日本色彩学会誌
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42 巻, 3+ 号
日本色彩学会第49 回全国大会[大阪]’18 発表論文集
選択された号の論文の72件中51~72を表示しています
Supplement
  • 鉄尾 隆太, 篠田 博之
    2018 年 42 巻 3+ 号 p. 167-
    発行日: 2018/05/01
    公開日: 2018/07/17
    ジャーナル フリー

     ディスプレイのキャリブレーションは通常測色機器を用いXYZの三刺激値で行われるが,本研究では,誰しもが手にしたことがある安価なデジタルカメラなどの機器を用いて様々な波長で色をとらえディスプレイキャリブレーションを分光的に行う手法を提案する.ディスプレイの分光的キャリブレーションを実現するにあたり,カメラの分光感度およびディスプレイの分光放射照度をカメラの画像から正確に推定する必要がある.まず,カメラの分光感度の推定,その後ディスプレイの分光放射照度を推定するという流れで本実験を進めた.カメラの分光感度を求めるには分光放射照度が既知であるディスプレイが必要となるため初めに測定しておくこととする.さらに,本研究では現実の輝度値や色度を再現するためにより広い輝度の領域で多くの階調情報を取得できるHigh Dynamic Range Imageを使用する.これらのカメラの信号値,測定値を使用しMATLABで解析を行なった.ディスプレイ分光放射照度の推定値と測定値を比較することで提案手法の精度を確認する.

  • 山本 裕之, 酒井 英樹, 北村 祥太, 高山 正宏, 伊與田 浩志
    2018 年 42 巻 3+ 号 p. 169-
    発行日: 2018/05/01
    公開日: 2018/07/17
    ジャーナル フリー

     表面の色や光沢の分布は,食品の品質や価値を評価する際に重要な情報である.発表者らはこれまで,ディジタルカメラとドーム型照明を用いることで,食品の色情報を二次元で記録することができる非接触式測色システムの開発を行ってきた.また,食品の品質向上を目指して,実際の食品工場で使用される連続式蒸し器を用い,蒸し加熱時に蒸し器内への空気の混入が加熱後の製品の表面色に与える影響を調べてきた.本報では,これらの測色装置の開発と実験的研究の続報として二種類の蒸し饅頭(黒糖,よもぎ)を試料として実験を行った結果を報告する.今回の実験ならびに解析では,開発した測色システムにより得られたSCE並びにSCI画像からハイライト成分を除くことでより正確な色情報を取得し,蒸し器内への空気混入量が加熱後の食品の色や光沢に与える影響を前報のデータを含めて調べた.その結果,加熱により明度L*の値は増加し,空気混入量が少ないほどL*は大きくなる傾向がみられた.また,光沢Gs(20°)の値は,加熱により減少し,空気混入量が少ないほど小さくなる傾向を有することがわかった.

  • Kamron Yongsue, Chanprapha Phuangsuwan
    2018 年 42 巻 3+ 号 p. 172-
    発行日: 2018/05/01
    公開日: 2018/07/17
    ジャーナル フリー

     This research aimed to investigate the color and form of waterlily that reflect consumers’ preferences of Thai people. The questionnaire choice of adjective was used to investigate the preference of color and shape of waterlily. We selected five colors and three types of form of waterlily to be used as stimuli of this experiment. Four hundred people participated in the experiment. The results showed that the preference for the colors of the waterlily is pink and form is cup shape. The petals of waterlily affected the feelings of preference in elegance and pure.

  • Paninee Boonlert, Chanprapha Phuangsuwan
    2018 年 42 巻 3+ 号 p. 175-
    発行日: 2018/05/01
    公開日: 2018/07/17
    ジャーナル フリー

     The research was conducted to investigate how Thai news anchors explain things regarding colors in order for listeners of radio broadcasting to verify the same colors. The objective of this study was to test whether the newscaster and listeners in Thailand have the same understanding of color verification and its problems. The attested colors are composed of 24 colors with similar and different tones regarding the Macbeth ColorChecker. The used instruments were Macbeth ColorChecker for National Broadcasting Services of Thailand’s news anchors to verify colors, audio clips of color verification and questionnaires. The research was delivered to address problems of color clarification in audio media to develop the news program with listener analysis.

  • 礒井 航, 篠田 博之
    2018 年 42 巻 3+ 号 p. 179-
    発行日: 2018/05/01
    公開日: 2018/07/17
    ジャーナル フリー

     加齢による目の病気の一つに白内障がある.白内障とは,水晶体が白濁して眼球内で外光が散乱し,視覚機能が低下する症状を指す.白内障は進行度合いに個人差があり,個人によって適切な環境作りが求められ,そのために,進行度合いを数値として評価する必要がある.白内障患者の見えに影響を与えるのは白濁による散乱特性が大きい.よって本研究では, Haze値を水晶体に想定し,被験者を若年者として簡易な心理物理学実験を行い,空間解像力を評価した.疑似白内障状況の再現には,かすみフィルタを用いた.実験では,ガボアパッチとその周辺部分で構成された刺激を参照刺激とテスト刺激とし,テスト刺激の視認性をME法で評価した.ガボアパッチの空間周波数は5条件,周辺部分の輝度レベルは9条件,想定するHaze値は4条件設定した.結果,空間周波数の増加及び視標周辺の輝度の増加に伴って視認性は低下し,Haze値が増加するとその低下率はより大きくなった.これを2次元シグモイド関数で近似し低下率を示すパラメータをHaze値の関数として導出した.さらに,個人間の評価基準の差を考慮した関数を導出し,それを用いて効率的に被験者の水晶体のHaze値を推定する手法を検討する.

  • 舟木 智洋, 溝上 陽子
    2018 年 42 巻 3+ 号 p. 181-
    発行日: 2018/05/01
    公開日: 2018/07/17
    ジャーナル フリー

     人間の視覚系には,照明環境によらず物体の正しい色を認識することができる色恒常性という性質が備わっている.親しみのある物体に対しては色恒常性が働きやすくなることが先行研究で示されているが,未知の物体への認知過程をふまえていない.本研究では,折り紙を用いて実験刺激を作成し,被験者に予め一部の実験刺激を1週間以上の期間毎日観察してもらうことによって熟知させる認知過程を加えた.その上で,照明色や物体に対する熟知性によって色恒常性へどのような影響が生じるのか調べた.実験には波長可変LED光源を用いて,昼白色を基準として等色差になるような照明4色を,黒体放射軌跡方向(黄,青)とその直交方向(緑,赤)に設定し,合計5色の照明下でエレメンタリーカラーネーミング法を用いて実験刺激の色の見えの応答を行った.結果は,等色差でも照明色によって色恒常性が働きやすい色と働きにくい色があり,緑色照明下では最も色恒常性が働きにくかった.また,短期間でも事前観察を行うことによって色恒常性が高くなる傾向があった.以上より,色恒常性の働きやすさは,照明色,物体の両面において被験者の経験に影響を受けることが示唆された.

  • 三上 大河 , 溝上 陽子
    2018 年 42 巻 3+ 号 p. 183-
    発行日: 2018/05/01
    公開日: 2018/07/17
    ジャーナル フリー

     本研究は,物体の周囲の彩度が高い場合に物体の見えの彩度が低下する効果である色域拡大効果について明らかにすることを目的とする.実験では,自然画像をflower,wool,pumpkinの3種類用意した.それらを注視する要素のターゲット領域とそれ以外の背景領域に分け,ターゲット領域,背景領域にそれぞれ表面情報や形状情報を失わせる処理を独立に施し,各条件を組み合わせることによって実験刺激を作成した.これらの実験刺激を用いて,均一背景上のマッチング刺激がターゲット領域と同じ見えになる彩度を求めることで,自然画像の刺激の複雑さが色域拡大効果にどのような影響を与えるかを測定した.その結果,pumpkin画像において,他の画像より色域拡大効果が発生しやすかった.今回行った条件では,自然画像における色域拡大効果には画像依存性があり,ターゲット領域は単純で背景領域は物体のエッジなどの細かい情報があり,色分布がオリジナルに近似している際に最も色域拡大効果が大きいことが示唆された.

  • 吉村由利香 , 大江  猛
    2018 年 42 巻 3+ 号 p. 185-
    発行日: 2018/05/01
    公開日: 2018/07/17
    ジャーナル フリー

     現在,最も普及している照明用白色LEDは青色ダイオードとこれを励起光とする黄色蛍光体による疑似白色光である.このLEDの光色は人間の脳には白と認識されるが,物体色の見え方は従来白色光と異なっている.そこで,本研究ではLEDの疑似白色光のスペクトル波形がその照明下の物体色に及ぼす影響について検討した.LEDの450nmのピーク強度を減少させた場合,赤系の物体色ではa*値が増大し,青系では逆にa*値が減少した.L*値とb*値への影響はほとんどなかった.これらは,450nm付近に感度を持つ三刺激値(X値,Z値)の変化に起因するものと考えられた.この物体色と太陽光(D65)との色差⊿E*値を算出すると,450nmのピーク強度を85%程度に低下させた場合に,赤系以外の物体色では⊿E*値が小さくなり,太陽光との見え方に近づく結果が得られた.一方,550nmのピーク位置を長波長側にシフトさせた場合,赤の色相ではa*値の減少とb*値の増大,青の色相の場合には,逆にa*値の増大とb*値の減少が認められた.これらの変化はいずれも彩度の高い物体色ほど顕著になることが分かった.

  • 冨田 圭子, 河野 隼征, 藤田 未羽, 文岩 静香, 槇原 咲貴, 安岡 美総
    2018 年 42 巻 3+ 号 p. 188-
    発行日: 2018/05/01
    公開日: 2018/07/17
    ジャーナル フリー

     昨今,生活スタイルの変化に伴いコンビニ弁当の需要が増加している.しかし,その販売促進に有効であるといわれている色彩の研究はほとんどみられない.そこで,コンビニ弁当の中で需要の高いからあげ弁当を用い,パッケージ色が購買意欲に及ぼす影響を明らかにすることを目的に,調査を行った.パッケージ色は,暖色からorange,redを,寒色からblue,greenをそれぞれ12トーンずつ選出し,さらに無彩色からblack, gray, whiteを1色ずつ選出して,合計51色を対象に購買意欲に及ぼす心理的影響や視覚的美味しさ等の検討をおこなった.その結果,51食の中で最も有用性の高い色は,ダークトーンの赤であることが明らかになった.

  • 丸山 眞澄, 平林 由果, 乾 宏子, 市場 丈規
    2018 年 42 巻 3+ 号 p. 190-
    発行日: 2018/05/01
    公開日: 2018/07/17
    ジャーナル フリー

     パーソナルカラー4シーズンの各色をNCS色空間に分布し,その特徴を2015,2016年日本色彩学会で報告した.結果c>05の有彩色は,NCS色相環上の緑と赤を境にした黄色側か青色側のどちらに属するか,明清色,暗清色,中間色のどこに属するかの2点によって,フォーシーズンに分類されているのではないかと論じた.この分類に基づき,ファッションを想定した配色調和と嗜好を考察するため,配色を同じ属性内で構成した時と属性を混合した時とで,調和感,嗜好に差があるかを検討した.結果,調和していると選択された配色は,黄色側(イエロービュー),青色側(ブルービュー)のどちらかの属性で構成されていた.イエロービューに関しては,同じビュー内で構成されている且つ,清色領域内,濁色領域内で構成された配色が調和していることも認められた.また,調和と嗜好の調査結果から,調和より嗜好と評価された配色は,W20とW10の領域で変化を求める傾向が強いことが示唆された.本調査結果より,ファッションを想定した配色における調和は,統一感が,嗜好においては,変化を求める傾向が強いことが示唆された.今後は実際のファッションにおける配色の面積比を考慮して検討したい.

  • 渡邊 直人, 田代 知範 , 永井 岳大 , 山内 泰樹
    2018 年 42 巻 3+ 号 p. 193-
    発行日: 2018/05/01
    公開日: 2018/07/17
    ジャーナル フリー

     色度,照度といった照明の要素が空間の印象に影響を与えることは過去の研究からも明らかにされている.代表的なものとしてKruithofのカーブが挙げられる.Kruithofは照明の色温度と照度の関係から快・不快曲線を示した.しかし,近年の照明はLEDなど色度を自由に変えられるようにはなったが,それらの照明の色度は黒体軌跡上になく,相関色温度(Corelated Color Temperature,CCT)で表記されている場合が多い.正確な色度はCCTと色偏差(Duv)を用いることで表現するが,Duvまで着目し,印象評価を行っている実験は少ない.特に,くつろぎ感に関して照明条件を求めるための系統だった研究はほとんど見られない.そこで,本研究はリビング空間のくつろぎ感に注目し,照明光のCCTやDuvが空間の印象評価に与える影響を調査した.実験は,ソファ,カーペット,テレビなどが置かれたリビング空間を模したブース内で行われた.照明条件は照度200lx ,4種類の色温度(2300, 3000, 4000, 5000K)と,3種類のDuv(0.00, 0.005, 0.010)の組み合わせから設定される12条件であった.評価結果に対し,因子分析を行なった結果,4つの因子が抽出され,くつろぎ感においてはCCT=3000K~4000K,Duv=0~0.005で最も高い評価が得られた.

  • 何 水蘭, 中島 由貴, 渕田 隆義
    2018 年 42 巻 3+ 号 p. 197-
    発行日: 2018/05/01
    公開日: 2018/07/17
    ジャーナル フリー

     ファッション店舗では様々な種類の衣服が展示されているが,照明と展示方法によっては正確な色と質感を認識することが難しい場合があり,その傾向は特に光沢を有する布地で顕著である.筆者らは先の実験で,光源の分光分布を変化させた場合,光沢布地の色彩情報(反射光の色刺激特性)が色の見えだけでなく,質感印象にも影響を与えることを明らかにした.本研究は,光沢布地画像を用いて色の見えと質感印象に対して,色彩情報がどのように影響するのかを検討したものである.実験では,色相4種類(R,Y,G,B)の光沢布地画像の(a)L*を一定,C*を4段階に変化させた画像から2つを液晶モニター上に同時に並置提示,また(b)C*を一定とした4色相の布地画像から2つを並置提示し,被験者は左画像に対して右画像の色の見え,質感印象をSD評価(9段階)した.その結果,布地画像のC*は色の見え評価だけでなく質感印象にも強く関係していることが示された.それにはHelmholz-Kohlraush効果による主観的明るさの増加も影響しているのではないかと推定した.

  • 中島 由貴, 何 水蘭, 渕田 隆義
    2018 年 42 巻 3+ 号 p. 201-
    発行日: 2018/05/01
    公開日: 2018/07/17
    ジャーナル フリー

    肌色は画像や照明の色再現において最も重要な再現対象である.しかし,肌色の見えはポイントメーキャップや衣服など空間的に近接した色(近接色)との同化・対比現象によって変化することが知られている.肌色と近接色の同化・対比現象の報告は近接色の種類や面積によって異なり,明らかになっていないことも多い.本研究では,様々な色相を有するスカーフで女性の顔(肌色)を囲った画像を用いて,肌色の見えの変化をSD法および一対比較法で評価し,肌色の見えに対する近接色の影響を考察した.実験の結果,肌色の見えは近接するスカーフ色の色相によって変化し,赤色および青色で「黄み」,黄色および緑色で「赤み」と評価されたことから,肌色の見えの変化は同化ではなく対比によって生じていることが明らかになった.肌色を近接色で取り囲んだ場合は対比現象が,肌色の内部に彩色を施したポイントメーキャップでは同化現象が確認されたことから,近接色が肌色の見えに与える影響は肌色と近接色の関係によって変化し,この関係によって同化・対比現象が逆転する可能性が示唆された.

  • 三栖 貴行, 小田原 健雄, 渡部 智樹, 一色 正男
    2018 年 42 巻 3+ 号 p. 205-
    発行日: 2018/05/01
    公開日: 2018/07/17
    ジャーナル フリー

     我々は生活空間における照明光色を有彩色にすることで,生体へ良い影響を与え,照明機器の利用価値を向上させることを目的とし,生体への影響を心理面および生理面の二つの調査を行っている.心理的影響の評価として,離散的な結果にならず,主観的な評価において信頼性と妥当性が認められているVisual Analogue Scale(VAS)法を採用した.VASの評価項目は,体感温度と疲労についての評価を行なった.生理的影響は,特にサーモグラフィカメラを利用した体表面温度(顔面表面温度)の測定を行った.また,唾液アミラーゼの含有量と心電データからLF/HFを測定し,それぞれをストレス指標として評価した.実験環境は,温度,湿度を一定に管理し,一般的な一人暮らしの部屋に模した実験室にフルカラーシーリングライトを設置した.このような条件下において,被験者が着座する机上面照度を同一にした赤,緑,青の光色を被験者に暴露した.被験者は既往研究と同様に赤で体感温度が上昇し,青で減少する傾向が見られた.

  • 野尻 健介
    2018 年 42 巻 3+ 号 p. 209-
    発行日: 2018/05/01
    公開日: 2018/07/17
    ジャーナル フリー

     香りの特徴や人物の印象は主に言葉で表現されるが,言葉のみでそれらの特徴や印象を伝達・共有することは難しい.そこで,「言葉」だけではなく「色」も利用することで,香りの特徴を容易に共有できるのではないかと考えた.PCCS表色系の有彩色30色と無彩色6色,および金銀(色紙)の合計38色を配置した色票を作成した.実験協力者は評価対象(香り,人物)の特徴に合致する色を色票から2色選択すると同時に,選択した2色の香りの特徴に対する寄与率も評価した.次に,この寄与率の集計結果に応じた枚数の各色のパネルを与え,体系的に配置することで評価対象に特徴的な色のパターンを作成した.この評価手法をAroma Rainbow®と名付けた.Aroma Rainbow®により香水の香りや人物を評価したところ,評価対象に特徴的な色パターンが得られた.また得られた色パターンの類似度を比較することで,同様の色イメージを有する香りや人物を抽出することが可能となった.本手法を応用することで人物の印象に合致した香水を提案できる可能性が強く示唆される.

  • 裵 湖珠
    2018 年 42 巻 3+ 号 p. 213-
    発行日: 2018/05/01
    公開日: 2018/07/17
    ジャーナル フリー

     私たち人間は,五感で様々な情報を得ている.その中で最大の情報を得る感覚は視覚である.特に感情の表現では「色」は感情の言語的な表現を視覚情報として伝達する媒体でもある.日本は急速な経済発展のあと,人口の減少や経済の低成長化等によって,近年の社会では,既成世代から若者まで新しいものに対する挑戦や意欲が減退している.先行研究の目的は表現単語で日本語の「わくわく」を選び「わくわく」が持っているイメージを色で表現するときどのような色彩で表現されるのか,国別,地域別に差は現れるのかを調べ共通点と相違点を発見し,第4次産業であるAIや人間の感性をデータベースに活用する研究である.日本国内でアンケート調査を実施し,その調査では同じ12色の色鉛筆を提供してA4用紙を使用し,アンケートの質問項目には9つの質問や実際に画を描く方法を選択した.この結果では男女差が見え男性の場合,形が存在するモノ的な表現が多く,女性の場合は確実な形を持っているよりも,表現的なイメージや抽象的な形で表現し,色も同じような表現する傾向を表れる.色の傾向的には,男女共同に暖色系の色が寒色系の色よりも多くの割合で選択された事が分かった.

  • 早川 照美 , 乾 宏子, 丸山 眞澄, 市場 丈規
    2018 年 42 巻 3+ 号 p. 215-
    発行日: 2018/05/01
    公開日: 2018/07/17
    ジャーナル フリー

     本研究は日本色彩学会第47,48回全国大会からパーソナルカラー診断時にドレープが肌の色の見えに及ぼす影響について反射光の影響を除いた条件で観察した研究の第三弾である.前大会までは手をドレープの上に置いて肌の色の見えを観察し,ドレープに置いた手の色の見えが色票における背景色と図色の関係と類似していることを報告した.パーソナルカラー診断では肌(顔)の見え方が重視されるため今回は背景色に現実的な髪の色に近いウイッグを使用し,色相対比,明度対比,彩度対比の観察を8名の異なる肌の色のモデルで行った.今回使用したウイッグの髪の色のような比較的低彩度の背景色では顕著な色相対比は見られなかった.明度対比は8名全てのモデルの肌で確認ができ一般的な背景色と図色の関係同様の結果が観察できた.さらに肌が明るく見える場合には肌が赤み(ピンク)よりに見える傾向があり,前回の手の観察と同様に肌は視覚的に明るく見える場合には赤みよりに見えることが示され明度対比が引き起こす肌独特の見えが再検証された.彩度対比は今回の観察の低彩度の背景色では確認されなかったことを報告する.

  • 山下 明美, 山本 希恵
    2018 年 42 巻 3+ 号 p. 218-
    発行日: 2018/05/01
    公開日: 2018/07/17
    ジャーナル フリー

     現行の小学校の図画工作の指導要領では,造形や鑑賞などの美術的な側面に重きがおかれ,色については感覚や自分のイメージにとどまり,人間を取り巻く環境や社会生活にも関連する色の科学的な側面を学ぶ項目は見当たらない.一方,中学校の美術では,色の基礎を総合的に理解するために,教科書や資料集においても,三属性や色の対比といった,色彩学における基本的な知識に関する項目が一気に多くなり,小学校の図画工作での比較的自由で抽象的な学びからは大きな飛躍や隔たりがみられる.しかし,中学校の限られた授業時間数の中で,造形と同時に色に関する多くの用語や基礎知識をしくみから学び,理解することは容易でないことが推察される.知識のみの詰め込みがもたらす理科離れや色への苦手意識を生むなどの弊害も懸念される.本研究では,これらの色の学びの隔たりの問題を改善する対策の一つとして,新しい学習指導要領(平成29年公示,平成32年より実施)にもある,主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニングの視点からの授業改善)に着目し,初等・中等教育におけるアクティブラーニングを地域社会や家庭から支援する色彩ワークブックを提案する.

  • 松田 博子, 名取 和幸, 破田野 智美
    2018 年 42 巻 3+ 号 p. 220-
    発行日: 2018/05/01
    公開日: 2018/07/17
    ジャーナル フリー

     本研究では,インテリア壁面の色彩環境が,トレース作業時の効率や気分,感情など,心理面にどのような影響を及ぼしているのについて,高齢者14名(52~80歳,平均66.1歳)と若年者17名(19~32歳,平均22.4歳)との年齢層による比較を行った.9色(赤・橙・黄・緑・青・紫・赤紫・黒・ピンク)のタント紙を前面壁に張り付け,その前で幾何学模様のトレースを行い「好き,はかどる,楽しい,気分がいい,全体としてのプラス感情」の心理評価を5段階で回答してもらい,かつ作業後のそれぞれの色に対する感想を質問した.その結果,若年者は黒に対する評価値は全体にかなり低く,ピンクに対する評価は全体的に高かったが,高齢者は明度の低い青の評価が低く,赤紫に対する評価が全体に高かったことなどが分かった.高齢者については,全体的に「好き」な色が,他の心理評価にも影響しているように思われるが,若年者は,すべて高得点のピンクと,すべて低得点の黒以外の色は,色の好悪に関わらず,色に対する心理評価に大きな差がみられ,「好き」な色でも色によって,明度によって心理評価が分かれること等が判明した.

  • 須長 正治, 桂 重仁, 矢口 博久
    2018 年 42 巻 3+ 号 p. 224-
    発行日: 2018/05/01
    公開日: 2018/07/17
    ジャーナル フリー

     最新のディスプレイは広色域化を謳っている.この広色域化は,原色の分光分布の狭帯域化により実現されている.しかし,狭帯域の原色では,オブザーバーメタメリズムが現われやすい(Ramanath 2008).このことから,異常3色覚の等色関数は,3色覚での個人差以上に標準観測者の等色関数と異なっているため,オブザーバーメタメリズムがより顕著に観察されると予測される.そこで,27色のテスト色票と狭帯域の原色からなるレーザーテレビを刺激呈示装置として用い,異常3色覚の色の見えを2つの実験によって測定した.ひとつめの実験では,色票と等しい三刺激値をレーザーテレビに呈示し,それと色票の間で色差を評価した.弱度2型3色覚でも,色票とレーザーテレビの色が異なるカテゴリの色として知覚される色も存在するという結果を得た.ふたつめの実験は色票とレーザーテレビとの間で等色を行うことであった.その結果,これらの間に平均してΔEab*で33という大きな色差が存在した.これらのことは,異常3色覚のような色覚多様性に対して,広色域ディスプレイにて測色的色再現を実現することが困難であることを意味する.

  • 藤原 功基, 松田 博子, 北岡 明佳
    2018 年 42 巻 3+ 号 p. 228-
    発行日: 2018/05/01
    公開日: 2018/07/17
    ジャーナル フリー

     今回は,中心ドリフト錯視とフレーザー・ウィルコックス錯視を応用しながら,よく似ているが異なる見え方をする新しい錯視図形について提案する.多角形を複数配置しドット模様のような背景図形を作り,その上に円形を配置した.明るさのコントラストを用いたグラデーションにより,図形が大きく広がって見える新しい動く錯視図形と,補色を用いて図形同士が離れていくように見える図形のデザインを紹介する.また図形作成に当たり,色相・明度・彩度の検討をした.大きく広がって見える図形では,暖色系よりも「緑・青紫・紫」の中性色と「青」の寒色系,「黒・灰」などの無彩色に設定した円形には,錯視現象が見られた.特に青紫色が最も錯視量が大きく感じられた.また離れていくように見える図形では,補色もしくは補色近似色の組み合わせの錯視量が大きく,色相別に考察した結果,「青紫(円形)と濃い橙色(背景)」が最も錯視現象が起きた.暖色系の円は動かず,寒色系では「青・青紫」が最も動いて見えるなどの結果が得られた.また新しい錯視図形の応用図形も数点紹介する.

  • 江良 智美
    2018 年 42 巻 3+ 号 p. 232-
    発行日: 2018/05/01
    公開日: 2018/07/17
    ジャーナル フリー

     スチームパンク(Steampunk)はSF小説,ファンタジー文学のサブジャンルの1つである.19世紀の産業革命やフランス・ロマン主義的な文化生活形態がオルタナティブワールドとして発展した世界を想像して描かれている.映像作品やアニメにおいても人気の高いモチーフで,スチームパンクの世界観を芸術作品やファッションにアレンジして表現する愛好者は世界的に多く,独自のファンコミュニティが形成されている.

    本研究はスチームパンクのカラーデザイン研究の第一歩として文学作品の描写や挿絵からスチームパンクを象徴する色彩を検討した.また,作品舞台となったヴィクトリア朝時代のイギリス,20世紀初頭のフランスで実際に用いられた色彩を調査し分析した.色彩に関してはDICカラーガイド「フランスの色彩」を使用し,メインカラー2色,アクセントカラー6色を抽出した.更に,それらを用いカラーデザインを行い,女性向け衣装を制作し展示をした.

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