日本作物学会紀事
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87 巻 , 3 号
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研究論文
栽培
  • 寳川 拓生, 薮田 伸, 渡邉 健太, 川満 芳信
    2018 年 87 巻 3 号 p. 223-232
    発行日: 2018/07/05
    公開日: 2018/07/28
    ジャーナル フリー

    亜熱帯の沖縄において,ヒマワリは観賞利用されているが,油糧生産を目的とした品種や播種期に関しては不明な点が多い.そこで,油糧用ヒマワリを6品種供試して4作栽培し,生育および収量特性を明らかにし,最適播種期および品種特性を検討した.発芽から開花までの有効積算温度は,短日の秋冬播きでやや低い傾向があり,1000–1100℃日が上限で,開花までの日数は気温による強い支配が認められた.沖縄は年間を通じて10℃を下回ることなく温暖であり,周年的にヒマワリの生育が可能であることが示されたが,7月から10月は台風接近の可能性が高く,本実験の春夏播きのように特に頭花の重くなる開花期以降の被害が懸念される.子実収量が得られた秋冬播きの結果から,開花前の個体群成長速度 (CGR) だけでなく,開花期に乾物重が重く,開花後のCGRを高く維持することで高い子実収量が得られると推察された.台風害により収穫に至らなかった春夏播きの結果を見ると,秋冬播きに比べ開花時の乾物重が低く,生育期間中の気温も高いため,稔実子実数が低く,子実収量も低いことが推察された.従って,沖縄における子実収穫を目的とした油糧用ヒマワリの播種期は,台風および開花までの有効積算温度を考慮し,10月上旬から2月上旬が適していると考えられた.これらの播種期では,感光性が高く低温でも開花が早く,また,開花後のCGRも高い品種を用いることで,それぞれ300,110 kg 10 a–1の高い子実および油脂収量が得られることが明らかとなった.

収量予測・情報処理・環境
  • 熊谷 悦史, 高橋 智紀, 中野 聡史, 松尾 直樹
    2018 年 87 巻 3 号 p. 233-241
    発行日: 2018/07/05
    公開日: 2018/07/28
    ジャーナル フリー

    近年,気候変動の拡大に伴い,東北地方のダイズ生産への土壌乾燥害の影響が顕在化していると指摘されているが,土壌乾燥による減収の実態は十分に理解されていない.本研究では,農研機構メッシュ農業気象データを用い,FAO56モデルを農研機構東北農業研究センター刈和野試験地の圃場に適用し,そこで過去33年間に実施されたダイズの生産力検定試験成績(収量や百粒重など)と気象要素および土壌体積含水率との関係を解析した.土壌パラメータ(圃場容水量,永久しおれ点,耕深など)を取得することにより,FAO56モデルは作付期間中の土壌体積含水率の経時変化をうまく再現した.過去33年間の収量や百粒重と8月の平均気温や土壌体積含水率との間には有意な負の相関があった.さらに,土壌体積含水率を制御変数とした場合,収量や百粒重と平均気温との偏相関係数は有意でなかった.したがって,本試験成績においては,年々の土壌水分の変動によって,収量や百粒重の変動を主に説明でき,土壌乾燥の影響が大きいことが示された.このように,農研機構メッシュ農業気象データとFAO56モデルは,国内のダイズ作況への土壌乾燥の影響の実態を把握するのに有効な手段になると考えられる.

研究・技術ノート
  • 金田 吉弘, 西田 瑞彦
    2018 年 87 巻 3 号 p. 242-249
    発行日: 2018/07/05
    公開日: 2018/07/28
    ジャーナル フリー

    有機栽培水稲において,収量550~600 g m–2を目指す目標生育を設定した.また,有機肥料の窒素肥効率と窒素無機化特性を明らかにし,生育診断による追肥が収量に及ぼす影響を検証した.その結果,有機栽培の茎数はいずれの時期においても慣行栽培に比べて少なく推移するものの有効茎歩合が高い生育となり穂数はほぼ同等であった.有機栽培の葉色値は7月上旬までの生育初期は慣行栽培に比べて低いが,幼穂形成期以降は慣行栽培を上回った.5種類の有機肥料の窒素肥効率は,約40から80%で平均では69%であった.反応速度論的手法により求めた有機肥料の窒素無機化率は約20から60%であり,窒素肥効率との間には有意な正の相関が認められた.生育診断に基づき追肥を実施した結果,ほぼ目標値に近い穂数と葉色値に接近し,550~600 g m–2の目標収量が得られた.以上のことから,有機栽培水稲において,目標生育と生育診断に基づく追肥により550~600 g m–2の収量が得られることが明らかになった.

  • 杉本 充, 蘆田 哲也, 岡井 仁志, 齊藤 邦行
    2018 年 87 巻 3 号 p. 250-258
    発行日: 2018/07/05
    公開日: 2018/07/28
    ジャーナル フリー

    京都府の丹波黒大豆系エダマメ品種「紫ずきん2号」について,「紫ずきん」とのリレー出荷可能となる播種期を明らかにすることとともに,安定的な収量を得るため,栽植密度および培土期追肥の種類と窒素施用量について検討した.「紫ずきん2号」の播種期を移動させると収穫期も変動したが,収穫期の変動範囲は播種期の移動範囲より狭かった.適正な播種期は6月中旬から下旬で,これより播種期が遅いと収穫期が既存の「紫ずきん」と重なり,早いと出荷規格である莢厚11 mm以上莢の総莢重に占める割合が減少し,収量が低下した.「紫ずきん2号」は密植になるほどm2当たり総莢数,総莢重が増加したが,莢厚11 mm以上莢重の割合は株間20 cm以下の区で低下する傾向がみられた.したがって,適正な栽植密度は,条間90 cmに対して,株間は30~40 cmと考えられた.培土期追肥の検討では,シグモイド溶出型40日タイプの被覆尿素肥料 (CUS40) は2008年のような少収年においては,総莢数や莢厚11 mm以上の莢重に対してCUS40の効果が現れた一方,2009年のような多収年では,収量への影響は顕在化しなかった可能性が考えられた.

速報
  • 水嶋 啓太, 金井 一成, 森田 茂紀
    2018 年 87 巻 3 号 p. 259-260
    発行日: 2018/07/05
    公開日: 2018/07/28
    ジャーナル フリー

    エネルギー作物エリアンサスの最適栽植密度や間引きの時期は確立できていない.そこで,エリアンサスを2 m×1 m で定植し,1年目中密度区と,2年目中密度区,間引いて2 m×2 m とした2年目低密度区を設定し,収量と群落構造とを比較検討した.その結果,2年目の収量は低密度区<中密度区だが,1株当りのバイオマス量は逆で,間引きによって株の生育が促進された.2年目低密度区の群落構造を見ると,中密度区よりも各器官量が少なかった.複数年の合計収量を最大化するには,群落の生育をみながら間引く順応的な管理が必要である.

  • 板倉 健斗, 金井 一成, 森田 茂紀
    2018 年 87 巻 3 号 p. 261-262
    発行日: 2018/07/05
    公開日: 2018/07/28
    ジャーナル フリー

    石油枯渇や地球温暖化の対策の一つとして,バイオマスエネルギーが注目されており,著者らは不良環境下でも高いバイオマス生産性を示すエリアンサスに着目し,栽培研究を進めている.高いバイオマス生産性は,茎葉部の旺盛な生育が支えている.そこで,本研究では,大型の茎葉部を構成している分げつの生育の様相を把握するために,発育形態学的な解析を行った.その結果,茎葉部を構成する個々の分げつにおいて,上位3 枚程度の葉が同時に展開し,その生長速度が速いだけでなく,生長期間も長いため,多くの長大な葉身が形成されていた.また,分げつを解剖すると,葉身に比較して葉鞘は相対的に短いが,伸長した節間が多く,葉鞘の着生する位置が離れていた.このような生育の結果,茎葉部の受光態勢が優れ,高いバイオマス生産性を発揮していると考えられる.

  • 桐山 大輝, 金井 一成, 森田 茂紀
    2018 年 87 巻 3 号 p. 263-264
    発行日: 2018/07/05
    公開日: 2018/07/28
    ジャーナル フリー

    著者らは耕作放棄地を農地として保全するために,荒廃程度によって分類し,それぞれに応じた対策を講じることを先に提案した.しかし,具体的な事例で検証は行っていなかったので,神奈川県厚木市を対象に,耕作放棄地を発生後5年以内,5年以上10年未満,10年以上の3つに分類し,面積と分布を解析した.その結果,2015年において,発生後5年以内の耕作放棄地が8.3 ha,5年以上10年未満経過したものが1.6~3.4 haと推定できた.10年以上経過したものは36.3~38.2 haで,多くは厚木市の西側に分布する.この解析結果は耕作放棄地を農地として保全していくのに役立つ.

  • 宋 勇, 国分 牧衛, 中嶋 孝幸, 許 東河, 本間 香貴
    2018 年 87 巻 3 号 p. 265-266
    発行日: 2018/07/05
    公開日: 2018/07/28
    ジャーナル フリー

    NIASコアコレクション世界のダイズから相対乾物重に基づき選抜した塩ストレス耐性と感受性各9品種を用いてポット実験を行い,塩ストレス下における部位別のNaとK濃度を測定し,その耐性機構について検討を行った.塩ストレス耐性9品種中7品種において,吸収したNaを根に留め,葉身への移行を抑制し,耐性を示すことが確認できた.しかしながら,残り2品種(M 44,U-1741-2-2 NO.3)では,葉身へのNa移行が感受性品種と同程度に生じており,別な耐性機構の存在が示唆された.

日本作物学会ミニシンポジウム要旨
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