顔における肌色は健康や魅力のシグナルになるなど,社会的なコミュニケーションを取るうえで重要な意味をもつことが知られている.東アジア諸国で理想とされる美白感の高い肌は明るさと白さにより表現されることが多いが,両者は異なる概念であるため美白の心理物理的要因が十分に解明されているとはいえない.
そこで実験1では日本人女性の平均顔画像を用い,明るさに起因するメトリック明度と白さに影響を及ぼす白色点からの距離を独立に操作することにより,美白感の知覚が顔の明るさと白さのどちらの知覚に規定されるのかを検討した.その結果,美白感は明るさとは異なり,白さに起因する感覚であることが示唆された.実験2では美白感の予測性を明らかにするため,白色点からの距離とこれまで検討されてきた種々の要因を,恒常法による主観的等価点の測定により比較した.回帰分析の結果,美白感の知覚に影響を及ぼす要因は肌のメトリック明度や色相,彩度ではなく,白さを規定する白色点からの距離であることが明らかになった.