日本交通科学学会誌
Online ISSN : 2433-4545
Print ISSN : 2188-3874
11 巻, 2 号
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  • 病死例と事故死例の比較
    一杉 正仁, 安川 淳, 五明 佐也香, 槇 徹雄, 徳留 省悟
    2011 年 11 巻 2 号 p. 3-8
    発行日: 2011年
    公開日: 2018/03/01
    ジャーナル フリー
    1997年から2011年の14年間に獨協医科大学法医学講座で行われた四輪自動車運転者の法医解剖91例のうち、運転中の体調変化によって病死した33例(走行中病死群)および事故による外傷で死亡したが、原因が運転者の機能的変化によると推定される8例(外傷死群)を対象に、その特徴を調べた。いずれの群ともに、70%以上の運転者で何らかの既往疾患が認められ、高血圧、心・大血管疾患、糖尿病が多かった。事故による損傷の重症度では走行中病死群で平均ISSが4.7と低いが、外傷死群では37.0と有意に高かった。すべての身体部位のAIS値は外傷死群で高かったが、特に胸部の平均AIS値が4.1と著しく高く、頭頸部の2.0、四肢の1.8と続いた。交通事故死の約1割で運転者の体調変化が事故原因となっているため、まず、運転者の健康管理を厳格に行う必要がある。また、交通外傷と診断された患者の中には、事故原因が運転中の体調変化に起因する例が潜在的に含まれる。したがって、外傷患者に対しても、交通事故の原因として運転者の体調変化を念頭に置き、検索をすすめる必要があろう。
  • 島崎 敢, 平山 裕記, 中村 愛, 石田 敏郎
    2011 年 11 巻 2 号 p. 9-17
    発行日: 2011年
    公開日: 2018/03/01
    ジャーナル フリー
    カーブミラーは無信号交差点に数多く設置されているが、2種類のミラーが混在している。集中ミラー方式は2枚のミラーが1本のポールに設置されている。この方式では、右の道路状況は右のミラーに映る。両側ミラー方式は1枚のミラーが1本のポールに設置されており、2本のポールが交差点の両側に立っている。この方式では右の道路状況は左のミラーに映る。そのうえ、鏡像は左右が反転する。したがって、ミラー内の車両が交差点のどの位置にいるのか、またどの方向に進もうとしているのかを判断することは難しい。この難しさの程度を検討するために、24名の実験参加者にミラー内の車両の位置や進行方向を判断するよう求め、反応時間とエラー率を測定した。その結果、車両位置の判断では両側ミラーの反応時間が集中ミラーよりも有意に長かった。進行方向を判断する課題では、両側ミラーの反応時間は長く、エラー率も有意に高かった。
  • 本宮 嘉弘, 山内 春夫, 松川 不二夫
    2011 年 11 巻 2 号 p. 18-24
    発行日: 2011年
    公開日: 2018/03/01
    ジャーナル フリー
    道路を横断中の歩行者が跳ねられた事故において、衝突地点を特定することは自動車の衝突速度や運転者の過失を判断するうえで重要なことであるが、靴などによる路面の痕跡によって衝突地点を特定できることは稀であり、ほとんどの場合、運転者の供述や目撃証言に頼らざるを得ないのが実情である。歩行者との衝突地点を特定する1つの方法として、制動痕の屈曲現象がある。実際の事故において歩行者を跳ねた自動車の制動痕がわずかに屈曲していることがあるが、この屈曲がほぼ衝突地点(衝突地点から0〜2m先)で生じることをダミーを用いた衝突実験およびコンピューターシミュレーションで確認した。また、跳ねられた歩行者がかぶっていた帽子が事故現場に落ちている場合があるが、衝突実験の結果、帽子は衝突の瞬間に脱げることが多いため、衝突地点付近に遺留される傾向のあることが確認された。ただし、落下途中で帽子が車両に接触して、数メートルほど飛ばされることもあるので注意を要する。また、歩行者のさしていた傘も衝突地点付近に落下する傾向のあることが実験により確認された。
  • 運転中の意識消失の可能性を考える
    安川 淳, 一杉 正仁, 槇 徹雄, 櫻井 俊彰, 堺 英男
    2011 年 11 巻 2 号 p. 25-31
    発行日: 2011年
    公開日: 2018/03/01
    ジャーナル フリー
    運転者の意識消失が事故原因であることを明らかにするため、交通事故剖検例を対象にコンピュータシミュレーションによる検討を行った。1997年8月から2011年7月までに獨協医科大学法医学教室で行われた交通事故死関連の法医剖検例267件の中から、直接死因は外傷死であるものの、直前の回避行動が見られなかった2例を解析対象とした。事故再現にはMADYMO7.0を使用し、乗員モデルにはTNOオートモーティブ社製のデジタルモデルHybrid III American Male 50%ile・Hybrid III American Female 05%ileを用いた。車室内モデルの寸法は事故車と同一とし、推定された衝突速度で生ずる車体減速度を事故再現モデルへ入力することで事故を再現した。衝突直前の乗員姿勢に着目し、剖検例に基づく正確な損傷を基にコンピュータシミュレーション上で事故時の乗員挙動を再現して、検討を行った。その結果、1例目では初期姿勢が正規着座姿勢から状態を20°後方へ傾けた状態であり、2例目では上体を25°前方へ傾けた状態であった。そして、衝突時の挙動を経時的に明らかにできた。本検討によって、衝突直前の乗員姿勢を明らかにし、事故直前に乗員が意識消失状態にあったことが強く示唆された。今後は交通事故死者に対して、事故直前の姿勢を明らかにすることで意識消失の有無を確認する必要があろう。また、事故予防に向けたシステムの開発に向けて、運転者の意識状態と着座姿勢の関係を定量的に評価する必要があろう。
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