日本作物学会紀事
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最新号
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総 説
  • 福嶌 陽
    2020 年 89 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2020/01/05
    公開日: 2020/01/23
    ジャーナル フリー

    我が国の水田作においては,生産者の高齢化・減少が進み経営規模が拡大されること,および水稲・米の用途の多様化が進むことが予測される.従来の水田作においては,単価が高い美味しい米を家庭用向けに生産するため,耐倒伏性の劣るブランド米品種が施肥を控えて栽培されてきた.これに対して,業務用,飼料用向けには,単価は低くても多収により収益を高めることが求められ,そのためには耐倒伏性の優れる多収品種を多肥栽培することが有効である.東北地域の冷涼な気象条件は,多収・高品質・良食味の米を生産するのに適している一方で,多様な作期を設定することを困難としており,また冷害やいもち病の発生の危険性も高くしている.東北地域の大規模経営においては,ブランド米品種の栽培の空いた時間や場所を効率的に利用できる業務用・飼料用向け品種の直播栽培,疎植栽培,晩植栽培が有望である.これらの点を踏まえ,東北地域における業務用・飼料用向け水稲品種の育成・栽培技術の展望について論じた.

研究論文
栽培
  • 磯部 勝孝, 鈴木 大輔, 賀来 はるか, 加賀 亮之介, 成田 啓人, 小野 翼, 肥後 昌男
    2020 年 89 巻 1 号 p. 8-15
    発行日: 2020/01/05
    公開日: 2020/01/23
    ジャーナル フリー

    ダイズ品種里のほほえみが関東南部でも栽培可能か検討するため,最適な播種期と栽植密度について調査し,さらに東日本で栽培されている主な品種と生育,収量の違いを比較した.里のほほえみは6月に播種しても7月に播種しても子実収量や子実タンパク質含有率はほとんど変わらなかった.7月播種で子実収量が低下しない要因のひとつは6月播種に比べ7月播種で1莢粒数と1節当たりの莢数が増加することが挙げられる.また,7月播種では1 m2当たり11.1個体と22.2個体の栽植密度では子実収量や子実タンパク質含有率に差がなかった.莢先熟は7月播種ではほとんど発生しなかったが,6月播種では2017年の栽培で多くの個体で発生した.これらのことから,関東南部で里のほほえみを栽培するには7月播種で1 m2当たり11.1個体の栽植密度にするのがよいと考えられた.里のほほえみはエンレイ,タチナガハ,あやこがね等の品種に比べ主茎の直径が太く,最下着莢節位高が高く,莢先熟の発生も少ないことが明らかになった.さらに,供試した品種と同等かそれ以上の子実収量と子実タンパク質含有率を示したことから,関東南部でも栽培可能な品種であると考えられた.

研究・技術ノート
  • 小林 英和, 長田 健二
    2020 年 89 巻 1 号 p. 16-23
    発行日: 2020/01/05
    公開日: 2020/01/23
    ジャーナル フリー

    近年,精米販売量に占める業務用米の割合が増加しているが,業務用米においては多収と一定程度の品質の両立が求められるため,主食用とは異なる栽培管理が必要となる.本研究では,良食味・多収で業務利用に適した水稲新品種「恋初めし」での最適な窒素施肥体系を検討するため,生育前半の施肥量3水準(3,6,9 g m–2)と穂肥3水準(0,3,6 g m–2)を組み合わせた9処理の施肥試験を2017年と2018年に計3作期実施した.精玄米重は,3作期共通して穂肥が3または6 g m–2の条件で多収となり,その多収の要因としては,施肥量の増量による籾数の増加が関与していると考えられた.一方,外観品質は総窒素施肥量が多いほど低下し,特に穂肥の影響が大きかった.これらの結果から,「恋初めし」においては,生育前半施肥量6 g m–2,穂肥量3 g m–2が収量および品質の両面から最適な窒素施肥体系と判断された.また,外観品質の作期間差が大きく,高温および寡照条件で整粒歩合が低くなったことから,適切な作期の選択による外観品質の向上も重要と考えられた.

  • 伊田 黎之輔, 伊田 眞澄
    2020 年 89 巻 1 号 p. 24-28
    発行日: 2020/01/05
    公開日: 2020/01/23
    ジャーナル フリー

    水稲育苗の軽量化を達成する一つの方法として,ロックウール成型培地が利用されている.従来の16 mm厚ロックウール成型培地に対して,2017年から上市された新規格の13 mm厚ロックウール成型培地による水稲苗の生育特性に関する報告は皆無である.著者らは水稲育苗箱全量施肥専用肥料(苗箱まかせ)を施肥した場合の13 mm厚ロックウール成型培地における水稲苗の特性について16 mm培地を比較対照にして検討した.その結果,草丈,葉齢,発根数(種子根+冠根),地上部乾物重,地下部乾物重,苗マット強度は16 mm厚ロックウール成型培地に比べて統計的有意差は認められなかった.また,13 mm厚ロックウール成型培地に苗箱まかせを施用する場合,適正な覆土の厚さ(5~7 mm)を確保できる施肥量は877~1111 g 箱–1が推定され,16 mm厚ロックウール成型培地に比べて1.2~1.5倍量の施肥が可能となることが示された.

  • 坂本 知昭, 片山(池上) 礼子
    2020 年 89 巻 1 号 p. 29-33
    発行日: 2020/01/05
    公開日: 2020/01/23
    ジャーナル フリー

    石川県で育成されたサツマイモ品種「兼六」は蒸切干などの加工に用いることを目的に栽培されるため,塊根の増収だけではなく平均塊根重の増加や条溝発生の抑制も求められる.砂壌土圃場における基肥の施用は「兼六」の塊根数を増加させたが,平均塊根重は減少して収量は無施肥と同程度となった.一方挿苗8週後に施肥を行うと塊根数は抑制されたが,個々の塊根重が増加して収量が増加し,さらに無施肥条件下で多発した条溝を抑制することもできた.施肥方法の違いは遊離糖含量およびβ–カロテン含量に対してほとんど影響しなかったことから,蒸切干などの加工に適した塊根の収穫量を増やすためには,生育中期での施肥が有効であると考えられた.

  • 大久保 和男, 高橋 幹子
    2020 年 89 巻 1 号 p. 34-39
    発行日: 2020/01/05
    公開日: 2020/01/23
    ジャーナル フリー

    岡山県南部で栽培されている水稲品種「ヒノヒカリ」(脱粒性難),「雄町」(やや易),「アケボノ」(易),「朝日」(極易)を用いて,穂の握り締めによる脱粒割合により脱粒程度を調査し,酷暑年であった2010年と低温傾向が強かった2015年の脱粒程度の年次間差を検討した.「ヒノヒカリ」と「雄町」では脱粒割合の年次間差は殆ど認められなかったが,「アケボノ」と「朝日」では脱粒割合は2015年で2010年よりも高くなり,その年次間差は「朝日」で「アケボノ」よりも大きかった.これらの結果から,脱粒割合は,脱粒し易い品種ほど年次変動が大きいこと,および低温によって増大することが示唆された.

  • 中元 朋実
    2020 年 89 巻 1 号 p. 40-45
    発行日: 2020/01/05
    公開日: 2020/01/23
    ジャーナル フリー

    アマ (Linum usitatissimum L.) の下位節分枝と花序分枝の数は,栽植密度によって変化し,種子収量を決定する上で重要な収量構成要素である.これらの分枝の発生の品種による違いと栽植間隔に対する反応について調査した.2017年と2018年に,油料アマの品種LirinaとNR2,繊維アマの品種あおやぎとペルノー1号を栽培した.条間を30 cmとしてドリル播きした後に,個体の間隔が1 cm(密植)と5 cm(疎植)となるように間引きを行った.油料アマの2品種は繊維アマの2品種に比べて,茎が短く,全長に占める花序長の割合が高く,蒴数が多く,種子収量が高かった.蒴をつける下位節分枝は,いずれの品種でも疎植の際にのみみられたが,Lirinaでは他の品種に比べて数が少なかった.主茎の花序分枝数は,あおやぎでは油料アマの2品種より少なかったが,ペルノー1号では油料アマと同程度であった.いずれの品種でも,疎植にすると密植に比べて,主茎の花序分枝数が増加しただけでなく,花序分枝あたりの蒴数も増加した.この花序分枝あたりの蒴数の増加は,その原因となる二次花序分枝数の増加とともに,油料アマにおいて顕著であった.

情 報
速 報
  • 小原 香澄, 本間 香貴, 田島 亮介, 牧 雅康, 齋藤 裕樹, 橋本 直之, 山本 修平, 本郷 千春
    2020 年 89 巻 1 号 p. 50-51
    発行日: 2020/01/05
    公開日: 2020/01/23
    ジャーナル フリー

    ドローンに代表されるUAV(Unmanned Aerial Vehicle)を用いたリモートセンシングが普及しつつあり,水稲栽培においてはSPAD値の推定技術の確立が求められている.本研究ではRGB画像を基にしたSPAD値の推定方法について検討した.農家圃場にて穂揃い期に測定したSPAD値に対して重回帰分析をしたところ,RGB画像のGの平均値とBの平均値,もしくはLab色空間への変換によるbの平均値と標準偏差が変数として選択された.Lab色空間を用いた推定はRGBを用いた推定よりも決定係数が高く,明度を分離することができるなどが利点であると考えられた.これらの結果は葉色板を用いた検討からも妥当性が示唆された.今後は葉の画素の抽出と反射率を用いた一般化が課題であると考えられた.

  • 橋本 直之, 山本 修平, 牧 雅康, 本間 香貴
    2020 年 89 巻 1 号 p. 52-53
    発行日: 2020/01/05
    公開日: 2020/01/23
    ジャーナル フリー

    宮城県のダイズ圃場を対象として生育初期の土壌体積含水率の推定を行い,栽培期間中の土壌体積含水率との関係を解析した.UAV撮影画像から得た赤色波長帯反射率と地表面高低差はそれぞれ,実測土壌体積含水率と相関が見られた.これらを説明変数とする重回帰式により,栽培初期の土壌体積含水率を誤差0.021 m3 m–3で推定できた.推定土壌体積含水率は,栽培期間中の実測土壌体積含水率と決定係数0.45以上の関係を示した.以上よりUAVを用いて栽培初期の土壌体積含水率を推定し,湿害発生予測に資することが可能と考えられた.

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