日本作物学会紀事
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87 巻 , 2 号
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総 説
  • 下野 裕之
    2018 年 87 巻 2 号 p. 113-124
    発行日: 2018/04/05
    公開日: 2018/06/29
    ジャーナル フリー

    寒冷地の米生産において生殖成長期間中の低温による障害型冷害がいまだ最大の制約である.本総説では障害型冷害が発生する限界温度や被害の定量化法について解説するとともに,雄性不稔を原因とするその発生メカニズムを活性酸素,糖代謝,植物ホルモン,根系の役割などから議論する.また最近のゲノム解析技術の進展により耐冷性に関与する遺伝子領域の同定が進み,それら遺伝子領域を集積した系統による耐冷性強化が進められている.今後の冷害研究の課題と展望について議論する.

研究論文
栽培
  • 篠遠 善哉, 松波 寿典, 大谷 隆二, 冠 秀昭, 丸山 幸夫
    2018 年 87 巻 2 号 p. 125-131
    発行日: 2018/04/05
    公開日: 2018/06/29
    ジャーナル フリー

    黒ボク土の水田転換畑にて,チゼルプラウ耕が土壌環境と作物生育に及ぼす影響を明らかにするため,試験1で土壌の物理性・化学性,およびトウモロコシの窒素吸収量を,試験2で土壌中の肥料分布をロータリ耕と比較した.試験1では5月下旬にロータリ耕(ロータリ区)とチゼルプラウ耕(プラウ区)で耕起した圃場にトウモロコシ2品種を播種した.土壌貫入抵抗値は,深さ0–5 cmでは両耕起区とも同程度であったが,プラウ区では深さ5 cm以深の土壌貫入抵抗値が急激に増加した.特に,深さ10–20 cmの土壌貫入抵抗値はロータリ区よりプラウ区で著しく高かった.また,深さ10 cmおよび20 cmの気相率はロータリ区よりプラウ区で低く,固相率はロータリ区よりプラウ区で高かった.土壌化学性については,第6葉期の土壌深さ0–5 cmにおいて,硝酸態窒素がロータリ区よりプラウ区で有意に多く,有効態リン酸および交換性カリも多い傾向であったが,成熟期には耕起法による差はみられなかった.また,トウモロコシの窒素吸収量に耕起法による有意な差はみられなかった.試験2ではロータリ区と比較してプラウ区では表層の肥料分布割合が高く,深さ0–10 cmに肥料の95%以上が分布していた.以上のことから,チゼルプラウ耕では,深さ5–20 cmの土壌が硬く,深さ10,20 cm気相率は低いが,深さ0–10 cmに肥料が多く分布するため,生育初期における表層の養分供給能が優れることが示された.また,水田転換畑におけるチゼルプラウ耕は窒素吸収量をロータリ耕と同程度に維持ししつつ,高速作業を可能にする耕起法であると考えられる.

  • 杉本 充, 蘆田 哲也, 齊藤 邦行
    2018 年 87 巻 2 号 p. 132-139
    発行日: 2018/04/05
    公開日: 2018/06/29
    ジャーナル フリー

    丹波黒大豆系エダマメ品種「紫ずきん2号」について,高品質で安定的な商品を出荷できるよう,生産者が適期収穫できる目安を明らかにすることを目的に2007~2009年の3カ年,莢厚と黄変莢発生について調査した.開花後日数,平均気温積算値(以下,積算気温)と莢厚との関係は,有意な回帰直線で表すことができた.「紫ずきん2号」の慣行栽培である6月中旬播種栽培において,共分散分析の結果,積算気温に対する莢厚増加の回帰直線に年次間差は認められず,積算気温が約1250℃の時期に,出荷規格の一つである莢厚11 mm以上の莢数が70%以上となった.6月中旬播種栽培では3カ年とも積算気温が約1380℃となった時期に,エダマメの商品性を低下させる黄化莢が出現し始めた.以上の検討から,「紫ずきん2号」における莢の外観からみた収穫適期は,積算気温により推定可能であると判断された.また,主茎上位4節着生莢と株内全2粒莢の莢厚増加の傾向には相違が見られなかったことから,「紫ずきん2号」の栽培期間中における莢肥大の状態は,主茎上位4節に着生する莢の外観によって把握できるものと考えられた.

  • 伊藤 景子, 白土 宏之, 大平 陽一, 川名 義明
    2018 年 87 巻 2 号 p. 140-146
    発行日: 2018/04/05
    公開日: 2018/06/29
    ジャーナル フリー

    無コーティング種子の代かき同時浅層土中播種栽培における苗立ち向上を目的として,播種時の催芽程度の違いが苗立ちや初期生育に与える影響について検討した.まず室内試験において,催芽種子と芽のみ伸長させた芽出し種子,根のみ伸長させた根出し種子,更に機械播種時の催芽部分の損傷を想定して芽や根を切除した種子を播種し,出芽と苗立ち,初期生育を調査した.芽出し種子と根出し種子は,催芽種子より出芽が早く苗立ちと初期生育は向上した.根出し種子は根を切除しても同様の向上効果が認められたが,芽出し種子は芽を切除すると苗立率は低下した.このことから,損傷の影響を受けにくい根出し種子は芽出し種子より実用的であると判断した.次に,根出し種子の苗立ちや初期生育の向上効果を秋田県大仙市の圃場において検討した.催芽種子と根出し種子を4月下旬の早期と5月中旬の普通期に代かき同時浅層土中播種し,苗立ちと初期生育を調査した.根出し種子は室内試験と同様に苗立ちと初期生育の向上効果が認められ,播種後10日間の平均気温が11.7~18.6℃の幅広い温度条件において苗立率と初期生育が向上した.以上より,根出し種子の播種は代かき同時浅層土中播種栽培における苗立ちの向上や安定化に有効な技術であると考えられた.

品質・加工
  • 田中 一生, 尾﨑 洋人, 平山 裕治, 菅原 彰
    2018 年 87 巻 2 号 p. 147-156
    発行日: 2018/04/05
    公開日: 2018/06/29
    ジャーナル フリー

    北海道で育成した酒造好適米(以下,酒米)品種の農業特性と酒造適性の産地間・品種間差異を検討し,農業特性では食用米品種との比較も行った.岩見沢市と比布町で栽培した酒米品種「吟風」と「彗星」ならびに 食用米品種「ゆめぴりか」と「ななつぼし」を用いた.データ解析には2005~2013年の北海道水稲奨励品種決定基本調査と醸造用原料米全国統一分析の結果を用いた.玄米収量は,食用米2品種の平均より酒米2品種の平均の方が,また「吟風」より「彗星」の方が,それぞれ多かった.その主要因は,前者では千粒重が重かったこと,後者では不稔歩合が低く,千粒重が重かったことであった.精米歩合70%の白米の粗タンパク質含有率(以下,タンパク含有率)は,食用米,酒米ともに,岩見沢市より比布町の方が,また,いずれの産地でも「吟風」より「彗星」の方が,それぞれ低かった.低タンパク含有率の酒米生産のためには,産地と品種の選定が重要である.20分吸水率は,「吟風」より「彗星」の方が低く,その主要因は心白発現率が低かったことであると推察した.蒸米吸水率は有意な産地間・品種間差異を示さなかった.前報で示した兵庫県の酒米品種「山田錦」と比較すると,いずれの産地でも北海道の酒米2品種の方が,耐倒伏性は強く,玄米収量は多かった.一方,千粒重は軽く,タンパク含有率は高く,20分吸水率と蒸米吸水率は低いなど,酒造適性は劣った.今後は,北海道の酒米品種における,これらの酒造適性を栽培法や育種によって兵庫県の「山田錦」並に改善する必要がある.

品種・遺伝資源
  • 杉浦 和彦, 加藤 満, 伊藤 晃, 井手 康人, 濱頭 葵, 中村 充, 野々山 利博, 中嶋 泰則
    2018 年 87 巻 2 号 p. 157-164
    発行日: 2018/04/05
    公開日: 2018/06/29
    ジャーナル フリー

    イネ斑点米カメムシはイネの重要な害虫であるが,カメムシ抵抗性を持つ実用的な普及品種はこれまで育成されていない.そのため,抵抗性品種を選抜するための,効率的な斑点米カメムシ抵抗性検定法を開発した.まず,検定に適するカメムシ放飼開始時期と放飼期間を検討した.カメムシ放飼開始時期については,抵抗性の異なる品種をポット栽培し,クモヘリカメムシ (Leptocorisa chinensis) を用いて試験を行った結果,出穂後15 日及び20 日の放飼で品種間差が明確となった.また,カメムシ放飼期間については,出穂後20 日にクモヘリカメムシ成虫5 頭を一定期間放飼した結果,放飼期間が長くなるほど斑点米発生率は増加し,4 日以上の放飼期間で品種間差が明確となった.これらの結果をもとに,検定を簡易に行うための切除茎を用いた検定法を検討した.出穂後20 日に検定個体の茎を止葉下第2 葉節より5 cmほど下の部分 (第Ⅲ節間) で水切りし,切除した茎を水に挿してガラス室内でクモヘリカメムシを7 日間放飼して,斑点米カメムシ抵抗性検定を実施した.その結果,斑点米発生率は品種により明確に異なり,品種間差を検出することができた.以上のことから,切除茎を用いた斑点米カメムシ抵抗性検定法は,検定にかかる労力を減らすことができ,育種選抜において有効な方法であると結論づけられた.

  • 服部 太一朗, 寺内 方克, 境垣内 岳雄, 石川 葉子, 早野 美智子, 樽本 祐助
    2018 年 87 巻 2 号 p. 165-175
    発行日: 2018/04/05
    公開日: 2018/06/29
    ジャーナル フリー

    南西諸島のサトウキビ産業における砂糖生産性の向上には,既存の製糖用品種への多収性導入が重要である.本研究では,南西諸島の環境条件下で機能する多収要因の解明を目的として,サトウキビ野生種と製糖用品種との種間雑種を,再び製糖用品種と交雑して作出した戻し交雑第1世代(BC1世代)における多収性の3品種系統を対象として,乾物生産特性および地上部と地下部の生育特性について,既存の製糖用品種との比較を通じて検討した.根系調査に付随する土壌攪乱を勘案して圃場を5区画に分割し,それぞれ異なる日に地上部,地下部を収穫して乾物重や葉面積等を調査した.植え付け後237日目の原料茎重は,BC1世代の3品種系統が製糖用品種を30~58%上回った.また,BC1世代の3品種系統は,1) 生育初期における比葉面積が大きい,2) 葉面積指数および葉身乾物重が一貫して大きい,および3) 生育初期に根系が速やかに発達する,といった共通の特性を示した.光合成速度には製糖用品種とBC1世代の3系統との間に有意な差異は認められなかった.以上から,生育初期の比葉面積が大きく葉面積指数の増大に有利であること,および,速やかな根系発達により葉面積指数増大に伴う養水分要求量の増加に対応できることが,本研究で供試したBC1世代の3品種系統に共通する多収性の主要機作であることが示唆された.

研究・技術ノート
  • 野見山 綾介, 松尾 直樹, 脇山 恭行, 柴田 昇平, 榮 誠三郎, 石塚 直樹, 岩﨑 亘典, 坂本 利弘
    2018 年 87 巻 2 号 p. 176-182
    発行日: 2018/04/05
    公開日: 2018/06/29
    ジャーナル フリー

    熊本地震により熊本市東区秋津地区にある54 aの圃場では土面の凹凸(不陸)が波板状に生じたが,均平化することができずにダイズ品種フクユタカが2016年7月中旬に作付けされた.そこで地震で生じた不陸が2016年度のダイズ栽培に及ぼす影響に関する知見を得るために,土面の凹部と凸部で栽培されたダイズの生育・収量調査を実施した.その結果,7月下旬から8月までの栄養成長期の降水量は非常に少なかったため,収穫本数だけでなく,主茎長,主茎節数および分枝数など基本栄養成長量に関しては,土面の凹凸で有意な差は認められなかった.しかし降水量が非常に多かった9月以降の生殖成長期には,凹部において葉色の低下や日中の葉温上昇が認められたことから,根粒の窒素固定能や根の吸水能が低下していた可能性が推察された.そして,収穫時において凹部では青立ち個体が多発し,収量は稔実莢数の減少を通して半減した.以上より,熊本地震により著しい不陸が発生した圃場において,凹部では降水が多かった生殖成長期に湿害を受け,窒素供給能や吸水能が低下し,稔実莢数の減少に伴い著しく減収し,青立ち個体も多発する現象が認められた.今後,不陸が生じた圃場で持続的に営農するためには,まず均平化を図ることが望まれるが,やむを得ず不陸が生じたまま栽培する場合は,湿害対策を講じるとともに収穫適期や作業性などにも留意し,不陸に伴う減収を軽減することが重要であると考えられる.

  • 中山 則和, 山本 亮, 細野 達夫, 大野 智史
    2018 年 87 巻 2 号 p. 183-191
    発行日: 2018/04/05
    公開日: 2018/06/29
    ジャーナル フリー

    北陸地域におけるダイズ品種「里のほほえみ」の裂皮粒抑止技術を確立するため,2014~2016年の同品種の栽培試験により得られた種子について,裂皮粒の発生様相と播種時期・環境条件との関係を調査した.裂皮の形状別では,種皮が不定形に裂けた不定形裂皮粒の発生が多く,線状に裂けた線形裂皮粒は少なかった.両裂皮粒とも6月中旬の晩播で発生は有意に減少し,特に不定形裂皮粒の減少が著しかった.同一年の同一播種日に限れば不定形裂皮の発生に種子粒大の影響が認められたが,3年間を通じて不定形裂皮の発生と粒大の間に有意な相関は認められなかったことから,晩播による不定形裂皮の減少には粒大以外の要因が主要因として関与したと考えられた.不定形裂皮粒率と開花始期の間には高い負の相関が認められ,播種時期そのものの早晩ではなく,播種時期の変化により開花時期が移動することが不定形裂皮の発生に影響を及ぼしていると推察された.開花始期以外では,不定形裂皮粒率と登熟日数ならびに登熟期の積算気温との間に比較的高い正の相関が認められた.開花始期は不定形裂皮の発生を推測する指標として有効と考えられ,上越地域では開花始期が7月23日頃以降となるように晩播することで不定形裂皮粒の発生量を5月下旬の標準播の50%以下に抑えられると推定された.線形裂皮については,裂皮粒率と登熟期の日射量の間に有意な正の相関が認められ,また,開花始期よりも播種日との相関が高かったことから,「里のほほえみ」の線形裂皮と不定形裂皮は発生機構が異なることが示唆された.

  • 提箸 祥幸, 佐藤 裕
    2018 年 87 巻 2 号 p. 192-197
    発行日: 2018/04/05
    公開日: 2018/06/29
    ジャーナル フリー

    水稲種子の温湯消毒は化学合成農薬を使用しない消毒法として注目されている.温湯消毒処理により一部の品種において発芽率の低下や,逆に発芽率の向上の報告があり,その効果について不明な点が多い.そこで本研究では,生産年の異なる北海道で栽培されている水稲品種を用いて,60℃10分の標準的とされる温湯消毒処理による発芽性,特に低温発芽性に及ぼす影響について検討した.常温下(27℃)では一部の品種において初期の発芽率が温湯消毒処理により向上したがその効果は低かった.低温下(15℃)では多くの供試品種で温湯消毒処理により発芽が早まる傾向が観察され,特に2014年産の種子において顕著な差が見られた.温湯消毒処理による低温発芽向上効果の高かった2014年産の「ななつぼし」,「ゆめぴりか」,「おぼろづき」を用いた低温出芽試験においても,温湯消毒処理により出芽が早まった.温湯消毒処理は北海道の栽培品種に対して負の影響を与える可能性が低いだけでなく,直播栽培において低温出芽を促進する方法となる可能性がある.

  • 北川 壽, 市原 泰博, 原 嘉隆, 中野 恵子
    2018 年 87 巻 2 号 p. 198-208
    発行日: 2018/04/05
    公開日: 2018/06/29
    ジャーナル フリー

    「水稲葉枯症」が常発する現地水田において,中干し等の水管理が収量に及ぼす影響について3年間試験を行った.その結果,慣行の水管理では土壌還元が進み,田植え40日後頃より上位葉が「白葉枯病」のように枯れ,坪状に黄褐色から赤褐色に変色する「水稲葉枯症」を発症し,収量が低かった.これに対し,中干し期から登熟中期にかけて2~3回,3~7日落水することで,酸化還元電位が高く推移し,症状が改善し,登熟歩合と収量が高くなった.特に,高温年は,慣行水管理で登熟歩合と収量が劣っており,落水による改善効果が大きかった.更に,このような水稲の還元障害は,養分の欠乏や過剰の障害であることから,稲体の無機成分含量や土壌の理化学的性質などの面から検討し,「水稲葉枯症」の発症要因として,鉄過剰症の可能性が考えられた.

  • 田村 克徳, 片岡 知守, 中西 愛, 佐藤 宏之, 田村 泰章, 坂井 真, 山口 修, 和田 卓也, 坪根 正雄, 多々 良泉, 徳田 ...
    2018 年 87 巻 2 号 p. 209-214
    発行日: 2018/04/05
    公開日: 2018/06/29
    ジャーナル フリー

    九州地域の高温に耐える玄米外観品質が優れる系統・品種を育成するために,高温登熟耐性基準品種の共同選定を,農研機構九州沖縄農業研究センター,福岡県農林業総合試験場,佐賀県農業試験研究センター,長崎県農林技術開発センター,大分県農林水産研究指導センター,熊本県農業研究センター,宮崎県総合農業試験場,鹿児島県農業開発研究センターで行った.九州地域の高温登熟耐性の基準品種として,“極早・早”熟期では 「なつほのか」を“強”,「みねはるか」を“やや強”,「日本晴」を“中”,「黄金晴」を“やや弱”,「初星」と「祭り晴」を“弱”に選定した.“中”熟期では「おてんとそだち」を“強”,「コガネマサリ」を“やや強”,「にこまる」を“中”,「シンレイ」を“やや弱”,「ヒノヒカリ」を“弱”とし,“晩・極晩”熟期では「ニシヒカリ」を“やや強”,「たちはるか」を“やや弱”,「あきさやか」を“弱”として選定した.

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