日本作物学会紀事
Online ISSN : 1349-0990
Print ISSN : 0011-1848
ISSN-L : 0011-1848
88 巻 , 3 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
研究論文
栽培
  • 山城 美代, 鬼頭 誠, 道山 弘康
    2019 年 88 巻 3 号 p. 161-167
    発行日: 2019/07/05
    公開日: 2019/07/17
    ジャーナル フリー

    近年,沖縄島北部と宮古島でソバ栽培が始まっている.両地域にはそれぞれ酸性の国頭マージ(赤色土)と概ね中性の島尻マージ(暗赤色土)が分布している.これら土壌は日本のソバ栽培地の多くに分布する黒ボク土とは土壌有機物量やリンの存在形態など,土壌の理化学性に大きな違いがある.本試験では,国頭マージと島尻マージおよび黒ボク土を用いてソバを栽培し,生育量,収量および各種養分吸収量を比較した.ソバの生育量と収量は黒ボク土に比べて島尻マージより国頭マージで低下し,側枝花房数の減少と結実率の低下が主因と考えられた.窒素含有率は茎と子実において国頭マージで低かった.リン含有率は子実では国頭マージが黒ボク土よりわずかに低かったが,茎では有意に高かった.カリウム含有率は全ての器官で黒ボク土が著しく高く,国頭マージ,島尻マージの順に有意に低下していた.施肥を行っていないカルシウム含有率は子実では土壌間に顕著な違いがなかったが,茎では土壌の交換性カルシウム含有率を反映して国頭マージは黒ボク土と同程度であり,島尻マージでは高かった.マグネシウム含有率は全ての器官とも黒ボク土で最も低く,島尻マージ,国頭マージの順に高くなった.子実重,茎重,側枝花房数は土壌の窒素含有率とAl型リン含有率と高い正の相関が認められたが,Fe型リンや可給態リンとは有意な相関がなく,施肥リンがFe型で固定される沖縄の土壌とは異なり, Al型で固定される黒ボク土ではリン吸収が高まることで生育量と収量が増加したと考えられる.

  • 大平 陽一, 白土 宏之, 川名 義明, 伊藤 景子, 今須 宏美, 佐々木 良治
    2019 年 88 巻 3 号 p. 168-175
    発行日: 2019/07/05
    公開日: 2019/07/17
    ジャーナル フリー

    多用途向け多収性水稲品種に由来する漏生イネの発生を効果的に抑制するために,石灰窒素散布後の耕起時期が漏生イネの出芽・苗立ちに及ぼす影響を気象条件も考慮して検討した.ポット試験で土壌表面の種子に石灰窒素を散布し,適宜散水しながら3~20日経過後に石灰窒素,種子および土壌を混和して出芽させると,混和までの日数が長いほど出芽率が低下した.一方,石灰窒素散布直後の混和や乾燥条件では出芽が抑制されなかった.稲ワラを取り除いた圃場に種子を散播することで疑似的な脱落籾を作出した試験においても,石灰窒素散布直後に耕起すると漏生イネの苗立ち抑制効果が得られなかった.石灰窒素散布後に耕起を行う場合,散布日から耕起日までの平均気温が11~15℃で適度な土壌水分があれば,耕起までの期間を少なくとも2週間とすることで漏生イネの発生は抑制されると考えられた.稲ワラが有る条件でも,石灰窒素散布後に一定期間を経てから種子を土中に埋設すると越冬後の発芽率は低下することが明らかになった.しかし,稲ワラが無い条件と比較して石灰窒素の効果は半減以下になると推察された.

品質・加工
  • 谷藤 健, 加藤 淳
    2019 年 88 巻 3 号 p. 176-181
    発行日: 2019/07/05
    公開日: 2019/07/17
    ジャーナル フリー

    ダイズ子実からの豆腐の硬さ (破断応力) の簡易な評価方法として,近赤外分光分析を検討した.ダイズ試料の産年,試料性状 (粉砕または全粒),スペクトルの種類 (原スペクトルまたは二次微分スペクトル) によらず,いずれの検量線でも実測値への強い回帰が認められたが,省力的かつ非破壊で未知試料への適用性も高い全粒試料の二次微分スペクトルによる検量線を採用した.この検量線は他年産試料への適合性も優り,スクリーニング用途においては十分に実用性を有する精度と判断されたことから,系統選抜,特に初期世代の検定において効果が期待できる.

作物生理・細胞工学
  • 三井 貴博, 丸山 幸夫
    2019 年 88 巻 3 号 p. 182-186
    発行日: 2019/07/05
    公開日: 2019/07/17
    ジャーナル フリー

    イネ (Oryza sativa L.) は生殖成長期の高温ストレスに敏感であり,温度上昇に伴って不稔籾 (高温不稔) の発生が増加する.今後,地球の平均気温が上昇すると,高温不稔が深刻な問題になる.そこで,本研究では穂ばらみ期に植物ホルモンのオーキシン (IAA) とジャスモン酸 (JA) をそれぞれ散布することにより,イネの高温不稔を軽減できるか調べた.コシヒカリと高温耐性品種のあきたこまちの苗をポットで栽培し,穂ばらみ期に39℃,12時間の高温処理を5日間連続で行った.高温処理開始の前日と処理中にIAAまたはJAを合計4回散布し,成熟期に茎葉乾物重と穂重,地上部乾物重,不稔率,1穂あたり籾数,1穂あたり籾重,1籾重を調査した.あきたこまちはIAA 10–7 Mの散布によって高温不稔が軽減されたがJAによる影響はみられなかった.コシヒカリではIAA,JAとも不稔は軽減されなかった.

形態
  • 金井 一成, 佐藤 湧大, 小泉 秀人, 森田 茂紀
    2019 年 88 巻 3 号 p. 187-192
    発行日: 2019/07/05
    公開日: 2019/07/17
    ジャーナル フリー

    石油枯渇や地球温暖化への対応策として,バイオマスエネルギーの利用が注目されている.著者らは,エネルギーと食料との競合を避けるためセルロース系エネルギー作物として,エリアンサス (Saccharum spp.) に着目して栽培研究を進めている.エリアンサスはイネ科の多年生作物で,毎年,刈り株から再生するが,この過程における分げつ形成が高いバイオマス収量を支えている.本研究ではエリアンサス群落を構成する株を対象として,とくに生育初期における分げつ形成について解析を行った.その結果,再生株は発育形態学的に異なる3種類の分げつ,すなわち,枯死分げつ,旧分げつ,新分げつから構成されていることが明らかになった.株の再生時には,まず旧分げつが生育を開始し,それから少し遅れて新分げつが出現した.ポット栽培した材料を解剖して,分げつ芽の形成や生育の規則性について観察を行った結果,分げつ芽が動き出すためには,母茎の生育がある程度進む必要があることが示唆された.また,定点カメラによる写真撮影とコドラート法を利用して新分げつと旧分げつの形成位置を解析した結果,再生では株の周辺側に形成される分げつが多いこと,とくに新分げつでその傾向が著しいことが明らかになった.このような生育特性の結果,エリアンサスの株は年々,分げつ数が増えながら株が大型化していくものと考えられる.

研究・技術ノート
  • 中込 弘二, 出田 収, 重宗 明子, 太田 久稔, 福嶌 陽, 横上 晴郁, 津田 直人, 小林 麻子, 林 猛, 両角 悠作
    2019 年 88 巻 3 号 p. 193-203
    発行日: 2019/07/05
    公開日: 2019/07/17
    ジャーナル フリー

    玄米の胴割れ発生が少ない品種を育成するための選抜指標を作成する目的で,刈遅れにより玄米の胴割れを助長させ,胴割れ粒の割合で評価する刈遅法で,寒冷地に適した胴割れ耐性基準品種選定試験を行った.試験は寒冷地北部に位置する東北農業研究センター,寒冷地南部に位置する福井県農業試験場および登熟期間の気温がより高温となる西日本農業研究センターにおいて,2015年から2017年の3カ年実施した.その結果,寒冷地北部早生熟期では 「奥羽431号」 を胴割れ耐性‘強’,「はなの舞」 および 「奥羽390号」 を‘中’,「あきたこまち」 を‘やや弱’,「つがるロマン」 を‘弱’として選定した.寒冷地北部中生熟期では 「羽系1210」 を‘強’,「ひとめぼれ」 および 「はえぬき」 を‘中’,「トヨニシキ」 および 「雪化粧」 を‘弱’として選定した.寒冷地南部早生熟期では 「奥羽431号」 を‘強’,「イナバワセ」 を‘中’,「あきたこまち」 を‘やや弱’,「トヨニシキ」 を‘弱’として選定した.寒冷地南部中生熟期では,「笑みの絆」 を‘強’,「ひとめぼれ」 および 「はえぬき」 を‘中’,「コシヒカリ」 を‘やや弱’として選定した.また,これらの基準品種は,「奥羽431号」 および 「羽系1210」 を除き,刈遅法の代替法とした,籾を15℃の水に浸漬し自然乾燥する籾水浸法や玄米を25℃で5時間の吸湿処理する玄米吸湿法にも適用できると判断された.

  • 齋藤 秀文, 松波 寿典
    2019 年 88 巻 3 号 p. 204-208
    発行日: 2019/07/05
    公開日: 2019/07/17
    ジャーナル フリー

    東北地域の水田輪作体系では,幅広い作目を迅速に切替えることが重要であり,耕起・播種作業の効率化が求められている.本研究では,東北太平洋側地域に広く分布する黒ボク土水田転換畑において,チゼルプラウを用いた簡易耕同時播種栽培 (以下,CPS) の播種作業性,ダイズの生育,収量,品質について,省力・簡易栽培技術である散播浅耕栽培 (以下,散播) と比較し,その特徴を明らかにすることを目的とした.散播に比べCPSでは播種作業時間はやや短縮されたことから,CPSにおいても高い作業効率が達成されることが明らかになった.CPSの播種時の砕土率は,散播に比べて低かったものの,播種後20日頃の苗立ち状況や生育に有意な差は認められなかった.また,地上部乾物重の推移,開花期と子実肥大期におけるLAI,葉色に播種法間差は認められなかった.一方,開花期までの群落内の地際部における相対光量子密度の推移は散播よりもCPSでやや高かった.雑草の発生本数に播種法間差は認められなかったが,雑草の個体重はCPSで重い傾向がみられた.成熟期の生育,収量,品質に播種法間差は認められなかった.これらのことから,黒ボク土水田輪作体系下におけるチゼルプラウによる簡易耕同時播種栽培は散播浅耕栽培と同様にダイズに適した省力栽培法であることが明らかとなった.

情 報
意 見
速 報
日本作物学会ミニシンポジウム要旨
feedback
Top