾数は同程度であった.その結果,精玄米重が15%低下した.一方,品質はやや向上し,食味は同程度であった.以上の結果から,東北地域における晩植栽培は,作業分散が経営的に効果的であるならば,導入可能であると判断された.供試した9品種の中では,晩植栽培において出穂期が遅い品種ほど,登熟歩合が低下し,屑米重が増加する傾向にあった.よって,晩植栽培における減収程度を少なくするためには,極早生品種を用いることが有効であると推察された.

  • 福嶌 陽, 太田 久稔, 横上 晴郁, 津田 直人
    2018 年 87 巻 1 号 p. 43-52
    発行日: 2018/01/05
    公開日: 2018/01/19
    ジャーナル フリー

    東北地域における水稲19品種を,1950年以前に育成された品種 (Ⅰ群品種),1980年以前に育成された品種 (Ⅱ群品種),1980年以降に育成され,現在,普及している品種 (Ⅲ群品種),東北農研が育成した最近の主食用品種 (Ⅳ群品種),東北農研が育成した最近の飼料用品種 (Ⅴ群品種) に分類し,その特性を少肥移植栽培において比較した.稈長は,Ⅰ群品種で長く,Ⅱ群品種,Ⅲ群品種で中程度,Ⅳ群品種,Ⅴ群品種で短かった.一方,少肥移植栽培における収量には,品種群による明確な差異は認められなかった.これらのことから,東北地域の水稲品種における収量の歴史的増加の要因としては,施肥量が増加し,それに伴い稈長がやや短く耐倒伏性がやや優れたⅡ群品種,Ⅲ群品種が普及したことが挙げられた.形質間の関係をみると,穂数が少ない品種は,葉身幅が広く,節間直径が太く,1穂籾数が多く,千粒重が重いという関係が認められた.しかし,稈長は,他の形質と密接な関係は認められなかった.これらのことから,品種育成の歴史の中で,稈長が短くなることによって,必然的に変化した形質は少ないと推察された.玄米の外観品質 (品質)・食味に関しては,Ⅰ群品種,Ⅱ群品種は,様々な品質・食味の品種が混在しているのに対して,Ⅲ群品種,Ⅳ群品種は,いずれも品質・食味が優れていると推察された.以上の結果をもとにして,東北地域における水稲品種育成の今後の方向性について論じた.

品種・遺伝資源
  • 中道 浩司, 阿部 珠代, 粕谷 雅志, 神野 裕信
    2018 年 87 巻 1 号 p. 53-60
    発行日: 2018/01/05
    公開日: 2018/01/19
    ジャーナル フリー

    Glu-B1b, i) とGlu-B3i, g) およびWx-B1a, b) の8タイプの準同質遺伝子系統を用いて,製パン性に及ぼす遺伝子型の効果を検討した.Glu-B1iおよびGlu-B3gを同時に保持した系統は,SDS沈降量が多く,ミキシング時間が長く,パン比容積が大きかった.また,Glu-B3g型の系統は,Glu-B3i型の系統よりもパンクラムの弾力が大きかった.Wx-B1b型の系統はパンのクラムが柔らかく,焼成後の老化程度も小さい傾向があったが,弾力性が少ない傾向であった.また,Wx-B1b型の系統は,Glu-B1bを同時に保持した場合,パン比容積が小さかった.以上から,パンのクラムを柔らかくして老化を遅延させるにはWx-B1b,パンクラムに弾力性を付加する場合にはWx-B1aおよびGlu-B3gの導入が有効と考えられた.また,生地物性が弱い系統の改良においては,パン比容積の向上のためにGlu-B1iおよびGlu-B3gの同時導入が有効と考えられた.

  • 中元 朋実, 堀元 栄枝
    2018 年 87 巻 1 号 p. 61-66
    発行日: 2018/01/05
    公開日: 2018/01/19
    ジャーナル フリー

    アマの栽植密度の違いが収量と収量構成要素に及ぼす影響について検討した.油料アマの品種Lirinaを,2014年から2016年に3月中旬から4月中旬にかけての3つの時期に播種した.条間を30 cmとしてドリル播きした後に,個体の間隔がおよそ1 cm,2 cm,4 cmとなるように間引きを行い,栽植密度に3水準を設けた.収穫時の栽植密度は250~330個体 m–2 (H),150~160個体 m–2 (M),75~85個体 m–2 (L)であった.単位面積あたりの蒴数は,2016年のL区でH区に比べ少なかったことを除けば,栽植密度間に差がみとめられなかった.いずれの年においても,単位面積あたりの蒴数の決定に関わる3つの要素,個体あたりの茎数(主茎と一次分枝の数),茎あたりの花序分枝の数,花序分枝あたりの蒴数はいずれも,栽植密度が低いほど大きかった.いっぽう,蒴あたりの種子数,種子一粒重,種子収量には栽植密度間差はみとめられなかった.低い栽植密度の下では,一次分枝の発生,花序分枝の発生,花の分化の3つの補償的な過程を通じて,単位面積あたりの蒴数ひいては種子収量を一定に保つ過程が働いていることが示された.

研究・技術ノート
  • 小林 英和, 長田 健二
    2018 年 87 巻 1 号 p. 67-75
    発行日: 2018/01/05
    公開日: 2018/01/19
    ジャーナル フリー

    業務・加工用水稲品種「やまだわら」について,窒素施肥試験を実施するとともに,複数作期の栽培試験を比較して多収条件を検討し,それらをもとに平均単収の約1.5倍にあたる精玄米重800 g m–2以上達成のための栽培条件の提示を試みた.得られた最高収量は,2016年の施肥試験における877 g m–2であり,「やまだわら」の多収性が確認された.窒素施肥による増収効果は年次によって異なり,2016年は有意であったが,2015年は有意ではなかった.その際,両年次とも,施肥量の増量によって籾数は有意に増加していたことから,登熟の良否が収量の施肥反応における年次間差をもたらしていると考えられた.実際に,複数作期の試験結果を利用し,登熟期の気象条件と収量の関連を解析したところ,出穂後20日間の日射量が高いほど収量も高くなる傾向が認められた.一方で,出穂後20日間の平均気温と籾数が高いほど整粒歩合が低下する傾向も認められた.これらの結果をもとに,「やまだわら」において,一定の品質(整粒歩合60%以上)を確保した上で,精玄米重800 g m–2以上を達成する条件を検討したところ,試験地である広島県福山市では8月9~15日に出穂する作期を選択したうえで,精玄米重800 g m–2以上が実現可能な籾数(41~45千粒 m–2)を確保する窒素施肥が必要と考えられた.

  • 石﨑 昌洋, 川口 數美, 高橋 行継, 和田 義春
    2018 年 87 巻 1 号 p. 76-82
    発行日: 2018/01/05
    公開日: 2018/01/19
    ジャーナル フリー

    トリカブト(Aconitum japonicum Thunberg)は,キンポウゲ科の多年生草本で,その塊根はアルカロイドを含有する生薬として利用される薬用作物である.漢方製剤の原料に使用するうえでアルカロイドの成分含有率は極めて重要である.トリカブトの成分含有率は塊根の大きさと関係があるとされるが,その具体的な関係は明らかではない.本研究では,塊根の大きさと成分含有率の関係を調査した.塊根の総アルカロイド含有率は,塊根の乾物重と有意な負の相関関係にあり,35 g以上ではほぼ一定となる傾向を示した.圃場試験において塊根を大(30 mm以上),中(20 mm以上),小(20 mm以下)の3つに分級して,総アルカロイド,メサコニチン,ヒパコニチンおよびアコニチン含有率を調査したところ,塊根が大きくなると成分含有率は低下する傾向がみられ,成分含有率を低く抑えるためには,大きな塊根を生産する栽培法の確立が必要であった.しかし,成分含有率には栽培環境による影響および栽培環境と塊根の大きさによる交互効果が有意であったことからさらなる研究が必要である.1つの塊根内では,塊根の両端,特に芽を含む頂端部分で成分含有率が高かった.このことが塊根が大きくなると成分含有率が低くなる要因の1つと考えられた.また,このことから,多数の検体を分析する必要が生じた場合には,分析試料の縮分には縦方向に分割することが必要であることが示された.

情報
速報
  • 金井 一成, 板倉 健斗, 森田 茂紀
    2018 年 87 巻 1 号 p. 86-87
    発行日: 2018/05/01
    公開日: 2018/01/19
    ジャーナル フリー

    イネ科多年生植物であるエリアンサスは,不良環境条件でも旺盛に生育して,高いバイオマス生産性を示すことから,バイオマスエネルギーの原料作物として注目されている.エリアンサスをエネルギー変換して利用する際に,プラントに搬入する段階で,含水率を15%程度に下げておく必要がある.ただし,この乾燥に多くのエネルギーを使うことは,LCA (life cycle assessment:ある製品の全過程における環境負荷を定量的に推定・評価する手法) の観点から避けなければならない.そこで,定植2,3年目のエリアンサスを対象とし,刈取り時期と前処理の検討を行った結果,立ち枯れが進むにつれて刈取り時の含水率が低く,強制乾燥で含水率が15%に到達するまでの時間も短くなる傾向が認められた.また,立ち枯れが十分に進んだ翌年の3月に刈取り,損傷後約1ヶ月間,風乾処理を行うと,強制乾燥しなくても、含水率を15%以下にできた.エリアンサスをエネルギー利用する場合,このように乾燥することで,全体システムを最適化できる.

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